ザ・グレート・展開予測ショー

カプセルの中の母(前)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 6/14)


「また、俺の勝ちだな!」
「負けたでござるーっ!」
「ちぇっ」
三人の歓声とため息が同時に横島の部屋から漏れる。
横島は小竜姫のMK-Uが現れた時、その行動を観察していたかったのだが、シロに強引に遊ぶようせがまれたので仕方なく自室でタマモを加えてトランプしていたのであった。
「先生ひどいでござるひどいでござる〜!!どうしていつも拙者のババを引いてくれないのでござるか〜!?」
「はっはっはー!ニュータイプの勘というやつか。って言うのは冗談で、お前、俺がババに触れるとニヤニヤ笑うだろ。だからすぐ解っちまうんだよ。」
「ずるいでござるずるいでござる〜〜!!」
シロは笑っている横島に勢いよく覆いかぶさると我武者羅に顔じゅう舐めまわし始めた。
「うわっ!こ、こら!やめろっ!!」
「シロ、やめなよ。大人気ないぞ。」
「うるさいでござる!タマモは黙ってろでござる!」
「(カチン)なんだとっ!」
タマモの繭がピクッとつり上がる。
と、その時・・・
ピ―ッピ―ッ!!!
艦内にけたたましく警報が鳴り響いた。
「警報か・・・。敵が近づいているのか。よし、デッキに行ってみるか。シロ、タマモ、行くぞ・・・って何やってんだお前ら!?」
見ると、さっきまで仲の良かったハズの二人が野獣の様に眼をギラつかせてフーフー言いながらお互い威嚇しあっている。
「これは、拙者の先生に対しての愛情表現なのでござるっ!!お前にどうこう言われたくないでござるっ!!」
「あんたねー14にもなって人の顔平気で舐めたりして・・・少しは女の恥じらいってもんを知りなさいよねっ!!一緒のいる私が恥ずかしいのよっ!!」
「な・ん・だ・とーーーーー!!!ガルルルルルーーーーーーー!!!」
「やる気!?フーーーフーーー!!!」
「・・・・・・もういい。お前らそこでずっとバカやってろ!」
呆れた横島はさっさとノーマルスーツを着込むと、足早にデッキに向かった。


「人質?」
横島は、通り抜けようとする通路で、艦内通話の受話器を置いた兵士の言葉を耳にして思わず立ち止まった。
「ああ、MK-Uを持って来てくれたガキの母親を人質にとったんだ・・・。」
小竜姫の閉じこめられているガン・ルームの前であった。
そこの警戒に立っている三人の兵士のうちの一人だ。
「あ・・・・?」
その兵士は、パイロット用のノーマルスーツを着ている横島の顔を覗き込んだ。
「・・・誰だ?」
「今アンタが言ったガキだ。横島。」
「なんで・・・・」
その兵士は、横島がパイロット用のノーマルスーツを着ていることを咎めようとしたが、うしろの別の兵士が怒鳴ったので、その方を振り向いた。
「だから、カオス教をたたかなきゃあいけないんだ!」
「なぜっスか?おふくろは、カオス教にとっても必要な技術者なんスよ!人質になるわけがない」
横島は、さすがに声をあらげた。(くそ、いくらおふくろでも相手がMSじゃ勝てるワケがねー!)
「俺達に言ったってしょうがないだろ!文句なら厄珍に言いな」
「横島君、そこにいるの!?」
部屋の中から小竜姫が言った。
「捕虜が口をだすこっちゃあない!」
兵の一人が怒鳴った。
「小竜姫様?」
横島はドアを見た。
「捕虜ではありません!私は使節です!」
「てめえが疫病神なんじゃねえかっ!」
ドアが開いた。と、二人の兵がドアの前に立っていた小竜姫に飛びかかっていった。
突然の事態に、小竜姫はその男たちの攻撃を避けられずに体が跳んだ。反対の壁に流れてゆく。
「あ・・・・」
横島はその髪の毛で小竜姫であることを確信した。
「ちょっと待って下さい!その人から事情を聞きたい!」
横島は、一人の兵の銃床にかじりつくようにして阻止した。


西条の赤いディアスは、アーギャマの外で待機していた。
アーギャマの戦力は現在ディアス三機にMK-Uが一機である。先刻の小競り合いでも損傷を受けたMSはなかった。
そして、小竜姫との交渉の時間を利用して、各機は、弾丸とメガ粒子砲のエネルギーパックを補給することができた。
敵は、小竜姫の一号機以下四機の編隊を発進させた艦艇が二隻である。
アーギャマの前方に位置する小竜姫の一号機を発進させた艦艇が、接触するまでにはまだ間があった。
が、MSの数では敵のほうが有利である。
ここを無傷で脱出するのは容易ではない。
以前の西条ならば、MSを楯にする作戦を実行した。
ジャオン軍であれば、たえず消耗させてもよいという感覚があった。それが西条に、ふっきりのよい作戦を実行させて、結果的には多大の戦果をあげることができた。
しかしICPOは違う。
戦力がある組織ではない。
現在までのICPOの勢力は、地球連邦軍の中にどれだけ存在するのかも不明なのである。
今回の作戦の裏の目的があるとすれば、この作戦を実施し、カオス教に動揺を与えれば、潜在化している反地球連邦政府分子を立ち上がらせることができるであろうという目論見であった。
そして、ICPOの戦力の拡大を狙う・・・。
そのためには、一艦、一機でも損失させるわけにはいかないのだ。
それを、この戦力でできるのかどうか?さすがに、西条はその確信がつかめずにいた。
どう判断するのか・・・・と迷うわずかな隙に別のことを考えていた。
「人質はいいのですか?」
「MK-Uのデータには変えられん。横島君たちの住んでるコロニーの写真も議会に提出すれば、現地球連邦政府を解散にだって追い込める。母親の命は無視せざるを得まい・・・」
「論理的ですが、本当に人質をどうかするのでしょうか?」
「するな。奴ならする・・・・」
「正体不明のカプセル発見ですねー!!」
そのヒャクメの甲高い声に、ブリッジにいる将兵がいっせいに宇宙の一角を見た。
点滅する緑と赤の航空標識の光がゆったりと戦闘空域に入りこみ、視認できた。
「カプセル・・・?」
西条は、いやな感触を持った。

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