ザ・グレート・展開予測ショー

不器用な甘え方。(絶対可憐チルドレン)


投稿者名:かいる+豪
投稿日時:(05/10/ 7)

よい子 わるい子 ふつうの子  ふつうの子はだあれ?

わるい子は  何でも壊す テレキネシス。

よい子は  何でも読める サイコメトラー。




よい子 わるい子 ふつうの子  ふつうの子はだあれ?

わるい子は とても手がかかるぶん 可愛がられる。

よい子は よく気がつくぶん ほめられる。



じゃあ ふつうの子は?


ふつうの子は なあに?







     不器用な甘え方。(絶対可憐チルドレン)










「なに?葵がいない?」



ここは内務省特務機関超能力支援研究局・通称BABEL。
今日も例によって、特務エスパー「チルドレン」の医学検診のため
メンバー三名に招集が掛けられた。



「そうなの。時間になっても姿が見えなくて・・・。」

「葵の実家に電話してみたけど、BABELに出発はしたみたいだぜ。」



しかし、集合時間を一時間ほど過ぎた今も、葵の姿はない。
瞬間移動能力者である彼女が、車の渋滞などの交通規制にはまる可能性はきわめて低い。
となると考えられる可能性は・・・



「まさか、誘拐じゃないだろうな・・・」



一般的に言って、瞬間移動能力者を捕まえることは至難の業である。
例えECMを用いたとしても、怪しまれないようなサイズのものは効果範囲に限りがある。
葵ほどの能力者であれば、めったなことでは捕まらないといえる。
だが、万が一ということもある。苦悩する皆本。







「た、大変ですっ!!」



捜索隊を出そうか思案し始めたところに、朧が飛び込んできた。



「ど、どうしたんです?そんなに慌てて。」

「た、大変なんです、・・・紙が、この紙が・・・」



荒い息をつきながら、彼女は懸命に意志を伝えようとする。



「紙?これのことですか?」

「そ、それが先ほど、局長のデスクの上に・・・っテレポートしてきたんです。」

「て、テレポート?・・・なんか嫌な予感が・・・」



彼女から紙を受け取り、広げる。
そこには、こう書かれてあった。











「一身上の都合により、家出します。探さないでください。   葵」









「なにいいいいいいいいいいぃぃぃぃっっっっっっ!!???」
























風が、吹いていた。
とても空虚で、乾いた風。冷たい風。
風が冷たく頬を撫でる。風が冷たく体を覆う。
風がウチの心に吹く。心を通り抜けていく。





――――――――薫がモノを壊す。持ち前のムチャクチャさで。
「まったく・・・しかたがないな、お前は。」
皆本はんはもちろん怒りもするけれど、反省した薫を、やさしく、なでる。




――――――――紫穂が騒動を収める。持ち前の冷静さで。
「いつもすまないな。ありがとう、紫穂。」
皆本はんはそうねぎらった後、はにかむ紫穂を、やさしく、なでる。




――――――――じゃあ、ウチは?

