ザ・グレート・展開予測ショー

囚われた皆本 (絶対可憐チルドレン)


投稿者名:黒土
投稿日時:(05/10/29)

 薄暗い部屋の中、皆本光一は目を覚ました。
なかなか意識がはっきりしない、目覚めとしてはかなりひどいほうだ。


(僕は・・・いったい・・・)


だんだんと目が覚めてゆく、と、同時に後頭部にズキズキと痛みが走る。
どうやら頭を強く殴られたために気を失っていたようだ。
後頭部をさすりながら、皆本は自分の置かれている状況を整理する。


(どこなんだ、ここは?)


辺りを見回す皆本。
見覚えのない場所、そこは薄暗く、家具もろくに置かれていない小さな部屋のようであった。

皆本はゆっくりと立ち上がり、部屋の中を調べ始める。

壁紙もなく、コンクリートがむき出しになっている壁。
家具らしきものは質素なベッドと机がひとつ。
窓はなく、出入り口であろう扉は鋼鉄製の無骨なもの。


(ここは・・・独房か!?)


ようやく今ある状況が飲み込めた皆本。
彼がいるその場所は、まさしく独房に他ならない。


(くそっ、何故こんなことに・・・)


必死で記憶を整理する。


(今日はめずらしく薫たち3人が部屋に来なかった、そのため久々にゆっくりと朝食が取れたんだ。
 局長から特に緊急の呼び出しもなかった。
 そして僕はバベルに向かうために家を出た・・・)


そこまで思い出したところで記憶が途切れる。
どうやら家を出てすぐに、何者かの襲撃を受けたようだ。
あわてて持ち物を確認するが、案の定外部と連絡が取れそうなものは何もなかった。


(一体誰が・・・)


鉄の扉に近づく皆本。
そっと耳をあてて外部の様子を伺う。


(・・・・・)


しばらく聞き耳を立てていたが、話し声はおろか何も聞こえてこない。

次に、扉についていた小窓をそっと開け、見える範囲を確認する。
廊下も部屋と同じように薄暗く、コンクリートがむき出しになっている。
やはり何も聞こえなければ特に変わったものもなく、人の気配がまったく感じられない。

「おい!誰かいないのか!?」

勇気を出して叫んでみるも、声が響くばかりで返事は無い。


(どうなってる・・・?何が目的だ?)



 ベッドに座り込み、考える皆本。
自分を独房に押し込めた人間、そしてその目的、いくら考えても全く答えが見えてこない。


(まさか・・・)


皆本の脳裏に薫の顔がよぎる。



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「サイキック・ナックルゥ!!」

強烈な一撃でぶっ飛ばされ、意識を失う皆本。

「へへ、後はあそこにでも閉じ込めておいて・・・」

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(いやいや、そんなわけ無い。
 第一、薫に僕を監禁する理由なんて・・・)

次に葵の顔が浮かぶ



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「皆本はん、堪忍してや!」

テレポーテーションで頭に鈍器を落とされ、意識を失う皆本。

「ほんと堪忍してな・・・さて、後はあそこへ閉じ込めて・・・」

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(いや、だから理由がわからないし!)

さらに今度は紫穂の顔が浮かぶ。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ドガッ!

鈍い音とともに崩れ落ちる皆本。
意識を失った彼を、ゴルフクラブを持った紫穂が見下ろす。

「うふふ・・・あんな女と一緒にいるあなたが悪いのよ。
 でも、これでようやく・・・!」

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(いやいやいや、これは何か違うし!)


そこまで考えたところで、ふと冷静になる皆本。


(だいたい、あいつらを疑うなんてどうかしてるよな・・・)


と思ったが、実際やるかもしれないとも思ったので考えるのをやめた。


(真面目に考えるとすれば、やはり『普通の人々』か?)


だがその場合、あまりにも音沙汰が無いのが気になる。


 監禁されてからどれくらいの時間がたったのか、
焦りを感じ始めた皆本は、再び鉄の扉のほうへ近づいてゆく。


(この扉が・・・)


憎らしそうに扉をつかむ。
と、そのとき。






ガチャ






「あれ?」

何ともあっさり鉄の扉が開く。
はじめから鍵がかかっていなかったようだ。


(・・・・・)


こんな単純なことに気付かなかった自分を責めつつ、皆本は廊下に出る。
どうやらそこは地下らしく、冷たい空気が肌を刺激する。


(とにかく、脱出しなければ!)


