ザ・グレート・展開予測ショー

灰色の街  〜The second judgment.〜 第4話


投稿者名:おやぢ
投稿日時:(05/10/31)

横島が寝ている間に、血のついた服はクリーニングされていた。
部屋の中に横島の装備は保管されてあり、それを身につけるとGジャンを羽織った。

「てかさ・・・お前、人が着替えている間くらい外に出とけよな。」

着替え終わると横島は、ベットで寝転がっているタマモを見下ろしてそういった。

「今更、見せられて困るものじゃないでしょ・・・」

とてもじゃないが、女子高生のセリフではない。

「どーでもいいけどさ・・・なんでさっきアタシの名前叫んだの?」

ベットの上をゴロゴロと転がりうつ伏せになると、タマモは上目遣いで横島を見ると妖艶に微笑んだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・聞きたいか?」

焦る様子もなく、横島はそう答えた。

「聞かせてよ。」

タマモがそういうと、横島は曲がったタバコを咥えた。
タマモはベットから身を起こすと、狐火を使い横島のタバコに火をつける。

「夢を見たんだ・・・」

「どんな夢?」

「お前が中華鍋で炒められてた・・・・・・・・・・こんがりキツネ色。」

狐火の火力が増すと、タバコはフィルターまで燃え尽き横島の顔面を黒く焦がした。





アフロと顔面の焦げ付きがなくなると、横島とタマモは部屋を出た。
部屋の外には、白麗が待っていた。
横島は照れ臭そうに頭を掻きながら、右手を差し出した。

「ども、みっともないとこ見せちゃって。お久しぶりっス。」

白麗はにっこりと笑うと、横島の右手を握った。

「助けてもらってなんですが、俺なんでここにいるんスか?」

辺りを見渡しながら、横島はそういった。

「どうぞ、こちらへ。」

横島の手を放すと、白麗は横島を案内していく。

「横島さんを追っていたのは、地回りのマフィアだけではありません。」

歩きながら白麗はゆっくりとした口調で答えだした。

「今日になって香港警察も動き出しました。」

「ヤバいんじゃないスか、大女優がお尋ね者を匿ったりしちゃ。」

横島は足を止めた。

「横島さんたち日本の方には、あの映画で大変お世話になりました。私はあの映画のおかげで成功したと
言っても過言ではありません。華僑はご恩は忘れません・・・」

香港映画界、いや芸能界は多かれ少なかれ裏との取引きがある。
良かれ悪かれ、昔から興行には付き物だ。
おいそれとは切り離せない代物である。

「もっともそれだけではないのですけどね・・・・」

白麗は消え入るような声で呟いた。
横島には聞こえなかったようであるが、しっかりとタマモは聞いていたらしい。
僅かに、眉間に皺が寄った。

「地回りに手が回っているんじゃヤバいんじゃないですか、華僑としては。」

「横島さんに賞金をかけているのは、大陸系です。私たちは台湾系ですから。」

白麗は振り返ると、にっこりと微笑んだ。
その顔は、役者の演技のものではないことは鈍感な横島にも判ったようだ。
照れ臭そうにそっぽを向く。

(みんなに報告してやる・・・)

密かにタマモがそう思ったのは、内緒である。


白麗は横島とタマモをとある部屋に案内した。
部屋の前に来ると、横島の腹が鳴った。
美味そうな匂いが漂ってきて、釣られて鳴ったようである。
白麗は少しだけ微笑むと、ドアを開けた。

「どうぞ。」

促されるように部屋に入る。

「よぉ、久しぶり。」

空の食器に囲まれるようにして、雪之丞が右手を上げた。
その手には北京ダックが握られていた。

「貴様ーーーーーーーーーーーーーっ!!!俺のメシをーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

涙と鼻水と涎を撒き散らしながら、横島は雪之丞に掴みかかった。

「大丈夫ですよ、すぐに用意させますから。」

白麗は呆れた様子も見せないで、横島を静めた。



《調理中》




《喰らい中》




《醜い争い中》




《食欲が満たされたら、今度は性欲発生中》




《墜落中》





《火葬中》





《復元中》

10秒経過・・・・

《復元終了》




「はぁ〜〜〜食った〜〜〜〜♪」

ようやくまともな食事にありつけた横島は、ベルトを緩め爪楊枝を咥えた。

「腹が満たされたら性欲って・・・獣か、お前は。」

同じく雪之丞も、ベルトを緩めた。
二人が餓鬼のようにかっ喰らっている間、タマモはその様子をオレンジジュースでも飲みながら見ていた。

「ねぇ横島、仕事はどうなるの?」

両肘をテーブルについてストローを咥えたまま、タマモがそういった。
横島はタマモの声を聞くと、タバコを咥えた。
雪之丞は、黙って火を差し出す。
大きく紫煙を吐き出し、横島は横目で雪之丞の方を見た。

