ザ・グレート・展開予測ショー

ごーすとすいーぱーとは


投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:(05/ 9/22)

 ゴーストスイーパー。それは悪霊や妖怪、時には悪魔とも戦い、祓う現代のエクソシスト。

 だが、その実態は謎と神秘のヴェールの向こう側だ。

 今回、その彼らの知られざる仕事振りを取材する機会に恵まれた我々は、さっそく業界でも有名な除霊事務所へとお邪魔した。


「どーも、電話しておいたMHKの者ですけど」


 さすが一流のGSというだけあって、都内の一軒家。それも洋風の歴史ありそうな立派なお屋敷だ。我々はまず、中に聞こえるように大きな声で呼びかけたが、その直後、最初の驚くべき出来事が我々を襲った。


「ようこそ。中へお入りください」

「うおっ!?」


 なんと、誰もいないのに扉が開き、声が聞こえたのだ!

 これぞまさしくオカルト現象。事務所へと第一歩を踏み出す前に、我々を神秘体験させてくれるとは!

 さすが業界でNo1の呼び声の高い美神事務所。ギャラも業界一高いだけはある。


「初めまして。今日1日、よろしくお願いいたします」

「いーえ、こちらこそ」


 先ほどの姿無き声の主は人工幽霊壱号といって、この家そのものでもある、名前の通り人工の幽霊なのだという。

 そう説明してくれたのは、今カメラの前でにこやかに挨拶してくれた女性。この事務所のオーナーで経営者の美神令子女史だ。

 今や絶滅して久しい大胆なボディコンを着ているあたり、GSは普通では勤まらない事を我々に暗示している。


 トゥルルルル トゥルルル

「はい、美神除霊事務所です」


 さっそく電話が鳴った。

 除霊の依頼であったのならば、我々にとってこれ以上の幸運は無い。固唾を飲んで見守るスタッフ一同。

 その視線は、電話を取った美神女史の助手、氷室キヌ嬢に集中する。


「あ、は、はい。そうです!え?あ、本当ですか!?」


 我々の視線を感じてか、若干緊張気味だったキヌ嬢の口調が緊迫したものに変わる。

 これは!?と期待する我々の前で、キヌ嬢が美神女史に叫んだ!



















「美神さんっ!!日本アルプスで、アルプスの少女が出たそうです!!」

 バタバタバタバタズザザザザー


 あまりと言えばあまりな一言に、そこにいた全員が見事なコケを披露する。そしてそこから誰よりも早く立ち直って問い返したのは美神女史。


「そ、それがどーしたってのよ……」

「え?え〜っと……なんでも、どこから下がっているのか解らない、空から垂れ下がったブランコに乗って、笑いながらヨーデルを歌っているらしーんですけど……」

「………………………」


 若干、いやかなり緊迫感はないものの、これも立派な怪奇現象。

 この現象に美神女史がいかなる答えを出すのか。今にも掻き消えてしまいそうだった気力を振り絞り、我々は待った。


「ほっとけば?」


 美神女史の出した答えは、驚くべきものだった。この怪奇現象を、専門家として放置するというのだ。


「え?で、でも…」

「いい?おキヌちゃん。私達はGSよ。でも、だからといって全ての霊現象や怪奇事件やらを相手にしてたらたまったもんじゃないし、やるべきでもないの。共存できるものとは共存する。おキヌちゃんなら、その辺は誰よりも解っているはずよ」

「はい…」


 我々と同じく、疑問を持ったキヌ嬢を美神女子が諭した。

 なるほど。確かに霊と見たら、何でも即祓ってしまっていては身が持つまい。GSは毎年死亡者も出る過酷な職業なのだ。

 それに霊という事は元は人。害のある霊でなければ、自由にさせておくのも一つの答えではある。


「解りました!じゃあ、この依頼、お断りしますね」

「あ。おキヌちゃん、ちょい待ち。ちなみにこの依頼、ギャラはいくら?」

「えっと、いろんな所から共同で依頼が出ているらしくて、全部合わせて8千万円だそうです」


 その瞬間、美神女史のオーラが変わった。霊能力などというものは無い我々にも、はっきりと彼女の霊力が高まったのが伝わってくる。

 その迫力のこもった声で、美神女史は言った。


「待ちなさい。その依頼受けたわ」

「え?だって、さっき美神さん…」

「さっきはさっき。今は今よ。いい?おキヌちゃん。確かに共存できるものとは共存する。でもね、決して相容れない存在というのも、この世にはあるものなのよ」

「は、はぁ…」


 美神女史の真に言わんとする事は我々にも筒抜けだったが、依頼があり、実際に除霊現場を取材できる方がありがたいのもまた事実。

 我々も美神女史にならい、沈黙でもって、キヌ嬢が説得されるのを大人しく見守ったのだった。



 その後、我々は除霊現場の取材を通じ、山村に生きる人々と妖怪や精霊の交流と対立、そして和解と愛と別離へと至る一部始終を目撃する事となるのだが、それはまたの機会を持って報告したいと思う。

 今回の取材は、非常に有意義なものだった。

 ただ、一つだけ疑問が残る。

 あの事務所の外にいた、血まみれで「ミタ……ミタゾ、ナマチチ……」と繰り返し呟いていたあの少年の幽霊を、美神女史はなぜ成仏させてやらないのか、という事だ。

 苦しげで見るからに痛々しかったが、何故か満足そうな表情をしていたので、簡単に成仏させられそうだったのだが。

 やはり、GSという職業につく人の考えは、普通ではわからないものなのかもしれない。

 次に取材に行った時に、少年がまだあそこにいたら、聞いてみようと思う。

 では、今回の報告はここで終わる。ここまで見てくれたのを感謝する。

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