ザ・グレート・展開予測ショー

十字架上の七つの言葉(3)(GS美神)


投稿者名:nielsen
投稿日時:(05/10/ 5)

「小竜姫さまッ!!・・・・・・ってなにしてんのアンタ等ッ!!!」

美神令子と氷室キヌが今回の真相を問いただす為に妙神山に行き着いた頃、管理人、ジーク、ワルキューレの三人は仲良く寝込んでいた。
ヒャクメがせっせと額の濡れタオルを代えるなどしている。

「皆敵の妖毒にやられたのね〜。状況に配慮してパピリオを魔界のべスパのところに行かせたのが仇になったわけ。間抜けにもほどがあるのね〜。」

「ヒャクメ!間抜けとはなんですか間抜けとはッ・・・・ごふッ、ごふッ・・・・。」

「美神さん、毒ってひょっとしたら西条さんと同じ・・・・・?」

「み、美神令子か・・・・・・・・ん?・・・・・横島は一緒ではないのか?」

「・・・・・・・・・・・・どう言う事か、説明してくれるわね?」






ICPO日本支部地下施設は当初、アシュタロスに対抗する為に当時の人類の叡智をかけて建造された施設であったが、アシュタロス戦役以後は最終戦争をも視野に入れ、対神魔戦争仕様特殊シェルターの配備を主眼とした。
今回美神美智恵らが辛くも南米から持ち帰った魔神アシュタロスの霊破片を封じることがその最初の利用法となったことは、歴史の皮肉かもしれない。
特殊シェルターは何層にも分かれた複数の術式による複層型耐圧式結界を何重にも張ることによってその耐性を強化しており、本来なら人間界に常駐する神としては有数の武神であるところの小竜姫クラスの攻撃をもってしても攻略は難しい。

「これが・・・・・・・・父さん。」

「なんで涙が流れてくるんだろう、こんなに嬉しいのに・・・・・・。」

「なんて眩しくて暖かいんだろう・・・・・・・。父さん、父さん・・・・・・・・・・・・。さあ、皆で力を合わせて、こんなちゃちな結界から父さんを助け出すんだッ!!」

赤髪の少年が導く百人近い妖魔の子供たちは互いの魔力を共振させ、結界に想定外の圧力をかけていた。
皆身体の各部に十字架上の傷を持ち、痛々しいほどの出血に気付かぬままに力を奮っている。

(・・・・・・・・よ・・・・・・こ・・・・・・・し・・・・・・・・)

(・・・・・せ・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・・せ・・・・・・・・)

虚ろな瞳で両手を掲げる二人の犬神の少女は、魂の奥底で、一人の青年の出現を待ちわびていたのだった。




「・・・・・・・どういうつもりだ。」

ICPO地下施設の上階のビルの入り口。
そこまでたどり着いた横島の眼前に彼をさえぎる黒い影があった。

「ピートッ!!」

「ダンピール・フラッシュッ!!」

問答無用とばかりに霊波砲を放つピートッ!

「っくそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ、美形の貴様を恨む覚えはあっても恨まれる覚えはねぇぞッ!!」

ピートが吸血鬼特有の黒いコートをはだけると、彼のわき腹の辺りに十字の傷跡があり、無造作に流血を続けていた。

「っお、お前なぁ、700年も生きとるくせに聖痕にかかってんじゃねぇッ!!」

横島が悪態を吐きながら右手に霊力を集中すると、ピートは霧化して横島の背後に回りその首筋に牙を突き立てんとする。しかしそれを知ってか知らずか、横島は振り返りもせずに霊力を集中させた両の手を胸の前で叩くッ!

