ザ・グレート・展開予測ショー

頬に赤みを!! 前編


投稿者名:Kureidoru
投稿日時:(05/ 8/25)



みーん みーん みーん…


「あ゛〜づ〜い゛〜!何なのよこの日の照り具合は?!」
「本当ですよね。なんでも今日は最高気温が36℃なんだとか…」
「さ、さんじうろくぅ〜!?もー駄目っ!私ここで死ぬかも…」
「はんっ!女狐は修行が足りないでござるなぁ。だらしない奴でござる」

 クソ暑い夏のとある日曜日の昼下がり。
道端で買い物袋片手に談笑しながら歩いてくる美少女が四人。
美神令子、氷室キヌ、タマモ、シロの言わずも知れたGS美神事務所の女性陣である。

「あ〜あ、これなら横島になんかに書類の整理を頼まないで大人しく私がしてればよかったわ…」
「「「(頼むっていうより押し付けていたような…)」」」
「ん?どーかした?」
「いっ、いぃえぇっ、何でもないですよー;」

 この時期の書類整理程かったるいものは無く、暑さに耐えながらの数字と文字との睨めっこ。
計算機とペンを両手に持ってイザ報告書っ、で事が済めば良いのだが。
やれ計算間違いだ、やれ書き損じだ、と来て外で喧しいミンミン声。さらにクーラーの当たり過ぎは体に良い訳もなく。
正直、これをやりたがる奴は正真正銘のマゾだと断言していい。それぐらい夏の書類整理は嫌だ。
 …んで、そんな時に白羽の矢が立った哀れな子羊が一匹。
名前は横島忠夫。GS美神事務所のメンバー兼、美神令子の奴隷的な役職に就いている男だ。
この日の午前中も逃げ出す訳にもいかない書類と格闘していた美神の前に、定刻通りに横島が出社して来たのだが…。

「ちわーっすー。いやー、今日は一段と暑いッスよねー」
「あらー横島クン、いい所に!実はさー、頼みたい事があるのよー」
「?何スか? はっ!ま、まさか………美神さんもついに俺の魅力にぃっ!!……あ゛うッ!」

 言い終わらない内に飛びついた所を神通棍をバット状に大振りされて壁までふっ飛ばされる。
どんな暑さでも変わらないこの強靭な体力と精力と妄想力はこの男が若いせいか、はたまた天から授かった運命(さだめ)なのか…。

「それくらい元気なら問題ないわね。じゃ、私は今からおキヌちゃん達と夕飯の買い物に行ってくるから。私がいない間にテーブルの上の書類を全部済ませておいてね〜」
「えっ?!ちょっと!俺、書類なんて書いたこと…

 バタンッ


 …で現在に至るのだ。

「でも横島さんに悪いことしちゃったなぁ…。横島さんも事務所に来てたなら一緒に誘ってあげたかったのに…」
「いーのよ気にしないでも。第一、あいつが書かなきゃ誰が書類なんて書くのよ?」
「そ、それは美神さんなのであ…」
「そーよねぇ。いるわけないわよねぇ〜」

 ほほほほほっ、と笑いながら歩く隣の女性を見て、おキヌはただただつられて笑うしかなかったそうな…。


 ※  ※  ※


 グツグツ…


「ふぅっ。後は煮込むだけですね♪」

 そう言いながらおキヌは腕で汗を拭った。
あれから事務所に戻って来た4人は、特にやることも無い3人とおキヌとで夕飯作りをやり始めていた。
普段はおキヌ一人で夕飯を作っていたのだが今日はみんなでやれたためか彼女は始終ご機嫌だった。

と、料理が一段落つき、エプロンをはずしていた美神がふいに言った。

「あら。まだこんな時間なの?」

 見ると時計の針はまだ3時を刺している。
事務所に戻ってきたのが2時くらいなのでキッカリ1時間。
今日は別段大きな仕事が入っている訳でもなく、夕飯までまだ十分に時間がある。

「今日は4人で協力してやったお陰で早く終わりましたからね。ちょうど3時ですし、お茶出しますね?」

 そう言いながら戸棚からお菓子やお茶葉を取り出そうとすると…

「待っておキヌちゃん。今、私面白いこと思いついちゃった♪」

 と、急に、美神がおキヌのことを止める。
3人が頭に疑問符を浮かべていると美神は妙にニコニコしながら続けた。

「どうせなら夕飯まで暇なんだし、4人でゲームでもしない?」
「「「……ゲーム…ですか?」」」

 美神令子という女性はどちらかと言うと割りと大人な女性である。
バレンタインデーやクリスマスなどもあまり重要視しないような人なのに、自分からゲームをしようと言い出す事に3人は少し意外に思った。

