ザ・グレート・展開予測ショー

私の名前を言って


投稿者名:Nar9912
投稿日時:(05/ 9/21)

※ 推奨:GS原作以外に、一子相伝の暗殺拳伝承者の物語他。 ※


時はまさに原作後。
女性陣は、争いの炎につつまれた!!

有史以来最凶、空前絶後、驚天動地、前人未到、誇大妄想、抱腹絶倒の争奪戦の末……


「あっ、腐っても神様なのにあんなに呆気なく倒されて! 私じゃ勝てないのに……」


大事な家族を腐った呼ばわりですか?


「ぃヨォーコォーシぃームァーッ! この私がッ! 兆歩譲ってやっているのにッ!!
 逃げるんじゃなーいッ!! あの娘を産んでやるって言ってるでしょーがッ!」


いや、そんな。泣く子も漏れ無く悶絶しそうな極上の笑顔で叫ばれても……
貴女が勝っても生まれくる娘の教育上、相応しく無いと断言したくなる笑顔ですよ?


「横島さはーーーん! 来ちゃだめーっ!!」


何が、来ちゃだめなのでしょうか??

ツボを押して貰った挙げ句に、心の叫びが現実に声を出したかの様な叫びであった。
描写の意味は良く分からんがとにかく凄いじ…切実そうであった。



……

………

戦いがあった。悲壮な決意があった。いやむしろ、身も蓋も慎ましさの欠片も無かった。

………

……



彼を巡り争った女性達は力尽きたかにみえた……
……一体、如何なる争いであったのか。詳細は記録には残っていない残したくもない。


だが、彼女は負けてはいなかった!!


ドオオーン!!!!!


アルファベットの入れ墨をしたモヒカンライダーの集団が現れた訳では無いのです。
ええ、それは違うお話なのれす。
でも連想せざるを得ない争いだったのですよ。何故、死人が出なかったのでしょうか?



これは、濃い恋の戦いを勇敢に戦い抜いて、遂には勝利を得たヒロインと…

最早、悟りを開きそうなまでに追い詰められていたかも知れない。
だが尚、その煩悩だかに酔って、遂に新たなる何千歩かを踏み出してしまった漢の…


「こんな展開だ……」
「こんな展開だからこそ、二人で力を合わせて生きていこう!」


いや、別に亡き父の墓前に新たな門出を誓っている訳では無いですよ。
あの大樹が、あの父が、そうそう簡単にはくたばる筈が無いではないですか。
シチュエーションは連想されたかも知れないそれとは全く違うのです。
…思わず注釈してしまったではないですか。
注釈とか事前の備えの結果を披露するとかは、浪漫なんですけれどね。
そう、浪漫なんですよ。理屈じゃない、魂で感じるんだと言った所かなと。

話を戻しますよ? OK?
いえ、NGだろうが何だろうが、戻しますけどね。

パピルマパピリオプリリンパ、ワタシャライネンキュウジュッサイ。

…詠唱を笑うのは失礼というものですよ? 失笑なんて。
分別と言うものを良く考えて下さいね。では…


漢の、熱い物語で……


「………」


熱い物語……


「………………」


熱い……


「……………………………………………………………………………………………」


…残暑は厳しいですねえ。もとい……彼のその言葉に、彼女は頷きはしない。


「そんな言葉で、はいそーですねと、言うとでも思ったんですか? 横島さん?」


……冷たい。
恐ろしく冷たい。
あの時の雪女より美神さんより冷たい。
本能が痺れたのである。凍える程にコールド、と言った所だろうか。
彼女の目が、その身に纏った異形を作りそうなオーラが、ただひたすら冷たく怖い。
色々と、ほんっとーに色々と、思い当たる節はありすぎる。

あの戦いに乗じて俺は彼女達と…
この身は罪に満ちている。
だけど、誘惑した方が悪いんじゃねーか?
男は、男なら、あんだけ美味しいシチュエーションを放ってはおけないだろ。だろう?
それにそもそも、溢れる愛を皆に分けて何が悪いんだ?
エラい人達にもそうしている人がいるじゃないか!

女の戦いの詳細が記録されていないので同意はしかねるが…
むしろ多分に男の勝手な言い種であろうが。
更には他人がするから自分もして良いなどとの考えは全くの誤りであろうが。
彼のフィルター掛かった視点でふつーに考えたなら、確かに当然なのかも知れない。

据え膳食わぬは男の恥、なのだ!!!

