ザ・グレート・展開予測ショー

モンジュは反則K神父の新たな技


投稿者名:Nar9912
投稿日時:(05/ 8/10)

※ これは、モンジュは反則のアフターエピソードです。 ※


……魔神が人界に現れ核ジャックを行なったという未曾有の大事件から時は流れ、
人々の営みが日々積み重ねられ日常が戻った今、一時期は無くなっていた霊障も
また戻って来たのである。

そんな中、良心的な料金……むしろ非常識な料金すなわち無料になる事すらある
唐巣神父のGS業は、自ずとその多忙さを増していた。

本来のGS業だけではなく、弟子が荷物持ちとして雇っていただけであった筈が、
今や、人類の救世主にしてオカルトGメン仮職員でありながら主力職員でもある
稀代の英雄、横島忠夫の教育にも時間を取られていたのである。

この英雄、素質すなわち潜在能力は竜神が認めて己の師匠の、未だ人間では誰も
受けた事の無かった最難関である師匠の修業を許可する程にはあり、飲み込みも
あの両親の息子だけあって悪くは無いのだが……


如何せん、やる気が無さ過ぎたのだ。


それはもう、元々の師であった美神令子が己の蔵書を好きに見ても良いと言って
いたにも関わらず、一歩間違えれば死が待っている除霊現場に立ち会う身であり
ながら、盗撮写真を挟んで隠す為の偽装行動で読む以外には殆ど読もうともして
いなかった程である。何事に付けても学ぶという行為には自主性が伴わなければ
大きな収穫にはならない。にも関わらず命が懸かる除霊について碌に勉強しよう
ともしなかったのだ。教える側にしてみれば教えようが無いのである。

そもそもが御札も碌に使えない程に不器用であった彼の霊能を見出したのは師で
ある美神令子ではなく竜神小竜姫であった。落ち着いて考えてみるなら碌に使え
ないという事は裏を返せば少しは使えるすなわち多少なりとて霊能はあるという
証明でもあったのだが、霊能の強い者達の中にいる事が普通であった令子にして
みれば使用出来て当然という先入観があり、碌に使用出来なかった横島の能力を
低く見たとしても一概に彼女が悪いとは言えないのである。能力が低い者に高い
水準の教育を施してもついていける方が希であり、己自身暇な身ではない令子が
見込みの少ない者への教育に膨大な時間を割かなかったとしても不思議ではない。

ここで大事な事は、令子が彼に荷物持ちをさせていたという事実すなわち霊能が
碌に無くとも使える簡易結界などを何時でも手元に持たせていたという事である。
自身が教育者として向いていない事を自覚していた事もあり、また生徒の出来も
悪いと思っていた為に、除霊において身を守る為の切り札になる手段を常備させ、
現場を通して教える事を選んでいたのである。横島に直接その事を伝えていたか
否かは別として……命が助かる為の手段を自分が持っていてその事を知っていて
危なくなっても使わない様では命懸けの作業には適性が無いと言わざるを得ない。
大体にして霊能とは科学で解明されていない何だか分からない力である。当然に
してその教え方というものは科学的に体系化されてなどいない。素質があり力が
現出した者だけに漸くその力を伸ばす道を示す事が出来る程度である。例外的に
その血筋から霊能を持つ事が明らかな場合には引き出す術もまたその血筋ごとに
伝わってはいるのであろうが、誰にでもという確固たる方法は無い。だからこそ
かつて唐巣が令子を教えた時にも見学との形が主体となっていたのだ。それ故に
令子が取った教育手段は間違いなどではないのだ。実戦で伸びる人材は実戦向け
であり、GSという生業は実戦でこそ実力を発揮出来なければ続けられはしない
のだから。

そして行動も心理も非常識であった彼、横島忠夫はその霊的成長もまた非常識で
あった。GS試験後も霊能が使える様になった以上は自己防衛能力も上がった上、
上手くすれば戦力にもなる程度に令子がその実力を過たず捉えていた彼ではある
が……犬飼と横島の戦いにおいて彼の霊波刀ではレベルが違い過ぎて相手になり
はしないとも言いはしたのだが、一方で手傷を与えた以上次の満月までは猶予が
取れたとも言っている。人狼が超回復する事を確認した後であってもその判断を
撤回する事は無かった。要するに期待が大き過ぎでその事を自覚してもいたのだ
が横島はそれに気付かなかったのだ。気付いていたならルシオラが現れる前にも
二人は良い仲になっていたかも知れない……文珠を会得した修業の頃からは普通
ではあり得ない程の急成長を始めたのである。それまでは精々が普通に存在する
一般的なGSのレベルであったのだが、何時の間にやら初対面である茂流田達に
霊力が高いと評される程度にはなっており、魔神との戦いにおいては美智恵にも
認められ令子自身が己より強いと認めるがまでになったのである。