なでられないのは、ウチだけ。



風が吹く。心の中に、風が吹く。



ウチは、飛び抜けて悪いわけでも、良いわけでもない子だから。
とりえのない子、面白みのない子だから。
変わりたい。そう思うたこともある。でも無理やった。


ウチは、薫のように子供にも、紫穂のように大人にもなれない。


だけど――――――――――





「ウチだけが・・・損しとるみたいで、イヤなんや。
 皆本はんも、なんだかんだいって、あのふたりの方が―――――――」









「―――――そんなことはないよ?
 葵のことだって、同じように大事に思ってるさ。」



聞き慣れた声。
いつの間にか後ろには、件の人物が立っていた。



「み、皆本はん! ど、どうしてこんなトコに――――――――」






        こつん。「あいたっ」





「まったく、どうしてこんなトコに、ってのはこっちの台詞だよ。
 こんな遠いトコまで。」



ふたりが立っているのは、竜飛岬。日本本州の最北端と言える場所である。
まだ秋とは言っても、さすがに風の吹きすさぶ岬は寒い。



「いや、逃避行言うたら、やっぱ北かな・・・と。えへへ。」

「どっから得た知識なんだか・・・。はあ。
 リミッターがなかったら、絶対見つけられなかったな。」



はっとする葵。



「せや! 皆本はんがいるっちゅーことは、あのふたりも?」

「――――――いや、今回は僕だけで来たんだ。」



飛び出した悩みが悩みだけに、ホッとする葵。



「せやけど、なんで? 薫なんかはついてきたがったんとちゃうの?」

「ああ、だけど君の置き手紙を紫穂が読んでね。
 今回は僕ひとりで行った方がいい、と言われたんだ。」



紫穂は、自分の置き手紙から、自分の悩みを察してくれたのだ――――――
そう感じて、胸に熱いものが生まれる。仲間に嫉妬していた自分がイヤになる。



「葵は・・・・・・・・・薫と紫穂のことが、嫌いかい?」

「そんなわけあらへん!」



即答する。皆本はんは、そんなウチに微笑んで言った。



「そうだろう? あのふたりも、同じように君のことを思っているさ。
 ――――――今回のこともずいぶん心配していたよ。
 ・・・・・・薫なんかは最後までついてくるって粘ってた。」



口をつぐむ。自分の行動が、今になって子供っぽく思えてくる。
ESPリミッターが、発信器になっていることは知っていた。
それでもイヤリングを外さなかったのは、なんのことはない。
自分は、追いかけてきて欲しかった。必要とされたかったのだ。



「そして、もちろん僕も心配したよ。」



そう言って、皆本はんはウチの頭を、やさしく、なでてくれた。
寒かった心がほぐれていく。



「無理に変わる必要はないさ。君は君のままで良い。
 葵と薫と紫穂、三人揃ってチルドレンなんだからな。
 ――――――誰が欠けてもいけないんだ。」



そう言ってくれた皆本はんに、ウチは出来る限りの微笑みを返す。
何時の間にか流れていた涙を拭いながら。










「なぁ・・・・・・皆本はん?」

「何だい、葵?」



潜められた声を聞いて皆本は答える。
自分の背中に居る葵に向けて。
疲れたと言い張った彼女は、皆本におんぶを求めた。
甘え方の下手な彼女は、こんな時でしか甘えられない。
甘え方を知らない彼女は、こんな形でしか甘えられない。
辺りに人の影は無く、ただ風の音だけを聞きながら。



「ウチって、思ってたより子供だったんかな?」

「・・・・・・そりゃ、子供だろうさ」



呆れた様に皆本は言った。
十歳という年齢を思えば当然だろう。
しかし、それに抗議するように、葵は彼の背中にしがみ付く。



「そーいう意味やなくて!
 薫とか紫穂とかと比べての話や!!!」

「わ、解った! だから首を締めるなっ!」



皆本の悲鳴に、首に回していた腕を放し
けれど、浮べた不満そうな顔を換える事無く。
葵の表情を見られない皆本にとっては
体を通して伝わる感覚で、彼女の気持ちを推し量るしかない。
肩に乗せられた顎は無言の抗議だろうか。



「そうだな。
 わざわざ比べる事なんて無いと思うんだけど」



それは正論ではある。同時に無意味でも在るが。
気持ちを論理的に割り切れるなら、誰も後悔などしないのだから。
そんな想いを込めて、葵は皆本の首に再び手を回す。
実際の所はこの不機嫌さまで含めて、彼に対する甘えでしかない。
本当に、何処までも不器用な甘え方。



「でも―――――――」



その言葉で、葵は動きを止める。
彼に腕を巻きつけたままで。



「―――――ありがとうな、葵。
 薫は危なっかしいし、紫穂にはやり込められてばっかだし。
 君が居てくれて、本当に何時も助かってるよ」



うん。こういうのは、ちゃんと言っとかなきゃな。
そんな風に続けて、照れくさそうに鼻を掻きながら。
しばらく皆本の歩く足音と風の吹く音だけが響いて。
ぎゅっ、と回された華奢な腕に力が込められた。
首を締めるためではなく、強く抱きつく為に。



「・・・・・・えへへ、そっか。
 ウチ、皆本はんの役に立ててたんやな」



そっかぁ、と繰り返した葵は身を乗り出す。
視界に入った彼女の顔に、目を白黒させる皆本。
横目で此方を見る彼に向けて、葵は極上の微笑みを返し
静かに瞳を閉じながら、自分の唇を彼の頬へと寄せた。










よい子 わるい子 ふつうの子

わるい子ではない ふつうの子

よい子でもない ふつうの子



しかられる事は少なくて

ほめられる事も少なくて



けれど忘れないでいて

あなたが愛されてる事を

もしもあなたが寂しいのなら





―――――――甘えたっていい事を

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