ザ・グレート・展開予測ショー

頬に赤みを!! 後編


投稿者名:Kureidoru
投稿日時:(05/ 8/28)





 シロ・タマモ共に脱落していく中、すっかり悪役風味な笑いが板についている女性が一名。
その美しい亜麻色の髪の毛を振り乱し、今にも高笑いをせんとばかりの満面の笑みをしている。
彼女の頭の中にはもはや3つの願い事のことしか頭に無いようで…。

「うふふ……シロ、タマモが消え去った今っ!もはや向かうところ敵なーしっ!!んふふ…♪おキヌちゃん、覚悟しておいてね……?」
「お、お手柔らかにお願いします;」

 美神はそう言いながら意気揚々とドアノブに手をかけるのであった。



 <ケース3:美神令子の場合>

「フフフ…!こんな日のために厄珍から貰ったのをとって置いていてよかったわ、コレ♪」

 そう言いながらおもむろに懐から取り出したのは『スピリタス』と書かれたボトル。
この『スピリタス』、聞く人ぞ知るアルコール度数96パーセントの最強の酒だったりする。
何に使うのかと言うと……まぁ、言わずもがな。


 ガチャッ


「横島クン〜?入るわよー」
「……今度は美神さんッスか?まだ、書類は終わってないですよ」

 横島はいきなり入ってきた美神に対し、先程からやたら災難に見舞われているせいか少し警戒しながら返事をする。
…ちなみに、素人目で見ても明らかに死んでいると思われるくらいの重症が嘘のように治っているのは……まぁ、お約束ということで。

「な〜にツンツンしてんのよ。私がここのオーナーなんだから何処にいようが私の勝手でしょうが」
「いや、まぁ、そうですけど…」

 あまり納得出来ていないような横島を尻目に、かまわず美神は続ける。

「ところでさ、横島クン?実は頼みたいことがあるんだけど?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・美神さんとサンポには行きませんよ?」
「アホかいっ!」

 スパァンッ!と小刻みのいいツッコミを交えつつ、美神は本題を述べる。

「ちょっとした酒があるんだけどさ、一緒に飲みましょ?」
「さ、酒ッスか?!こんな昼間っから;?」

 当然、そんな事を聞かされて信じられないといった感じで驚く。

「そーよ。え、何?あたしと酒が飲めないってんじゃあ無いんでしょーねぇ?」
「で、でもまだ書類の整理が終わって…」
「…ねぇ、横島クン。私はね、今スグに飲みたいわけよ?分かる?」

 こうまで言われて横島が断れるわけもなく…。
『ご主人様と犬』の呪われた関係を恨みつつ、しかたなしに客人用の食器戸棚からグラスと氷を持ってくる。
そして、事務室内にある丸テーブルにそれを置き、二人分のグラスを作り始めた。

 実はこの2人、たまにだが一緒に仕事の後などに酒を注ぎ合う仲であり、そのお陰で彼も少しだけなら飲めたりする。
・・・・・・もっとも、美神の半強制によるものではあるのだが。


「それじゃあ、乾杯ー」
「乾杯ー…」

そう言いながら二人がグラスに口をつけると…。

「ん〜〜っ!この辛口具合がその手の通に好かれてるのかしらねー」
「……っ!ペッペッペェッ!!な、なんスかこの酒!?ベロに触れただけでも変な痺れがっ…!」

 繰り返すが、『スピリタス』とは聞く人ぞ知る最強の酒。
大人でさえジュースを薄めて薄めてやっとなんぼの品をストレートで飲めと言う方が無理という話でございまして…。
いくら横島が付き合い程度で飲んでいるといっても、そんな事は焼け石に水である。

「うー苦い、、これ度数いくらなんだ・・・・・・げ、ゲェッ!!96%ォ!?こ、これはもはや酒と言うよか精密性アルコールじゃないスか!こんなの飲める訳無いですよ!」
「だーいじょーぶだぁって。あんたはコレ飲んで、ちょーっと酔っ払ってるところ見せてくれればイイだけだからさ」
「へ?なんでッスか?」