「聞こうか・・・」

横島は短くそう呟いた。

「仕事でヘマした・・・それだけさ。」

雪之丞は苦笑した。

「そうですか・・・っていうワケにもいかなくてな。この件はすでに隊長から回って来てるし、うちの女王様にも
金入る予定だしなぁ。」

横島はそういってチラリとタマモを見た。
タマモは溜息をつくと、白麗の側に行き席を外すように促した。
タマモに付き添われる形で、白麗が部屋を出て行く。
二人が出て行ったのを確認すると、横島は再び口を開いた。

「この前渡した文珠・・・あれも咬んでるのか?」

横島がそういうと、雪之丞は舌打ちした。

「オメーって奴は、妙に勘が良すぎて嫌になるぜ・・・ったくよ。」

雪之丞がそういうと、横島は天井に向けてわざとらしく紫煙を吐き出した。

「仕事を誤魔化したのがバレた・・・・まぁそれは言い訳みてぇだけどよ。秘密を知ってる俺を消そうとしてんだろ。」

「事はお前が思っているほど、単純じゃないみたいだぜ。」

横島がそういうと、雪之丞は隣に目を移した。

「まぁそうだろうな。」

呆れたように笑うと、タバコを咥えた。
今度は横島が火を差し出した。

「ここに来るまでに、日本でもお前は手配されてなかった。ところが俺は着いたその日に国際手配だ。
さてさて・・・・どうしたもんかねぇ〜」

横島は灰皿にタバコを押し付けると、両手を頭に組んで溜息をついた。

「まぁ、その辺はゆっくり考えるとしてだ・・・なんで、お前が白麗さんの家にいるんだ?」

いきなり横島の目が、殺気を帯びた。
雪之丞は豚の蚊取り線香入れのように煙をだすと、目線を泳がせた。

「いやぁ〜香港に逃げて来たのはいいんだけど、言葉通じねぇし、行き倒れるし、こっちの知り合いっていったら
白麗さんくらいしか知らねぇからよ、映画会社に駆け込んだら丁度白麗さんいてよ旦那とオメーの名前出したら
泊めてくれてたんだよ。いやぁ〜〜〜〜〜助かったわ♪」

「そんで・・・その背中のものはなんだ?」

横島は、オリジナルが目の前にいるのも構わず三白眼で睨んだ。

「いや・・・これはその・・・前回サインもらえなかったんで・・・・」

雪之丞のカッターシャツには、しっかりと『to Yukinojyo』と記された白麗のサインが書いてあった。

「お前、人が必死こいてる時に何やっとんのじゃーーーっ!!」

雪之丞の胸倉を掴んでガクガクと揺らしまくる。
息を大きく乱すと、胸倉から手を離した。

「はぁはぁはぁ・・・まぁいい・・・・・・ところで、どうやって俺とタマモを救い出した?」

「あぁあれか。トラックな・・・あれ俺だ。」












間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・














「殺す気かぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

叫びながらバカでかい霊波刀を振りかざすと、雪之丞は魔装術になり白刃取りを敢行した。

「いや〜あぁでもしねーとお前止まんねぇし、ヘタに近づくとこっちが殺られそうだったしな♪」

井桁を浮かべながらも、横島は霊波刀を消した。

「チッ・・・まぁいい。香港の大女優にケガの治療してもらうなんて滅多にできない経験させてもらったしな。」

横島はそう言いながらタバコを咥えた。

「あぁあれな。白麗さんに汚いモノ見せるワケいかねーから、俺と嬢ちゃんでやった♪」

魔装術を解かないまま、にこやかに雪之丞が言った。
横島の口から、タバコがポトリと音を立てた落ちていく。

「そんなこったろうと思ったよ!!どちきしょーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

横島は血涙を流しながら、香港へ来て最大の悲しみを爆発させていた。
横島の魂の叫びが響いて、そう時間が経たないうちにタマモと白麗が部屋に戻ってきた。
横島は部屋の隅で小さくなって、『の』の字を書いて煤けている。