獣っ娘萌えであり後輩キャラ萌えであってツンデレ美女萌えであり、
モンスターっ娘も種族を問わぬ男らしい彼には萌えであって、
……そして、巫女さん萌えなのである。
女と巫女さんは別物である。女だって男と王子様は別物だと主張するではないか!

何やら随分と偏った思い込みではあった。だが訂正してくれる者がいなかったのならば、
自分の思いは正しいと更に突っ走るのもまた若者にありがちな事である。
訂正どころかそれに乗じて私が…と考える者達がいたならそれは不動のものにさえなる。
環境が人を作る例であった。
いや彼の主張に戻ろう。

…だから俺は、頼み込み伏し拝んで、夜毎の営みに巫女服を着て貰っているのだ!!!

これが、これこそが、漢の生き様であぁーるッ!!
いや、同級生はいても委員長はいないし、眼鏡ッ娘もメイドさんもいないのだが……
実はGS試験時などのコスプレで迫られて流されたりしたのは、君と俺だけの秘密だ!

これが漢の浪漫だ、そうだろう?







……誰か、同意してくれなさい。

だが、誰も、同意してはくれなかった。いやそれは当り前なのである。

ここには、彼と彼女しかいないのだ。

他の女性達がどうなっているのかは……描写を拒否する。だんこ黙秘権をこーしする!
私は空気。何も見てなどいない、何も見えない、見えないものは存在しないんだもーん。

溢れかえる個性を埋没させて語りに没頭する筈が、やや取り乱した語り手を他所に。
横島は長く苦しい展開の末、遂に身に着けたネオ大樹スタイルで続ける。

そう、俺は大樹の正当後継者だ。勝てる、勝てる筈だ!!

横島の外見に怯えは露程も見えない。
いや、幾多の戦い……何の?……を切り抜けた漢の自信に満ちてさえいる!!!!!


「何を言っているんだおキヌちゃん? 俺の愛する人はおキヌちゃんだけだッ!」


全く以て白々しい事この上ないのだが、それでもそれで押し通す。
開き直った者の勝ちだ。これまでもこの手で勝ってきた。
ポイントは優位を保ちながら相手を尊重しているかの様に語る事だ。
無論、棒読みなどではない、感情は籠もっている。感情が、誠意があればOKだ。
名前を呼ぶ前に言い澱みなどもしなかった。今回もこれで勝て…


「もー騙されませんよ。」


だが彼女は冷たい。微塵も動じる事は無い。
そのにこやかな笑顔が、そのマネキン人形であるかの様な笑顔が。何処までも、冷たい。
心の底まで凍える程の極寒の雪嵐。いつだったかの偽装結婚式の後のそれをも凌ぐ。

嗚呼、此処は決戦の地、南極であるのだろうか? 俺はいつ、逆行したのだろう??

いや、逃避してはならない、それはこれまでの俺だ。
今の俺は違う、俺は大樹の子。俺が大樹の正当伝承者なんだ。ネオ大樹は無敵の筈だ!

戦況は極めて劣勢である。だがしかし、漢の沽券に賭けて、ここは退く訳には行かない。
退けば、せっかく築いてきた爛れた関係が水泡に帰してしまうのである。
……父にあって自分には無いものを、
無かったものを魂の向こう側から引き摺り出してまでして作った、現在の環境だ。
如何に相手が正式な妻であろうと、いや、妻だからこそ、父の二の舞にはならない。
俺は勝つ。俺は天才だ。父より早くスタイルを習得した俺こそ新たな伝説を作るんだ!

…正当伝承者よりその兄に成り済ました自称天才に似ていると思える思考展開であった。
一時の勝利はあったにしても、得てして、そんな者は敢え無く破れるのだが。

それに、少し客観的に考えてみれば…
その大樹とて、嘗てはひたすら百合子へアプローチして殴り倒されていたではないか。
その後も良い夢は見たかも知れないが夢から醒めた時には現実のうちに悪夢が待っても
いたのだ。
何割かの男に結婚してから急に出来る妙な甲斐性など、百害の様に思える。
仮に一利二利、いや、十利かそこらくらいはあったとしても、害はそこにあるのだ。
そして、このケースでは結婚前からこそ色々あったのだが。


「……俺が馬鹿だったよ。俺はあの時、二度と悲しませないと決めた筈だったのに。」


消沈したかの様な形振りを見せる横島。

凍った鋼の様な冷たさを纏っていたおキヌが僅かに揺らぐ。
まさか、まさか、あの時のあの慟哭を自ら持ち出してくるとは。
或いは、或いは今度こそ、私が好きになった彼は、今度こそ浮気を止めたのだろうか?