 それを聞いて横島が当然の質問をする。
美神は、ポロリと出た本音に、しまった!と口を押さえた。


 ・・・・・しばしの沈黙。


・・・・・・このままじゃ話が進みそうにないので横島が沈黙を破る。

「第一、それだったら普通の酒でもいいじゃないですかっ!!なんでよりによってこんなガソリンみたいなのをっ・・・・・・」
「アラ。だって、度数が高い方がてっとり早そうで良いじゃない?」
「・・・・・・・・・てっとり早いって、何の話ですか?」

 それを聞いて横島がまたもや当然の質問をする。
美神は、ポロリと出た本音に、しまった!と口を押さえた。


 ・・・・・しばしの沈黙。

 
数秒後、何事も無かったかのように美神が口を開く。

「こ、こっちの話だから、別に横島クンは気にしなくてもいいのよ?」
「気にするわいッ!!美神さんっ、あんた何か隠してるでしょう!?」

 流石にここまで露骨に酒を飲まされそうになるのをオカシイと思い、2,3歩後ずさる。
それを見て美神は、ヤレヤレと言ったように頭を振り、苦笑いしながら言った。

「あーあ。バレちゃあしょうがないわね」
「み、美神さん・・・。あんたら一体何を・・・・・・」
「こうなりゃ実力行使ィィッ!!!」

 そう言うとほほほほほっ、と笑いながらある物を横島に投げつける。

「うわっ!」


 キィィィンッ


 横島にぶつけられた物は、一瞬、まばゆく光ったと思った瞬間、横島の動きを拘束した。

「でぇっ!?う、動けない!ま、まさか・・・・・・」

 『それ』の正体に気づき、横島は驚愕する。
それもそのはず。その物体の正体は、横島しか持っていないはずのオカルトアイテム、『文珠』なのであるから。
今投げられた文珠を見ると、そこに刻まれた文字は想像通り「止」。

「な、なんで!?どーしてっ!?」
「ほほほほっ♪除霊中に隙を見せるようじゃマダマダね、横島クン!さぁっ、観念なさいっ!」

 そう言いながら意気揚々と横島の元に酒を片手に一歩、また一歩と近づいていく。

「駄目やおーーーッ、お酒は二十歳になってからーーーッ!!」

 おかーさぁぁんっ、と叫びながらイヤイヤをするも、彼女の名前は美神令子。
欲望のためなら自分の損になる事以外はなんでもやっちゃう女性。

「いーじゃない、たまにはこーゆーのも。ほーら飲め飲め〜!」
「いやっ、ちょっと、無理っ!!、、、モガッ……」

 と言いながらボトルごと横島に酒を投与し始めた。 ※大変危険ですので絶対真似しないようにっ!


(ホラッ!酔っ払って真っ赤になったその面を私に見せるのよっ!)


 ごくっ…


 ごくっ…


 ごくっ…


 ごくっ…


 ごくっ…


 ばたっ…


「れ…?よ、横島クンっ!?」
「…あ…あははっ…まわる〜、せかいがまわる〜。はかったなー みかみさんー………きゅう…」

 今、美神の目の前にいるのは、口から酒を垂れ流しながら白目をひん向くあわれな高校生の姿が一つ。

「や・・・やり過ぎちゃったみたい; ・・・・・・・・・はっ! お、おキヌちゃんっ!救急車に電話っ!早くーーーっ;」
「はっ、はいっ;」


……ちなみに横島の顔面は蒼白だったりする。



その日の夕刊、「無残!某高校生、急性アルコール中毒で生死を彷徨う!」という記事が出たんだとか出なかったんだとか。




 ※  ※  ※


 ガチャッ

「入りますよ…あ、横島さん、気がつきましたか?」

おキヌが病室に入るとベッドの上で起き上がっている横島の姿があった。

「ああ・・・・・・う〜、頭がまだガンガンする・・・」

 手で頭を押さえながらクラクラする頭を必死に静めようとする。

「大丈夫ですか?白井先生が言うにはもうアルコールはほとんど抜けているそうですから、食事は普通に取ってもいいそうなんで、みんなで作った夕飯のスープだけ持ってきましたんですよ」

 そう言いながら、ポットを鞄から取り出し、コップに注いでいると・・・・・・。

「おっ、ありがとう。・・・・・・ところでさ、みんな何か隠してない?つーか、絶対何か隠してるやろっ!?頼む、おキヌちゃん教えてくれっ!」
「あう、やっぱりごまかせませんか・・・;。じ、実は・・・・・・」

 少なからず自分も関与していた事なので、余り話したくは無かったが・・・。
問い詰められたものをはぐらかす訳にもいかず、おキヌはほそぼそと話し始めた。


 〜数分後〜


「な、何ぃ〜!?どんな方法を使ってでもいいから俺の顔を赤くするー?!」
「え、えぇ・・・;」

 自分が必死こいて言いつけ通りに仕事している間に、自分は暇つぶしの標的にされ、しかもそのお陰で入院している事を知らされて驚愕する。
・・・ここで真っ先に怒りの感情が湧かないのは、この男の人間の器が大きいのか、はたまた長年の奴隷生活の賜物か。
しかし、問題は別にあった。

「ま、まさか、これからおキヌちゃんまで・・・?」

 そう、こうなると問題は目の前の女性である。
彼女に騙されたりした日にはもう、明日から何を糧に生きていけば良いのか、という話である。いや、マジで。
そう言われ、おキヌは慌てて否定する。

「い、いえっ。もう美神さん達いないですし、まさか横島さんを騙すだなんて・・・・・・」
「ですよねっ!あぁもう、びっくりしたなあ」

 そう言いながら、ホーッ、と一息つく。
と、そこで横島はあることに気がついた。

「そういえば、『美神さん達がいない』って?」

 そうなのだ。
おキヌが来ているというのに肝心の当事者達がいないのだ。
それを言われ、おキヌは現在いない人々の事を思い出しひきつりながら答えた。

「それが・・・シロちゃんがあれから戻ってこなくて、タマモちゃんが泣きながら出て行った後は行方不明。美神さんは今回の事件のことでアリバイ作り行くと言ったまま連絡ありません」
「む、無茶苦茶だ;とどのつまり、誰もいないんじゃねーか・・・!」

 三者三様に横島で暇つぶしを謀った面で見れば、全員自業自得の失踪である。
横島がそう毒ずいていると、今度はおキヌがはっ、とした。

 今は誰もいないのである。
医師も、看護士も、美神さん達も。2人のみである。
しかも女が男の見舞いに来るという最高(?)のシチュエーション。

「(そう・・・今なら2人っきりだし。またと無いチャンスじゃないっ!)」

 横島に一度彼女が出来て以来、おキヌは横島に対しての意識が高まっていた。
今まではぬるま湯みたいな女性関係で、「まぁ、くっつきはしないだろう」的な感じであったのだが。
いざ彼女が出来てみると、もういてもたってもいられないと言うか・・・・・・。
何かをしたくても後の祭りみたいな感じの気分と、これまでのチャンスを全部逃してきた自分を怨めしく思った事もあるほどであった。

 いつも事務所じゃ2人っきりになることはなかなか無く。
アシュタロスの一件以降、なんだか家にお邪魔するのも悪い気がしなくもないが、どうにも行けない日々が続いていた。
久しぶりのこの空間。神様のおめしぼしなのであろうか?(ヒャクメあたり)

 ───この思いを伝えるなら、今しかっ!

 心の中で何かを決意したおキヌは、横島の方を見てややモジモジしながら口を開いた。

「わ、私、じっ、実は・・・お、お願いごとがっ、あるんですけれども・・・・・・」
「?何だよ、お願いって?」

 赤面しながら舌っ足らずになるおキヌを見て、横島の頭に?マークが浮かぶ。
しかし、横島はそんな様子の彼女を見て驚きの事実に気がついたっ!

「分かったっ!おキヌちゃん・・・ま、まさか・・・・・・」
「え、えぇ。そうだったんです・・・・・・」

 と、横島が何を悟ったのかを感ずき、ただそれに頷く。
横島はあぁ、やっぱりと手をぽんっ、と叩いた。

「おキヌちゃんも、サンポに連れて行って欲しかったんだろ?」

 だぁぁっ!

「横島さん・・・・・・そのギャグはもうやったでしょ・・・・・・?」
「ああっ!スンマセン、スンマセンーーーっ!違ったみたいですねぇーーっ!?」

 幽霊の時を遥かに凌ぐほどの冷たいプレッシャーを見せ付けられては、どうやらサンポでは無かったみたいで。

そうなると次なる疑問は。

「じゃ、じゃあ何?お願いって?」
「そ、それは・・・・・・もうっ、鈍いですねっ!あの、アレです。えっと、実は・・・・・・私、前から・・・その・・・私と・・・・・・つき合って・・・いただけません・・・・・・か?」

 最後ら辺はもうほとんど蚊の鳴くような声ではあったが、それはまぎれもない愛の告白。
そこにはいつもの同僚の間柄の目ではなく、恋する女子高校生の目があった。
そして、ダメ押しとばかりにおキヌは続けた。

「・・・・・・あの、お返事はどうですか?」

 と深々とお辞儀までした。後は答えを待つのみ。

 ・・・・・・が、待てど暮らせど肝心の返事が返ってこない。
おキヌが当の本人の方をチラリと見ると・・・・・・あ、フリーズしてる。
なんとかフリーズが解け、横島は頭をぶるんぶるん振りながらあっはっは、と笑いながら言った。

「・・・・・・・・・・・・まっ、またまたぁ。おキヌちゃんも冗談がうまいなぁ」
「なっ!?冗談なんかじゃありませんっ!」

 せっかくの告白も冗談の一言で片付けられてたまる訳もなく、激しく講義をするも。
なんだか相手の方が全然取り入ってくれない。・・・・・・というより、取り入れる状況では無い・・・のか?
目の前の男はおキヌが告白した時以上になんだか取り乱しまくっていた。

「う、嘘ぉ?どーせ、みんながそこら辺に隠れてたりして後で俺を笑い者にするんだろ?そーだ、そーに決まってるっ!!隠しカメラはどこだっ!?」
「(・・・・・・何がこの人をここまで卑屈にさせるのかしら;)」

 ここかーっ!?とか言いながらベットのシーツを剥ぎ取る横島を見て思うおキヌなのであった。

「ホントに本当です!どうして信じてくれないんですか?」
「そーやって甘い顔されてなー、姉ちゃん達に心ときめかせても、成就したのなんか数える程も無ぇーじゃねーかァッ!!証拠が無くても、歴史が俺に教えてくれるわいっ!」

 そこまで言い切ると、チキショーッと言いながら壁にガンガンと自ら殴打しまくり始める。
頭から溢れんばかりの血の華が満開しているがお構いなしである。

 おキヌはその様子を見て苦笑いをする。
あっ、そうか。この男(ひと)はいつもそうだ。
鼻っから可能性を否定するか、自らその可能性を潰す。生半可な言葉では駄目なんだ。



