ザ・グレート・展開予測ショー

深海のまなざし  (絶チル 瞳の中の悪魔(3) より)


投稿者名:コピーキャット
投稿日時:(05/10/29)


漁船と衝突して沈没したタンカー内部に取り残された乗員を、潜水艇で救出する任務に当たったザ・チルドレンと現場主任である皆本光一。
しかし、実際にはタンカー内部に密航者がいたために、全員潜水艇に乗せることができず、代わりに皆本と薫がタンカー内部に転送され、潜水艇が母船に乗員をおろし、戻ってくるまで待っているのであった。






暗い船内には皆本と薫の二人だけである。
深海の水圧に耐えるように、薫は最大出力でエネルギーを放出している。
それでも水音が響き、肌寒さを感じさせる。

現在の皆本にとって、薫は年頃の女性に見えるように催眠術をかけられている。
しかし、彼は常に薫の本質的な部分を見ていた。

外見がどうであろうと、どんな超常的な能力を持とうと、彼女はただの十歳の女の子にすぎないのだ。

……自分が守ってやらねば。

皆本は彼女が常に強がっていることを知っている。
他愛のない非科学的なホラー映画に怖がるような弱さも、よく知っているのだ。

こんな深海の暗く、冷たい環境での薫の心理的負担は想像を絶するものがあることは、彼の優秀なる頭脳を持ってすれば容易に推察されることであった。






「皆本……寒くて我慢できないよ。あっためて」
「どうしたんだ?」
「体が……冷たくて……」
「そういうことは早く言うんだ。君はまだ十歳の子供なんだから。もっと大人に甘えてもいいんだよ」

皆本は薫を優しく抱き寄せる。
意外と厚みのある胸板に薫の頭を乗せる。

「こうすれば、少しは暖まるだろ」
「うん……皆本、暖かい……」
皆本の心臓の鼓動が直に薫の心に伝わってくる。胎内にも似た安心感が薫を包み込む。

「……皆本」
「どうした?」
「キス……すればもっと暖まると思う……」
「そういうのは恋人同士でやるもんだ。だけど、これは緊急事態だ。だから……」
「だから……?」
「チルドレンを守る任務を持つ僕はそれをする義務がある」
「……極秘任務だね」
「ああ、二人だけの秘密だ」

薫はそっと眼を閉じる。
二人の唇がそっと接近する……








「絶望したっ!!こんな萌えない皆本に絶望したっ!!」

二人がその声に反応して離れる。
船内の陰から現れたのは兵部京介。
永遠の学ラン少年である。

「君はやはりチルドレンに手を出したではないかっ!
君は本来そう言うキャラではないはずだっ!
ハリウッド映画に登場するようなハードボイルド・ナイスガイみたいに、美女を平然と抱きかかえて、甘いセリフを口にする。
そんな皆本君を僕は絶対認めないぞっ!」



京介は拳を握りしめ、肩をふるわせながら思いっきり力説する。
額の血管は完全に浮き彫りになり、眼には血涙まで流している。



「君はもっと萌えキャラであるべきだ。
薫に迫られて、

『ひっ……人を呼ぶぞ、それ以上近づいたら舌をかむっっ!!』とパニックに陥る、いぢめたくなるような、誕生日のプレゼントのおもちゃのようなキャラであるべきなんだぁぁぁぁっ!!」

ぜぇぜぇ……

一気にまくし立て、息切れしている京介。





皆本は薫に黙ってうなずく。
薫はそのまま最大出力のエネルギーを京介にぶつける。

船体の壁にのめり込む京介。




この事件の後、兵部京介の消息は誰も聞かなかったという。
彼は今も深海の船室の壁にのめり込んでいるかもしれない。




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