ザ・グレート・展開予測ショー

灰色の街  〜The second judgment.〜 第7話


投稿者名:おやぢ
投稿日時:(05/11/ 8)

マリアに案内されシェルターの中に入ると、カオスが最新式の機材を自分用に改造して
使用していた。
カオスは、モニターは5台のキーボードに囲まれ、3つのキーボードを操り、
ゴーグル式のサブモニターにデータを映し出し、溢れ出る情報を処理していた。

「秋葉原かよ・・・ここは・・・」

雪之丞が思わず呟く。

「電車にでも送信してんのかね・・・ったく。」

半ば呆れ気味に、横島も呟いた。

「こんなしちまって、美神さんに見つかったら依頼料でねぇぞ・・・」

周りを見渡すと、備蓄していた食糧が食い散らかされ散乱している。
僅か数日でここまで散らかすとは、想像の範囲外である。

マリアがいるのになぜ??

横島はふと、疑問に思った。

「マリア、カオスの奴ひょっとして依頼受けてから寝てないんじゃないの?」

身体にジャックを挿しながら、マリアは横島の問いに答える。

「イエス・横島さん。ミセス美神から・貰った薬・ドクター・カオス・元気になった。
頭・スッキリして・眠くもならない。」

マリアがそう言うと、カオスが雄叫びを上げた。

「いけない・薬・切れた。」








【間】







「お・・・おい、何の薬か聞く勇気あるか?」

「俺は何も見てなーーーい、何も聞こえな〜〜〜〜い。」

雪之丞の問いかけを遮るように耳を塞ぎ壁側を向くと、横島はそのまま座り込んだ。











「ふぅ〜〜〜〜、さっぱりしたわ。おお!小僧来ておったんか。」

何事もなかったかのように、カオスはゴーグルを上げると横島たちの方を向いた。

「じぃさん・・・生きてるか?」

雪之丞は少々頬のこけたカオスを見ると、冷汗を流した。

「ま、冗談はともかく・・・」

背を向けていた横島がそう言いながら立ち上がった。

“冗談で済ませていいのか?”

