ザ・グレート・展開予測ショー

オカG極楽大作戦〜新たなる力〜令子編


投稿者名:ふぉふぉ
投稿日時:(05/ 8/13)

都庁の地下、心霊災害管理施設。その中にある霊動実験室は施設を管理している東京都の管轄下であるが、アシュタロスの事件により一時的に使用を許可されたオカルトGメンにも引き続き使用権が与えられていた。

「・・・これで99・・・次で最後ね。」

美神は気を引き締めるように再度両手の神通棍に気合を込める。まるで空のホースに急激に水を流したかのように、神通棍から鞭のように伸びている霊波が大きく波を打つ。
眼前に敵を捉えた美神が両手で一撃を放つ。放たれた鞭の先が目標の中心で交差し、目標を消し去る。

「100!どう、ママ?」

美神の様子をモニターしていた美智恵は少しの間沈黙し、スピーカーのスイッチを入れた。

「・・・全然だめね。令子、あがってらっしゃい。」

美神がここに通いだしてから今日で3日目。横島にできたなら自分も新技を、と息巻いて特訓を始めた美神であったが、未だこれといった進展もないままであった。
その焦りが色濃く現れ、疲れた表情をしてモニタールームに入ってきた美神に美智恵はモニター結果を見ながら説明を始める。

「神通棍が1本のときより明らかにタイムが落ちてます。2本にした分、攻撃が散漫になっているようですね。霊力自体は上がっているわ。横島クンとの霊力の完全同期連係の影響は一時的なものではなかったみたいね。しかし、それだけのことです。」

冷たく言い放った美智恵に美神は興奮気味に声を荒げる。

「だったらどうすればいいのかくらい教えてくれてもいいじゃない!横島クンには指導してたんじゃなかったの!」

「彼は既に自分できっかけを作った状態で私のもとに来たのです。明確な目的を持って。・・・私はほんの少し後押ししたに過ぎません。」

美智恵は美神の目を見つめ、問いかける。

「令子、おまえは何のために今ここに来ているの?」

「私は・・・もっと強くなるために・・・」

「では何のために強くなろうとしているの?」

美智恵のその言葉に美神は言葉を詰まらせ、うつむいてしまった。

「本当はあまり話すようなことではないのかもしれないけど・・・横島クンのことを話してあげましょう。」

美神に席につくよう促すと美智恵は語り始めた。

「彼は、サイキックソーサーの制御をできるだけ完全なものにしたい、と言って私に協力を求めてきました。どうやらおまえを危険な目にあわせてしまったことがあったようですね。その時、こんなことを言っていました。誰かを助けようとして他の誰かを傷つけるところだった。こんなミスは二度としたくない、と。」

美智恵は記録されていた横島の訓練の様子を再生しつつ、さらに続ける。

「飛ばしたサイキックソーサーのコントロールは1日でできるようになったわ。GS試験の時にも軌道を変更した経験はあったみたいだし。」
「起爆のリモートコントロールと、盾の面を攻撃方向に自動で合わせるのにさらに1日。」
「同時に3枚をコントロールできるようになったのは5日目でした。」

スクリーンには横島がの5日目の様子が映し出されている。倒した鬼数のカウントがみるみる加算されてゆく。

「私はこの時点でほぼ完成だと思っていました。1対1ならば盾は1枚あれば十分、多人数の相手でも2枚あれば横島クン一人ならばほとんど対処可能です。ですから、これ以上枚数を増やすよりも文珠と組み合わせた攻撃バリエーションの検討をした方がよいのではと提案しました。でも彼はそれを拒否したのです。・・・俺を守るだけじゃだめなんだ、美神さん達を守れなきゃいけないんだ、と。」

横島が20匹のベルゼブルを倒し終えたところで美智恵はスクリーンをオフにする。そしてまた美神を向いて言った。

「おまえは横島クンが自分の先へとどんどん進んで行ってしまいそうで、横島クンに置いて行かれそうで、それが怖くてがむしゃらになっているだけなのではないの?」

美神はうつむいたまま答えない。

「フライングソーサーはまだスキのある技だわ。切断力も彼自身の霊波刀にまだ及ばない、爆発力もさほど強くなっていない、それに同時に5枚を制御していられるのはせいぜい1時間程度。それ以上続けるとしばらくは満足に動けないほど消耗してしまうの。」

「それでも横島クンは半径5m以内の防御力を高めることにこだわったわ。それが彼の目的だったから。」

そう言い終えると美智恵は立ち上がり、美神の横を通り過ぎ出口へと向かう。ドアの前までくると、美神に背を向けたままで言った。

「令子、おまえ自身の目的を見つけてからもう一度いらっしゃい。・・・今日はここまでにします。」

美神は美智恵が立ち去った後も、椅子に座ったままずっとうつむいていた。











一ヶ月後、霊動実験室には再び美神の姿があった。一本の神通棍を手にして。

「ずいぶんと時間がかかりましたね、令子。それで答えは見つかったのですか?」

そのスピーカー越しの美智恵の声に美神は答える。

「別に悩むのに時間はかけちゃいないわ。これができるのを待ってただけよ。」

そういうと美神は手にした神通棍を美智恵に見せるように頭上にかざした。美智恵がよく見ると、その神通棍には柄の下部、棍の伸びる方とは逆側に小さな丸い突起があるようだった。

