ザ・グレート・展開予測ショー

温泉にゆこう! (絶対可憐チルドレン)


投稿者名:かいる
投稿日時:(05/10/26)




さて、今回の話は一通の書き置きに端を発する。

「しばらく旅に出ます。」

BABELにおける特務エスパー「チルドレン」管理官、皆本光一の書き置きである。



管理官とは言っても公務員である。ゆえに有給休暇というものは存在するのであるが。
カタチばかりの引き継ぎに、ろくな荷物も持たずに旅立った後が見られる。

遅すぎる夏休みというよりは、失踪・・・・・・・・・いや、「夜逃げ」に近い。



一体彼の身に何が起こったというのだろうか。
彼に身近な人物にズバリ聞いてみた。











*プライバシー保護のため一部音声を変えてあります。





・彼と親しかったOさんの証言

「ええ、ここのところ彼は何かに取り憑かれたように仕事に打ち込んでまして。
そんなに詰め込んでは身体をこわしますよ、と言っても聞かないような状態でしてね。
一心不乱にキーボードを打ちながら何か呟いてるので、聞き耳を立てたんですけど

『僕は正常だ撲は正常だ撲は正常だ・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

とずっと呟いてるようで。真剣に近所の神社でお祓いを頼んだ方が良いんじゃないかと思いました。」





・彼の直属の上司であるKさん

「ああ、彼はとても優秀な部下でネ。私も大いに信頼しているんだが。
最近どうも大きな事件が相次いでいて息をつくヒマがなかったから今回が良い休養になればいいんだがネ。
最近様子に変わったところがなかったか?・・・・・・そうだネー。特にはなかったが・・・

あ、そうだ。大したことじゃないんだが・・・彼の担当する特務エスパーのひとりが最近やってきてネ。
新しい装備を支給して欲しいってことなんで、快く許可したんだヨ。
やはり部下のベストコンディションを保つのが上司のつとめだからネ。
しかし彼はそれがどうも気に入らなかったようでネ。

もう支給しちゃった♪って言ったらさんざん小言を聞かされたヨ。・・・こんなところかネ?」






部下が部下なら上司も上司。世の中辛いことばかり。
中間管理職の辛さをいやすため、何をするべきか。






決まっている。温泉である。脈絡があろうがなかろうが関係ない。
人生向かい風まっただなかの皆本君は電車に揺られ、一路温泉を目指すのであった。












          温泉にゆこう! (絶対可憐チルドレン)












そうだ、温泉に行こう。

どこぞで聞いたようなフレーズではあるが、気のせいである。その方が幸せになれることは間違いない。
ともあれ、皆本光一(20)は精神的に疲労のピークにあった。
原因は、言うまでもないだろう。三人のケモノたちのおかげである。





彼の住むマンションには三匹のケモノが棲みついている。



クールで狡猾で、悪女の素質充分なネコ。
          「にゃ〜ん。・・・失礼ね。」

京都生まれ、甘え上手でがめついイヌ。
          「わん!・・・最後の方は余計やな。」

最後に、やることなすことムチャクチャで、凶悪なウサギ・・・
          「うさうさ〜・・・ってなんだそりゃ!ふざけんなよコラ!」

    「おまえこそ『うさうさ』って、そりゃないだ・・・うぎゃああああああああああ!!」



一事が万事、こんな具合である。流石に身が持たない。
まあ、肉体面での損傷に関しては、最近鍛えてることもあってかそれほど苦にもならなくなってきたのだが・・・
タチが悪いのは、彼女らの格好の方だったりするのだった。



「大体なあ〜、君らはなんてカッコをしとるんだっ!さっさと着替えなさい!どこのカジノだここは!」

「「「え〜〜〜〜〜〜〜〜?」」」

「『え〜』じゃないっ!どっから持ってきたんだそんなモノ!」


彼女たちの格好はとりあえず三人で統一はされている。
そう、言わずと知れたバニーガールルックである。
ただ紫穂の耳はネコ・葵はイヌの耳を模したカチューシャを付けている。