あえて雪之丞は言葉に出さなかった・・・・

「隊長に頼まれてた、例のアレでたか?」

「ああ、おぬしが頼んでいた自衛隊員の事じゃろ。」

カオスはデータファイルを開き、キーボードを操作した。
動いてなかったパソコンにスイッチが入り、HDが音を立てて動き出す。

「随分と大げさだな。」

「わしのオリジナルの圧縮でも収まらんわい。パソコン1台潰してしもうたわ。」

意味がよく判らない横島と雪之丞は、顔を見合わせた。

「こいつじゃったの。」

マウスを操作して、一人の男を弾きだした。

「そそ、コイツ。」

「誰だこりゃ?」

「お前探し始めて、真っ先にちょっかい出してきた奴さ。自衛隊員らしいんだが
どうやら1年前に死んでるらしいんだと。」

「死んでねぇじゃん。」

「まぁそうなるな・・・

雪之丞とこういう話をしては不毛だ・・・やはり格闘バカはダテではない。
いや伊達なんだけど・・・」

「口に出して言うんじゃねぇ!!」

ジャレ合う横島と雪之丞を尻目に、カオスはこの男のあったデータベースを広げだす。
あまりの仰々しさに、二人ともジャれ合いを止め、モニターに近づいた。

「なんだこりゃ??」

「こやつの現在の所属先じゃな。・・・・陸自統括にはなっておるが、内調(内閣調査室)や公安
も関係しとるのぉ」

「公安かよ・・・」

雪之丞は眉を顰めた。

「アメリカ海軍のシールズに近いのぉ。破壊工作・要人救出・カウンターテロ・そして要人暗殺・・・」

カオスはいいながら、モニターに部隊の作戦のデータを次々と広げていく。

「完璧な憲法違反だな・・・海外派兵じゃねぇかよ。」

「国外ではな。これが国内になると・・・・」

カオスは再びデータを展開する。

「左翼の強制排除・暴力団への武力介入・外国マフィアの強制撤去・・・そして、与党反乱分子への各種工作じゃ。」

「特殊部隊兼ゲシュタポかよ・・・」

「日本だからせめて憲兵隊って言おうぜ。」

モニターから目を離し、横島と雪之丞は顔を見合わせた。

「内調や公安がこいつらを雇っているってのか?」

「まぁそうなるのぉ。」

キーボードから手を下ろすと、カオスはイスに凭れかかった。

「となると、奥村の件はコイツらの仕業か?」

雪之丞はいきり立ったように、モニターを指差した。
横島はタバコを雪之丞に指し出し、火をつける。

「さぁどっちだろうな・・・公安かコイツらか・・・まぁどっちにしても、コイツら自体じゃあるまい。」

「どういう事だ?」

「コイツらは駒だ・・・操ってる基を辿らないと意味は無ぇ。」

横島がそういってモニターを見つめると、雪之丞は気短に煙をプカプカと吐き出している。

「厄珍の情報では、警察が何か霊能力に対して兵器を開発してるそうだ。」

「警察もグルかよ!!」

「いやぁ〜そうじゃねぇだろうな。陸自にしても警察にしても一部だろう・・・」

横島がそういうと、カオスが苦笑した。

「じーさん、なにがおかしい。」

雪之丞がカオスの顔を見て言った。

「おぬしじゃない・・・こっちの小僧じゃ。随分と性格が悪くなったのぉ。
美神美智恵に似てきおって・・・おぬし、先がだいぶ読めてきたのではないか?」

カオスに言われて、横島は頭を掻いてそっぽを向いた。

「ほんとか?横島!!!」

そっぽ向いている横島の身体を、揺すりながら雪之丞は詰め寄る。

「これだから言いたかないんだよ・・・カオスのじーさん、責任とってくれよ。」

「いいから話せってんだよ!!!」

「マリア頼む。」

「イエス・ドクターカオス。」

マリアが雪之丞を羽交い絞めにすると、横島はタバコを咥え机の上に腰を降ろした。

「まだ推測の域だからな・・・」

そういってタバコに火をつけた。

「日本の政治家にタカ派がいる事は知っているよな・・・
どこの誰だかわからねぇ・・・・まぁ俺の知った事っちゃねぇけどさ。」

「勿体つけるな!」

雪之丞が羽交い絞めにされたまま、叫んだ。
マリアの頭突きが炸裂する。

「あいよ・・・どうやらこのタカ派の政治家、日本の完全独立を狙ってたらしいんだ。」

「まぁ有り得る話じゃな。」

冷めた番茶をカオスは啜った。

「日本は独立国家じゃねぇのかよ?」

後頭部のタンコブを構いもせずに、雪之丞が言う。

「完全じゃないだろう。自衛隊という軍隊は戦争をせず・・だ。隣の国がちょっかい出してきても
『遺憾に思う』のコメントだけだぜ。思い切っても『経済制裁』だ。
そして国の至る所には、在日米軍が基地を作っている。
それがいい事か悪い事かは、俺は政治家じゃ無ぇからわかんねぇや。
ただ、自衛隊という世界でも金懸けている方の一応の軍隊を持っている国が
国際的に舐められていて、米軍に守ってもらっている・・・という感覚は俺だけじゃなく
ある程度の国民は持っていると思うぜ・・・なんせ戦争を放棄した国だからな。
自分は平和主義でいても、相手はどうだか判らない・・・そんなんで喧嘩になるか?
喧嘩好きなお前なら、わかるだろ?」

そういうと雪之丞は頷いた。

「・・・って、誰が喧嘩好きだ!!!」

「いやお前しかいないだろう・・・・って話を戻そう。
まぁそんなワケで、有事にはアメリカにおんぶに抱っこって寸法だ。
俺たちみたいに荒事している人間だったら判るだろ?
『自分の身は自分で守れ』だ。
それができない国なんて、国として認められない・・・と、考える人間がいるワケだ。」