「それがどうかしたの?」

美智恵の疑問に美神は小さく微笑み、答える。

「まあ見ててよ、ママ。私が合図したらベルゼブルをお願い。数は30!」

そう言うと美神は頭上に神通棍をかざしたまま気合を込め始める。神通棍下部の球体に『散』の文字が浮かび上がり光りだす。気合の高まりとともに神通棍の先が真っ直ぐに上方へと伸び、輝きはさらにその光を増していった。

「ママ、お願い!」

言われるままに美智恵はシミュレーションプログラムを起動する。美神の周りには次々とベルゼブルのクローンが姿を現し始め美神めがけて襲い掛かってくる。

「貫けーーーーっ!!!」

美神の叫びとともに神通棍より無数の光の線が放たれる。その光の線は各々がベルゼブルへと伸びてゆく。

逃げ惑うベルゼブル。

しかし光の線はまるで自らの意思を持つかのようにベルゼブルを追いかけ、ことごとく貫いてゆく。

数秒にも満たない間に全てのベルゼブルは姿を消していた。

全滅を確認した美神はかかげていた神通棍を降ろし、満足げな笑みを浮かべてゆっくりと美智恵の方を見上げた。

「どう?ママ。これが私の答えよ。」

神通棍を握った手を胸の位置まで上げ、その握った手にグッと力を込めながら美神は続ける。

「横島クンが側にいてくれるなら・・・横島クンが敵から私を守ってくれるなら・・・」
「私はその敵を倒す!」

そう言うと美神は胸の神通棍に目をやる。

「この技は文珠がないと使えない。一度使うたびに文珠を一つ使う。私だけではできない技・・・でも、今までもずっと側にいたし、これからも一緒にいるんだもの!」

美智恵はそこまで聞くと、スピーカーのスイッチを入れた。

「そう、それがおまえの答えなのね。」

「そうよ。私はガンガン攻める方が性に合ってるもの。気合を込めるのに多少時間がかかったって、それをカバーしてくれる人がいるなら一撃でぶっつぶせる威力をとるわ。」

「いいでしょう、それもまた一つの答えですね・・・よく頑張ったわ、令子。」

美智恵に褒められ美神は少し照れた表情を浮かべる。照れ隠しなのか、美智恵のほうから目をそらしてあさっての方向を向きながら独り言のように話しはじめた。

「それにさー、なんだかんだ言って横島クンは私の使用人なわけでしょ?だから横島クンのものは私のもの。横島クンの文珠も私のものってことじゃない?だったら文珠使ってたってそれが私の技なら全部私の力?みたいな・・・」

言葉をとめた美神は一度下を向き、今度は上目遣いで美智恵を見上げる。

「それでさー、ママ・・・この神通棍なんだけどさ・・・ザンスで超特急で作らせた特注品だったから一本1000万円もしちゃったのね・・・でさー・・・」

「何です令子?」

「これって、Gメンの経費で落ちない?」

美智恵は額に筋を浮かべながら、それでも笑顔を崩さず答える。

「そうね・・・さっきのおまえの記録を公開資料にしてもいいなら考えてあげてもいいわよ・・・特に『横島クンが側にいてくれるなら・・・』とか『これからも一緒にいるんだもの!』のあたりとか。もちろん公開資料だから誰でも閲覧可能になるけど、それでもいいかしら?」

「ちょっ・・・ダメよそんなの!絶対ダメだからね!止めてよね、ママ!」

美智恵は手を口元に添え、オホホホ・・・と美神の慌てた様子をみながら笑う。

「さーて、どうしようかしらね。」

ドギュン!と、ものすごい速さで美神は部屋を飛び出し、コントロールルームの美智恵へと叫びながら走っていくのだった。

「そんな記録この世から消してやるーーーーーーーーっ!!!」












その夜、美智恵は一人でコントロールルームの端末に向かっていた。何やら独り言をしながら深刻な表情で・・・

(やっぱり文珠は人間の力では人工的に作り出すことは無理なようね。Dr.カオスの結論は正しかったと言わざるを得ないわね。霊能力の自覚のないまま煩悩という本能を源とした強大な霊力を得、そのコントロールを『心眼』という神界のアイテムにより一点集中という一歩目からスタートしたこと自体が普通ではないケースですものね。さらに本人の資質が必要となると・・・他人が修行したからといって得られる能力ではないことは確かだわ・・・)

(となると今まで以上の装備と、チームによる集団戦法の確立が必要ね。現在のオカルトGメンでは悪霊を上回る魔物、特に対集団相手では十分な対処ができないことはアシュタロスが魔物を地上に大量復活させたときの結果でわかってはいたけど・・・)

(妙神山の修行は一度に大量の人員をまかなうことはできない上に、復旧後の今でも人間の受け入れ人数は減ったまま。となるとGS用の訓練施設を新たに作らなければ・・・)

(今回の横島クンと令子の記録は貴重なサンプルだわ。もっと霊動実験室でのデータを集めなければ・・・・)



美智恵がキーボードを叩く音は夜通し途切れることはなかった・・・





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