「今までは俺が悪かった。でももう終わったんだ。おキヌちゃんが何もしなくても俺が
 きちんとけじめを付けようとしていたんだ。」
「皆にはまだ納得し切れてもらえてはいなかったけど……」
「でもそれも今日で終わる筈だったんだ。おキヌちゃんなら俺を信じてくれるだろう?」
「……当然だよな。俺の好きなおキヌちゃんは優しい理解ある素敵な女性なんだから。」
「な、おキヌちゃん。俺を信じるよな?」


無理です。不可能です。完膚無きまでにあり得ません。
男が饒舌に身振り大仰になる程に、普段自分へ愛の言葉が足りないと感じている女は…
隠そうとしても透けているその本心を見破ってしまうものなのですよ。
尽瘁に尽瘁を重ねて、努力故に見破られるのが、浮気した男の辿る道筋なのであります。

勿論、おキヌちゃんの様に優しい娘ならば、一度や二度の過ちは許したでしょう。
或いはその他にない幽生人生から、それを甲斐性として受け止めたかも知れません。
しかし、物には限度があって、このネオ大樹には人間のモラルなど欠けているのです。
いえ、世界中の女は自分の物などと叫んでいた人物が、その成長が正しくなかったなら、
慟哭と悲哀が代わりの報酬を求めたとしたなら、これは全く当然の帰結であるのです。
無論、彼には当然ではあっても、他の者にまして妻に取って当然かとなると…

いつもより微妙に早口、目をしっかり見ない、或いは、ふと逸らしてしまう。
更には、聞いてもいないしなくても良い事にまで取って付けた説明を加えてしまう。
ほんの些細な仕草で、女は男の嘘を見破るものなのです。
女の勘と言うより、男の自爆と評すべきでしょう。

おキヌの双眸に総毛立つ冷たさが戻る。怒りに震える体を押さえつけるのが困難である。
甘える男についつい許してしまう己の惚れた女の弱さが、ここまでの事態を導いた。
これ以上、このケダモノを、野放しにする訳には行かない。
飼い慣らして私だけのモノにしなくては!

お義母様の言葉は、
実感が籠められたあの言葉は、
長い付き合いが言わせたのであろうあの言葉は、
果たして疑うべきではなかった紛う事なき全くの真理であったのだ!!
だから、私も、お義母様の様にしなくてはっ!!!

浮気に伴う喧嘩で、近視眼的にならない夫婦喧嘩というものがあれば見てみたいものだ。
彼女は、見事なまでに、己の言い分こそが正当にして動かざる絶対の真実と信じた。
その考えの全てが絶対に正しいに決まっていると。

世に絶対の真実など無いのにと思う語り手の心の声など、全くにして届きはしない。

例えば、おキヌがついつい許さなくとも、横島は浮気し続けたであろう。
隠し方が上手になるだけであったに違いない。
元々上手だとは言えないが、受け身に回ると途端に恋の駆け引きが下手になるツンデレ
美女から貰った金で、おキヌへ素知らぬ顔で指輪でも買ってやったかも知れない。
物で釣るのは基本で原則である。大層な金が無いのならちょっとしたスイーツでも良い。
大樹の如き大成した男の魅力が無くとも出来る、簡単な手段だ。

横島はそんなヤツでは無かった筈である。しかし力を手にした時、人は変わるのである。
過去に報われない時を過ごせば過ごした程に。そして彼の過去は…

恋愛に貧弱な坊やであった彼に大樹の正当伝承者としての魅力が備わった今、
その力で過去に全くと言って良い程にも報われなかった事に、
実は結構純情だった自分が報われなかった事に、
何やら良からぬ方向に悟ったとしても、それは果たして許されざる悪なのか?