「…で、ゲームって何をやるの?ふぁみこん…って奴?」

 いかぶしげな顔でタマモが質問する。

「違う違う。そんな小難しいのじゃなくてもっと単純なのよ」

 そう言いながらウィンクし、説明を始める。

「ルールは簡単。どんな事をしてでも良いから横島の顔を真っ赤にすること。ただし、赤いペンキを塗りたくるとかそーゆーんじゃなくて、あいつが自発的に顔を赤くさせなきゃならないってわけ」

 美神が説明し終えると、お題の意味がいまいち理解出来なかったのだろう。
シロが首を傾げる。

「えっと…つまり先生に何をすればよいのでござるか?」
「よーするに、横島のことを暑がらせたりして、顔を赤くさせればいいのよ」

 とタマモが助け舟を出してやる。しかし、言い終わってからタマモが当然の疑問を尋ねる。

「でも美神さん、なんで唐突にそんなお題を?別に横島うんぬんじゃなくても他にあるんじゃないの?しかも、そんなに簡単そうなお題で」

 それを聞いて美神はにやりと笑った。

「分かってないわね〜?あいつは今、クーラーの効いた部屋にいるのよ。そう易々と暑がらせたりなんて出来ないでしょ?そこをどうやるか何て一筋縄ではいかないわ。それに…」

 そこまで言うと今度は「にたり」と笑いながら続ける。

「私達がクソ暑い思いして買い物やら夕飯作りやらしてるのに、なんでアイツだけ涼しい部屋で書類整理なんてしてるのよ!?…ってね♪」
「(………完全な逆恨みね。横島の奴、可哀相に…;)」

 そう思いながら心の中で合唱するタマモなのであった。


 ※  ※  ※


「真っ赤になるまで怒らせる…といっても悪口なんて思いつかないし…ましてやそんな事出来ないし…」
「赤く熟れたトマトを沢山食べさせれば…!」
「ただお通じがよくなってそれで終わりよ」

 しかし、いざやってみろと言われると結構な難題なわけで。
さっきも言っていたように、横島が今いる部屋はクーラーのお陰で涼しく、暑くさせる方法はまず無理。
他の方法を使わなければ赤くするだなんて出来きはしない。
 では一体どーするのか?
勝負に向けて台所で井戸端会議よろしく、美神以外の3人で向き合ってあーでもないこーでもないと考えているところである。 

 と、そこで、シロがある事に気づいた。

「あれ?そーいえば美神どのはもう考えてあるのでござるか?」

 それを聞いてさも当たり前のように答える。

「えっ?!発案者は私よ?最初っから考えついていたわ」
「すでに思いついていたのでござるか!?ずるいでござるっ、自分ばっか有利な勝負なんて!」

 これを聞いてシロはイスから勢いよく立ち上がる。他の2人も少し意外そうに美神を見る。

「うっ…;わ、分かったわよ。じゃあ、こうしましょ?もしあんた達の誰か一人でも勝ったら一つずつ言う事聞いてあげる。逆に私が勝ったら、一つずつ言うことを聞いてもらうわ。これで良いでしょ?」

 美神の急な提案に3人は顔を見合わせる。

「なんでも…でござるか?」
「そ、なんでもよ」

 それを聞いた瞬間タマモとシロは俄然ヤル気を出し始めた。
2人はまるで夢見る乙女のごとく目に星をいっぱい輝かせて欲しい物の相談をしだす。

「せ、拙者は、今CMでやってる新商品のドッグフードを…」
「馬鹿ね!私はそんなのより下町で代々受け継がれてきた秘術で造られたといわれる幻の油揚げを…」

 夏の暑さはどこへやら。すでにおごってもらう事を前提に話を進めている。
そんな2人を尻目におキヌが美神にそっと話しかけた。

「私は別に今は欲しい物はないんで、特別何かをしてもらわなくても結構ですよ?」
「あら、おキヌちゃんまでもう勝ったつもりでいるの?」
「べ、別にそうゆうわけじゃ無いんですけれども……;」

 そう言われ、おキヌは自分の発言をつつかれて慌てて俯いてしまった。




 ……それは一瞬の事であった。


2人で言い争っているシロとタマモも。
恥ずかしさで俯いているおキヌも。

 この時の美神の独り言には気ずきはしなかった。

「願い事の約束も計算通り…。ふふ…私はね。勝てない勝負はしない主義なの。横島クン…覚悟なさい?」

 そう言って一人、妖しく目を光らせながら笑う女性の姿がそこにあるのであった…。


 ※  ※  ※




「ふ、ふ、ふぇーくしょんっ!!うぅ…クーラーに当たりすぎたか?」












  〜つづく〜








<あとがき>

 お久しぶりです。3月の投稿を最後に音信不通だったKureidoruです。
約半年の間、忙しい&諸事情で書き溜めも更新も出来ませんでした。
おかげでかなりレベルダウンしてますが…どうだったでしょう?
後編は明日には出すと思いますので、そちらの方もご講読お願います。

では、反対票、賛成票、感想、よろしくお願いします。



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