「よ、横島さん?」

「いつもの事よ。優しくすると襲われるから、気をつけてね。」

横島を完全にケダモノ扱いするように、タマモが言った。

「どうせ俺は、煩悩だらけのケダモノさ・・・誰にも相手されずに6畳一間のボロアパートで孤独に白骨化して
自縛霊と化す運命なのさ・・・・」

何やら呪詛のようにブツブツと呟いていた・・・・




5分もしないうちに横島は復活した。
イジけているヒマはないという事に、ようやく気が付いたようである。

「空路は使えねぇな・・・」

「幻術で顔を変えても、税関でひっかかる可能性高いからなぁ。」

短時間では書類が間に合わないと判断したのだ。
それに、出国はともかく日本にも手が回ってないとは限らない。

「【転・移】は使えないの?」

「3人一度に、この距離は無理だ。」

「密入国しかねぇな・・・・」

地図をテーブルの上に広げて、3人は顔をつき合わせている。

「上海に渡って、船か?」

「神戸か、横浜か・・・それもヤバイな。」

「華僑の者に渡りをつけます、一度台湾へ向かってください。それから西表・・・沖縄本島へ行けます。
時間は数日かかりますが、一番安全のはずです。」

白麗が台湾島を指差した。

「嬉しい話っスけど、それだと迷惑がかかります・・・ヘタすると白麗さんにも危険が・・・」

地図から顔を上げ、白麗の方を横島は向いた。

「横島さん。」

「はい。」

「お礼は貰います。今度映画のプロモーションで東京に行くんです。時間とりますから、東京を案内してくださいね。」

「へ?そんなんでいいんスか?」

「はい。」

地図から顔を上げると、白麗はにっこりと微笑んだ。
より一層三白眼になる雪之丞、負けじと三白眼になるタマモであった。






白麗は港まで送ると言ったが、横島はその申し出は断った。
船の手配だけで十分だと。
白麗の屋敷から港まで直行する・・・それだと完全に白麗は大陸系華僑を敵に回す事になる。
少しでもその疑いがかからないようにと判断したのだ。
手配のかかってない雪之丞だけを送ってもらい、文珠を渡した。

「じゃあ、予定通り港でな。」

「おう・・・しくじるなよ。」

横島と雪之丞は拳を合わせた。
タマモは狐形態になり、横島のGジャンの中に待機している。

「お世話になりました。東京で会いましょう。」

横島は右手を差し出した。
白麗は両手で横島の手を握った。

「はい・・・必ず。」

俯いたまま名残惜しそうに、その手を離した。
横島は、振り向きもせずに走り出した。
横島の背中は夕闇の中にすぐに溶け込んでいく、白麗は消えてしまった横島の背中をずっと追い続けていた。





街に入ると、走るのを止めタバコをふかした。
路地には入らず、繁華街を歩く。
堅気とは思えない奴らが、数人色めいた。
思わず口元が緩む。
通り過ぎたパトカーが、ブレーキを踏むとバックライトが点いた。
タバコを吐き捨て、走り出す。
パトライトが点滅し、サイレンが鳴り響いた。
追いかけっこの合図であった。

路地を走り抜けパトカーの追尾を振り切ると、今度は筋者の登場である。
銃は抜かない。
間違って殺してしまって、本当に手配されては元も子もないのだ。
青龍刀や包丁を振りかざしてくる。
霊波刀さえ出さずに、体術だけで相手をする。
正確には、相手にするというより交しながらたまに当身を入れる程度だ。
まともに相手をしていては、囲まれてしまう。
それでも地の利は、相手にある。
警察さえ知らない道を、相手は知っているのだ。
次第に包囲網は、狭められ追い込まれていく。
十字路で四方を囲まれた。

「さてと・・・出番だぜ。」

横島がそういうと、タマモがGジャンの中から顔を覗かせた。
空を見上げ、“コーーーーン”と一鳴きする。
周りを取り囲んでいた男たちが、急に叫びだし慌てふためいた。

「さてさてタマモさん、今日のメニューは?」

「溶けていく自分の身体、カレーライス風味よ。」

どんな幻術だ・・・と思いつつも、決して見たくはない!と横島は思った。
その場でのた打ち回る男たちを避けながら、横島は十字路を右へと曲がる。
ビルの間から、僅かに垣間見える空を見上げた。
ネオンに邪魔されているが、すでに夜の帳が下りてきている。
時計に目をやると、7時を回っていた。

「まだまだ稼がないといけねーな。」

ビルの壁をスルスルと昇りだす。
これも覗きで鍛えたスキルのおかげである。

「あんた、GS辞めても泥棒で食っていけるわね・・・」

決して誉められる仕事ではない・・・横島は苦笑した。
ビルの屋上に昇り、隣のビルへと移った。
それを数度繰り返すと、表通りが見える。
ビルの上から大通りを望むと、数台のパトカーがパトランプを点灯させ通過していく。
通りの向かい側に1台のパトカーが停まった。
無線で連絡を取り合っている。
無線を切り、コンビの警官が話し合っている。