この場合、間違いなく悪いのは横島である。彼の言動は欺瞞に満ちていた。
しかし、おキヌの見方もまた正しいとは言い切れない。
相手が悪であるから自分達は正義などという幻想を信じるのは、幼子のする事である。

彼女は、許すのでなく、嘆きを包み隠さず女の最終兵器である涙に訴えて伝えるべきで
あったのだ。
或いは、私じゃ物足りないんですか? と言っても良かっただろう。
もっと言うなら、私ではルシオラさんの代わりにはなれないんですね? と涙ながらに
訴えたなら…
そうすれば、未だ大樹ほどでは無い彼は、いや本命には弱い彼は、逆らう事など出来も
しなかったであろうに。
女の武器の濫用ではある。しかし、妻に取ってそれに値する事を彼はしてきたのだ。
早いうちに思い切った手段を執らないと、中途半端な優しさが却って苦難を呼びもする。
だが、優しすぎる彼女にはその様な事など思いもよらなかったに違いない。

ともあれ、おキヌの目は既に彼方の世界に旅立とうとしている者のそれであった。
あの戦いでは己の武器を磨いてきた。成長期が終わっている訳では無いのにも関わらず、
サンマジックまで使ったのだ。身体に悪いかも知れないなど関係無い。

サンマジックは、脂肪を「胸」に誘導する。ダイエットとバストアップを兼ねるのだ。

”脂肪を胸に誘導する”

その心の底まで貫くかの様な甘美な響きに、勝てる乙女がいるだろうか、いやいない。

…思考が本筋と関係なくずれている事にも既に気付かない。
いや敢えてずらす事で尚も滾り狂う怒りに我を忘れる事を抑えているのだろうか?
何れにせよ、疾うに目が据わっていた。
ファンが減るなどとの心配は要らない。もう連載は終わったのだから。

さあ、己が磨いたのがスタイルだけでは無い事を、この浮気性の塊に今こそ示すべきで
あろう。彼女は嬉しげな、本当に嬉しげな笑顔で言葉を放つ。


「横島さん、知っていますか?」


何をであろう。日本語は主語や目的語を省略しても通じる事もある言語である。
しかし、前後の脈絡無くあまりに唐突に出された台詞で欠けているのは如何なものか。
自分の立場を一瞬忘れ横島は冷静に……どちらかと言うと逃避気味に……それを思った。


「横島さん、私の名前を知っていますか?」


いきなりな質問である。当然ながら知っているに決まっているではないか。
これだから女は、永遠の謎なのである。

ああ、俺って哲学的ぃ〜。

まあ、事実がどうあるにしても、酔うのは自由である。この連中は、実に酔いやすい。
酔って他人に迷惑を掛ける事は控えて欲しいが酔った者に道理など…
いや別にこの横島の陶酔は特に迷惑を掛けてはいないだろうが。

答えるまでもない気もするが、取り繕ってはいても怒る妻は怖いので質問に答える。


「おキヌちゃんに決まっているだろう? 横島キヌ、俺のこの世で一番大事な人だ。」


嘘ではない。嘗て愛した彼女は今はこの世の人ではないのだから。
人は己を一番と言ってくれる人に弱い。それが事実なら尚更だ。だからまだ勝てる!

横島には、相手の気持ちを見抜く術は、まだ完全には備わっていない様であった。
それでは到底に大樹の伝承者とは言えない。
いやそも大樹にして関西人の定めとばかりにどつき夫婦漫才そのものではないか。

ただ、自らと同じ姓のその名前を呼んだその時だけは本当の想いが籠められてはいた。
だがしかし、溢れるパトスはエートスを上回るのである。
其処に美女がいる。それ以上の理由が必要とでも?

確かに真摯な台詞ではあった。籠められた想いも本物であった。
だからこそ、これまでは言い包められて来たのである。
今回もいつもの様に誠意を込めたのだから、劣勢ではあるがまだ大丈夫の筈である。

彼は気付いていなかった。相手の気持ちを見抜いていなかった。
そも、彼への呼び方からして違うのである。
結婚した今、おキヌが彼を横島さんと呼ぶ事など無い。己も既に横島なのだから。
それが、昔の呼び方に戻っている。
まだ言い慣れぬそれでなく、嘗ての呼び方に戻るがまでに、怒りに満ちているのだ。
だが、彼は、気付いていなかったのである。最早手遅れであるというその事に。


「今、家事の得意な女性の間では、護身術を身に着けるのがトレンドなんですよ。」


脈絡が無かった。前後の繋がりが無かった。返事を聞いているのかさえ分からない。
流石に横島は戸惑いを隠せない。もしや問答無用か、そうなのか?
しかし彼の反応を一向に気にせずおキヌは続ける。


「怒りは肉体を鋼鉄の鎧と化すのですよ?」


訳が分からない。おキヌはよくTVや本を見ているが、一体、何に嵌ったのだろう?
いや、思い当たる所が無いでもない。
だがしかし、あれは厭だ。幾ら俺でも内部から破壊されては死んでしまう。
彼女は俺が死んでも構わないのだろうか?
いや思い起こせば彼女は何度か俺が死ぬ事を肯定した。
出会いは殺気も露わに殺そうとされた。全く天然に死んでも大丈夫とも言われた。
…身体は要らないのか?
もしや、俺は男として駄目なのか? 彼女は満足していないのか?

