ザ・グレート・展開予測ショー

十字架上の七つの言葉(2)(GS美神)


投稿者名:nielsen
投稿日時:(05/10/ 3)

「・・・・・・・・こ、これは・・・?」

「なんか隠してると思ったら、あの馬鹿・・・・・。」

病院を出た後、二人が向かったのは事務所ではなかった。最近の横島の挙動に不審を感じていた美神はおキヌを伴い横島のアパートに来ていた。

「こ、こんな、こんな切れ目の入ったコンニャクなんて一体なんに使うんです?」

「そっちじゃないし、おキヌちゃんはそんなこと気にしなくていいのッ!!!こっちよ見て欲しいのは・・・・。」

横島の狭い部屋の洗面所には血のついた大量の包帯が捨て置かれていた。

「尋常じゃない量ね。ただ怪我を隠してるってわけじゃないわ。」

「横島さんは病気なんですか!?」

おキヌが悲鳴に近い声を上げる。

「あの馬鹿一人で戦うつもりなのよッ。・・・・・ううん。戦うつもりなんかないんだわ。」

そう呟く美神の表情にはある種の決意が湛えられていた。



「何なんだいきなりッ・・・・・?」

白い光が世界を少しづつ次の朝へと導く時間の狭間、帰路につく横島は三鬼の魔物に襲われていた。

「父さんはどこだぁ。」

黒いレザースーツのデュルクスが横島に向けて拳を一閃する。
それをかわす横島。
アスファルトの地面に、クレーターのような大穴が出来上がる。

「兄さんが隠してるんだ。」

緑色のテノデラが腰から二本の剣を引き抜き横島に切りかかるッ!!

「っく、ハンズ・オブ・グローリーッ!!!」

横島は霊波刀を出現させそれを捌く。
しかし数度切り結んだだけで横島の霊波刀は宙に霧散し横島は吹っ飛ばされてしまう。

「ひ、ひぇ〜、なんなんじゃお前らはッ!!!」
(つ、強い。流石に、ルシオラたち並の力だ。・・・・・気は進まんが、アレを使うしかないか・・・・・・。しかし・・・・・。)

「俺はお前らみたいな可愛げのない弟三人も持った覚えはねぇぞッ!!」

「あんたは僕らの兄さんさ。僕らと同じ霊基配列を霊体に持っている。あんたには僕の毒も効かないだろうしね。」

「赤い服・・・・蠍・・・・・お前がスコルピオか?」

「あの女に聞いたんだね。そう、僕はスコルピオ、蠍の化身さ。こっちは蟷螂のテノデラ。そしてクワガタのデュルクス。僕らは皆父さんが作ってくれた兄弟なんだ。」

そんな会話の中、横島は左右の手に二つづつ、四つの文珠を用意している。
戦闘の間にいつの間にか横島のバンダナは包帯ごと裂け、その額は剥き出しになっていた。

「その額・・・・・。兄さんも聖痕症候群なんだね?聖痕はね、兄弟の証なんだよ。」

スコルピオがスーツの前をはだけると、その右胸に十字架上の裂傷がありうっすらと血を流している。
デュルクスが右腕を、テノデラが左足を晒して同じ傷を見せる。

「(どういうことだ・・・・!?コイツラにも傷が?てっきりコイツラが聖痕の原因かと思ってたのに・・・・・・。)」

「宇宙が僕らの邪魔をしている。僕らの成長を止めようとしているッ!みんなで力をあわせて宇宙に仕返しするんだッ!!!」

「仕返し・・・・・・?お前らまさか・・・・コスモ・プロセッサを・・・・・!?」

「さぁ、父さんはどこだい、兄さん?父さんが必要なんだ。ネオ・ジェネシスにはどうしても・・・・・。」

「やらせるかッ!!!クソ餓鬼どもッ!!!!!!!」

突然横島と三人の間に光の束が降り注ぐッ。

「これは『精霊石砲』・・・・?」

スコルピオは怪訝そうに光の出元を睨みつける。

「魔界の技術を結集した。行くぞ、ジーク。」

「イエス・サーッ!!」

それは魔界正規軍の軍属にして魔族の兄弟である、ジークとワルキューレの二人であった。

「はぁーッ、バルムンクッ!!!!」

ジークの手には異様の剣が握られている。幅広で、柄には青い宝玉が埋め込まれている西洋剣。それだけなら普通の剣だが宝玉の中央には眼球のようなものがあり、柄には牙のついた口のようなものがついている。

『ゲギャギャギャギャギャギャ。血だッ。血をよこせッ!!!!』

ワルキューレはデュルクスを牽制し、ジークはテノデラと切り結ぶ。

「ジークッ!!!!ワルキューレッ!!!!!!」

「しばらくだなッ、横島。手伝いに来てやったぞ。あいつもな・・・。」

「あいつ・・・・・?」

「仏法の名の下に神剣の錆になりなさいッ!!」

「小竜姫さまッ!!」

現れたるは妙神山の管理人にして神剣の使い手小竜姫っ。
その攻撃をスコルピオは己の身の丈ほどもある赤い大剣で受け止める。

「僕の分身『アンタレス』・・・・・。邪魔だよ、お前たち。」

スコルピオが力を込めて剣を一閃すると赤い風が巻き起こり、その場の全員に細かな傷をつける。

「小ざかしい真似は止めなさいッ!」

小竜姫の一撃を軽々とした動作でかわすスコルピオ。
大剣を負っているとは思えぬ身軽さで、そのまま宙に浮かぶ。

「興が殺がれたね。デュルクス、テノデラ。父さんはここじゃないみたいだ。やっぱり本命はあっちだね。ここはもういい。」

「行かせると思うかッ・・・・・!?」

ワルキューレが精霊石砲を撃ち放つ。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!」

デュルクスが両の腕に力を込めると、そこから漆黒の雷が発せられ、精霊石砲の閃光を軽々と相殺し、余りある力で再び大地をえぐるッ!!!

「・・・・・・・・・・ック・・・・・・・?・・・・・いない・・・。」

「今の隙に逃げられたようですね。」

小竜姫が神剣を鞘に納める。

「物凄い威力の霊波砲・・・・。アシュタロスめ、厄介なものを。」

ジークがなにやら唱えると、バルムンクと呼ばれた気持ちの悪い剣が悪態をつきながら虚空へと帰っていく。

「横島ッ。その額・・・・・聖痕だな。」

「これがなんだか、お前たちには分かっとんのか・・・・!?」

ワルキューレは精霊石砲を肩に軽々と担ぎながら話し始める。

「聖痕は体内に入った異物を取り除こうとする過剰な働きが原因らしい。言ってみれば体内の宇宙意思のようなものが、入り込んだ邪悪な物質を排除しようとしているのだ。」

「異物・・・・?」

怪訝そうな横島。姉の言葉の続きをジークがつなぐ。

「横島君、つまり君たちの病の正体は霊基構造のアレルギーなんだよ。」

「二年前、アシュアロスによって大量の魔素が現界にばら撒かれました。人間界で生まれた妖魔たちにとってあまりにも濃度の濃い魔素はむしろ毒。年若い妖魔たちの肉体は自らの力で、その魔素を体外に追い出そうとしているのです。しかし、聖痕はその刻印を押されたものが若く力強い魂を持つことを示す印でもある・・・・・。」

「奴らは、小規模ながらコスモ・プロセッサをもう一度作り出そうとしている。その為に聖痕を持つ妖魔の子供たちを集めているらしい。そいつらの魂を素材にして、簡易的なエネルギー結晶を作るのだろう。演算範囲は知れているが、奴らはアシュタロスの霊波片を手に入れようとしている。究極の魔体に残されたアシュタロスの霊破片・・・。」

そこでワルキューレは口を紡ぐ。
小竜姫は頷き、言葉の後を引き継ぐ。

「その気になればもう一度アシュタロスを作り出すことができるのです。」

「それが、奴らの目的・・・・・?」

「あの三人はアシュタロスに対して妄執にも似た執着心を持っています。どんなことをしても目的を達しようとするでしょうね。」

「なに、安心しろ横島。今回はフル装備の我々がいる。貴様らGSの手は煩わせんさッ。」

「そ、そうか。さっきスコルピオの攻撃を食らってたけど毒も大丈夫そうだもんな。そうだ、血清があるんだったら西条に分けてやってくれんか?」

何故かその瞬間、彼らの時間が止まった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・毒?・・・・・・・・・・。」

「グフッ。」

「ガハッ。」

「ゴフッ。」

「あ、姉上。どうやら僕たちは妖毒に感染したようです。これでは十分な力が発揮できない。ここは一旦妙神山に――。」

「そ、そうだな。そういうことだ横島ッ。今回もお前たちを頼ることになりそうだ。口惜しいがお前たちの力を信じているぞ。」

「横島さん、その〜、頑張ってくださいね。」

そして強力な力と叡智を持つはずの三人の神魔はその場からテレポートしたのだった。

「お、お前ら・・・・、何しに来たんじゃーーーーーーーーーーーッ!!!!」

太陽がその頭を見せる頃、横島の絶叫が轟いていた。




『駄目ですッ!!シロさんッ!タマモさんッ!』

「来るんだ、二人とも。治してあげるよ。」

(駄目・・・・何で?・・・・・・・・逆らえない・・・・・。)

(・・・・・・っく、よ・・・・しま・・・せん・・せ・・・・。)

人工幽霊の必死の呼びかけも二人の心には届かない。
炎のような赤い頭髪をした少年は何十人という妖魔の子供たちを引き連れ、ICPO地下シェルターに向かおうとしていた。





(続)

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