「蛇足は、賞金米ドルで5万ドルだそうだぜ・・・殺っちまって蛇足に出した方が割りいいな。
そうだな、俺らもバイトでもするか・・・・」

タマモがぶつぶつと呟いた。

「どこもかしこも公務員って奴は、仕方ねぇなぁ〜」

横島は呆れたように溜息をついた。

「潰すの?」

「そんなめんどうな事しねーよ。」

タマモの頭を撫でると、タマモは細い目をいっそう細めた。
タマモから手を離すと、その手を向かい側のビルへ向ける。

「伸びろ♪」

霊波刀が伸び、向かい側のビルの看板を支えている支柱を切り裂いた。

「上!上ーーーーっ!!」」

横島が叫ぶと、警官達は咄嗟に上を見た。
看板がぐらぐらと揺れ、こちらに向かい傾いている。
警官達は慌てふためき、その場を離れた。
離れると同時に、パトカーに看板は直撃し辺りには破片が飛び散る。

「関心して損したわ・・・」

タマモはぽつりと呟いて、Gジャンの中に入り込んだ。



路地を走り回る横島。

「こっちで、5万ドルの効果はデカいな。日本じゃ俺みたいなのしか動かねーんだけどなぁ・・・
さすが物価が安いわ。」

変な関心をしながら、路地を縦横無尽に走り回る。
壁を何かが削った。
タマモの耳が何かを追う。

「銃撃よ、サイレンサー付きみたいね。」

「どさくさに紛れようってか?」

横島は左右を見渡し、現在の状況を確認した。

「同種の足音・・・3つ・・・迫って来るわ。しばらく彷徨ってもらうわね♪」

顔を覗かせ、一鳴きする。
横島は走るのを止め、元来た道を引き返した。
サラリーマン風の男が、その場でくるくると回っている。

「なにやってんだ?」

「迷路を回ってもらってんのよ。」

横島は男の人相を確認した。

「日本人のようだな・・・ったく海外出張かよ、国民の税金無駄にすんなよな。」

だからといって、雇用者の脱税が認められるはずはない。
横島は時計に目を向けた。

「そろそろ時間だな。」

路地をゆっくりと歩きながら、表通りへと足を向ける。
表通りは、そう遠くはなかった。
タバコを咥え、一服する。
光の洪水を目指し、ゆっくりとした足取りである。
路地と違い、表通りには光が溢れていた。
横島は眩しそうに眉を潜め、ポケットに両手を入れた。
光の洪水に目が慣れだすと、再び歩き出す。

「お土産買ってなかったな・・・怒られるかな?」

足を止め、露店の方を向いた。
タマモが顔を覗かせ、並んだ商品を眺めている。
タイヤの軋む音が響き、横島の背中を赤く染めている。
サイレンの音が煩わしい。

「動くなっ!!!!そのまま両手を上げろ!!!」

横島はゆっくりとポケットから両手を出し、そのまま上に上げた。

「そのまま振り向け、ゆっくりとだ!」

拡声器から声が響く。
露店の主人は震えながら、その場に蹲っている。
横島は主人に向かい、微笑んでみせた。
それからゆっくりと振り向く。
パトカーのライトとパトランプが横島を照らした。
かなりの台数に取り囲まれているが、横島はニヤリと笑った。
一瞬である。
光の洪水を、紅蓮の炎が飲み込んだ。

「げ〜っぷ。」

この姿のままでは、キツかったのであろう。
狐形態のまま、狐火を出したタマモは舌をだして黒い煙を吐きだした。
警官を怯ませるには十分な狐火の量であった。

「さて時間だな。」

両手を上げている横島の右手が光だした。




【移】





文珠が光り、警官隊の目の前で横島は姿を消した。















港から離れる貨物船、その甲板に雪之丞の姿があった。
雪之丞の右手が、暗闇の中に光っている。
辺りが淡い光に包まれ、横島が姿を現した。
雪之丞の右手の【転】の文珠が消えていく。

「よぉ。」

横島はそういうと、短くなったタバコを海へ投げ捨てた。
ホタル火のようなタバコは、弧を描き闇に消えていく。
夜の海の闇とは対照的に香港の夜景は、いつもと変わらずに輝いていた。






to be next GS 改め see you GHOST SWEEPER




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後書きもしくは反省文♪

いや・・・何を勘違いしていたのか、to be next ってなんだ??
我ながら妙な文を書いていました・・・訂正できないのがとてつもなく恥かしいです・・・ハイ
3話の〆記憶から削除してください・・・・・・・・

現在6話にかかっていますが、ハードボイルドならぬマニア物になっているような気が・・・(汗
頭○字Dか湾岸ミッドナ○トか?になってしまい・・・訂正に追われてます。
車のチューニング内容書きすぎやっちゅーの!!

人生を訂正したい“おやぢ”でした。

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