ザ・グレート・展開予測ショー

ぶらいだる


投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:(05/ 8/18)


「結婚………………かぁ…」

 若干強めのライスシャワーを新郎新婦目掛けて浴びせながら、腕に込められた力強さとは裏腹に寂しそうな顔で美神はこっそり呟いた。
 今日は、結婚式。
 西条輝彦と、旧姓魔鈴めぐみの結婚披露宴。
 かつて憧れを抱いた兄のような年上の男性。そして突然現れて、自分を一人の女性として見てくれた人。
 その憧れは、手の届かないところに行ってしまったらしい。

「…しかし私にコナかけてたクセに、ちゃっかり魔鈴にも手を出していて、しかもできちゃった婚とはどういう事よ…」

 ポケットから米粒大のクズ精霊石を取り出して、ライスシャワーに混ぜて投げつける。
 まぁ、小石をぶつけられるくらいの痛みはあるかもしれないけど…

「これくらいはいいわよね?お兄ちゃん」

 …そのあと、思ったより大きな爆発が起きたんで、つい隠れてしまったのはここだけの話。




「結婚……かぁ…」

 事務所に帰って机に腰掛け、式の時と同じセリフを呟く美神。
 魔鈴のドレス姿とか幸せそうな表情に、女性として思うものが無いでもないらしい。

「ん〜…」

 そして自分のお相手について、身の回りにいるヤローどもの中からピックアップ。

「あの〜、美神さん…」
「なによ。今考え事してるんで邪魔しないで」

 そのタイミングで横島が話し掛けるも、あえなく袖にされる。
 一応は人生設計だ。彼女なりに真剣に考えようとしているらしい。

「(とりあえず、何か私に吊り合うような能力を持ってる人がいいわね…経営能力とか芸術家でもいいけどやっぱり霊能が都合が良いか…)」
「その〜…美神さん」
「(お金はあった方が…それにできれば年上の人がいいわよね…ってしまった。そう考えると西条さんって結構いい線行ってたんだ)」
「美神さん?」
「(…魔鈴にやられた?魔女なんだし、妊娠くらい自由に仕込めるかも?くっ!やってくれるわねあのアマ!)」
「嫁き遅れのタレ乳女」
「ってやかましい!黙れって言ったでしょうが!!それに誰の事だそれはぁっ!!!」

 全力でツッコむ美神。
 普段の横島なら、それをくらって吹っ飛び、オチになっていただろう。
 が、今の横島は人生最大の覚悟を完了していた。唸りを上げたストレートを左手で包み込むように受け止め、右手で箱を差し出し、こう言った。

「美神さん、これを受け取ってもらえませんか?」

 そこにあったのは、やや小ぶりながらも確かな光を放つダイアモンドの指輪。

「な!?ちょ……え?うそ!?」

 驚き、うろたえ、赤くなって逃げ道を探すようにきょろきょろと視線を彷徨わせる美神に、横島はもう一度、今度はしっかりと美神の目を見つめて、まるで文珠に文字を込めるように、意思と言霊を一言一言に込めて、丁寧に言った。
 
「俺と、結婚、して、ください、美神さん」

 この時、美神の頭にはさっきまで考えていたような打算も計算も何も無かった。ただ、ひとつの単語だけが繰り返し、繰り返し流れていた。

「(横島クン横島クン横島クン横島クン横島クン…)」

 そんな美神に、横島は人生で数えるほどしかしていない真剣な表情をして、答えを待つ。
 答えを待つ。待つ。
 その、返事は…

「……幸せに…してね」
「はい!」

 その一部始終を見ていた人工幽霊壱号は、心の中で自分のオーナーらにお祝いを言い、その部屋からしばし意思を外した。
 彼(?)も邪魔をして、馬に蹴られるのはイヤだったらしい。

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