ザ・グレート・展開予測ショー

ゲームで過労死って何かが間違ってね?


投稿者名:ゆうすけ
投稿日時:(05/ 8/24)






――とある小学生三人組に振り回されている大人達が働いているところ

警察官が一名、デスクに並べられているビニール袋に包まれた様々な品を触りながら歩いている少女の

後ろを歩いている。両手には紙とペンが握られていて、少女の一言一句を正確に書き留めていた。

「…………」

テキパキと進んでいた作業が止まる。少女がある品の前で立ち止まったからだ。

「これ、物凄く霊的な、禍々しい波動…執念を感じるわ。分析と処置をオカルトGメンに回して。あ、

その証拠品に触れちゃダメよ」

少女の手とその品に触れないように受け取った警察官は別の人間にそれを回した。

彼のその所作を気に留めることも無く、少女は再び作業に戻った。








――美神除霊事務所

「で、なんでウチに回すのよ?」

眉間を押さえながら、美神は呆れた感じで西条に言った。

「いや〜、なにせ警視総監の娘さんからの要請だから」

いつに無く砕けた口調で答えらしい答えを返さない西条。

「だったら西条さんが直接除霊したら良いじゃない」

あからさまに嫌そうな顔をしながら突き放す美神。

「ボクも一応公務員で忙しいからこんな時間のかかる除霊をするヒマは無いんだよ。それにボクがこん

なモンやってたまるか」

回された品に目を落とす西条。西条的にこう言ったものはタブーらしい。

「私だって忙しいわよ。大体この手のゲームなんてやった事ないわよ」

つられて美神もそれに目を向ける。

二人の先にはゲームソフトが二本。

『どくどく☆撲殺メモリアル』 『LOVEデス』

どちらも恋愛シュミレーション。片方はパッケージを見る限りBLの気配がする。

「君のトコは従業員が多いだろう?片方は横島君にやらせるとしても君を除いてまだ三人も残ってるじ

ゃないか。依頼料は払うから。これ前金。期限は3日後だから、じゃ、頼んだよ令子ちゃん」

言う事を言うと小切手をさらさらと切り、西条は逃げるように事務所を去っていった。

「ちわ〜っす、西条来たみたいスね。どんな難題吹っ掛けられたんスか?」

さすがに付き合いが長いだけか、両手にゲームソフトを持って呆気に取られながらソファに座っている

美神の姿を見て察した横島が話し掛けた。

「あっ。ああ、横島クンいつ来たの?」

「西条とすれ違いですよ。後は頼んだぞとかなんとか言われて」

そう言うと横島は台所へ向かい、グラスを2つと麦茶を持ってきた。

「ありがと。…じゃあ横島クンどっちか頼むわ」

グラス半分ほど麦茶を飲み干しながら横島の前にゲームソフトを並べた。

「…やっぱオレですか?」

「当たり前じゃない。ハードはちゃんと用意するから」

もはや西条絡みの依頼については諦めているのか、文句の一言も言わずに饅頭を頬張りながらパッケー

ジと説明書を眺めていた。

「………」

片方を美神に渡す。そっちはやってくれと言う意思表示らしい。

「………」

受け取った美神も横島と同様に饅頭をパクつきながらパッケージと説明書を眺める。

「……ホントにオレがやるんスか?」

説明書を読みながら横島。

「…うん」

美神も同様に説明書を読みながら返した。

「…そっスか」

「…うん」

横島が二個目の饅頭に手を伸ばした。美神も空のグラスに麦茶を注ぐ。

おキヌが買い物から帰ってくるまでこの光景は続いた。











――横島のアパート

「ふぅ〜〜…」

年に一度あるかないかと言うほどスーパーの袋を両手にぶら下げながら横島は帰宅した。

中身は食料やら飲み物やら栄養ドリンク。

「どっこいしょ」

スーパーの袋を両脇に降ろし、ゲーム機が繋がっているテレビ画面の前に腰を下ろした。

テレビとゲーム機の電源を入れ、ゲームソフト『どくどく☆撲殺メモリアル』を起動する。
流れているオープニングムービーを眺めながら袋の中からペットボトルを取り出す。

「ったく。後3日で終わんのかよ、これ…。ま、終わんなくても俺が困るわけじゃないけど」

頬杖を突きながら横島はロードの項目を選択した。






――美神除霊事務所

おキヌがお盆にコーヒーカップを乗せ、美神の部屋のドアをノックした。

「美神さん、コーヒーです」

「あ?ああ、ありがと」

溜息を吐きながらカップを受け取る美神。

「どんなお話なんですか?」

「え?…パツキン男がなんか訳わかんない敵と戦いながら6人位いる他の男達とネコミミ少年にハァハ

ァ興奮したり奪い合ったりする話」

ゲームソフトの内容を小馬鹿にするように説明する美神。その話におキヌは愛想笑いを浮べた。

「私、ゲームってやった事ないんですよね。楽しいんですか?」

見慣れない物に興味津々な感じで画面を覗き込むおキヌ。

「まぁ楽しい人は楽しいんじゃない?なんなら少しやってみる?」

と言ってコントローラーをおキヌに手渡す美神。

「え、いいんですか?」

「ゲームをやりながら自然に流れ出てる霊波を当てるだけだから別に誰がやってても良いのよ。トイレ

のついでにお風呂入ってくるわ。その間よろしくね」