青年に寄り添う三匹の幼いケモノたち。
こんな光景を局長に見られたら、おそらく僕は明日の朝日を拝めないだろうな。
それは酷く現実感を持った予測だった。


「せっかく着てやったのにな〜。意外とコレ着るの大変なんだぜ?」

「しかしなんもせんと脱ぐのももったいないな〜・・・」

「じゃあ、脱ぐ前に皆本さんにたっぷりサービスしないとね?」

「「ナイスアイデア」」



空気が張りつめる。



「・・・・・・ちょっと待て?お前ら、まあ、落ち着け。頼むから。」



笑いながらにじり寄ってくる三人・・・いや、さんびき、か?


うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
くくくくくくくくくくくくく・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
くすくすくすくすくすくすくす・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「「「ケモノだからわかんなーい♪」」」



















「はぁっ!・・・・・・・・・・・・・・・ゆ、夢か。
そ、そうだ、僕は正常だ僕は正常だ僕はロリコンじゃないロリコンジャナイヨー・・・・・・・・・・・・」

過去の記憶にうなされる皆本。乗客はおろか、車内販売のお姉さんもなぜか温かい目で彼を見守っている。



そう、温泉。それは甘美な響き。日々の生活に疲れた者が俗世の垢を落とす癒しの聖地。
そこに集う者たちに、言葉はいらないのである。
あなたに幸せが訪れますように。どなたにも幸いがありますように。












ガタガタブルブルしていた皆本もようやくふるえが収まり、目的地に着く。
何故か電車の同乗者たちから「がんばんなさいよ」「負けるんじゃないよ」と声を掛けられ、
車内販売のお姉さんからは、ジュースをおごってもらってしまった。

・・・そんなに幸薄いように見えるんだろうか。僕。
実際に幸薄いのではあるが、それはそれ。とぼとぼと歩き、程なくして予約してあった旅館に着いた。

電車に揺られてまでやってきただけあって、実に鄙びた、味のある趣である。
周りを囲む庭の樹は紅葉が始まっており、優しい朱がこちらの目と心を癒してくれる。

完璧な理系人間であり、都会っ子である皆本だが、その旅館、温泉旅館の発する『のすたるじぃ』に当てられ、
早くも「来て良かった・・・」とご満悦である。

自分探しの旅、と言うわけではないがここのところあの三人には振り回されっぱなしだったので、
自分のキャラ、スタンスといったものを見つめ直す良い機会かも知れない。

入り口の暖簾をくぐると、品のいい赤毛の女将が出迎えてくれた。


「あら、いらっしゃいませ。ようこそ極楽荘へ。」

「あ、どうも。予約をしていた皆本と言いますが。」

「ああ、伺っておりますよ。では、履き物をそこへ脱いで、どうぞこちらへ。お部屋にご案内します。」



旅情あふれる雰囲気である。そもそもここのところひとりで行動する機会自体がなかったことに気付く。
あいつらと居る時間もそれはそれで楽しいんだが、人間ひとりの時間も大切だな、とひとりで肯く。


「?どうかなさいましたか?」

「あ、いえ、なんでもないです。すみません。」


女将に連れられて廊下を歩く。ふと窓から滝の音がすることに気付く。
紅葉の朱、黄と、夕日の黄金。それらを映す滝の極彩色がまるでこの世の物でないように綺麗に見えた。


「・・・。」

「ふふっ。綺麗でしょう。あの滝と紅葉、それから温泉がこの旅館の名物なんです。
毎年秋になるとこれを見るためにお客さんがたくさんやってくるんですよ。」


黄金の風景に見入っている僕に、女将さんがわざわざ説明してくれた。
こころなしかゆっくりとした歩調で廊下を進む。こういった気遣いが客商売では大事なんだろうな、と
場違いで少し失礼なことを考え、反省する。と、女将さんが止まった。