 意を決したおキヌは、コホンッ、と咳払いを一つして横島の耳元でこう囁いた。

「いいですか?私は、他の人じゃなくて、横島さんじゃないと駄目なんです。横島さんが好きなんですよ」


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 カァァァァァッ


 あまりにも直球な告白に、恥ずかしさで横島の顔が真っ赤になる。

「あっ、いやっ、そのっ、なんて言うかな・・・・・・えと、ごめん。少し、意外だなーって思ってさ。まさかおキヌちゃんが俺を・・・だなんて」

 と、しどろもどろになりながらも言い訳をする。
しかし、その言葉を聞き、おキヌは悲しそうな顔になりながらぽつりと言う。

「・・・・・・そうですよね。私は横島さんにとって妹や後輩みたいな感じにしか見えませんよね・・・・・・」

 そう言い力無く、はははっ、と笑い俯いてしまう。

「やっぱり、私って魅力ありませんよね・・・。だって、だって、そうじゃなきゃ・・・「そんな事無いっ!」

 おキヌがそこまで言いかけたのを横島が遮るように叫ぶ。
多分、隣の病室にまで丸聞こえだと思うが、そんなのは構いはしない。

「そんな事ないよ、おキヌちゃん!おキヌちゃんは、可愛いし魅力的だし美人だし・・・・・・そ、それにっ・・・」

 そこまで捲くし立てるように言い終え、横島は静かに深呼吸し、真っ直ぐおキヌの方を見て続けた。

「それに、俺だって、おキヌちゃんのこと・・・・・・」

 横島がその言葉を言い終えようとした・・・その時。





 ガチャッ

「・・・・・・あ〜あ、じゃあ勝ったのはおキヌちゃん一人かぁ」
「いっ!?」


 ガチャッ

「みたいでござるなぁ・・・。いや、拙者も頑張ったんでござるがなぁ」
「なっ!?」


 ガチャッ

「ちぇーっ、自分で提案したってのに結局は負け試合かぁ」
「げっ!?」


 次々とタマモ、シロ、美神が病室に入ってきて固まる横島。隣のおキヌはというと・・・・・・バツの悪そうに苦笑いしている。

「えっ、お、おキヌ・・・・・・ちゃん?」
「え、えと・・・横島さん、騙しちゃったみたいな形になって・・・その・・・ごめんなさい;」

 茫然自失状態の横島。おキヌはというとひたすら謝っている始末。
男の目から見て、こんな状況がどんな意味を成しているのか、説明するのもお涙頂戴。

 そして、あの方のこの一言で、横島は完全なるトドメを刺された。

「あんたねー。おキヌちゃんがあんたみたいなの好きになるわけ無いでしょ?」


 びしぃっ


「あ、ああっ;!よ、横島さんっ!」
「「む、惨い・・・・・・;」」

 涙も枯れたのか、真っ白に燃え尽き、崩れ去った。
後ろのシロとタマモも苦笑いしながらお手てとお手てのシワを合わせるより他に無かった・・・・・・。

 と、その時・・・。

「あの・・・循診の時間ですのでそろそろ・・・・・・」

 いつの間にいたのか、看護士さんが美神に耳打ちする。

「あ、はい。さぁ、みんな。とりあえず出るわよ」

 その美神の一言で4人はぞろぞろと病室を出て行った。


「よ、横島さん?あの・・・・・・お大事に」

「先生!治ったら一緒にサンポに行くでござるよっ!」

「とりあえず、そこに置いておいた草を煎じて飲めば、二日酔いは治るから」

「まぁ、私の責任でもあるし、入院費は受け持ってあげるからさ。親御さんと警察には何聞かれても黙ってて・・・ね?」






 バタンッ


「そ・・・そんな・・・・・・明日から何を信じていけば・・・・・・・・・」

 その言葉を最後に、横島は病室のベットにぶっ倒れた。





「せ、先生っ!患者の横島さんの容態が急変しましたっ!」
「な、何ぃ?医学的にありえん!彼はすでに完全に回復したはずだぞっ!?」

 ピーーー

「あ、止まった」
「で、電気ショックの準備をッ;!!」


 ※  ※  ※


 廊下に出てきた美神とおキヌは、待合室の前の長イスに腰掛けた。
見れば時計の短針はすでに6を指し、空は綺麗なオレンジ色で彩られている。
シロとタマモの姿が見えないが、ジュースでも買いに行ったのであろう。

