ザ・グレート・展開予測ショー

絶対無敵シンデレラ 前編(絶対可憐チルドレン)


投稿者名:かいる
投稿日時:(05/10/20)



この世界には 魔法はなくて、魔法使いも見あたらない

カボチャは馬車にならなくて ネズミも馬になりません

ボロもドレスにならないけれど わたしはけっしてあきらめない



わたしに馬車はいりません

世界を駆けるチカラがあるから

わたしにドレスはいりません

王子を魅せる自信があるから



わたしは無敵のシンデレラ 魔法使いはいらないの

自分自身のチカラでじゅうぶん

ハッピーエンドをつかんでみせる!












          絶対無敵シンデレラ 〜前編〜













その日。特務エスパー・野上葵は焦っていた。

このままではいけない。このままではジリジリと押し切られる。

なにか。なにか打開策を。

自分が、求めて止まないモノを手に入れるためには。

ここで譲るわけにはいかない・・・・・・!

力を!もっと力を!何者をも寄せ付けぬ、圧倒的な、力を!













・・・『力が欲しいか?』と、答えてくれる存在は流石にいなかったものの。

ともかく、その日、野上葵は焦っていた。

そして、彼女は決意をする。あるプロジェクトの開封。

それは、諸刃の剣でもあったのだが・・・もはや、彼女は誰にも止められなかった。




――――彼女の目下の悩みは、自分の「影の薄さ」であったそうな――――











・・・野上葵は、いわゆる無個性というレッテルを貼られている。
体の良い移動役、説明キャラに回るなんてのはしょっちゅうよ。
だが、そんな彼女にもいろいろと思うところがあった。

――――ウチが無個性なんやなくて、あのふたりがキョーレツなだけやって・・・





・・・もっともである。

しかしながら、だからといってここで尻尾を巻いて逃げ出すわけにはいかない。
ここで一矢報いなくては、関西女としての沽券にも関わってくる。


それに。あのふたりにキャラを食われているような状況が続けば、
後々起こるであろう勢力争いに不利になってしまう。

勢力争い。もちろん、彼女たちの主任の所有権を巡っての戦いである。
超能力を駆使しての血で血を洗う争いでは、個人差がありフェアではない。
故に彼女たちは今のところ、「抜け駆け禁止淑女協定」なるものを結んでいた。
・・・・・・勝負は五年後以降が目安。

