ザ・グレート・展開予測ショー

そんな失念レストラン(絶対可憐チルドレン)


投稿者名:黒土
投稿日時:(05/11/ 6)


 ある日のバベル局長室、そこには報告書を提出する皆本の姿があった。

「・・・以上がこのたびの報告書です。」

「うむ、ご苦労。
 ・・・ところで皆本クン、君はこれを読んだかネ?」

報告書を机の隅に片付けつつ、局長が何かの雑誌を取り出す。

「雑誌・・・ですか。」

局長が広げた雑誌の記事、
そこには『現代のイリュージョン・ESPカフェがOPEN!』と書かれている。
驚く皆本に局長が続ける。

「最近はいろいろな趣味に合わせた店が多く出ているからネ、おかしいとは言わんが・・・
 今の微妙な情勢の中、何らかの波紋を生ずるかもしれん。
 だが、これも一応真っ当な店である以上、強制的にどうこうとはいかんのだよ。」

いぶかしげな表情の皆本。


「そこで皆本クン、暇があったらちょっと行ってみてくれんかね?」


「・・・は?」


突然の局長の言葉に驚く皆本、
とりあえずその場ははぐらかして仕事に戻る。



 そして翌日。


「・・・ここか。」

昼下がり、ESPカフェの前に立つ皆本。
何だかわからないが、とりあえず未知の領域といった感じが彼を包む。

意を決して店内に入る皆本。

「いらっしゃいませ〜」

妙にヒラヒラした、ボディラインを強調する服のウエイトレスが出迎える。
そんな彼女たちに導かれるまま席に着く皆本。

「えっと、じゃあコーヒーとサンドイッチを・・・」

と、その時。

「お客さん、こういうとこ初めて?」
「お客はんもこういうの好きなんや・・・」
「意外な一面を見ちゃったわね。」

聞き覚えのある声。
ものすごく嫌な予感を抱えつつ、皆本が後ろを振り返ると・・・

「よう、皆本ぉ。」

そこに居たのはもちろん、薫・葵・紫穂の3人。
そんな現実に思わずうろたえる皆本。

「お、お前らなんでここに・・・」

「局長がここだって言ってたから。
 あ、おネーちゃん、あたしフルーツパフェね。」
「1人で行こうやなんてちょっと甘いで。
 ウチはコーヒーゼリーもらうわ。」
「ちゃんと仕事の一環だってわかってるから心配しないで。
 わたしはチョコプリンね。」

なんとなく予想していた展開にあきらめ気味なのか、
黙っておごらされる皆本くんでした。



「・・・ん?」

ふと店内に目をやる皆本。
そこにはサイコキネシスで料理を運んだり、テレポートでパフォーマンスを行うウエイトレスの姿があった。

「なるほど、それでESPカフェと言う訳か。」

「きわどい制服のおネーちゃんとどっちで集客してるんだか。」

ニヤニヤと下品な笑いを浮かべる薫。
と、そこへ1人の男が近づいてくる。

「どうです?バベルの職員さん。
 ウチは気に入っていただけました?」

なよなよした感じの細身の男、
何よりもネクタイの趣味が悪いのが気に掛かる。

「・・・どうしてそれを?」

皆本は自分がバベル職員である事を見抜いた男を凝視する。
しかし、男は動じる事も無く言葉を続けた。

「あ〜ら失礼、あたくしはここのオーナーで仲村(なかむら)と申します。
 こういった店を開くくらいですから・・・当然すご腕のエスパーのことは知っていましてよ。」

そう言うと、チルドレン達の方を見る仲村。

「あたくしもキレイ所のエスパーを集めるのに苦労しましたのよ。
 お嬢ちゃん達も、もう少し大きくなったらウチに来ない?
 ウチの子達ったら、超度2〜3くらいだから派手さに欠けるのよねえ。」

「・・・ちょっといいですか?」

仲村の話を皆本が遮る。

「現在、エスパーと普通人の関係は微妙な所があります。
 そんな状況で派手にやって、反エスパー団体にでも標的にされたら・・・」

その時、今度は皆本の話を遮るように、1人のウエイトレスがデザートを運んできた。

「お待たせいたしました、フルーツパフェ・コーヒーゼリー・チョコプリンですね。」

他のウエイトレスと同じ制服を着た若い女性、横に縛った髪が特徴的だ。
すると、仲村が突然話を変える。

「この子は冥香(みょうか)ちゃんって言って、ウチで1番のウエイトレスなのよ〜。」

しかし、皆本はその言葉に納得がいかない様子である。

「あの・・・僕の注文したものがないんですけど・・・」

確かに、テーブルの上にはチルドレン達の注文したデザートしか置かれていない。
慌てて注文を確認する冥香。

「す、すみません!
 何をご注文でしたか・・・?」

「だから僕は・・・」


しばしの沈黙。


「・・・・・何だっけ?」

確かに先ほど何かを注文したはずなのだが、皆本はそれを思い出せないでいる。

「あの・・・お客様、どうされました?」

冥香の言葉に少し焦る皆本。

「あ、えーと・・・コーヒーください。」



 数分後、ゆっくりとコーヒーを飲む皆本。

「あれ・・・おかしいな、僕は何をしにここへ来たんだっけ?」

目の前には暖かいコーヒーと、デザートを頬張る薫たちの姿があるのみ。
妙な気分でコーヒーを飲んでいる皆本に、紫穂がつぶやく。

「さっきのウエイトレスの人、ちょっと特殊なテレパスみたいよ。」

あまり状況が理解できないでいる皆本だが、とりあえず紫穂の言葉に耳を傾ける。

「本人は気付いていないみたいだけど、わずかながら他人の記憶を消す事ができるみたい。
 きっとそれで他の人よりも多く注文が取れるのね。」

それを聞き、さっき自分のした注文を忘れた事や、
この店に来た目的を思い出せなかったことに合点がいった皆本。

「あ、危ない能力だな・・・」

「大丈夫よ。
 一応、無意識のうちに制御してるみたいだったから、そこまで危険はないと思うわ。」

紫穂を信用していないわけではないが、やっぱり不安はぬぐえない。
と、そこへ再び仲村が姿を現した。

「あ〜ら、もう気付かれちゃったのね、でも本当に大丈夫よ。
 あたくしがホラ、従業員全員分の制御装置を持っておりましてよ。
 たとえ誰かの力が暴走しそうになっても、このあたくしが・・・」



「フンッ、暴走とかいう時点で十分物騒なんだよ!」



仲村の言葉に割り込んできた怒声。
それと同時に、店内に居た客の数人がサングラスを掛ける。
そして彼らは一斉に立ち上がり、大きな声で名乗りを挙げた。

「我々は超能力排斥団体『普通の人々』だ!
 この世界にエスパーは必要ない!この店も今日限りでお終いだ!」

『普通の人々』を名乗る男たちが銃を取り出し威嚇する。
だが、一つだけ彼らには誤算があった。




「サイキック・お帰りはコチラ!」




彼らの誤算、それはもちろん『ザ・チルドレン』の3人が店内にいたこと。
薫の掛け声と共に、武装した男たちは店の外へ勢い良くたたき出される。

「人がせっかくおネーちゃんとデザートを楽しんでるって時に、邪魔すんじゃねえ!」

「だからそのオヤジ発言はやめろって・・・
 ・・・動くな!我々は特務エスパーだ、おとなしく投降しろ!」

薫を押さえつつ皆本が叫ぶ、すると1人店内に残っていた客がこっそりとサングラスを掛けた。

「くっ・・・超度の低いやつらばかりと思っていたが、まさか特務エスパーが紛れていたとは・・・!」

うろたえるサングラスの男の方へ向き直る薫。

「へへ、運が悪かったとあきらめな。」

だが、追い詰められているはずの男はうっすら笑いを浮かべ、
ポケットからスイッチのような物を取り出すと、勢い良くそれを押す。




ゴゴゴゴゴ・・・




地の底から響いてくるような轟音。
それと同時に、皆本達の前に巨大な何かが姿を現した。




「・・・・・カニ?」




そこに現れたもの、それは巨大な戦車のような金属製の物体。
しかし、砲門のかわりに大きなペンチが2つ、キャタピラのあるべき場所には細長い足が4対。
例えるならそう、やっぱり『カニ』である。