幸いにも、廊下は一本道で迷うことは無い。
見張りもおらず、皆本は素早く階段を駆け上ってゆく。


(・・・あ、あれは!)


直接階段とつながる扉、そこには皆本の上着が掛けられている。
急いで上着を掴み取り、持ち物を確認する皆本。


(携帯電話は・・・無事だ!)


携帯電話の電源を入れる。
すぐにバベルへと連絡を取ろうとしたその時、けたたましく携帯の呼び出し音が鳴り出した。

「皆本!今どこにいる!」

電話から聞こえてきた声、それはバベル局長・桐壺の声であった。

「は、はい局長、それが・・・」

しかし、局長はかなり急いだ様子で皆本の言葉をさえぎった。

「すぐに局長室に来てくれ!最優先事項だ、大至急な!」

局長の怒鳴り声が終ると同時に、携帯のバッテリーが切れる。
仕方なく、皆本は携帯をポケットに入れると、目の前の扉を開く。


「・・・・・あれ?」


ガラッと雰囲気が変わる廊下、そこには『B.A.B.E.L.』の文字があった。

「ここは・・・バベルの中?」

訳がわからない。
が、とにかく皆本は見慣れた廊下を走り、局長室へと急いだ。


 バベルの局長室、その扉の前に皆本は立つ。
何があったのか、彼は全ての答えを求めて扉を押し開けた。





パーン!





甲高いクラッカーの音。
部屋中に施された派手な装飾。


「ようやく来たか皆本!遅かったじゃないか!」


笑顔で皆本を迎える局長、
その後ろには薫・葵・紫穂・柏木の姿もある。


「まったく、どこ行ってたんだよ!」
「ウチらずいぶん待っとったんやで?」
「携帯の電源も入ってなかったみたいだし、何やってたの?」


そう言う3人の頭にはパーティー用の帽子が乗っており、
薫にいたっては鼻メガネまで着用している。


「あの・・・局長?これは一体・・・」

「何を言う、これはお前の誕生日会だぞ!
 この子達が一生懸命飾り付けをやってくれたんだ!」


確かに局長の言うとおり、そこはどう見ても『お誕生会』といった状態である。


「あの・・・、僕さっきまでここの地下に監禁されてたんですけど・・・」


皆本の言葉に騒然となる一同。
だが次の瞬間、その場にいた全員が局長のほうを見る。


「局長・・・飾り付けが終るまでは、と、皆本さんをお任せしましたけど、
 一体何をなさったんですか・・・?」


柏木が局長に詰め寄ると、その表情はみるみる焦りを浮かべていく。


「し・・・・・
 仕方なかったんじゃああ!」


堰を切ったように泣き叫ぶ局長。


「可愛い子供たちが!皆本くんのためにお誕生会をやってあげると言うから!
 その飾りつけが終るまで、君を引きつけておく仕事を引き受けたんだぁ!」


皆本の両肩をつかむ局長。


「でも!ワシだって・・・一緒に飾りつけとかしたかったんじゃあぁぁ!
 そしたらそのうち忘れてしまっていたんじゃあぁぁ!」

「そ・・・そんな理由であそこまで・・・」


怒りを通り越して笑いすら出そうな皆本。


「まあまあ、とにかく無事だったわけだし、早く始めようぜ!」


あまり気にしていない薫たちにもちょっと腹が立った皆本。



「・・・盛り上がってるところ悪いけど、僕の誕生日は来月だ。」



一瞬、室内の時間が止まる。
だがしかし、そんなことをいちいち気にするチルドレンではない。


「そんな、固いこと言うなって!」
「そやそや、1カ月くらい変わらへんよ。」
「これだけ用意したんだもの、断るなんてことないわよね?」


無理やり皆本を座らせ、パーティを始める一同。
パーティの主役である皆本君は、血の涙を流して喜びましたとさ。

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