「有利に事を運ぶためには今からアドバンテージを確保せなあかん。」

そうつぶやくと、葵は、動くことを決意した。
すべては、自分の望む幸せな未来のために。



そう。関西女は執念深いのだ。







「・・・とは言っても、どうすりゃええのか見当もつかんわ・・・」

このままではいけないという危機感こそあるものの、
実際にどうすればいいのかという具体的な方策はなく。

「ま、敵を知り、己を知ればっていうことやし、あのふたりの観察から始めるかな。」

















『俺たちの勇気の力!見せてやるぜっ!行くぞ、みんな!』

「おっしゃあ!そこだ!いけっ!」

「ん?この声は・・・薫?なんや、またこの番組かいな。」

「おろ?葵。べつにいーじゃねーか。好きなんだからさ。・・・おっ!そこだっ!」


談話室にて薫と遭遇。
目の前のテレビには、色とりどりの全身タイツを着たヒーローと、
相手役と思しき着ぐるみが、文字通り火花を散らして戦っていた。


「毎回似たような展開やのに、よう飽きんもんやなあ。」

「わかってねえなあ葵!燃えがわかってねえよ!
それに毎回一緒ってワケじゃねえよ!先週から新装備が出たんだぜ!ホラこれ!」


薫が指さしたのは、ちょうどアップになっている、ヒーローたちが持っている杖と思われる棒。
杖の先端には獅子の頭が象られているようだ。


「はーん、スタッフも色々考えてるんやなあ・・・・・・・・・」


感心したようにつぶやいた葵の頭に、稲妻のように閃くモノがあった。






――――――――――『新装備』。










「――――――それやっ!!」

「っどわああっ!!なんだよいきなり!」

「こうしてる場合やない!さっそく行動や!ほなな!」

テレポートであっという間に消える葵。

「・・・・・・なんだってんだ?一体・・・・・・げえっ!驚いてる間にコント終わってるぅっ!」


EDテーマ前のミニコントを見逃し、号泣している薫だけが後に残されていたという・・・。










さて、所変わってここは執務室。
今日も今日とて、特務エスパー「チルドレン」主任である
皆本光一は山と積み重ねられた始末書とにらめっこをしていた。


「毎度のこととはいえ、あいつらももう少しおとなしくならないものか・・・」


ぼやいてみても山はいっこうに減らない。減るはずもない。
全てを投げ出して旅にでも出たくなる気分を、海より深いため息で押し殺し、
始末書に取りかかろうとした、まさにその時。


「皆本はんっ!ちょっとええ?・・・ってあららー?」


葵が転移してきた。




始末書の山の上に。










ああ・・・・・・今夜も残業かー。
たまには日付が変わる前に帰りたいなー・・・あは・・・あははは・・・





崩れゆく山をみながら、そんなことを思った。



始末書の山とともに皆本の精神が崩壊し、
修復されるまでに何分かの間があり、葵への説教もあったがここでは割愛する。














「はぁ・・・まだ言い足りないけど、いいやもう・・・
で?なんなんだ?テレポートしてくるぐらいだから急ぎの用なんだろ?」

「そうやった!あんな、皆本はんに折り入って頼みがあるんや。」

「・・・(ヤな予感がする・・・)まぁ、僕でできることならな。頼みにもよるけど。」

「大丈夫!皆本はんならちょちょいっとできることやから!



あんな、ウチに    新しい武器    つくってくれへん?」







「―――――――――――――ハイ?」


「あ、オッケーなんや。よかったー。じゃ早速・・・」

「その『ハイ』じゃないっ!」

「えー、じゃダメなん?ええやん、ケチケチせんとつくってえな。」

「〜〜〜〜〜。言いたいことはいろいろあるが、そもそも君たちに武器を持たせた覚えはないんだが。」

「ああ、武器って言い方がまずかったんやな。たとえば、ほら、これとか。」

「?・・・リミッターがどうかしたのか?」

「このイヤリング、うちの能力を抑える働きしかしないやんか。
せっかく「チルドレン」御用達の装備なんやからもっとこーインパクトをやな。」

「・・・いんぱくと?」

「そうやなー。ウチらが能力を使えなくなったときに・・・









―――――イヤリングを投げて『精○石よ!』とか叫ぶと爆発、とか?」











「やめいっっ!そういうシャレにならんネタをやるんじゃないっ!
そもそもリミッターを使い捨てにするんじゃありませんっ!」

「えー。せっかく従来の装備の改変でお得に済まそうとしたったのにー。」

「どういう経済感覚だそれは・・・」

「じゃあ、こんなんならどうや!ちょっと紙貸してな?」

「お、おい、葵・・・はあ、聞いてないな。」





崩れた山から始末書を一枚引き抜き、その裏に一心不乱に絵を描く葵。
無理に止めたら、フリーフォールの憂き目にあうのは間違いない。

しかし、いきなり新装備とはどういう心境の変化だろうか。
特務エスパーの仕事はESPを発揮できる場面に限られている。
確かに、奥の手があるに越したことはないが、戦略的な目で見るならば、
彼女たちがESP以外のモノに頼るような局面が起こる時点で敗北していると言って良い。