「くくく、これぞ我ら『普通の人々』の技術の結晶!
 対ESP用自立式機動装甲戦車・『ずわい号』だぁ!!」

『ずわい号』と呼ばれた巨大なロボガニがゆっくりと薫たちの前に歩み出る。
近くで見るとかなりの大きさがあり、その無機質な目はかなりの威圧感をかもし出していた。

「面白れえ・・・やってやろうじゃねえか!」

ずわい号めがけてサイコキネシスを発動する薫。
すさまじい衝撃波により、周囲の空間がビリビリと震えるのが感じられる。

だが、しかし。

「お・・・重てぇ〜!」

薫がサイコキネシスを一時中断する、
肝心のずわい号にはあまり効いていないようだ。

「なら、今度はウチが!」

続いて葵がずわい号をテレポートさせようとする。
が、やはりずわい号はわずか上にテレポートしただけで、あまり目立った効果は得られない。


「フハハ、無駄だ無駄だ!
 特殊合金で作られた超極厚の装甲板だ。戦車の数倍はあるこの質量、ちょっとやそっとで動かせる重量ではないわ!
 さらに、内蔵された装置によってESPの超度を軽減させることもできるのだ!
 さあて・・・今度はこちらからゆくぞ!」

サングラスの男が合図を送ると、ずわい号がゆっくりと右腕のハサミを開く。

《エネルギー・OK・ターゲット・ロック》

電子音で作られた声で喋るずわい号、その開いたハサミを薫の方へ向ける。
とっさに防御体勢をとろうとする薫に皆本が叫んだ。

「ダメだ!よけるんだ薫!」

「!?」

次の瞬間、ずわい号のハサミから赤い光線が発せられ、射線上にあるあらゆる物を切り刻んでゆく。

「あ・・・危なかった・・・」

しりもちをついている薫。
彼女の横、数センチのところを光線の痕が走っていたのだ。

「見たか、『ずわい号』には試作型とはいえブラスターが搭載されている。
 サイコキネシスで防ぐ事はできんぞ!」

高らかに笑うサングラスの男。
それとは対照的に薫たちの表情には多少の焦りが生じている。

「くっ・・・まさかこんな物まで用意していたとは・・・」

銃を構える皆本だが、目の前の巨大な相手に対してそれはあまりに無力だった。
かなり不利な状況に追い込まれてゆく4人。


だが、その時!





「カニ太郎!」





突然響き渡る声。



「カ、カニ太郎!?」

その場にいた全員が呆気にとられる。
見ると、ずわい号に駆け寄っていく人影があった。

「カニ太郎・・・やっぱりカニ太郎だわ。」

そこにいたのは、あの冥香というウエイトレスであった。
彼女はずわい号の顔らしき部分をいとおそそうに撫でている。

「あ、あの・・・冥香さん?」

恐る恐る皆本が声をかける。
すると、冥香は皆本のほうへ振り返り、深々と頭を下げた。

「あ、お騒がせしてすいません。
 こんな所でカニ太郎に会えるなんて思ってもみなかったものですから・・・」

ふざけているのかとも思ったが、あまりにも彼女の目が輝いていたので言わない事にした。

「あれは私がまだ子供のころ・・・」

回想が入るようなので、とりあえず全員で待ってみる事にする。

「そう、あれは私が子供のころ。
 飼っていたペットのズワイ蟹、『カニ太郎』と一緒に海に遊びに行った時の事です。
 浜辺で仲良く一緒に歩いていたら・・・突然の高波にカニ太郎がさらわれてしまったのです!」

