ザ・グレート・展開予測ショー

まごころを君に―5


投稿者名:ゆうすけ
投稿日時:(05/ 9/ 4)







「拙者達は魔理殿と合流し、程なくして空港に到着して…」







『遅いわよあんた達ぃ〜♪』
『えっ、タマモちゃん!?』
空港の入り口で思いもよらない人物と再会した。
おキヌ殿は驚きの声を上げる。
『なんでオマエがいるんでござるか!?』
かく言う拙者もこれは驚きだった。
大急ぎで飼い主証明書でも作ったんでござろうか?
『…どゆこと?』
魔理殿がおキヌ殿とタマモに状況の説明を求める。
『えっと、私にもさっぱり…』
『えへへ…』
タマモは得意な顔をしながらポシェットの中から手帳のようなものと紙切れを取り出した。
『あっ、パスポートとチケット』
『これで私も海外旅行に行けるでしょ?』
おキヌ殿は意外と言った表情をする。
拙者も開いた口が塞がらない。
なんで拙者がペット扱いでタマモが一丁前に旅行客扱いなんでござるか!?
『へぇ〜、おキヌの話だとてっきり一緒に行けないモンかと思ってたよ。それは美神さんが?』
『そ、あの人もなんだかんだ言って良いとこあんのね!』
美神殿が手配したと聞いて拙者はますます不愉快さを覚える。
『……おかしい』
『へ?』
こっちを振り返るタマモ。
『美神殿がそんな事、何か裏があるんでござろうっ!?正直に吐けっ!こずるい女狐めええっ!!!』
『ちょっと、人が昔使った台詞パクりながら疑わないでよね!!この物証が信じられないわけ!?』
『ちょい待ち』
  ヒョイ
取っ組み合いを始めようとした拙者達を魔理殿が拙者の首根っこ掴んで引き剥がした。
『あんたそんなに自分の飼い主と友達が信用出来ないのか?』
『なんで美神殿が拙者の飼い主…!アレは書類上の話でござる!拙者も客席で寛ぎたいでござるぅ!』
魔理殿の背が高い為、拙者はバタバタと手足で宙を掻きながら抗議した。
『ま、そこらへんの話はどっか店入った時にでも話そうよ。…ココじゃ人だかりが出来てるしよ』
周囲を見回すと確かに立派に人だかりが出来ていた。
おキヌ殿と魔理殿は恥ずかしそうな表情を浮かべていた。
『…わ、わかったでござる』
『よし!じゃあファミレスでも行くか!』
一先ず場が収まり、魔理殿は拙者を降ろした。
『そうですね。そろそろ食事とらないと間に合いそうに無いですしね』
『…きつねうどん食べたい』
『おし、じゃあある所を見つけよう』
照れ隠しなんでござろうか?魔理殿は妙に明るく振舞っていた。
『すいませんすいません、お騒がせしました』
背中の方でおキヌ殿が謝っている声が聞こえる。
























「…ふむ」
横島は肘掛にあるボタンを押した。スチュワーデスは三人の下にすぐ現れた。
「ねえ、今までの話を聞く限りじゃ…」
飲み物のおかわりを頼んでいる横島にルシオラが耳打ちする。横島は何も言わずに頷いた。
「……――で、イギリスに着いて、?」
再び喋り始めようとしたシロを横島は制してスチュワーデスに渡された飲み物を差し出す。
無言で受け取ったシロは二三回口をつけ、再び俯く。
「………」
視線は手渡された飲み物の水面に向けられていた。
「…………………」
しばらくシロは動かなかった。
二人は怪訝にも思わず、黙って彼女を見ていた。
「……――アパートに着いて、荷物を置いた拙者達は夕飯と観光の為、夜、街を出て……」