やはりこの前の、ECMによって『普通の人々』に監禁された件。
あれが尾を引いているのだろうか。

考え事は尽きない。

とりあえず、皆本は静観を決め込むことにした。
これから徹夜が見込まれる作業(始末書)が残っているというのに失神するわけにはいかないからだった。

彼の選択を一体誰が責められただろうか。
だが、結果としてこの選択は失敗だったと言える。



「できたで―――――――!!」




自信満々に差し出されたそこに書かれていたモノ。








ブローチ。 そこはまあいい。





ハート型。  そこもまあいいだろう。・・・際どいが。









問題は、そこに矢印で書かれた注意書きである。














注:裏のスイッチを押すとビーズ(もしくは仁丹)が出るでー







   てれぽーてーしょーん こころーのつっばっさがー♪(幻聴)


―――――――――――――アウトである。そう皆本は判断した。









「葵―――――――ッッ!もっとシャレにならんだろう!これは!」

「なんでや!?いっしょーけんめい考えたったのにー!!」

「だからといってパクりはマズいだろうっ!パクりは!」

「失敬やな!もっと響きよく『おまーじゅ』ゆうてや!」

「やってることのマズさは変わらないだろうが―――――――っっ!」




「せやかて、


      エスパー

          少女

            得意技はテレポーテーション



    ゆうたら行きつく先はそこに決まってるやんか――――――!」




「わ――――――わ――――――わ―――――――!!!もっと間接的な表現にしなさいっ!!頼むから!!」



「あ、ちなみに名前ももう考えてるんやで!

テレ「わーーーっ!」ョンガンゆうてな・・・なんや、ヒトの話を遮ってからに!」


「それ以上はやめてくれ――――――――ッッッッ!!!」




「ケチケチせんといてえな、タカ○タはん♪」

「や―――――め―――――ろ――――――――――!!」




















まあ、なんだかんだあって。









葵も粘ったが、皆本は頑として頼みを聞いてくれない。
ついには、後始末に関する苦悩も重なってか、執務室から追い出されてしまったのであった。

「ちぇー!皆本はんもイケズなんやからなー!ええやん、ちょっとくらい・・・!」

どうやら葵嬢、憤懣やるかたないご様子。

「全く誰のために苦労してると思うてるんや!






・・・まあ、これも惚れたモンの弱みっちゅーヤツかいな。」

一転して頬を染め、廊下で突如くねくねと身悶えする自称優等生。
はっきり言って不気味である。

「惚れた男のために自らを変えようと努力する女・・・一途やわあ。うわ、ウチって乙女の鑑?」


ヒートアップは続く。


「そして、そんなウチの水面下の努力にいつしか気付く皆本はん・・・




『そ、そんな!ボクなんかのためにそんな血もにじむような努力を?』

『ええんよ。皆本はんのためならこれしきのこと、なんでもあらへん!』

『それほどまでにボクのことを・・・そんな思いに気付かなかったボクはなんて馬鹿だったんだ!』

『そんなに自分を責めんといて!皆本はんが苦しいとウチも苦しい・・・!』

『ああ、なんて健気なんだ!葵、君ってヤツは・・・!』

『み、皆本はん、ウチ、皆本はんになら・・・』

『ああ、葵、もう離さない!愚かだったボクを許してくれ!』

『皆本はん!その言葉だけで、ウチ、もう!』

『・・・・・!』

『・・・!』








      間。








三十分もの間、彼女の浪漫回路は回り続けた。

はあ、はあ、っはあ―――――――――

荒い息。汗が落ちて小さな水たまりを形成していた。・・・赤いモノも混じっているが。

「はあ、はあ―――――よっしゃ!やる気が出てきたわ!
幸せな未来目指して―――――――前進あるのみや!見ててや!皆本はん!」







テレポートもせず夕日に向かって駆けていく葵。
いろんな意味で開き直った彼女の明日はどっちだっ!!



後編へ続く!

















―――――――くす。
「いつになく積極的ね?―――――――面白くなってきそうだわ。」

物陰で、BABEL謹製のビデオカメラをかまえつつ、何者かがそう呟いたというのは、あくまで余談である。




今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa