ザ・グレート・展開予測ショー

夢のおまけ。(絶対可憐チルドレン)


投稿者名:かいる
投稿日時:(05/ 9/29)

「くそっ!女王からの連絡はまだ無いのか!」




苛立った声が響く。ここは日本の某所、対BABEL超能力者組織MJOLNIR(ミョルニル)の潜伏基地、そのひとつである。







一度見出された技術はその進化を止めることはない。ESPという未曾有の技術、人間のまだ見ぬ可能性を秘めた技術は6年間という短い時間で文字通り、飛躍的な進歩を遂げた。


ヒトの精神でもって物的世界に干渉を遂げる力、それは超度が上がれば上がるほど、対費用効率を上げる能力と言える。


ESPは結果として様々な技術に取り入れられ、輝かしい業績を掲げることになる。このことに多大な貢献をしたのが、内務省特務機関超能力支援研究組織であるBABELである。その功績はESP政策を推す政府と国民に大いに称えられた。


しかし、輝かしい一面があれば、その影もまた濃くなるものである。時としてESPは個人単位で本来なら考えられないほどの破壊力を持たせる。そんな技術が軍事方面の関係者に目を付けられないはずはなかった。


情報の流出―――――建前上ではあってはならないそれは、BABELほどの大規模な組織では完璧に防ぐための手立てはない。


結果としてBABELという組織は、国を大きく躍進させ、人々の生活を豊かにした反面、人々の生活を脅かす軍事技術を生み出してしまった。


量産される、兵器としての超能力者、普通人からのやっかみを受けて迫害される超能力者。6年という歳月は、技術の進歩、そして抑圧されたエスパーたちが暴発するのにも充分な時間だった。


道具として使われることを良しとせず、一部の高超度エスパーたちはついに立ち上がる。迫害の発端となった技術の流出、その元を断つために対BABEL超能力者組織MJOLNIR(ミョルニル)の発足を宣言したのである。


普通人による過激派地下組織「普通の人々」もその対立の構図に加わり、現状は三つ巴の様相を呈していた。


超能力者と普通者と調停者の諍いは今まさに佳境にあり、その戦いは世界にまで累を及ぼし、戦場を転々と変えていた。いつしかそれは超能力を巡る戦い――――――ESP大戦と呼ばれるようになる。




戦いは膠着状態に陥っていた。ミョルニルには3人の超度7のエスパー・・・いずれも女性・・・が在籍している。彼女たちは、とある事件によりBABELから脱退し、ミョルニルへと籍を移してきた。


持ち前の破壊力でもって敵対勢力を蹂躙、主力の名に恥じぬ活躍を見せていた彼女たちだが、ある日を境に忽然と姿を消すことになる。


主力の欠損、それはこの戦いにおけるミョルニルの優位への決め手を欠き、戦局の膠着状態を招くこととなった。ここで話は冒頭へと戻る。







その力の大きさ故に「破壊の女王」と二つ名を受けた彼女と、その良き仲間であるふたりが消えてから数ヶ月・・・依然としてその足取りはつかめないままであった。組織の下部では死亡説がまことしやかに囁かれ始めている・・・そんな頃。



「いえ・・・未だ報告は入ってきていません。同時刻にロストした野上さん、三宮さんについても同様です。」


「くっ・・・・・・しかし、あの人たちがそう簡単に死ぬはずはない!念波の傍受を怠るんじゃないぞ!」


そう、一度でも彼女たちの行動を直に見たことがあるものならば、彼女たちが死んだなどという発想は出てこない。あの圧倒的な力。対抗しようとか、そんなことを思うことが馬鹿馬鹿しく思えてくるようなあの力を有しているあの三人がこちらにメッセージを残すこともなく、死ぬはずがない。


それは確信にも似た思いであった。信仰といってもいい。


結果として、その予想は的中することになる。









「あのー・・・・・・。」



「・・・ん?なんだ!用件ははっきり喋れ!」



「い、いえ、この基地当てにエアメイルが届いているのですが・・・・・・。」



「?エアメイル?偽装も無しにか?」





いちおうこの基地は所在は機密扱いになっている。タ○ンページに載っている基地など、内戦状態になっている現状ではシャレにならないからであるのだが・・・そんな状況下で、情報の伝達にただのエアメイルを使うとは考えにくい。





「・・・解析はしてあるのだろうな?」



「ハッ、危険物である可能性はありません。」





サイコメトラーによる危険物判定はかなりの高精度で危険物とそうでないものを選り分ける。そんなことは先方も重々承知であるはずなのだが・・・だからこそ怪しさが募る。





意を決して手紙の封を開けて読むと。


そこには件の人物による簡潔な、しかし理解しがたい文が綴ってあった。
















        「わたしたち、結婚しました。」














「「「「「なに―――――――――――――――ッッッッッッ!!!!!」」」」」














その日、世界が揺れた。












    夢のおまけ。 (絶対可憐チルドレン)









その日、全国に散らばるESPにまつわる各機関(要はチルドレンにある程度関わりがあった組織)に、一通の手紙が届いた。


簡潔な文とともに写真が添えられている。


ウェディングドレス姿をしている妙齢の美女三人の写真、その中心にはなぜか縄で幾重にも拘束されている白いタキシード姿の眼鏡を掛けた青年が写っている。



どの女性の表情も実に幸せそうにほころんでいるのが印象的な写真である。―――――――男性の引きつった泣き笑いでおつりが来そうではあるが。







実際問題、彼女たちはこの戦いにおけるキーパーソンであった。テンションにより調子の善し悪しはあるものの、ECMを無効にする存在は彼女たちぐらいのものである。


結局のところECM,ECCMの運用が明暗を分けるこの戦いにおいて、彼女たちの存在はまさにジョーカーと言ったところであった。



その彼女たちの実質の戦線離脱宣言。



この一通のエアメイルの戦略的影響は計り知れないものであった。



・・・余談ではあるが、そのルックスも相まって、彼女たちにはファンクラブも存在するほどであった。

曰く、



「破壊の女王様を崇める会」


「葵ちゃんのためなら死ねる集い」


「紫穂たん(*´Д`)ハァハァクラブ」



―――――――――作者のネーミングセンスも含め、なかなかのイカレっぷりである。


要は、彼女たちの離脱はエスパーたちの士気低下をも招きかねない事態であった、ということである。




そして、そんなファンたちのやるせない怒りは当然ひとりの男に集中することになる。



写真に写っているどこの馬の骨とも知れない男である――――――――。




「ウチの女王様のみならいざ知らず・・・・・・。」

「三人まとめてだと・・・・・・どこの王侯貴族じゃいコラ・・・・・・」

「う、ウェディングドレス姿の紫穂タンハァハァ(*´Д`)」





一部、電波が混線したようだが、大まかに言えば上記のように、
主力を失い、組織全体の士気は低下するも一部の(主に結婚適齢期の独身男性)闘争心は大きく上昇したとの報告が入っている。













―――――――――――ゾクッ



「どうしたの?皆本さん?」


「いや、なんか不特定多数の人間の恨みを買ったような気が―――――――」




所変わって、某南の島――――――リゾート中の一行がいた。





「恨み?まぁ、妬み嫉みだったら買うかもわからんな、なんてゆうても――――――」


「――――こんな美人妻を3人もはべらしてるんだもんな!」






葵に合いの手を入れて、オッサン笑いをする薫。いつものことながらこいつの趣味には頭が痛くなる。





「〜〜〜〜、だから、君らは少なくとも法の上じゃ僕の妻じゃないだろう。重婚罪になるってば。」





彼女たちに拉致されてから、何度同じ台詞を言ったろうか。帰ってくる台詞もいつも同じであるから、返答も予想が付く、が・・・







「「「ま、今のところはね。」」」






こいつらが言うと冗談に聞こえないから怖い。・・・・・・冗談、ですよね・・・・・・・・冗談だと言ってくれ・・・・・・・・・。






「無理が通れば、道理引っ込む。昔の人は良いこと言ったわね。そう思わない?皆本さん?」

紫穂が微笑む。



「法なんて、所詮人間のつくったもんや。『既成事実』にはかなわんわ・・・なぁ?皆本はん?」

葵がほくそ笑む。



「ま、時間はたっぷりあるんだ。皆本のそういうカタイとこも好きだけど、ゆっくりあたしら好みにしてやんよ。」

薫が豪快に笑う。







          「愛してるわ、皆本さん」
          「愛してるで、皆本はん」
          「愛してるぜ、皆本」






こいつらの笑顔が、本当に嬉しそうだから、僕は逆らえない。


こんな素直に思いを伝えられたら否定できるわけがないのである。


こんな状況もまんざらじゃないと思っているあたり、陥落する日もそう遠くはないのだろう。・・・不本意ではあるのだが。


最悪の予知は一応は回避された。僕は彼女たちとともにこれからも歩んでいくのだろう。紡ぎ出される未来はどんな色をしているやら・・・。




前途は(主に僕にとって)多難ではあるが、願わくば、未来が彼女たちの笑顔で満ちていますように。








追記:彼女たちが世界を掌握し、生活がようやっと落ち着いてきた頃、一定の周期で自称ファンクラブ会員からのカミソリメール・果たし状がダース単位で僕宛に舞い込んでくることになった。


判っていたことではあるが、前途は思った以上に多難であるらしい・・・・・・

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