ザ・グレート・展開予測ショー

カプセルの中の母(中)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 6/18)

[あれか・・・?」
ザックに乗った雪之丞は、そのカプセルを視認したところで、厄珍大佐から直接に手渡された命令書を開封した。
そう命令されていたからだ。
『小竜姫が交渉後に、敵艦から帰らない間に、敵がカプセルを奪取する行為をみせた場合もしくは、それに準ずる行為をした場合にはカプセルを狙撃せよ』
「カプセルを狙撃しろ・・・?」
意味がわからなかった。
雪之丞は、小竜姫の一号機が戻ってこない場合の戦闘命令が入っているものだとばかり思っていた。
「カプセルは爆発でもするのか?」
それは考えられることである。強力な爆弾、例えば核爆弾でもあれば、一瞬にしてこの空域に展開する敵味方のマシーンを殲滅することができるであろう。
「しかし、まさか自軍のMSまでやるわけはないし・・・」
巨大な信号弾であるというのも考えにくかった。
雪之丞は、望遠レンズをとおしてそのカプセルがなんであるのか探ろうとした。が、小さすぎてよくわからない。
雪之丞は、自軍の艦から射出されたものに銃を向けるのは不思議なことだと感じながらもザックの機体をカプセルの方に近づけていった。
「・・・なんなんだ・・・?」
しかし、雪之丞はそれ以上考えようとはしなかった。
この緊張した時間の中で自分を保たせるだけで精一杯であった。
なにしろカオス教のメンバーは実戦が初めてなのだ。


「MS勢力比をどう見る?」
「敵のMK-U二機をアーギャマに封じ込めておけば成算はあります。カプセルに本当に人質がいるのならば・・・」
「カメラはどうしたんだ!」
准将は、唐巣を督促した。
「急がせています」
カプセルを観察するためのカメラが射出されていた。それが、カプセルまで近づくのに間があった。
「西条大尉、人質のことは考えるな。強行脱出する・・・」
「ですが・・・」
「君は厄珍のことを知らんのだよ・・・いいな?」
「はい!」
西条の明瞭な返事が返ってきた。
「カプセルに人が・・・!」
射出されたカメラのモニターがカプセルを捉えたのだ。
「女です!女がいます!」
監視兵が金切り声をあげた。
「見せろっ!」
ブリッジの何面かのモニターにそのカメラの捉えた映像が映し出された。
確かに、女性が一人いた。
人がひとり入れるくらいの透明なカプセルに、私服のままの女性が閉じ込められているのだ。
「奴が・・・!」
准将は、その女性の生命のことは考えていなかった。人質作戦を実行した厄珍という男の顔を思い浮かべてカッとしていた。
「こちらっ!MSデッキ!ガキに騙された!」
准将がMS隊の急発進の命令を出そうとした時だった。
「なんだ!」
唐巣艦長は、そのデッキの報告というよりも、狼狽がそのまま跳びこんできたようなモニターに怒鳴り返していた。
「ちゃんと報告しないかっ!何が起こったのだっ!?」
「MK-Uが奪取されました」
「奪取!?カオス教にかっ!?」
「違います!ガキです!あの横島とか!」
唐巣は、左右のモニターを見た。
ブリッジの窓からは、左右のカタパルト甲板が見えた。
その左からMSのテールノズルの閃光を輝かせて、大きく機体を揺らせながらMK-Uが走り出て虚空に飛んだ。
「横島がMK-Uで出ました!」
それが、アーギャマの前方の空間で左右に大きくジグザグに転舵していった。
「なんで阻止できなかったのかっ!」
「西条大尉、まかせる!」
准将は、状況に対応することをいちいち命令してはいられないとわかっていた。実戦経験者の勘である。
「了解!」
西条の赤いMSがブリッジの窓から離れた。
しかし、西条はうかつに追いかけようとはしなかった。
敵の真意がわからないからだ。
まして、横島のMK-Uが敵にまわるということも考えられた。
「まさかな・・・」
一瞬、西条の中に迷いが生まれた。


「カオス教め・・・!!」
横島は、MK-Uの二号機のなかで唇を噛んでいた。
「あれにおふくろが!?」
カプセルの航空標識灯は、すぐに視野にいれることができた。
横島が迷ったのは発艦後の数秒間であった。
あとは、一直線にカプセルに向かった。

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