「はい、ここが朱雀の間になります。お食事は午後七時になりますので、こちらにお持ちしますね。
ゆっくりおくつろぎになってください。」

「ああ、どうもありがとうございます。」


女将さんは微笑むと来た方向を戻って行った。






はあ、ネットで適当に調べた旅館だったけど、どうやら『当たり』のようだ。
ほっと一息つく。一泊二日の短い時間ではあるが、存分に骨休めしていこう。






がらっ






「「「いらっしゃーい♪」」」







「間違えました。」





ぴしゃっ










さあて、綺麗な風景を見て心も癒されたことだし、温泉に早く入りたいなあ。
それにしてもあの女将さん、ああ見えて意外と慌て者なんだなー。まったく、僕の部屋はあそこじゃないよ?
だって、四人部屋だし。とりあえず、この宿はよしたほうがいいな。この宿は。
僕は予知者じゃないけど猛烈にそんな気がするよ。そうときまったらすぐ行こうさあ行こう今すぐ行こうっ!!!





「往生際の悪いやっちゃなー。」


「ぐわっ!」


脱兎の如く駆けだしたが、無情にも捕捉され、朱雀の間に転移させられる。
当然のように部屋の中に鎮座している、浴衣姿の三人娘。




「みーなーもーとー。あたしは悲しいなー。抜け駆けなんてさー。」

「ホンマやで。皆本はんだけ温泉に行こうやなんて、ずるいやないの。」

「私たちだって、お仕事頑張ってるんだから、お誘いくらいはあっても良いと思うの。」




「お、お前らどうしてここが・・・」

ピラッと紫穂が紙を取り出す。・・・僕が残した書き置きだ。

「局長・・・こいつらには見せないよう言い含めたのに・・・
ん?でもこれを透視たとしても、僕が行き先を決めたのはこの紙を書いた後だったはずだ。」


「ええ。この紙からは皆本さんが温泉に行くつもりだってことしかわからなかったわよ。」

不敵な笑みを崩さず言う紫穂。しかし、ならどうやって?
にんまり笑ってほかふたりが答えた。






「皆本はここ、ネットで予約したろ?履歴がバッチリ残ってたぜー?」

「そこをウチがちょいっとな。パソコンの管理はしっかりせなあかんで?」

「ヒトのパソコンを勝手にいじるんじゃないっ!何でもアリかお前たちはっ!」


「ちなみに三人分の宿代は“透視えちゃった”キャッシュカードのNoで予約を・・・」

「犯罪だ―――――――――――っっっ!!明らかに故意だろそれは!」

「まあ、天災だと思てあきらめるんやな。」

「思いっっっきり人災だ――――――――!!」


「うるせえ!!ガタガタ言わずに卓球行くぞ!温泉といえば卓球だ!!」

「あ、こら!話はまだ終わってな―――――」


みしっ


「薫ちゃん?骨は折らないでね?後で熱が出るから。」

「ここの温泉、打ち身や擦り傷にもよく効くらしいで。」







「あ、悪夢だ・・・・・・・・・・・・」



















「サイコキネシス・バリエーション!
サイキック――――――――――――王○サーブっ!」


パコォン――――――――バキィンッッ!!

「どわあっっっっっっ!!」

打ち出されたピンポン球は螺旋を描きつつ、皆本の陣地に突き刺さった。
打ち返すことなど無論できない。というかよしんばラケットに当てたとしても、腕ごと持って行かれるだろう。
煙を上げ、抉れている卓球台がそれを物語っていた。





「いくでー!秘技・消えるサーブっ!」

パコン――――かん・かん―――――(ふっ)すかっ

「だー!打てるかこんなモン!」

皆本がラケットを振り、インパクトする前に球をテレポートさせる。
まさしく手も足も出ない状況。





「うふふ。行くわよ?それっ。」

パコン―――――かん・かん(ぎゅわああああああ)すかっ

「な、なんでこんな変化球をっ!?」


紫穂の持っているラケット、どうやら前の使用者がかなりの使い手だったようだ。
しかもカットマン。・・・・・・ピンポン球ってこんなに変化するんだなあ。








三人に持ち回りで勝負をさせられ、身体もスコアもズタズタになった後、汗を流そうと温泉に向かうことにする。
・・・・・・というかこんなことにチカラを使うなよ。と言ってやりたい。
また壁に埋まるのは嫌だったので言わなかったが。














