ザ・グレート・展開予測ショー

カプセルの中の母(後)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 6/21)

「冗談じゃねー!おふくろを死なせてたまるかっ!!」
横島の二号機は一直線にカプセルに向かったが、高速すぎた。一瞬にしてパスしてしまった。
「くそっ!」
横島はあわてて機を減速させつつ、旋回をかけた。
雪之丞の距離からは、その時になって初めて二号機の航跡が見えた。MK-U、二号機のテール・ノズルと姿勢制御のバーニアが、無節操にきらめいたからだ。
「MSか?」
雪之丞は、モニターのカーソルを合わせて拡大する。
「MK-U!?」
小竜姫のものか?ならばカプセルを狙撃する必要がない筈だ。
雪之丞は、さらに映像を拡大した。
MK-Uはゆらゆらと揺れていた。カプセル近くに停止するかに見えた。
雪之丞は、ザックのバルカンを構えさせつつもその機体のナンバーを確認しようとした。
しかし、映像が揺れている。ビデオに切りかえて、スチルを一枚撮影した。
それをさらに拡大コピーにかけて、モニターに固定するのだ。
手間がかかった。
「めんどくせーなー・・・」
雪之丞は固定映像のモニターを見て敵と判断した。
「二号機なら小竜姫じゃない・・・」
これはICPOの連中がカプセルを奪還するためにMK-Uを使っていると見るほうが正しい。
「よくやるよ・・・」
雪之丞はカプセルがなんであるのか微かに気にはなったが、MK-Uがカプセルと一体になったように見えたので、あわてて照準を固定しようとした。


横島は、二号機のモニターでカプセルの中にいる母の姿を捉えていた。
「おふくろ、今助けるからなっ!」
カプセルの中の百合子は、毅然とした態度で立っていた。
「油断したわ・・・睡眠薬嗅がされるなんて・・・・私の反応速度もだいぶ落ちてきたわね。それにしても、忠夫がICPOに参加してるなんて・・・。フフ、これも運命なのかも知れないわね。」
百合子は苦笑すると、さっきからカプセルの周りをうろうろしている一機のMSに目を向けた。
「何なのかしら、あのMS・・・。!!・・・・もしかして忠夫が乗ってるの!?」
百合子は、なにか思い立ったかのようにとその場に座り込むと、目を瞑むって精神を集中し始めた。
「(ピキーン!)な・・・なんだ?誰かの意志が俺の頭に入り込んでくる・・・。」
突然の事にコックピット内の横島はパニックに陥った。
(忠夫、私よ。母さんよ。)
(なっ・・・おふくろ?どうなってんだ一体・・・)
(いいから黙って聞きなさいっ!時間がないわ。忠夫、あんたももう知ってると思うけど私達はニュータイプなの。だからこうやって意志を通じ合わせる事もできる。まあ、ある程度距離が近くないと無理だけど。)
(すげえな・・・ニュータイプってそんな力があんのか・・・)
(それに反応速度も常人の比じゃないわ。あんたも見たでしょ、母さんが軽々MSを操ってるところ)
(そういやそんなこともあったな・・・)
(カオス教はね、今そのニュータイプを人工的に造りだそうとしてるの。強化人間ってヤツよ。それほど、ニュータイプの力ってすさまじいのよ。だからね忠夫、絶対に投降しては駄目よ。MK-Uとあんたの力はICPOにとって今必要不可欠なハズだから。)
(それじゃおふくろが・・・・)
(・・・フフ、母さん十分とは言えないけど結構生きてきたわ。忠夫も大きくなってくれたし・・・。それに・・・見えちゃったのよ・・・私に迫ってくる死が・・・。これもニュータイプの力だとしたらこれほど最悪な人種はないわね。)
(そんなこと言うなよっ!今助けるから・・・)
(強く生きなさい・・・忠夫・・・・・)
カプセルの中で母、百合子は目を瞑ったまま横島に笑いかけた。
「この・・・!!」
横島は必死で二号機の手を使ってカプセルの下部をつかもうとした。
ギャアーン!!
機体が揺れた。
モニターに曳光弾の航跡が走り、横島の目を射た。
「えっ!?」
その横島の網膜に、カプセルが砕かれて母の姿が小さくなってゆくのが見えてしまった。
焼きついてしまったのだ。
「おふくろっ!?」
その母の姿は、一瞬、嬰児のように写った。そして、すぐに他の金属やプラスチックの破片と共に消えていった。
「おふくろーーーーーーーーっ!!!・・・う、うああああーーーーーーーっ!!!」
横島は絶叫すると、ライフルを取り出し、今見た光景を忘れようと四方八方に乱射しまくった。
「な、なんだ!?」
カプセルを破壊した雪之丞は事態をよくつかめないまま向かってくる光の矢を必死でかわしていた。
「・・・・・・・」
西条は、その光景を目撃しながらも、敵のやりように激怒することはなかった。
そんな感傷は戦闘行為のすべてが終わってからすればいいことだからだ。
西条は後退して、再度アーギャマのブリッジに接触した。
「MK-Uで小竜姫を出してください」
「小竜姫を?カオス教のか?」
「他にはいません」
西条は苦笑を浮かべて言った。
自嘲でもなければ、准将が無能だと思ったからでもない。
西条は小竜姫がなんとなく気に入っていたのだ。
が、その感触も俗な意味でいうのとは少し違っていた。
ニュータイプのように、と言いたいところだが、それとも違う。だから、そんな感覚を他人に説明のしようがないという苛立ちを隠すための笑いだ。
「そうすることで、戦局を変えることができます。
「・・・・・よし・・・・・」
「小竜姫に横島君を回収させて、敵と接触させて下さい。一時戦況を冷やし、なによりも脱出の時間をかせぎ出せます。それに、人質の生命をそまつに扱う将軍の下では将兵は働いてはくれませんから、ここは・・・・」
「・・・・・しゃべりすぎだぞ!大尉!」
「すみません・・・・・。」

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