何やら勝手に落ち込みつつある横島を尻目に、おキヌは尚も言う。


「私の名前を言って下さい。」


どんな深遠な意味が其処にあるというのだろう。横島にはやはり訳が分からない。
流石に彼女が今この瞬間も怒っている事は分かったのだが…


「だから、おキヌちゃんだよ。掛け替えのない俺の最愛の妻だ。」


もう手遅れであると漸く自覚はしつつあったが、それでも尚、抵抗は止めはしない。
言葉の持つ力は侮れない。
愛していると一言囁くだけで、女は信じられない程に無防備になるものだ。
心から愛している相手に、真摯な想いを込めたそれを、臆面も無く口に出す事が大樹の
後継者たる力の一つであった。


「私の名前、漢字はどう書くと思いますか?」


聞いちゃいなかった。いや、聞こえていても無視されていた。
或いは、それ程にまで怒りが大きいのだろうか。
そろそろ逃避したくなって来たのだが、横島は考える。
これ以上機嫌を損ねてはならない。此処は諂う所だ。


「勿論、イメージ通り、絹糸の”絹”だろう?」
「シルクの肌触りの様な、優しいおキヌちゃんにぴったりの漢字じゃないか。」


強ちご機嫌取りという訳でも無い。
おキヌは優しく横島はその優しさに何度も助けられている。だからこそ効果はある筈…

だが、横島の思惑は見事に崩れ去る。
おキヌは無言で振り向き、何処から取り出したのか分からないホワイトボードに漢字を
書き始める。

一画目で手が止まった。それを見る限り、やはり”絹”ではなかろうか。
横島の心中に希望の光が微かに灯る。慈愛溢れる彼女は許してくれるのではないか?
自分の行いを棚に上げて足掻き、勝手に許される事を期待する彼に、おキヌは言う。


「私は、七つの漢字を持つ女なんですよ。」


ヤバい。座ったその目だけで無く思考も既に彼方に飛んでいるらしい。
これは、逃げるべきか?
しかし逃げてそれで解決するとは思えない。おキヌは美神さんとは違う。
誤解……でも何でも無いが……を解かなければ1人勝手に思い込んで突き進むタイプだ。
横島は為す術無く二画目以降が書かれていくその様を見守るしか無かった。

嗚呼、怒ってる。怒ってるよ。どうしようも無く怒ってるよ。

その字を見た彼は嫌が応にも気付いてしまった。

駄目だ、逃げよう!

しかし彼がその尋常でない逃げ足を発揮する前に、二文字の漢字を書き終えたおキヌが、
その眼光で彼をその場に縫い付けた。


「私の名を言ってみろ!!」


最早命令形であった。今回はこのネタに終始するらしい。どう返そうか?
答え倦ねているうちにおキヌは動いた。


「何と! Go Show ハー!!」


轟と響きを伴って放たれたその技に、ツボを突かれなかった事だけが不幸中の幸いだと
思いながら、それでも突っ込みを返さざるを得ない。
声も出せないので内心で。

…おキヌちゃん、元ネタ分からないかも知れないよ。て言うか南じゃなく北だろう?
横島の名を冠する者は、お笑いに走らないとならないんだろーか??

…………

………

……



飛ばされ打撃を受け今にも手放されそうな横島の意識に、改めて二文字が浮かび上がる。
ホワイトボードに書かれたその二文字が、妙にくっきりと見える。

その二文字とは、

「鬼怒」


(完)


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電波が飛んできたんです。電波が悪いんです。
あらゆる生命体^H^H^H電波が絶滅したかにみえても、電波は死滅していなかった
のです。
プラズマで全て説^H^H^H^H^H^H^H^Hこれがグレムリン効果なのです。

グレムリン効果が歪めた原作後、如何でしょうか?
まあ、横島の浮気については、10年後横島は普通に浮気と思える行動をしていますし。
この横島クンが何年後の彼なのかは決めていませんが、大樹並になっているとだけ。

尚、作中に出した商品名は改変しています。日を月に変えれば…

蛇足ですが、最後の漢字、読みは”きぬ”です、鬼怒川の鬼怒。
後、糸偏の一画目は”く”までで、”ノ”で終わりませんです、本来は。

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