「じゃ、僕はこっちだから。また後でな。・・・他のお客さんに迷惑かけるんじゃないぞ。」

「「「はーい」」」

返事だけはいいんだよなー。
そんなことを思いながら男湯に入る苦労人代表・皆本光一。





「おっ、誰もいないのか・・・一番風呂ってヤツかな。」

正確に言うなら温泉なので、一番もなにもないのであるが、そこは気分である。
手早く浴衣をたたみ、眼鏡を外す。浴場の扉を開ける。
湯気が晴れると、小綺麗な湯船、洗い場、そして夕刻の朱に染められた風景が目に入ってきた。

「へえー、さっきの滝が温泉から見えるのかー。風情があるなー。」

身体をさっと流し、温泉に入ってみる。
温度は若干熱めだ。だが我慢できないほどではない。


「ふぃ〜〜〜〜〜〜〜、しみるな〜〜〜!」


少々オッサン臭いが、唸ってしまうほど気持ちが良い。
やっぱり来て良かったなー。そんなことを思っていると、騒がしい声が聞こえてきた。





「うっひょー!貸し切りじゃん!いっちばんのり〜!」 

   だっぱ―――――――ん!

「あ〜あ〜、はしゃいでからに。泳ぐんやないでー?」

「良い眺めのお風呂ね。気に入ったわ。」



どうやら女湯の方も貸し切り状態のようだ。
平日だし、ひょっとしたらお客は僕たちだけなのかな?
しかしお客が居ないとはいえ、湯船にダイレクトダイビングってのはどうなんだ。
一応注意した方が良いんだろうか。・・・しかしつくづく思考が歳不相応になってきてるな。
・・・いや、IQとかとは関係ない方面に。実際でっかい妹が三人も突然できたようなもんだもんなー。
まだ20なのに。ちょっと気をつけよう。何を考えてたんだっけ。ああ、薫のことだったなー。
うーん、幸い他の客もいないしまあいいか。後でちょっと言い含めておくことにしよう。
それにしても風呂ってきもちいーなー。いっつも残業で、シャワーばっかしだったもんなー。


温泉パワーで思考が緩んできたようだ。いったん上がろうか、と思ったそのとき。


「みなもとはーん?そっちにおるかー?」

「ああ、どうしたんだ?」

「あんな、シャンプーもってへん?忘れてもうたー。」

「一応あるけど・・・」

「投げてよこしてー。」

「わかったー。」

ひゅっ。    ・・・・・・ぱしっ

「おおきにー。」

「ああ」







「なんだか夫婦っぽい会話だったわね?」

「「ぶっ」」

壁の向こうで葵も噴いたらしい。

「ななななな・・・・・・・・・・・・何言うてんの!う、ウチはそんなつもり・・・」

「うふふ、息もピッタリで新婚さんって感じだったわよ?」

「し、新婚さん・・・」

「あらあら、真っ赤っか。」

「紫ー穂ー。あんまりからかうんじゃないぞー。」

「あら、怒られちゃった。」

まったく、紫穂の悪い癖だな。
とはいえ、確かによくよく考えると恥ずかしい会話だったかも知れない。
周りに人がいなくて良かった。




「むー!みなもとー!そっちにいるかー!」

「そんなに怒鳴らなくても聞こえるよ。」

「あたしもシャンプー忘れたー!あたしにもよこせー!」

「むっ無茶言うな!2本も持ってきてないよ!」

「みーなーもーとー!シャンプー!」

「葵が終わるまで待ってなさい。」

「いますぐー!」

「ダーメ!」

無い袖は振れない。

「むー!じゃあいいよ!」

あきらめたか。

「みなもとーよこせー!」

「なに?」


「だからーみなもとをよこせー!」


「・・・・・・意味がよくわからんのだが。」

「投げてよこせよー!」

「・・・・・・」

なんだろう。非常に嫌な予感がする。

「・・・投げてくれないならこっちから投げちゃうぞー」

「いっ・・・おい、ちょっと待て!」

身体が浮く感触!やばいっ!

「サイキック――――――――――人間大砲っ!」

華と散らせるつもりかっ!!
突っ込む間もなく身体が放り出される。







どっぱ――――――――――――――んっっ







「ちょ!薫っ!ウチら今モロやでっ!」

「いーじゃん!早いか遅いかの違いだろ?」

「わあ薫ちゃん大胆。ところで、皆本さん、あそこで浮かんでるんだけど・・・。」

「げっ。力加減間違えたかな・・・。・・・あー、たんこぶできてら。」

「(目を押さえつつ)うわ、皆本はんもその・・・(ちらっ)モロやな。」

「隙間あいてるわよ?それに本人が失神してるんだから、よく観察するチャンスだと思うけど・・・」

「それもそーやなー。むむ・・・こんなんなっとるんや。」

「へへん!葵もまだまだおこちゃまだねー!」

「なんやと!」

「なんだよ!」

「(じー。)」


とりあえず皆本を介抱してあげる殊勝な子は残念ながら居ないのであった。
ちなみに上の会話はたんこぶについての会話・・・のはずである。


























ううっ・・・・・・僕は一体・・・
確か温泉に入って・・・だめだ。頭が痛くて思い出せない。

どたばたと騒がしい音がする。誰だ?・・・ああ、そういえばあいつらもこっちに来てたんだったか。
ゆっくりと目を開ける。

ばきいいっ!

「ぐはああっ!」

視界が白く染まる。衝撃が頭に響く。

「あ、皆本ごめん!葵!よけるな!」

「無茶言うなや!ウチに当たるやろ!」

「ふたりとも隙だらけよー。」

ぼすぼすっ

「「わー!」」



痛む頭をおさえながら、聞く。

「お前ら・・・何をやってるんだ?」

「見たらわかるだろー?枕投げだよ、まくらなげ。」


「隙有りやっ!くらえ!秘技・消える魔マクラっ!!」

「甘いっ!つか別に打つわけじゃねえから消えてもしょーがないじゃん。」

葵の強襲をサイコバリアでいなす薫。

「くっ・・・思わぬ盲点やった!」

「葵ちゃん、結構天然入ってるものね。」

「おかえしだっ!サイキック―――――――――――マクラ乱舞っっ!」


雨のように降ってくる枕・枕・枕!
というか四人部屋なのにどこにこんなに枕があったというのか!


「あ、あかん!やられる!」

「葵ちゃん!こっちよ!」

「「管理官バリアー!」」

「―――――――っておい!お前ら・・・いいかげんにぐはあああああああっ・・・・・・・・・」

枕に埋もれると言う経験はそうそうできる物ではない。
・・・別に経験したくもなかったが。

「さらにっっ!サイキック―――――――布団スマキっ!」

「確保完了、ってとこやな。」

「ロールケーキか土左衛門ってところね。」

いや、紫穂。そのたとえはどうかと思うぞ。ギャップありすぎ。
枕と布団に埋もれて、話すこともままならない。たすけてくれー、と意志を込めて辛うじて動く手を振る。


「なんか助けを求めてるようやけど。」

「えー。でも助けたところで説教が始まるだけじゃん。」

「そういえば、今夜はフォローしてくれる局長も朧さんも居ないのね。」











・・・・・・・・・・・・・・・そう、誰もいない。自分たち四人を除いては。











「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」」




布団に埋もれて。


身動き取れない。


エモノが一匹。










――――――――――――――その日は、奇しくも満月だったそうな。





























後日、電車でBABELに帰る四人組の集団が確認されている。
一人の青年と、三人の制服姿の少女たちだったようだが、なぜか青年は窓を見ながらぶつぶつ何かを呟いている様子で、
少女たちの盛り上がりから浮いているようだったという。


さらに、なぜか少女たちが旅行から帰ってきた際、肌がいつも以上にツヤツヤとしていたと、彼女たちと親しいOさんより
情報がもたらされた。温泉ってやっぱり効果あるのね、私も行ってみようかしら。とは彼女の言である。






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