ザ・グレート・展開予測ショー

頬に赤みを!! 中編


投稿者名:Kureidoru
投稿日時:(05/ 8/25)



 <ケース1:シロの場合>

「悪いでござるがイキナリ勝負を決めさせてもらうでござるよ。なにせ拙者、先生が顔を真っ赤にしている所なんてしょっちゅう見ているでござるからな!」

 ガチャッ

「せんせーっ!入るでござるよー」
「ん、お帰り。あれ、みんなは?」
「三人とも台所で夕飯の仕込みを始めるみたいでござるよ」
「ふ〜ん…」

 シロがドアを開けるとそこには美神のいいつけ通りに書類整理をしている横島の姿があった。
横島は作業の手を止めてシロの方を振り向く。ちなみに、勝負の行方がすぐ分かるよう、三人は台所ではなく部屋のドアの外で待機している。

「あ、それが美神どのが言っていたやつでござるか?」
「ん?あぁ、この書類の事か。なんとかだけど、一応はやってるよ」

 ふーっ、と溜息まじりに苦笑いする。

「さすが先生!話によると、先生はその書類整理とやらをやったことが無いらしいでござるが?」
「全く、ちっとも、一回たりとも書類整理なんてやった事ないっつーの;。でもまぁ、人間本気になればなんとかなるもんさ」
「凄い!先生は拙者の師匠でござる。このような事、朝飯前でござるなぁ♪」
「フフフ…まーかせろ!分かる所から順に埋めていって、分からん所は適当書けば意外と当たるもの…。この必勝法で数々の難試験をクリアしているのだぞ…?『勘のみ忠ちゃん』の異名は伊達ではないわーっ!!」
「……そ、それは書類整理ではなくテストでのみ通じる方法なのでは…?」

 声高らかに笑い飛ばす横島をよそに、部屋の外では頭を抱える経営者の姿があったそうな…。

「あっ、ところで先生!頼みがあるでござるよ〜」
「?何だ?ドックフードはおごらんぞ?」

 いかぶしげな顔をする横島だったが、シロがある『物』を持って来て、突如体が凍りつく。

「サンポ行こ?(はぁと)」

 シロその手には、横島にとって忌まわしき首輪と紐がだらりと頭を垂れている。
横島はこの弟子が誘う(いざなう)超がつく程ハードな散歩で、何度危険な目に…てゆーか生死の境を彷徨ったか数え切れない。

「(こ、この地獄への直行旅行をなんとしてでも阻止しなければ…!)わ、悪ぃなシロ。俺は今美神さんのいいつけで仕事中なんだ。また今度、いつか、そのうちに…な?」

 なんとか話をさっさと切り上げたい横島なのだが。

「大丈夫でござるよ。今美神どのは台所で仕込み中で当分戻ってこないし、それに散歩も『少し』だけで終わらせるでござるよぅ」
「あ…あうあう…」

 シロが散歩する直前の約束で、少し・そこまで・すぐ済む、の「シロの散歩の3Sの法則」は、かなりの高確率で守られたためしがない。
どーせ今回も少しだけと言いつつも、軽く東京圏は抜けてしまうことは明白である。…さぁ、どーする横島!?

(拙者と散歩をすると先生は「なぜか」絶対に顔を真っ赤にして息切れするでござる!それを狙えば…!)

