ザ・グレート・展開予測ショー

男達は限界に挑む 「GS美神」


投稿者名:10番惑星
投稿日時:(05/11/ 3)

ソファに座って新聞を見ている美神令子。
ある記事に注目すると
「おキヌちゃん、スペイン秘宝展またやるそうよ。」

おキヌちゃんはしばらく考え込むと
「あ、あの炎の狐と青き稲妻の魔法の箒の時のですね。」

「そうよ。思い出すわねー、あの時は横島クンが秘宝展から逃げ出した炎の狐に乗って音速を突破したのよね。」

そうなのだ、現代ヨーロッパでは中世の人類最悪の愚行と呼ばれた魔女狩りのせいで、当時魔女達が使った道具や魔法、オカルト技術はそのほとんどが失われていた。
当然魔法の箒もその例外ではなく、そのほとんどが失われ現存する魔法の箒は青き稲妻と魂と意志を持つ炎の狐の2本のみであった。

あの日、展示されていた意志を持つ魔法の箒、炎の狐は秘宝展から逃げ出した。

逃げ出した後、なぜか横島を無理矢理またがさせ人類初の生身(学生服)で音速突破という快挙を成し遂げさせるのであった。

しかし、この快挙は正式な記録に残らず、ギネスブックにも載らず、一部(美神とおキヌちゃん)の人間を除いて誰にも知られる事なくあっさりと闇に葬り去られたのである。

美神が当時のことを思い出しながら
「でも、炎の狐はあの時音速を突破したショックで折れちゃったのよね。修理出来たかどうか知らないけどさ。」

おキヌちゃんが心配した顔で美神に聞く。
「また魔法の箒が秘宝展から逃げ出すなんて事は・・・ 」

「残る青き稲妻は意志を持ってないんだから、炎の狐みたいに逃げ出すということはないでしょうね。まあ大丈夫でしょ。」

「そうなんですか?よかったあ。あの時横島さんは音速突破と墜落の時に大怪我して一ヶ月入院したんですもんね。」
ほっとするおキヌちゃん。

その時、美神とおキヌちゃんの目に見慣れた人影が箒にまたがって飛んでいくのが窓の外に見えた。

「え?」
「あ!」

「「ま、まさか!」」

美神とおキヌちゃんは顔を見合わせた。
いやな予感がする二人だった。

そして、いやな予感は的中するものである。

空を見上げると箒に跨り空を飛ぶ横島の姿があった。

「また夢かー!俺は夢を見てるんだー!!」
そして前回と同じように現実逃避に走る横島だった。

『落ち着け!!これは夢ではない。我が乗り手(パイロット)よ。』
横島の頭の中で声が聞こえた。

「え?今のは誰だ?」
きょろきょろあたりを見渡す横島。しかし周りには誰もいない。
「あれ?気のせいかな・・・ 」

『気のせいではない。今君が跨っている箒が私だ。』

「へっ?うそだろ!箒がしゃべった!?」

『喋っているのではない。直接君の心に語りかけているのだ。』

「へっ?お前そんな事が出来るのか?」

『現にこうして語りかけてるではないか?』

「た、確かに・・・ 」

『私の名は青き稲妻、この世にたった1本残った魔法の箒だ。』

「お前、青き稲妻か?炎の狐じゃないのか?」

『我が強敵(友)炎の狐は折れてしまった。もはや現代のオカルト技術では修理不可能だろう。』

「そう、か・・・ 気の毒にな・・・ 」

『我が乗り手(パイロット)よ、君が気にやむ事はない。炎の狐は本望だったのだ。どの魔法の箒にも出来なかった事を成し遂げたのだから。』

「出来なかったこと?」

『そうだ、すべての魔法の箒の夢だった音より速く飛ぶことが出来たのだから。』

ここで青き稲妻は興奮し始めるのだった。
『そうだ。私はあの時、炎の狐が音速を超える瞬間を目撃したのだ。そして私の中に何かが芽生えた。そうこれが魂と呼ぶものなのだろう。』

『そして私は炎の狐が羨ましいと思ったのだ。』

ここで何かとてつもなくいやな予感がする横島だった。
「まさか、お前・・・」

『そうだ!そのまさかだ!私も魔法の箒の端くれだ!強敵が音速を突破した以上、私も音速を突破したい。いやいや、それだけでは不十分だ!私は炎の狐の出した速度をも超えたいのだ。』

