ザ・グレート・展開予測ショー

フツーのひとびと つー(絶対可憐チルドレン)


投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:(05/ 9/11)

 薄暗い、わざと証明を絞った部屋の中。
 スコッチの入ったグラスを手に、密談する男が2人。

「今回の件も失敗したそうだね」
「は。申し訳ありません」

 どうやら一人は上司で、一人は部下のようだ。

「まぁ、いいさ。全てが成功するなどありえない」
「そう言っていただけると…」
「やる事なす事、全てが成功するなどね、異常だよ。フツーじゃない」

 グラスを傾けつつ、とある組織の決めセリフを口にする上司。
 するとこの2人、反エスパー組織「普通の人々」の人間という事になる。

「しかしこの所だね。少し失敗が続きすぎている。そうも思わないか?」
「はい…」

 しばしグラスの中でスコッチを回し、ローランドモルトの甘い香りを楽しみながら、上司は軽く話を振った。
 こういう時、部下というものは黙って聞くしか手立てはない。

「この間のストックホルムの件(第5話)。アレはかまわない。もともと成功したら儲け物くらいの意図しかなかったからね」
「ええ……連絡をせず、領空侵犯として外国の手で始末してもらう。成功すれば外交で優位なカードとして使えるかもしれないですし、失敗しても、連絡ミスということで誰も捕まらない。運悪く、逃げ切られてしまったようですが」
「今回、それで業を煮やした君の上司が直接手を回したというわけか」
「面目次第もございません」
「だから、いいと言っているだろうに。君も律儀だねえ」

 君も飲みたまえ、と部下に勧めながら、次の一手はどうしたものか。と、どこか楽しげに考える上司。
 そんな上司に、酒が入って滑らかになったのか、部下はかねてからの疑問を口にした。

「なぜです?」
「ん?なにがだね?」
「特務エスパーを潰すのなら、バベルそのものを無くしてしまえばいいでしょうに。いや、あなたなら表立って国民を、国会を反エスパーの方向に誘導する事だって可能なはず。なぜそうしないんですか?……総理っ!!」

 薄明かりの中、よくよく見てみると……そこにいるのは、確かに日本国内閣総理大臣。
 上司あらため、総理の細い瞳がうっすらと開く。
 そんな事も解らない部下に怒ったのか、それとも計画立案を楽しんでいた所に水を注されて、不機嫌になったのか。
 ともあれ、上司の機嫌を損ねたと悟った部下は、平謝りをしようと立ち上がる。

「も、申し訳…」
「私が総理だからさ」
「は?」

 表情を消した、不機嫌そのものの顔で、上司改め総理は端的に言い放つ。

「だから、総理大臣だからだよ」
「え、え〜と……すみません、おっしゃる事がよく解らないのですが…」
「だからだね。総理大臣なんだよ。それで……





 総理といえど、大臣たるもの、こっそり悪巧みをするのがフツーってもんだろう?」

「え〜〜っと………





 我々官僚が天○りと税○の無駄○いをするようなもんですか?」

「うむ、そんなもんだ」
「そんなもんですか」
「ああ、そんなもんだよ。フツーっていうのは大事だからねぇ」
「そうですなぁ。フツーってのは大事ですからねぇ」
「「はっはっはっはっはっは…」」


 普通の人々はどこにだっている。
 つまりこんな風に、フツーに世の中は回っているらしい。

 なおもちろんだが、このお話はフィクションである。


 <完>

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