『で、どうなんだい、かおり?ゼミの方は』
どうも鼻が詰まる…。場所が日本ではないからでござろうか?
『どうって?』
空港内で再開を果たした拙者達は、弓殿の同居人であるすてふぁにー殿の車で軽く観光をしながらあぱーとに向かった。
『世界屈指のGS養成学校なんだろう?ついてけてんの?もしかしてもう落第しちゃったとか!?』
すてふぁにー殿はとても気さくな方で、新緑の瞳をした金髪のコで、
『あなたじゃないんだから。私が落第なんてするはずないでしょう?』
頬のそばかすが彼女の外見と内面の良さを上手く引き立てている。
『そうよ、カオリはスゴク頑張ってるんだから』
こういうのをなんて言うんで…あっ、かんとりぃでござった。
『それよりそっちは?もう一足先に弟子入りして実地ふんでるのでしょう?』
そして今、拙者達はレストランで夕食を摂っていた。
『ああ、唐巣神父のトコでね。美神さん以来のハチャメチャっぷりだってよく叱られてるよ』
三人が積もりに積もった話をしている脇で、拙者とタマモは食生活の壁にぶつかっていた。
『…なんでこんな油っこいもんばっかなのよ』
目の前にはイギリス名物のフッシュ&チップス。それも山盛り。
『拙者魚は別段問題無いでござるが、揚げ物大盛りはさすがに…』
すてふ殿と弓殿が店長らしい人に拙者達の事を話したらこう言う結果になった。
この店は行き着けで店長とは顔見知りだそうな。
『…ったらピート先輩ったらさぁ〜』
向こうは相変わらず話が進んでいる。ステフ殿も輪に混じり一層盛り上がっていた。
『え〜っ、うそ〜!ピートさんに限って』
『そう言えば』
会話に割って入った拙者の方を四人が振り向く。
『かおり殿はなんでいぎりすに居るんでござるか?』
ステフ殿を除く三人は、何を今更と言いたげな表情だがまぁ気にしないでござる。
『あのね、弓さんは学校での成績がとても良かったから学園長がオカルトゼミに入るための試験の推薦状を書いてくれて…』
『んで、見事合格。イギリスに留学してるわけだ』
三人共懐かしき学生時代を思い出しているかのように、その表情は朗らかだ。
『ふふ、試験勉強中の弓さん。凄い形相でしたよね』
『あら、そうだったかしら?』
『ああ。模擬霊的格闘の鍛錬してる時は正に鬼だったよな。どっちが悪霊かわかんなかった』
『あなたには言われたくありませんわね』
冗談を飛ばす魔理殿に冷淡なツッコミを飛ばす弓殿。
『スパルタの鬼道先生が舌巻いてたよな。仕舞いにゃ、霊的格闘の練習試合でも勝っちゃったし』
背もたれに腕をかけ、豪快に腰掛けていた魔理殿は大きく笑った。
『でも三人で合格通知を見た時、わんわん泣いちゃいましたよね』
そこは拙者も知っていた。
その次の日の朝方に目を赤くしたおキヌ殿が今話した話を拙者達にしていたからだ。
『そうだったなぁ。ほんと、頑張ったよ。お前』
でもその時はただ合格したと告げられただけだったし、おキヌ殿も支離滅裂と言った感じだったので詳しい内容はわかっていなかった。
『ま、まぁ、目標のために努力するのは当然のことなわけですし…』
照れ隠しをする弓殿。
拙者には何が何やらと言った話でござるが、二人の様子から素晴らしい話だと言う事はわかる。
『はぁ、そうでござるかぁ』
『ねぇ』
『いやぁ人に歴史ありと言うかなんと言うか』
『ねぇ』
『こう言う話を聞くと』
『ねぇってば』
『なんでござるかタマモ!人の話の腰を折って!』
全くこいつは、さっきの話も興味無気だったし…
『これからの予定ってどうなってんの?』
『時間も時間だし、アパートに帰りながら散策をしましょ。まだ日はあるんですもの』










「機内食はどちらになさいますか?本日は和食も御用意させて頂きました」
スチュワーデスの声に横島はハッとする。時計を見るともうそんな時間だった。
「…えっと、シロ。お前どうする?」
「……たべたくない」
疲れた声だった。そして、その中に甘えた色が混じっているのを横島とルシオラは感じた。
「じゃあ俺達もいいや。それより毛布を人数分」
スチュワーデスは軽く会釈をして去って行く。
「シロちゃん、疲れたでしょう?一緒に寝ましょ?」
横島と席を入れ替わったルシオラが肘掛を起こし、シロの頭を抱き寄せる。
「………」
ルシオラの膝を枕にし、目を瞑るシロ。
「………えっ?」
シロの頭を撫でていたルシオラは、手の動きを止めた。
「どうした?」
「母上に会いたい…だって」
「……そっか」
横島はイヤホンをつけ、背もたれに身体を預けた。
「どう言う事?この子は父親に育てられてきたんでしょ?」
出世上、この手の事は全くわからないルシオラが問いつめる。
「だからこそじゃないか?」
機内ラジオを弄りながら横島。
「え?」
「多分、父親には今の自分の姿を見られたくないんだろ」
そう言いながら彼は目を閉じた。
選んだチャンネルは音楽番組で、ちょうど悲恋となってしまったカップルを歌った曲が流れていた。
「……………」
目頭が熱くなったのを不思議に思った横島だったが、気にも留めずそのまま意識を沈めていった。









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