ザ・グレート・展開予測ショー

秋風が告げるメロディ


投稿者名:秘密秋桜
投稿日時:(05/11/ 3)


〜秋風が告げるメロディ〜





冬の到来が近づいてくる11月、今年もまた秋が過ぎ去ろうとしている。
俺は秋と言う季節が嫌いだ・・・前は嫌いじゃなかったんだが・・・
どうしてもこの季節は一人でいると考えてしまう・・・
もう彼女はいないのに・・・・
いい加減に吹っ切らなきゃいけないと思う・・・
いい加減に俺も変わらなきゃいけないと思う・・・
あれから2年も経つんだから・・・

俺も今年から事務所の正社員として働き出した。
給料もそれなりに上がった。





・・・・・・・・・と、思う。




2年という月日は長いようで早い。


おキヌちゃんも高3になり進学か就職か悩んでいる。
彼女自身は事務所で働くつもりだったのだろうが美神さんがせっかくだからといって進学することを勧めた。
今では学校から帰ってきては受験勉強に必死だ。

シロとタマモは社会勉強ということで今年から六道女学院の生徒として学校に通っている。
シロもタマモも結構楽しく学校生活を満喫しているようだ。

美神さんは決算報告書にミスがあったらしく手直しに奮戦中だ。
手伝おうとしたら「邪魔だから帰れ!」と一蹴された。


おかげで今日は仕事は午前中で終わり・・・っつうか何もしてない・・・


このまま帰っても暇なんで近くの公園でのんびりすることにした。
缶コーヒーを飲みながらタバコに火をつける。


高校卒業と同時に親父からタバコをもらった。
しかもそのことがお袋にバレてボコボコにされたらしいが・・・
一応、まだ未成年である・・・てか未成年にこんなもん渡すなよ・・・

プカ〜っとはいた煙は小さな輪をつくって空に消えていく・・・
消えていく煙を見ながらついつい考えてしまう。


彼女のことを・・・


ルシオラのことを・・・


気がつけば辺りは夕闇に包まれていて・・・
気がつけば俺の顔からは涙が流れていて・・・
気がつけば気持ちは声に出ていて・・・
気がつけばどうしようもない孤独感に包まれて・・・



「ルシオラ・・・・・・」




それからどれくらい泣いていただろうか・・・
気がつけばもう夜になっていた。




「帰るか・・・」


ベンチから立ち上がろうとするとそこには一人の少女が立っていた。



「焼き芋・・・一緒に食べませんか?」


彼女の胸には焼き芋の入った紙袋を抱えていた。
彼女は隣に腰掛けて焼き芋を半分にわって俺にくれた。


「どうして泣いてたんですか?」


彼女の質問が俺の胸にチクリと痛みを誘う・・・



「いや、ちょっと昔のことを考えてたらさ・・・」



彼女は知っている、”昔”のことを・・・



「ルシオラさんのことですね・・・」



彼女は空を見上げる・・・


「吹っ切らなきゃいけないとはわかってるんだ・・・でも一人になる度に考えてしまうんだ。こんな季節になると特にね・・・」


秋は夕焼けがとても美しくみえる季節でもある。だがそれが逆にルシオラのことを思い出させる・・・


「私は好きです、秋って・・・焼き芋もおいしいし・・・それに横島さんも・・・」


「え?」


俺は彼女が何を言ってるのかわからなかった。


「私じゃ駄目ですか?私じゃ支えになりませんか?私は横島さんの支えに・・・なりたい」


それは突然の告白だった。俺の心の中にルシオラがいるということを知っているのに・・・
風が吹きつけ回りの木々が揺れる・・・揺れる・・・



「・・・ありがとう・・・」


正直俺は彼女の気持ちを受け取るか迷った・・・
俺も彼女のことが好きだ・・・
こんなどうしようもない俺に好意を持ってくれてることはものすごく嬉しかった。
だけどもし俺が彼女の気持ちを受け取ったらルシオラはどう思うだろうか・・・
笑って祝福してくれるのだろうか?それとも怒るのだろうか?
彼女の気持ちを受け取ることで何かが変わってしまうのではないかと言うことが怖かった・・・



「俺は・・・弱い・・・どうしようもないくらいに・・・俺は変わることが・・怖いんだ・・・」


感情が声に出ていた。


「弱くたって、怖くたっていいじゃないですか、完璧な人間っていないんですよ。それに弱い所をお互いに補っていくのが人間じゃないですか・・・」


彼女は優しい・・・その優しさが今はとても辛い・・・


「一歩だけ・・・前に進んでみませんか? 何も怖くありませんから・・・横島さんがルシオラさんを思う気持ちがあるならできるはずです」


彼女は俺に手を差し伸べてくれる・・・
でも俺は彼女の手をとることに迷っている・・・
彼女は俺に告白するために一歩前に踏み出したのに・・・



”頑張れ!ヨコシマ!!”



頭の中に確かに聞こえた声・・・ルシオラの声・・・
それは俺を後押ししてるような声だった・・・
怒っているわけでなく逆に俺が変わることを望むように・・・


俺はまた逃げるのか?
俺はこのままでいいのか?
変わらなきゃいけない。
変わるべきは今だ。
変わるんだ。



俺が導き出した答えは・・・






俺は彼女の手をとり立ち上がる・・・




そして彼女を強く抱きしめる。
ただただ強く彼女を抱きしめる。



「ありがとう・・・ありがとう・・・」



また涙が俺の頬をつたう。



「私はどんなことがあっても横島さんを離したりしませんから・・・だから横島さんも私を離さないでくださいね」



それからしばらく俺は彼女を抱きしめていた・・・





「事務所まで送ってくよ・・・」
「はい、おねがいします。そしてこれからも・・・」


俺は彼女を送りながらもう一歩前に踏み出してみる



「告白されてなんだけど近いうちに今度は俺がクサイ台詞もってくるから・・・」



照れくさくてまともに言えない・・・これが今の俺じゃ限界かな(苦笑)



「はい!楽しみに待ってますからね!」



彼女はとても嬉しそうに微笑んでいる。






”頑張ったね、ヨコシマ・・・私の分まで彼女を大切にしてあげてね・・・”





ふと頭の中に聞こえた声・・・・



ありがとう・・・ルシオラ・・・


風と共に声が聞こえた。
風に吹かれて木の葉が舞う。
それは一つの音楽のように。


秋の風が告げるメロディ


俺はやっと秋が好きになれそうな気がした。





















〜後書き〜
どうもはじめまして秘密秋桜(ヒミツコスモス)です。初投稿で少しビクッてます。
読みにくいかもしれませんがお付き合い頂ければ幸いです。
彼女=おキヌちゃんです。
また精進して投稿しますのでよろしくお願いいたします。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa