ザ・グレート・展開予測ショー

夢の続き(絶対可憐チルドレン)


投稿者名:かいる
投稿日時:(05/ 9/27)

皆本は熱線銃を携え、薫と対峙していた。




背景には崩れる街。それは、終わる世界を象徴しているようで。





「ねぇ、知ってる?皆本……。あたしさ――――――」



予知が完成する。破滅の扉が開かれる。それが成就することは皆本にとっての敗北、死刑宣告にも等しい。そこに至るまでに、止められなかった責任は自分にある。皆本は覚悟を決めようとして―――――――――










「知ってたよ?この予知のこと。」




「はい?」    間抜けな声しか出すことができなかった。









―――――――― 予知は、成就しなかった。











   夢の続き (絶対可憐チルドレン)











「………。」



「おい、皆本?みーーーなーーーもーーーとーーーー!」



沈黙。とりあえず、予測を超える事態に、思考がフリーズする。




薫が既に予知を知っていた?そうなると、皆本の予定は大幅に狂いが出る。



そもそも彼女は何を思ってこの場に立っているのだろうか。わからない。






ようやく思考が再起動を果たす…ものの…





「えっ…だって……知ってたって………お前…え?」




混乱。

まともに言葉も紡ぐことができない。無理もないことである。

チルドレンが皆本の手を離れて幾年月、予知は悪夢となって皆本を夜毎にさいなんだ。そんな中、彼は文字通り、命を賭して彼女たちを守る覚悟を固めていたのである。


その前提を覆す出来事。喜んで良いのか悲しんで良いのかすら判らない。





「…い、いつごろから?……あ、葵たちも知っているのか?」



「うーーん、12,3のころからかな〜、紫穂から聞いた話なんだから、もちろん三人とも知ってるぜ。」







どげ――――――――――――――――ん。






文字にするとこんな感じ。



必死に隠していたことが、正に筒抜け。“ドッチラケ”である。









「…ぼ、僕のこれまでの心労はいったい……」



この段になると決意もヘッタクレもない。台無しと言える。



12・3歳になるころ、彼女たちの超能力はこれまでに類を見ないほどの成長を遂げた。


その中で紫穂の力も成長を遂げ、皆本の思考プロテクトを解くに至ったのだろうと推測される。


ここで、落ち込んでいく皆本の思考が違和感を感じ、その行動を止めた。



…待てよ。あの予知が仮にチルドレンに漏れたとするならば――――――






「なぜ、君たちはこうなる予知を避けなかったんだ?」





どう考えても、この予知の未来は誰にとっても幸福とは言い難い未来である。できる限り避けようとする予測であろう。
皆本と薫の一対一の対峙に至るまで事態を進行させるような危険な真似は、できる限り避けようとするはずなのである。



チルドレンに真相を知らせることなく未来を変えようとした皆本ではあるが、未来を変えるには当事者である薫、皆本の両名の意識を変え、最悪の未来を避けるようお互いに協議することが一番の近道に思えた。




「…知りたい?」




後ろを振り向きながら答える薫、その表情は窺い知ることはできないが…何故だろうか。その顔は何か悪巧みをしているときの、ニヤリと音がしそうなカゲの入った笑いを形作っているように思われた。





――――――皆本の血の気が引いた。――――――――――









ヤバイヤバイヤバイ…長年培ってきた皆本の不幸センサーが全力で告げる。この質問に答えてしまえば――――――――ロクでもないことが起きるっ!!




「いや、答えたくないなら答えなくて―――――「葵っ!」―――えっ?」



「はいなっ!」



僕の後ろに、輝きとともに葵と紫穂の姿が現れる―――――


しまった――っと思ったときにはもう既にECMと熱線銃をテレポーテーションによって奪われた後。


ECMは発生した力場を他者に関知される。薫との争いに他者を介入させまいとECMを切っていたのがアダになった―――――!