「・・・そんなもんペットにしとったんかい。」

突っ込みを入れようとする葵の口を皆本が塞ぐ。
もちろん、冥香の話はそんなことおかまいなしに続いてゆく。

「それから何年も経って・・・もう会えないかと思っていたのに・・・
 無事だったのね、カニ太郎!」

そこにいた全員が突っ込みたかったが、あまりにも純粋な彼女の瞳にはばかられて何も言えなかった。
だが、そんな時サングラスの男が冥香に怒鳴りつける。

「ふ・・・ふざけるな!どこをどう見たらその『カニ太郎』とやらに見えるんだ!」

『ナイス突っ込み!』その瞬間、みんなの心は一つだった。
しかし、冥香も負けてはいない。

「いいえ、間違いありません。
 このつやつやとした甲羅はカニ太郎に違いないわ!」

一進一退の攻防。
いつのまにかチルドレン達も、心の中でサングラスの男を応援していた。

だが、次の瞬間、ふとサングラスの男が正気に返る。

「ハッ・・・、俺は何をしていたんだ。
 ええい、ずわい号よ!その女を叩き潰せ!」

《メイレイ・ジッコウシマス》

サングラスの男に従い、ずわい号はその巨大なハサミを高々と振り上げ、冥香めがけて振り下ろした。

「しまった!」

慌てて助けに入ろうとするチルドレン達。
しかし、さっきまで気が入っていなかったために、1歩出遅れてしまうのであった。




だが、その時奇跡は起こった。




《ジッコウプログラム・エラー・サイニュウリョク・シテクダサイ》

ぴたりと止まるハサミ。
愛の奇跡と言うのだろうか・・・
その瞬間、一時的に冥香のテレパスの超度が高まり、ずわい号のAIメモリーを消去してしまったのだ。

「カニ太郎・・・思い出してくれたのね・・・
 私よ、あなたの親友、冥香よ!」

決して彼女に他意はなかったのだが、抜群のタイミングでメモリーに言葉が刻まれる。

《ワタシ・ハ・カニタロウ・・・ミョウカ・ノ・シンユウ》

それに焦ったのはもちろんサングラスの男。

「な、何を言っている!そいつらを叩き潰せ!」

しかし、『カニ太郎』として生まれ変わった彼に、男の言葉は届かない。
すかさず冥香がカニ太郎に言う。




「カニ太郎、あの人たちからお店を守って!」




・・・瞬く間の出来事であった。
『カニ太郎』として生まれ変わったカニロボは、新たなる飼い主のために戦った。
サングラスの男たちは、自らが作り出した最強の兵器によって成す術も無く倒されてゆく。

「何だ・・・この展開は・・・」

目の前で起こっている現実を、ただ見つめるしかない皆本。
だが、それとは対照的にチルドレン達の目は怪しく輝いている。

「おお、面白そうだな!あたしもまぜろぉ〜!」

「これ以上被害を増やすなあぁ!」

その後、悪乗りした薫たちとカニ太郎によって店舗周辺が壊滅するまでに10分とかからなかった。



 翌日、バベル局長室にて報告書を提出する皆本の姿。
その横はにチルドレンの3人も立っている。

「・・・皆本クン、私はちょっと様子を見てきてくれと言っただけなんだがネ。」

必死で怒りを抑えている局長、そのオーラが皆本たちの肌に痛いほど突き刺さる。

「申し訳ありません・・・しかし・・・」

「言い訳無用!」

皆本の言葉を遮って局長の鉄拳がうなる!

「この子達は悪くない!全ては君の監督責任だ!」

チルドレン達を抱きしめながら号泣する局長。
半分はわかっていたことなので、皆本は静かに涙を流すのみであった。


「あ、それと局長、アレはどうしましょう・・・」

立ち直りの早い皆本と、スッっと立ち上がり真面目な顔をする局長。
メリハリがあるのもバベルの良い所だ。

「アレか・・・しかしね、皆本クン。
 『ザ・チルドレン』でも手を焼くようなものを、我々がどうにかできるかネ?」



 あの事件の後、ESPカフェは全壊してしまったものの、仲村の執念とカニ太郎のおかげで
あっというまに作業が進み、翌日には仮店舗での営業を再開していた。
そして、カニ太郎はご主人様の冥香とともに、店の看板として働いているのであった。

《イラッシャイ・マセ・イーエスピー・カフェヘ・ヨウコソ》

「さあ、どんどんお客を呼び込むのよ〜!
 2人とも、期待してるわよん。」

今日も仲村の趣味の悪いネクタイと、ウエイトレススタイルのカニ太郎が
道行く人々の視線を釘付けにするのであった。














あとがき

今回はちょっとグダグダになってしまったような気がします、
もっと文章力が欲しい・・・

薫たちの出番が少なく、「絶チルじゃなくてもいいじゃん」とか思われるかもしれませんが
そのあたりはご勘弁を・・・;

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