「サイキック・猫だましじゃいッ!!!」

堪らずのけぞるピートの脳天に霊波刀がぶち当てられる。

「ぶーーーーーーーーーーーッ!」

「お前は真面目すぎるんだよ。」

「い、いたたた、あれ?・・・・・・・・横島さん?」

「ふーッ、世話の焼けるやっちゃ・・・。」

思わずその場にへたり込む横島。

「・・・・・・・・・・・・!?いけないッ!横島さん、早く中にッ!アシュタロスの結界が破られようとしていますッ!!」

「何ぃッ!!」

「あ、あと、僕と同じように操られたシロちゃんとタマモちゃんも中にいるんですけど・・・・・・。」

「何ぃ――――――――――――――ッ!!!〜〜〜〜、くそー、どいつもこいつもッ!!」

施設の中に走り込む横島。
ダメージの為に立ち上がれなかったが、ピートは薄く笑っていた。ピートは知っていたのだ。2年前、これと同じ相貌をした男が万象にとって絶望的な状況から、すべてを逆転させたことを。





ばたんッ!!!

扉を開き入ってきた男がいた。

「来たね、兄さん。」

真っ赤な髪をした美しい少年が、横島に向かって微笑する。

「俺の仲間たちを帰してもらいに来た。」

「この人はねぇ、僕らの兄さんなんだよ。でも残念なことに・・・・・」

スコルピオは、己が半身『アンタレス』を具現化する。

「裏切り者なんだ。」

「・・・・よ、横島先生?・・・」

「よ・・・こ・・しまぁ。」

「二人を・・・・・子供たちを返――――」

ピキィーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!

その瞬間、まるで最初から決められてでもいたかのように、その場に張られた結界が悲鳴を上げて消失する。力を使い果たした子供たちは足元からその場に崩れ落ちた。結界の中心に設えられていた霊破片がその輝きを一層堅固なものにする。

「父さんッ!」

「シロッ!タマモッ!!」

地に倒れ伏す二人に駆け寄る横島をテノデラとデュルクスが牽制する。

「兄さん、俺たちに勝てるつもりなのかッ?」

「無理だよ、兄さん。兄さんは弱いもの・・・。」

「・・・・っく。」

横島は懐から文珠を取り出そうとする。

「テノデラ、デュルクス。見てごらん、なんて眩しいんだろう。これが僕たちの父さんなんだよ。」

恍惚とした表情でアシュタロスの霊破片を見つめる三体の魔族。

「・・・・・・・アシュタロスを甦らせて、お前らどうするつもりなんだ・・・?」

「・・・・ふふふ、決まってるさ。」

スコルピオはこれ以上ないというほどの満面の笑みで霊破片を抱えて立ち上がる。

「まず、再生したばかりの父さんと一緒にお風呂に入ってぇ、背中の流しっこをするんだよぉ。そして布団をしいて4人で川の字になって寝ながら、お父さんの若い頃の話を聞くんだ・・・・。寝る時はお父さんにお休みのキスをしてもらって、それから、それから・・・・・・。」

「お、男のファザコンッ!!気色悪いッ!!アシュタロスがルシオラたちを実戦投入した意味がなんとなくわかったような・・・・・。」

「それから・・・・・お前たちGSを根絶やしにするんだよッ!!」

横島に向かって三人の魔族が襲いかかる。
横島はまず最初の文珠に文字を込める。

【模】

「っふんッ!!ここにあった2年前の戦いの資料は読ませてもらったよ。僕ら誰かの能力をコピーしたって残りの二人にやられるのが落ちだッ。そこまで頭が悪いとは、思わなかったよ兄さんッ!!」

しかし横島は続いてもう一つの文珠にも文字を込める。

【模】【造】

「ふ、二文字同時に・・・・・・・・・・!?」

すると横島と三人との間に光り輝く霊体が出現する。

「・・・・・・自分自身の霊体のコピー・・・・?目くらましのつもりかい、兄さん。そんなもの何の役にも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさかッ!?」

「っその、まさかだッ!!食らえ、直列【同】【期】ッ!!!!」

横島が更に二つの文珠を発動させ、自らの分身と同期合体するッ。

「ッく、自分自身の霊体のコピーとの同期合体・・・・・。正気かい、兄さんッ!そりゃあ、シンクロ率は他人との同期との比じゃないだろうケド、結局は自分の魂を無理やり鳴震させてるんだッ。その負荷は全部兄さんの魂に掛かるはずッ!!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」

