ザ・グレート・展開予測ショー

あさきゆめみし えゐもせず (絶対可憐チルドレン)


投稿者名:かいる
投稿日時:(05/11/ 9)






夢か現か幻か。

まどろみのなかで、僕はひとり、夢を見る。

悲しい夢、辛い夢、苦しい夢。

嬉しい夢、おかしな夢、幸せな夢。

境界のない、とりとめもない、様々に色を持つ夢の群れ。


コーヒーに垂らしたミルクのように、

渦を巻き、眠りの中に、忘却の中に溶けてゆく。


生産性もなく、消費するものもない。

儚く、尊い、夢というもの。


様々な顔を持つ夢。



――――――――それは時に現実をも浸食する。
















             あさきゆめみし えゐもせず (絶対可憐チルドレン)      



















――――――――――――赤い、朱い、夢を見た。




身体を灼くようにあかい、夕焼けの夢。

いくつもの瓦礫が影をなし、絡まり合いながら四方に伸びてゆく。

赤光のなかにたたずむのはふたり。もう、見慣れた、見飽きたと言っても良い光景。

僕じゃない僕、朱い女性。

繰り返される、予定調和の問答。

であるならば、この後の展開も想像がつくというもの。

例えどんな悲劇であっても、繰り返されれば喜劇となる。

諦観混じりに苦笑する。

いつしか、均衡は崩れ、

渇いた風が、吹いた。






アイシテル。

その言葉は呪いにも似て。

望み通りに、僕ではない僕の・・・・・・・・・いや、僕の心を奪っていった。

胸に空を抱いた君と、心に空を穿たれた僕。

がらんどうの僕は、うつろになった君を抱えて・・・・・・・・・・・・・・・

抱えたまま、どこへも行くことはない。

ここは終着点だから。

「つぎ」はない。

生き詰まって、どこにも行けない僕たち。

未来は既に夕日に溶けて、抜け殻に夕闇が覆い被さってくる。

停滞した、紅い世界は、緩やかに死に絶えながら、閉じていった。


























―――――――――――――――青い、蒼い、夢を見た。




夕日が海に消え、凍えそうにあおい宵闇の夢。

うつろになった僕たちを、蒼い彼女が迎えに来る。

彼女は何も言わないけれど。

胸に、穴が空いた、朱い女の子が、眠るように動かなくなってるのを見て、


よかったな。■。


泣きそうになりながら、そうつぶやいた。


こんな幸せそうな笑顔で逝けて・・・ホンマに・・・


あとは、言葉にならなかった。

彼女の目からこぼれ落ちる、青い涙、ナミダ、なみだ・・・・・・・・・

それを拭うことは、もう許されていない僕の身体。

次々に落ちてゆくそれを見て、僕が手からこぼしてしまったモノの重さを思い知る。


■は・・・ウチが連れて行く。


泣き終わった彼女が発した言葉は、確認だった。

是非もない。

止める権利などあるはずもない。

ここにあるのは、かつて皆本光一と呼ばれた、抜け殻なのだから。


なぁ、■■はん・・・あの頃は・・・楽しかったなぁ。
終わりが来るなんてなんにも考えんと、ただ笑ってたな・・・


そう言って、彼女は、戦友を抱えて蒼い闇に消えていった。

何が罪で、何が罰なのか。もう、僕にもわからないけれど。

ただ、無性に悲しくて。

蒼い残滓が、目から一筋流れた。


























――――――――――――――――――紫の夢を、幻視する。




夜明けがはじまり、闇に光が溶け出した、紫の夢。

ラベンダーの色の髪をもつ、どこにも居ないあの子の姿を思い出す。

三人の中で、誰よりおしゃまで、大人っぽかったあの子。

そして、誰より生き急いだ子。




最後に抱えたときの、身体の軽さと、

目にかかる髪を払ってやったときの質感は、今も指から抜けない。




彼女の最後の言葉は、何だったろうか。思い出せない。

とても大事なことだったような気がする。

頭が霞みがかったようで思い出せない。



最後には笑っていた。

それだけが、救い。

なんて、欺瞞だろうか。


守りたかった。守れなかった。

弱い僕の心は、事実を受け止めるのには脆すぎた。

そして、朝焼けの中、僕はひとり。












まずは紫。

そして、赤。

青がそれを追うように。




そして、僕の世界は、色を失う。







くろい、くろい、黒い夢。

闇の中であがく夢。

どれだけあがいても、未来が変わらない。

色を失った僕は、何も見えないまま、遮二無二あがいて、

力尽きる。











闇の中。ひとすじ、何かの光が見えた。

白く、時折、黄金にも見えるように輝く光。

最後の力を振り絞るようにして、その光に飛び込んだ。


























――――――――――――――――――しろい、しろい、白いゆめ。



白い、マリア像が見えた。




僕はしろいものに囲まれている。

身につけているものは白いタキシードに白の蝶ネクタイ。

周りには白いブーケ。

それに、いちばんしろいものが、



ひとつ、


ふたつ、


みっつ。




照れくさそうに笑う、あかい女の子。

楽しそうに笑う、あおい女の子。

うれしそうに笑う、むらさきの女の子。


どの子も白いヴェールをかぶっている。




あははははは、と渇いた笑いが出てしまう。

でもまあ、さっきまでの夢よりかはだいぶマシではあるわけで。

彼女たちが、幸せそうに笑っているのだから、まあ、いいか、


そう思ってしまうあたり、何とも救いがない。


―――――――――誰かが、呼ぶ声がきこえる。


そう思った瞬間、三人の左手の指輪が、輝きを放った。




















さて、これらはひとつの可能性。

ありえるかも知れないし、ありえたかも知れない、架空の話。

全くもって根拠もなく。全くもって確信もない。

悪夢も、予知夢も、正夢も、

全てはまどろみでひとつになる。


例えそれがどんなものであろうと、

明けない夜はないように。

等しく終わりはやってくる。

鐘の音ではなく、朝の光をもって。


そして、



――――――――――――夢の終わりに、朝が来る。























まぶたを開ける。

時計を見ると、朝の4時。

どうやら、早く目を覚ましすぎてしまったようだ。


傍らの眼鏡に手を伸ばす。

それを掛けようとして、冷たいモノに触れる。

手で確認する。

乾きかけているが、涙の跡が感じられた。

そういえば、悲しい夢を見たような気がする。

それにしては、目覚めはそう悪い心地ではなかったのであるが。


はて、と思いつつ、喉の渇きを覚えた。

椅子にかけっぱなしの背広を羽織ってダイニングを目指す。

と、その途中、あの三人の寝ている扉が少し開いているのを見かける。







・・・・・・中を覗くと、昨夜寝かしつけた格好のまま、仲良く三人が眠っていた。

幸せそうな顔をして眠っている。・・・何故か少し、心が軋んだ。

肩が出ているところに毛布をかけ直してやる。

身をよじらせる。笑いがこぼれる。




彼女たちは、どんな夢をいま見ているのだろうか。

幸せな夢を見ているだろうか。

願わくば、彼女たちが安らかに眠ることのできる日々が続きますように。

何処にいるとも知れない神にそう願う。

そして、少ない時間の惰眠を求め、部屋を後にした。









――――――――――――おやすみ。








(了)

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