「お、おい・・・ 」

『そしてその為には君の協力が必要なのだ!お願いだ協力してくれ!!いや、例え嫌だとといっても協力してもらうぞ!!・・・ ふーっふーっふーっ・・・』

[やばいぞ!こいつ完全に逝ってやがる。何か悪いものでも食ったんじゃねえのか?]
後頭部にでっかい汗を浮かべる横島。

「この馬鹿やろー!俺を巻き添えにするな!大体なんで俺がお前に付き合わなきゃいけないんだ。俺じゃなくても乗り手とやらは沢山いるだろう!例えば美神さんだっているだろうが!」

青き稲妻は多少冷静さを取り戻したのだろう。横島の疑問に答える。
『残念ながら君以外の人間や彼女が乗り手では音速を突破することは到底不可能なのだ。』

「なぜだ!?」

『それはな、君以外では音速を突破する前に乗り手が死んでしまうからだ!わかったか?わかったら行くぞー!!』

「なんだとー?まてこらー!!!とまれーぇぇぇ!!!」

『しっかりつかまってろよー!』

青き稲妻が急加速する。横島の絶叫がドップラー効果とともに遠ざかる。

青き稲妻と横島はあっという間に視界から消えた。

そして・・・

『おおお!マッハ0.5、0.6、0.7・・・ 』

どんどん速度は上がっていく。あまりの風圧に青き稲妻にしがみつく横島。
「くそーっ凄い風圧だ!わかったよ!俺も覚悟を決めたぜコンチクショー!!」
「いいか、やるからには新記録を目指すぞ!根性入れろよ青き稲妻!!俺ならマッハ10だって大丈夫だ!!なにしろ生身で大気圏を突破したって死ななかったんだからな!!」

『それは頼もしいな!それでは遠慮なく行くぞ!マッハ0.8、0.9・・・』

そして遂に青き稲妻は音速の壁を超えた。

ドォーン

響き渡る轟音。音速を突破した証ソニックブームだ。

「やったぜ!青き稲妻ぁ!音速を超えたぞ!」

『いや、まだだ!ここからが勝負だ!!』
『マッハ1.0、1.05,1.07・・・』

音速を超え、なおも速度は上がっていく。
そして
『マッハ1.1!』

ここで急に青き稲妻の速度が落ちた!

「おい、どうした青き稲妻!」

『すまん・・・限界のようだ。ありがとう乗り手よ・・・ いや、親友(友)よ感謝する。』

「お、おい!しっかりしろ!青き稲妻!!おい!」

ついに錐もみ状態で落ちていく青き稲妻と横島。

そして地上に激突するかに思われた寸前、最後の力を振り絞り青き稲妻は態勢を立て直し無事着地するのだった。

そして横島を無事地上に降ろすと力尽きたのだろう青い稲妻は折れてしまった。
「お、おい青き稲妻・・・」

折れた青き稲妻を胸に抱く横島。
「青き稲妻よ、俺はお前に箒魂を見た!お前が音速を超え、炎の狐をも超えた事実はこの男横島の記憶に刻み込んでいく。だから安らかに眠ってくれ。」

この日、横島は自ら保持する人外記録の一つを更新することに成功した。
だが、正式にはその記録は残っていない。

その頃、美神の元に日本大使館から逃亡した青き稲妻の捕獲依頼の連絡が入ったのだが、全ては後の祭りだった。

「へーっ、アンタまた箒に乗って生身で音速を突破したんだ!」

「そうっす、今度はマッハ1.1を記録しました。死ぬかと思いましたよ。もう箒に乗るのはこりごりっすよ。」

「まったく呆れるわね。アンタだから出来る人外の記録よね。絶対誰が聞いても信じてもらえないわよ。」

「美神オーナー、お客様です。」
人工幽霊が来客を美神に告げる。

「誰かしら?おキヌちゃんお願い。」
「はい。」

おキヌちゃんがドアを開けると魔鈴めぐみがいた。

「あら、魔鈴さん、いらっしゃい。どうしたんですか?」

「こんにちは、おキヌさん。実はスペイン政府からこの子の修理を頼まれまして修理したんですが、この子がどうしても此処に用があるときかなくて連れて来たんです。」

魔鈴めぐみの傍には1本の箒があった。

「「「炎の狐!!」」」

この後、横島が炎の狐に連れさらわれたのは言うまでもない。

男(箒)達は最速を目指す。
己の限界を超えるために、ライバルに打ち勝つために。
例え愚かと言われても、例え命と引き換えになろうとも。
そしてそのためには他人を巻き込むのも正当化されるのだ!

「だから頼むから俺を巻き込むなーーーー!!!!」



終わり

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