 ふーっ、と一息つくと美神は思い出したようにおキヌに言った。

「いやー、やるわねぇおキヌちゃん。あん時はマジで告白してるのかと思っちゃったわよ?ま、約束は約束だし、一つだけなんでも願い事を叶えてあげるわよ?勿論、実現不可能な願いは無理よ?」
「いえ、最初にも言いましたけど、私は別に何もいりませんよ」

 と、おキヌは笑いながら返事をする。
その笑顔は、なんだか長年の付き物が落ちたような、そんなスッキリした笑顔だ。

「別に遠慮することないのに。勝ったあんたじゃなくて残りの2人だけ得するなんて変じゃない」
「大丈夫ですよ、代わりにシロちゃんとタマモちゃんには好きな物を買っておいてあげてくださいね?」
「ふ〜ん・・・・・・おキヌちゃん、良い人過ぎると人生損するわよ?」
「あ、あはは・・・;。」

 そう言いながら、美神は(警察などへの言い訳などなどで)喉が乾いたのか、ジュースを買いに立ち上がる。

 そして、ある程度進んだところで、ふと立ち止まり、おキヌの方に振り向いてもう一度聞いた。

「ねぇ、本当にいらないのー?」

 彼女はくすりと笑いながら

「本当にいりませんよー!」

 と叫んだ。



 美神が見えなくなった後、おキヌは廊下の窓から澄み切った夕焼け空を見ながら呟いた。


「・・・美神さんからはもう、貰いましから」




 ───勇気、を・・・・・・。




(みんなが帰って来ちゃったからああなりましたけど、騙すつもりは無かったんですよ?だから・・・・・・次は覚悟していてくださいね?)











 ・・・そんなこんなで。美神達の壮大な暇つぶしは、これにて幕を下ろしたのであった。

















 ちなみに・・・



 横島は当分の間、人間不信に悩まされたんだとか。





 ※  ※  ※


 ガシャーンッ


『な、なんやてェ!?自分、小鳩の愛がこもった飯が食えんっちゅーんかいっ!?』

「う、嘘だァーー!この飯を食ったら怖いオジさんが物陰から出てくるんだろっ!?俺は騙されんぞーー!!」

「よ、横島さん・・・・・・(ほろり)」













 〜おしまい〜












<あとがき>

 最初に・・・。はい。投稿時間、予定より大幅に遅れましたとです;。
理由は・・・・・・聞かんといてください・・・(遠目)。あえて言えば書きたいことが増えすぎたんです・・・・・・。
当初の予定の約3倍のキロバイト数って・・・・・・;。

 登場キャラの方ですが、えっと・・・いつの間にラブコメにっ!?
振り向けば最初の案とは90度くらい方向の違う作品になってました;
後、やたらと美神さんがヒドイのは・・・なんでなのでせうか?(知らん)

 別名「北風と太陽物語」いかがだったでしょうか?約半年のブランクってこれほどまでだったとは…。
書きたい事がうまく表現出来ず、切って貼っての繰り返し、かなり四苦八苦してやっと書きあげました。
なんかキャラクターも原作と少し違うと思われる方もいるでしょうが、それは心の目でなんとか・・・・・・(笑)
でも、その分愛着はあるので、感想のほど、どうかよろしくお願いします。

 覚えている方がいるかどうかも分かりませんが、実は私、このサイト様で連載を執筆途中です。
しかし、進学の諸事情で家を離れることになり、今住んでいる所がネットが出来ない環境なので、
今年の4月から全く投稿出来ない状態が続いています。
今回は久しぶりに帰省したので投稿したしだいですが、正直今度はいつ投稿出来るかは全くの不明です。
しかし、いつかには絶対に完結させるつもりでいるので
生暖かい目で見守ってくださるようお願いいたします。(ぺこり

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