咆哮と閃光のあと、その場に立っていたのは銀色の鎧に包まれた横島の姿であった。

「・・・・・っふん、美しいじゃないか・・・・ッやれッ!!デュルクスッ!!テノデラッ!!」

距離を詰めるテノデラとバックステップするデュルクスッ。

「食らえッ!!!オーシュゴードッ!!!」

デュルクスの両の手から黒い雷が放出されるッ。
横島は巨大なサイッキクソーサーを展開しそれをあっさりと受けきる。

「な、何ィッ!!」

しかし雷の陰に隠れて二刀を両の手に構えるテノデラが飛来するッ。

「死んでくれよッ、兄さんッ!!」

横島はほとんど真剣のような実体感を持つ霊波刀を具現化しテノデラの二刀と切り結ぶ。超常の剣戟を超常を超えたスピードで捌く横島ッ!拡散した霊波が辺りに飛び散るッ。

「み、見えているというのかい?人間の兄さんに・・・・!?」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

接近戦にデュルクスも参加する。
黒い雷を纏わせた重量感のある拳が横島を襲うッ。
身を翻しかわす横島。
デュルクスの拳圧で床が破砕し瓦礫が宙に舞い飛ぶッ!
テノデラはその瓦礫を蹴りつけながら、横島に三次元的でトリッキーな攻撃を仕掛ける。
しかし横島は霊波刀でテノデラの刃を牽制しながら、空いた左拳でデュルクスのボディを真っ向から殴りつけるッ!

「ぬぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

堪らず瓦礫の山に吹っ飛ばされるデュルクス。

「デュ、デュルクスッ!!!ッひッ!!!」

横島の霊波刀の一撃が双刀のガードごとテノデラをも吹っ飛ばす。巻き起こる噴煙の中、スコルピオの赤い剣が突如横島を襲うッ!
予め知ってでもいたかのように、横島は大剣の一撃を霊波刀で受け止めた。

「・・・・・・・奥の手ってやつかい、兄さん?大したもんだ。」

スコルピオはそういうと赤い髪を揺らしながら、つばぜり合いから離脱して横島から距離をとる。

(はぁ、はぁ、はぁ、ッくそ。想像以上にシンドイ。こりゃ長くはもたねぇぞ。早めに勝負を決めねぇと・・・・・・・!?)

「もう少し兄さんと遊んでいたいけど、僕たちは早く父さんを再生してあげなきゃいけない。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・奥の手を使わせてもらうよッ。」

そう言うとスコルピオがなんらかの呪文の詠唱を始める。
瓦礫の中から立ち上がったデュルクスとテノデラもその詠唱に続く。
異様な妖気が場の空気を一変させる。

「何だッ!!何を始める気だッ!!!」

「僕ら三人から、兄さんへのプレゼントさッ!!!!!受け取ってくれよ、兄さん。さもなければ兄さんの大切にしてるものが一つ残らずゴミ屑になるよ。・・・・・・・・・・さぁ、そろそろ終わりにしようッ!!」

詠唱が完成した時、ICPOの地下施設から発せられた閃光は上階を吹き飛ばし、地下施設はさながら巨大なクレーターのようにその全容を暴き出した。中天には天空の暗雲を背景に纏いて異形の姿をした巨人が現出するッ。

「究極の魔体ッ・・・・・・・・・。」

それは2年前戦った魔体よりも一回りほど小さく、より魔族的な姿をした魔体のβ版であった。

『るおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんッ!!!!!!』

「ど、ど、ど・・・・・・・・・どないせいっちゅうんじゃーーーーーーーーーーッ!!」

魔体の獣じみた咆哮が時間を失った世界を震撼させる。その声は終末に現れると言う災厄の獣のそれのように、聞くものすべてに絶望を与えていた。

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