「それがタカ派ってワケか・・・」

「まぁタカ派がみんなそうだとは、限らないけどよ。
政治家にしても、自衛隊にしても、そう考えていた奴はいたって事だろうな。」

「アメリカからの軍事的独立か?」

「まぁいってみりゃそうだな。ただ・・・・それだけじゃないみたいなんだな・・・・」

横島は紫煙を深く吸い込んだ。

「カオスのじーさん、南極に向かってる時の事憶えてるか?」

横島がそういうと、納得したようにカオスは頷く。

「なるほどのぉ・・・1国と戦争しても負けない、いや勝てる艦隊を相手に僅か数名で
甚大な被害を与えたGSか・・・確かに脅威じゃわい。」

「さすがヨーロッパの魔王。戦争をよく御存知で。」

横島はニヤリと笑った。

「人類の共通の敵のため、あのイザコザは不問にされたが、世界に知れ渡ればアメリカの
失態は目に見えておるし、知っておる者たちにはGSという者達は脅威以外の何者でもないわ。
あの事件以降、大量破壊兵器以上に霊能兵器の開発が各国で行われ
世界GS協会が霊能兵器の開発を一切禁じたからのぉ。」

「そういう事・・・霊能道具に関してはGS協会の許可を得ないと一切厳禁だ。
霊能に関して遅れ気味のアメリカは諸手を上げて賛成した。
まともに開発されちゃ、イタリアの小国バチカンにさえ勝てないからな。」

唐巣神父が卒倒しそうなセリフを吐くと、横島はタバコを消した。
雪之丞は話についていけないで、眉を顰め頭を捻っている。

「わかんねぇか?さっきも言ったろ、軍事的独立だけじゃないって。
第七艦隊に甚大な被害を与え、国際的に禁止されているものって分かったか?」

「霊能兵器だろ?」

「その凶悪なのの開発に成功したら・・・どうなる?」

「アメリカの上に立てる・・・・・・・・ってまさか!」

「ま、推測だけどな。」

「推測ってお前!当たっていたら、日本は世界に喧嘩売るって事じゃねぇか!!」

雪之丞の叫びに、横島は何も答えなかった。

「挿し当たっては、こやつらか?」

カオスはモニターを指差す。

「だろうな・・・まず非合法の特殊部隊でテストってのが、王道だろう。」

言いながら頭を掻き毟る。

「ちょっと待てよ、なんでお前そんな事が判ったんだ?」

少し冷静になると、雪之丞は横島の方を向いた。

「・・・・・・・冷静なままでいろよ。お前にハジけられちゃ仕事に支障がでる。」

「わかった・・・・」

「公安だよ・・・」

「公安?」

「あぁ・・・エミさんやお前を雇っていた公安。
お前を探すとやってきやがった非合法の特殊部隊・・・カオスのじーさんがいってたように
コイツらはつるんでいやがる。
そして厄珍のいってた警察の対霊能・・・こっちも裏で繋がっている。
警察は心霊課を持ってるからな、GS協会の認可も降り易い。
警察を隠れ蓑に、公安と陸自が結託と見ていいだろう・・・
そしてここからが、本番だ・・・・・






いいか、公安はお前とエミさんを雇っていたんだぞ。
そのデータはある程度、向こうにあるんだ。
これがお前とエミさんが狙われた本当の理由だ。」

「まさか・・・魔装術が・・・」

「特殊部隊や軍隊、機動隊にはうってつけじゃのぉ・・・防弾防刃に優れとるし
武器が無くなった場合の攻撃力も優れておる。小笠原の小娘の呪術も暗殺には向いておるわ。」

「くそがーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

横島の予想通り、雪之丞は激怒した。
激怒した挙句、魔装術に身を包みマリアの手を振り解いた。

「どこ行くんだよ。」

「とりあえず公安だ!!!その後防衛庁に殴り込みだ!!!」

「ヤーさんかよ・・・お前は・・・」

横島は頭を抱えた。
やっぱ言うんじゃなかった・・・後悔先に立たずである。

「推測って言っただろ・・・証拠も無しにどうすんだよ。」

「叩けば埃くらいでる!」

「西○警察じゃねぇんだから・・・」

思わず頭を掻いてしまう。

「証拠集めるために東京に出てきてんだろ。
今弾けちまうと、向こうの思うツボだぞ・・・弓さんにこれ以上迷惑かけていいのか?」

横島にそういわれて、雪之丞の動きが止まった。

「隊長の依頼は、『一部政府関係者の霊能兵器の開発』を押えろだ。
政府関係者となると、隊長でさせおいそれとは動けないぞ。
お前がヘマしでかしたら、周りの連中がどうなるか・・・想像は容易い・・・・だろ。」