「さぁ、先生!緑に生い茂った大自然が、拙者達を待っているでござるよ!」
「う、ぅううぅうぅぅうう〜…全然少しで済ませる気が無いやないかー…」

 泣きながらイヤイヤをするも、火のついた情熱と言う名の炎をそんな事で止めることは出来るはずも無く…。
シロは観念しろと言わんばかりにずずぃっ、と前のめりになる。

 そして遂に…。

「さぁっ!」
「………………分かった、行くよ…行けばいいんだろ……」
「っ!なんだかんだ言って結局は付き合ってくれる先生って優しい…!んじゃ、しゅっぱ〜つ!!」

 観念した横島の了承を得るや否や、猛ダッシュで横島を連れて事務所から出て行ってしまうシロ。走った後にはコンクリートなのに紛煙が巻き起こっている。

 …シロが事務所から見えなくなった当たりで、二階の窓から外の様子を見ていた横島はぽつりと呟いた。

「シロ…ごめんな…」

 その左手には「幻」と刻まれた文珠が鈍い光を放ちながら、静かに共鳴していたそうな…。




 <ケース2:タマモの場合>

「あ〜あ、シロの奴ばっかね〜。ま、私は一番確実な方法を取らせてもらうわ。美神さん、油揚げの準備、よろしくっ!」

 ガチャッ


「横島、入るわよー」
「お、今度はタマモか。夕飯の準備終わったのか?」

 シロの時に邪魔されていた遅れを取り戻そうと書類整理をしているため、振り向かずに返事をする。
タマモは少しムッとしながらも気にせずに、予定通り演技に入り始めた。

「ねぇ…横島ぁ…」
「ん?なんだよ?」
「暑いよぉ…今、すっごく暑いのぉ…」
「?あぁ、そら夏だからな。寒いわけねーだろ」

 いかぶしげな顔をしながらあっけなく気の無い返事を返されてしまい、余りの反応の薄さに思わずガクッと仰け反ってしまう。
横島はといえば作業の手を止めるわけでもなく黙々と仕事を続けている。

(ム、ムカつくぐらい鈍いわね〜…。まぁ、少し予想外だったけど…コレで!玉藻御前の底力、見せたろうじゃないのっ!)

覚悟完了よろしく。勝負に出たタマモは、横島の背後に回り、妖しく体をクネらせながら色っぽく言った。

「あのねぇ…横島ぁ…。あたしぃ…水浴び、したいなぁ…」


 びしぃっ!


 …扉の向こうでなにやら盛大な音がしたが気にしない方向で。
 一方、言われた当の本人は作業の手を止めて、ゆっくりとこちらの方へ振り返った。

(フフフ…さぁっ、あんたの中でフツフツと煮えたぎる煩悩で真っ赤になった顔を、拝ませてもらおうじゃないの!)

 タマモが目を妖しくギラつかせていると、横島の口が遂に開いた。

(さぁ…来るなら来いっ!)





「…………………………………お前大丈夫か?」


 だぁぁぁあっ!


「なっ、なによ『大丈夫か?』って!!失礼過ぎるでしょこの馬鹿ー!!」

 タマモはずっコケながら横島の胸倉に掴みかかる。
空いてる左手にはしっかりと特大の狐火をこさえていたり。

「な、何怒ってんだよ!」
「だからっ!私は水浴びをしたいって言ってんでしょ!?年頃の娘に恥かかす気ぃっ!?」
「知るかっ!浴びてくりゃあいーだろそんなモンっ!」
「……え゛っ?」


・・・・・・


横島が私の悩殺な言動に動じない。
 ↓
つまり欲情していない。
 ↓
普段の横島からそれはありえない。
 ↓
ではナゼ?
 ↓
それは私に欲情しなかったから。
 ↓
とどのつまり、私は横島にとって魅力のカケラも無かった。


・・・・・・


「ふふ…ふふふふ…そーか、そーゆー事だったのねぇ〜…」
「お、おい。なんだ?何勝手に一人で納得してるんだ?」
「うるさいッ!お子様な体型で悪かったわねェッ!死ねぇぇぇッ!!!」
「わっ、訳分かんねーーーっ!!」


 ドッガァァァン…


 「私だって前世は凄かったんだからーっ!」と言って泣きながら事務所を出て行く少女の後には、
頭部にバンダナをつけた肉塊が、香ばしい臭いを発しながら転がっていた…。




その日の夕刊、「都内で謎の爆破!新手のテロか!?」という記事が出たんだとか出なかったんだとか。











 〜つづく〜









<あとがき>

すみません。
全部書ききるまででに少しかかりそうなので先にシロタマ編を。
多分、今夜には残りも書けると思います。

感想、よろしくお願いします。


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