そう言い残して美神は部屋を後にした。













――その頃、横島宅

「………………………カリカリ……………………………カリカリ………………………………………」

一人暮らしの為か、横島は黙々とゲームを進めていた。時折紙とペンを取り、何か書き込む。

紙には『…日…時に…ちゃんと公園イベント』など様々なイベント発生スケジュールが書き殴られてい

た。

「……………………………………………………………………………ニタリ」

テレビの光のみが照明の暗い部屋で、その光に照らされた横島の口元が不気味に曲線を描いた。














――約2時間後、美神の部屋

「や、おキヌちゃんお待たせ」

缶ビール片手に戻ってきた美神の目には振り向こうともせずに画面に釘付けなおキヌの姿があった。

「…おキヌちゃん?」

不審に思った美神はおキヌの顔を覗き込んだ。

「うう〜〜」

その顔は目から鼻から口から色々流れ出てぐちゃぐちゃになっていた。
画面が見えてるんだろうかと言う疑問と共におキヌの目の色の異様に気がついた。

「あ〜、こりゃイッちゃってるわ」

この手の品には洗脳作用がある。美神と横島がずっと説明書を読んでいた時のようにおキヌもこのゲー

ムソフトが出す霊波にやられていた。画面にかぶりつきのおキヌを引き剥がした。

「…ぐすっ…ひっく…。あれ、美神さん?」

部屋の外まで引きずり出した所でおキヌが正気に戻った。

「…おキヌちゃんにアレをやらせるのは危険みたいね」

そう言い残した美神は廊下におキヌを置いて部屋に入っていった。

「みかみさぁ〜ん!続きやらせてくださぁ〜い!」

ドンドンとおキヌがドアを叩く。

「おまけに中毒性もあるのか…」

終わる頃に自分がまともでいられるか不安になりながら美神は再びコントローラーを握った。











――50数時間後、美神の部屋

「……あ゛〜。門番一号、コンビニでテキトーにゴハン買ってきて」

椅子にグッタリともたれかかりながら部屋の外にいるタマモに買出しを頼んだ。

「わかった」

二つ返事でタマモは出かけて行った。タマモにもやや疲労の色が見える。

「二号、おキヌちゃんの様子見てきて」

「わかったでござる」

シロものっそりと動き出す。

実はあれからおキヌの中毒症状は抜けず、美神がトイレに行ってる隙に部屋に忍び込む事5回。

強行突入22回。美神に簀巻きにされておキヌ自身の部屋に監禁された後も、ことごとく何重にもしか

けた罠をすり抜けてきていた。

「……あんなコでもいざって時は私の弟子なんだって事をまざまざと感じるわね」

師匠の目的の為には手段を選ばない考え方が、弟子にしっかりと受け継がれているのを美神は苦笑いを

浮べながら噛み締めていた。

「多分クリアすれば中毒症状も抜けると思うんだけど」

冷めたコーヒーを不味そうに啜りながらゲームを進める美神。もうクライマックスを迎えている。

「非常事態発生!非常事態発生!ミスおキヌが自室より逃走、まっすぐこちらに向かってきます!」

けたたましいサイレンと共に人工幽霊一号が状況を報せる。

「………」

またかと言った表情でのっそりと立ち上がる美神。

「シロは?」

「ファーストコンタクトを軽くいなされ、その後地雷を踏んで自爆しました」

画面を見ると主人公がネコミミ少年と固く抱きしめ合っていた。

「………」

美神が張った罠を避ける為に壁走りやら天井走りやらしている結果、とても速く、そして不規則なテン

ポの足音が近づいてくる。

ドアが吹き飛び、爆煙と共におキヌが姿を現した。

「み゛か゛み゛さ゛ぁ〜ん…今度こそやらしてもらいますからねぇ〜」

今までの経緯からしてそうだが、おキヌは何か別人と化していた。
ロボットでも無いのに彼女の目がビコーンと言う効果音が聞こえてきそうな程光っている。

「ごめぇ〜ん、もうクリアしちゃった!」

美神が頭をポリポリと掻きながら舌をチロリと出す。画面にはエンドロールが流れていた。

「…えっ?えっ、ええぇ〜〜〜!」

最初は呆気に取られて目を丸くしていたおキヌは、事を認識したらガクリと膝をついた。

こうして爆煙と闘争と駆け引きにまみれた『LOVEデス』攻略が終わりを迎えたのだった。












――ほぼ同時刻、横島宅

ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪   ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪

ゲームのテーマソングが流れる中、部屋にはピクリとも動かず倒れている横島と救急士二名とお隣りの

異変に気付き通報した小鳩。

「おそらく過労による心臓発作だ!急いで病院に搬送するぞ!まだ間に合うかもしれん!」

ストレッチャーに乗せられ、運ばれていく横島。後をついて行く小鳩。

テレビにはスタート画面が映っていて、そのBGMと画面はプレイヤーを手招きしてるようだった。


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