諭すようにそう言われるて、魔装術を解き乱暴にイスに座る。

「御託はいい、結論だけ言えよ。」

「証拠だ・・・俺らに出来るのは、そこまでだ。」

座った雪之丞を見下ろすようにして、横島が言った。

「・・・おい小僧。おぬしこやつらがつるんでおるといったな。」

パソコンの前に再びカオスは座るとそういった。

「ああ・・・」

カオスがキーボードを叩きだした。

「やはりそうじゃったか・・・・」

カオスは満足気な表情を浮かべる。

「なんだ、どうした?」

「データを取ってたのが公安というとったからのぉ、公安のデータベースから侵入してみたのじゃ。」

「んで結果は?」

「出てきたぞ。」

カオスの言葉に、二人は慌ててモニターの元へ駆け寄った。

「大したもんじゃ・・・おぬしの言う通り魔装術が兵器として開発されとる。
これはその設計図じゃの。」

「強度計算できるか?」

「材質はチタンと精霊石の合金のようじゃの・・・おそらく銀の銃弾は通用せん。
そして・・・・おぬしの霊波刀もじゃ。」

「雪之丞の魔装術と比べて、どうだ?」

まったく動揺せずに、横島は話しを続けた。

「こやつの魔装術を100とすると、70〜80というとこかのぉ。しかし例外があるわ。」

カオスはデータを開けた。

「この素材を使ったヤツじゃと、120〜130になる。まぁ霊能力があってこれを扱う才能がないと
扱えん代物じゃがな・・・・・あとこれはコストがバカ高い、精霊石の割合が異様に高いからのぉ。」

「作れる事は作れるんだな?」

雪之丞がカオスを睨むようにして言う。

「可能じゃ。」

「上等だ・・・・」

雪之丞が好戦的な笑いを見せる。
自分が何と戦うのか、見えてきたというだけでも彼にとっては喜ばしい事であった。

「呪術兵器の設計図はあるか?」

横島がモニターを見ながらいった。

「たぶんこれじゃ・・・」

データを展開する。

「呪詛増幅装置じゃな・・・まさしく魔法科学の最先端じゃ。
この図通りじゃと、そうそう霊能力の無い人間でも簡単に呪殺が可能じゃな。
データバンクより個人情報を入力、そやつのDNAを入れてやるだけで暗殺が可能じゃ。」

二人はカオスの言葉に溜息をつくと、モニターから離れた。
横島は口に手をやり、じっと考えている。

「他になにかないか?」

絞り出すように声をだす。

「ここにはそれだけじゃ。」

カオスの言葉に、横島は再び深い考えに入る。

「どうした?」

「・・・・・・・・・・・・足りねぇ。」

「何がだ?」

「魔装術を模した戦闘用兵器。暗殺および洗脳用の呪術兵器。
それだけじゃあ、世界を脅せない・・・・・核以上の兵器にはならねぇ。」

「まだ他にあるってのか?」

「たぶん・・・・・な。」

横島はタバコを咥えると火をつけ、大きく吸い込んだ。

「しかしこれでやる事は決まったな・・・じぃさん隊長に連絡してくれ、明日から動くと。」

おそらく横島もかなり頭に血が上っていたのだろう。
大事な事を忘れていたのだ・・・
横島は翌日この言葉を後悔する事になるのだが、今の彼にはそれは知るよしもなかった。








SEE YOU GHOST SWEEPER.......


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次回予告


横島    「説明的セリフが多かったな・・・・よく舌噛まなかった。
       自分で自分を誉めたいところだが、そうも言ってられない。
       次回は久々にアクションが少しだけでてくる。」

雪之丞   「アクションっつーたって、あんまり動いてないような気ぃするんだけどな・・・この話・・・」

横島    「図星をつくな!!!次回は動物愛護団体からクレームが来そうな話だ。」

雪之丞   「なんだ?獣っ娘襲うのか?いかんぞGTYには相応しく無いぞ。」

横島    「ちゃうわいっ!!!!!!」

シロ    「先生!拙者心の準備が・・・・」

横島    「モジモジすんな!シナを作るんじゃねーーーーっ!!!」

タマモ   「あらなに?横島ついに覚悟決めたの?アタシはいつでもいいのに♪」

横島    「ちゃうわーーーーーーっ!!!俺はロリじゃねぇーーーーー!!!」

雪之丞   「次回第8話『暴走の代償』」

横島    「あぁまたしてもブルースが聞こえない・・・・」



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