「チェックメイトや。」




薫のESPによって地面にはいつくばりながら、皆本は自分の判断を後悔していた。



「熱線銃も取ったし、これで自殺もできないわね。」



紫穂がそうこぼす。………っ、そこまで行動を読まれているとは。改めて接触感応能力者としての紫穂の能力の高さを思い知らされる。





紫穂が偵察、立案、葵が移動、奇襲行動を行い、薫が決める。今回は薫が囮となった形だが、いつもの連携、皆本がよく知る連携と言える。



しかしながら…誰よりも僕が知るいつものコンビネーションであっても…実際問題、リミッターも無しでは対応できんっ!!








「あー、話の続きだったな、…なんだっけ。」 か、薫…とりあえず拘束を弛めてくれ…こ、声も出せん…。視線で意思表示する。その甲斐あってか薫には、苦しいという意思が通じたようだ。



「ああ、ワリィワリィ。」サイコキネシスが弛む。ほっと一息ついたこちらを見て、薫が話を進めた。



「…で、こうなることを避けなかった理由だったよな。…う〜ん、話すと色々あるけど、要はあたしたちにとって都合が良かったから!」




「はいい?」 





イミが全く判らない。薫を僕が殺す(既にそんな状況ではないが)状況が都合が良い?彼女たちの思考が読めない。

詳しい話を聞いてみると、彼女たちの言い分はつまりこういったことのようである。






・あたしたちがBABELに在籍していない。
・皆本が単独行動していて、なおかつ監視する存在、護衛する存在がいない。
・あたしたちが概算で16歳以上。=オ・ト・ナ(コレ最重要)





・・・これが望ましいと思われる条件の一覧である。もう、聡明な皆様ならおわかりだろうか。





嫌な汗が出てきた。それでも一応聞いてみる。

「…だいたい想像はできたんだが…一応聞くぞ。この状況が何に都合が良いって?」










「「「皆本(はん)(さん)の拉致(や)(よ)。」」」





「皆本さんに釣り合う年齢にもなったことだし…。」

「ここらでいっちょ、世界を征服しに乗り出してみようかな、と思うワケよ。ま、そのついでに…。」

「皆本はんをさらって、三人の共有物にしようってこっちゃ。美少女三人の共有物なんて男冥利に尽きるなあ、皆本はん。」








「イ―――――――ヤ――――――――だ―――――――――っっっっっっ!!!」






暴れる皆本。しかし武器の一切を葵に奪われ、薫によって宙に浮かされている状態では何ができるわけもない。





「残念だけれど、一度命を捨てようとした皆本さんに拒否権はないわ。」


紫穂が微笑みながら無情にも宣言する。



「さぁて、暴れたいだけ日本では暴れたし、ほとぼりが冷めるまで南でリゾートすっかなぁ!皆本ぉ!水着選ぶの付き合えよな!待ってろ!ブロンド美人〜!」


薫がおなじみのオッサン笑いでわめく。



「ったく、移動すんのはウチなんやからな!軽く言ってくれるわホンマ!皆本はんにメシでも奢ってもらわんとワリに合わんわ!」


葵が相変わらずの口調でつぶやく。











…僕は、彼女たちが未来を変える力を信じていた。どんな闇の中でも、光を見出す力を持っていると信じていた。だが…………




「「「これからもよろしくね?皆本(はん)(さん)?」」」




決してこんな方向じゃなかったはずなんだが!!!(号泣)








「こんのクソガキども――――――――――――――っっっっっ!!!」






不本意ながら、この夢のような日々は続いていくようである。



  




       夢の続き 了










追記:エスパーとノーマルの戦いは依然続くも、決定打を欠いたこの戦いは両陣営に無為な疲弊・消耗を招いた。



両陣営が疲れ切った折、どこからともなく、たっぷりと世界の景勝地巡りで充電した三人のエスパーが現れ、次々と国家の中枢を掌握、無為な戦闘を停止させた。



各国家の機密を握り、裏から世界を掌握することになったその三人のエスパーの傍らには、なぜかいつも疲れた顔をした一人のノーマルと思わしき男性の姿があった…………らしいが、それはまた、別のお話。


今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa