ザ・グレート・展開予測ショー

皆本危機一髪! (絶対可憐チルドレン)


投稿者名:かいる
投稿日時:(05/10/ 4)

その日、ザ・チルドレン担当管理官・皆本光一は未曾有の危機にさらされていた。

「なぜだ・・・一体何故こんな事になってしまったんだ・・・」





BABEL施設の中を、走る。走る。


自分の中にある、怯えを振り払うように。そして、


追ってくる恐怖に捕らえられないように。








    皆本危機一髪!! (絶対可憐チルドレン)









息が切れてくる。もう三十分は走り通しだ。チルドレンの足手まといにならないために鍛えているとは言っても、体力は無限ではない。汗だくになりながらも隠れられる場所を必死に探す。


隠れられる場所、休める場所は――――――――――――!!


手近な個室に入り、鍵を閉める!


へたり込み、荒くなった息を整える。


おぼろげだった視界が酸素を取り込むことではっきりしてくる。


どうやら使われていない倉庫らしい。薄暗い視界の中、書類の束や古い機材が山と積まれているのが見える。


カビくさい匂い。自分の喉からする血の匂いと混ざって不快感を呼び起こさせた。




このまま音を出さず、気配を殺していれば、いかにあの人といえど、僕を見つけることはできないはず―――――――そう、思ったときだった。









―――――――――――――かつん、









音がする。皆本にとっての、終わりの足音。



視界から色が消え、空気が震える。

汗がほほを伝うのが判る。血の気が引き、喉が音を立てる。




ごくり。やけに響く喉を鳴らす音。聞こえるはずもないのに、居場所を察知された気になる。









――――――――――――――――――かつん、








また一歩。今度はもっと近く。何故近づいているのか。


祈るような気持ちになる。どうか今度の音は遠ざかっていますように―――――――――













――――――――――――――――――――――――――――かつん。









運命はかくも無情なものである。皆本にとっての悲運を具現したかのようなその存在は、最初から彼の居場所がわかっていてあざ笑っているかのように、彼のいるドアの前でその歩みを止めた。そして









「皆本くん、みいつけた♪」



死神が笑う。








運命は、ドアを叩かずに、フッ飛ばした。―――――――――サイコキネシスで。





壊れたドアと、もうもうと立つほこりの向こうに、影が見えた。

気圧されまい。気圧されたら一気にたたみかけられる。開き直れ。心が折れたら負けだ。

そう自らを叱咤して、皆本は叫ぶ。





「―――――――っっっっ!一体何だって言うんですか!何が目的なんですか!

















兵部少佐!!!」





彼は、白髪に学生服、涼しげな目元をした青年の格好をしていた。

彼の名は兵部京介。エスパー犯罪史上最悪の人物として名高い存在である。




「やだなぁ、目的?そんなものはひとつしかないよ。・・・・・・わかってるだろう?」



「――――――チルドレンか!あの子たちには指一本触れさせはしない!僕を人質に取ろうったってそうはいかないぞ!」





間。





「?ああ、あの子たちか。大丈夫、彼女たちに手を出すつもりは今のところ無いよ。僕の名に誓ってもいい。」



「?なに?どういうことだ?」





誓うものが自分の名というところがいかにも彼らしいが――――――どうやら本当に今回の襲撃の目的は彼女たちではないらしい。



であるならばなぜ隠密裏に――――彼の催眠能力によって、所員は彼の存在に気づけないようだった。おかげで全力疾走している僕を物珍しい目で見られた。ちくしょう。――――ここを襲撃する必要があったのか?解せない。




クスクスッ

彼が笑いながら喋る。



「どうやら本当に判らないようだね・・・・・・なら教えてあげよう。―――――――僕はね、目覚めたのさ。」





「――――――――はい?・・・・・・・・・・・・・・・何に?」




「決まってるだろう。











       <Font Size="7">真実の愛にさっっっっっ!!!」










つうこんのいちげき!

みなもとはからだがしびれてうごけない!




「な・・・な・・・・・・・・・?」





「僕はね、ノーマルとエスパーとの共存なんてあり得ないと思っていた。いや、その思いは今でもゆらがないが・・・・・・君と、あの子たちとの触れあいを見ていて思ったんだ。」




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


皆本としても、最悪の未来を避けようと日々必死だった。その行いを評価されて悪い気はしない。



「君は本当に超能力を持たないまま、分け隔て無く彼女たちに接してくれる。そして大事に思ってくれている。

僕は思ったよ。君のような男がもっと昔の日本にいてくれたら―――――――僕はこれほどの罪を犯すことはなかったのかも知れない。」





「そんな、今からでも遅くはないだろう!改心するのに遅いも早いも―――――――!」




「そう!今からでも遅くはないっっっ!僕はやっと気付いた、君への愛を成就させるため、ここに来たのさっ!」







「人の話を聞けえっっっっっ!!!頼むから!




大体あんた、薫のことはどうすんだっっっ!花嫁とか女王とか言ってた癖にっっ!」









「ハッハッハ!嫉妬かい?マイダーリン?「ダーリン言うなっっ!」


心配いらないよ。今の僕に見えているのは君だけさっ」







だ、ダメだ。完璧に壊れている。話が通じない・・・・・・・・・!







じりじりと少佐が近づいてくる。なぜか手をわきわきと動かしながら・・・・・・




「さあ!皆本君、ゆこう!めくるめく愛の逃避行へ!」






「い――――――――や―――――――――――だ―――――――――っっっ!!」










「そうはいかんヨ!」



「むっ!?この声はっ!!」



爆音!煙で一瞬何も見えなくなる。


その煙の向こうに現れたのは―――――――パワードスーツに身を固めた、局長!




「無事かネ?皆本。」



「局長・・・・・・・・・その格好はいったい・・・・・・。」




「その話は後だ。皆本。―――――久しぶりだネ?少佐。」





局長がサブマシンガンを構え、身を乗り出す。


「少尉、あんたに皆本君はヤらせないヨ!ワタシがこの身に賭けても彼を守る!
そう!愛故に!




「局長!?いったい何を





「クックック、言うようになったねぇ、桐壷君。しかし僕の萌える(誤字にあらず)思いは誰にも消せない!そう、女王でさえもねっ!」





・・・あんたらどこに話を持って行ってるんだ―――――――――!」







「アンタの扱いには悩まされてきたんだヨ!ここらで後顧の憂いを断ってやるとするかネ!」



「フン!君ではボクたちの愛の障害としては役不足だと判らないようだねぇ!?」





「だから人の話を聞けえええええええっっっっ!!!」






―――――――――――そんな皆本の叫びも空しく。










辺りは閃光に包まれた。









その日、BABEL施設は、戦闘によってその30%が破壊されるに至った。







その騒動の中心にいたのはひとりの疲れた顔をした管理官だったそうである。











―――――ちなみに、騒動がどう収束したかというと、互いに一歩も譲らず、長時間にわたる戦いを行った両者が疲弊したところを、某特務エスパー3人娘がおいしいとこだけかっさらっていったらしいことを追記しておく。




「一応・・・・・・・・・・・・助かったといえるのかな?」




「感謝しろよ〜?皆本ぉ!貞操を救ってやったんだからな!!」
「全く、油断も隙もあらへんな!皆本はんもボンヤリしてたらあかんで?」
「皆本さんのは予約済みなんだから・・・・・・ね?」






「〜〜〜〜〜〜っ!僕の周りはこんなんばっかりなのか・・・」





皆本君に幸あれ。       





「フフ・・・僕はあきらめないよ?皆本君?」 あれ?

(了)

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