しかし、彼の力が不安定だった事もまた確かである。文珠という他者に比べては
絶対的優位に立てるアイテムを生成して使う事が出来るのではあるが、知識など
全く駄目なのだ。彼はやる気にさえなれば戦力としては令子を凌いだ事もあって
人間の中では最強級と言えるのだろうが、その実力を自身で自在に引き出す事が
出来ていなかったのである。他者を救う為或いは自ら戦いを決意した時でないと、
その臆病さと自己不信により実力を出せない、戦力として考えるに厄介な存在で
あったのだ。
戦いにおいてすら霊力を引き出し戦いに勝つ為の意欲を維持する事が難しい彼で
ある。平時は更に酷かった。何か明確な目的が無ければ、碌に身が入らないのだ。
学ぶ気が無い者はどれだけ才能があろうとても中々には伸びはしない。魔神との
戦いにおいても策は己が出したものではなかった。確かに未来の己が出したもの
ではあるがそれでさえ西条や唐巣、カオスらに相談しての事である。

彼の力はその婚約者がまだ口約束しかしていなかった只の恋人未満であった頃に
アテにはしてないけどと言わしめた程には分かり難く、実際実力では飛び抜けて
いた訳ではない。決して低くはなく一般から見れば高い霊力を持つと見なされて
いたのではあるが、それも彼と親交のあるトップクラスのGS達から見れば普通
と評される範疇にあった。彼の師であり最も彼の霊能を見てきた令子にしてすら
試合をして初めて己以上であると認めたのであるのだから、その実力を看破する
事が如何に困難であるかが分かろうものである。尤も霊能者に必要な資質の一つ
である戦闘時における幸運は相当なものが昔からあったのは確かな事であるが。


そしてそれは魔神に勝った後も然したる変化を見せなかった。確かに魔神を己が
倒した事は大きな自信にはなった。最早自己不信は影を潜めたと言って良くそれ
と同時に臆病さも何処かに行ってしまった様ではある。詰まりは不安定であった
力が安定して来てはいるのだ。


然れども除霊においてこそやる気を見せるものの、普段何も学ぼうとしない点は
全く変わらなかった。


彼にも反論はある。それまで知識など碌に無くともやって来られたのだ。今更と
いう思いもあり、また今では自分に実力があると自覚してもいる。文珠の万能性
を高める為に漢字を知る事だけは以前以上にやる気を見せている……別段文珠に
漢字しか籠められないとは誰も言っていない上にもしそうであったならば漢字圏
以外の者は文珠を持ち得ても使用に当たっていきなりハンデを持つ事になる。が、
表意文字の中でも意味が詳細な漢字はルーン等と比べて使い勝手が良い事もまた
事実である……ものの通常の霊的知識を求める気は無いのだ。何故ならば除霊に
際しては常にGメンの者達がおり知識なら彼等に頼れば良く、単独任務であろう
とてブレーンでもある婚約者が常に傍らにいるのだから。
その上彼はまだ学生である。学生の本分は学業だ。別段それを素直に信じている
訳では決して無いのだが、高卒がオカルトGメンへの正式な就職に必須な資格で
ある以上、これまでとは異なり学業にも力を入れざるを得なくなっているのだ。
そんな中、それでなくとも彼はする必要の無い事はしないある意味動物らしいと
言える……野性的と言わなければ彼の婚約者に撲殺されそうだが……人間である。
これまで必要としなかった霊的知識と学業とのどちらを優先させるかは考えるに
も値しない選択であったのだ。
霊的知識ならば今更であって他の人からはそんな事も知らなかったのかとの目で
見られる一方で、学業であれば英雄と化した彼はその功績から色々な免除を得て
いる上に誰も成し得なかった魔神打倒を行なったからにはこれまで足りていない
ものがあったとしても当然とのある種のフィルターが掛かった目で見られる為に、
青春したいと横島に疑似的な恋愛感情を持っている愛子だけでなく皆温かい目で
見守ってくれるのだ。更には自称貴族が奔走した為に学校にも同伴が許されたと
いう経緯を持つ彼の婚約者もまた自分の知らない霊的ではない知識の収集に興味
があり……工学的知識はあるのだが一般的な学業のそれを持っている訳ではない
のだ、彼女は……熱心に授業を聞いているのである。その目的の一つが横島へと
教える事が出来る様になりたいという周囲に対しての一種の独占欲から来たもの
ではあれど、純粋に知識欲からもそれを欲しており、婚約者が熱心になっている
対象に対しては物臭な横島も取り組む姿勢を見せない訳には行かなかったという
理由もあった。煩悩が奇跡を起こす彼である、成績も急上昇しつつあったのだ。
それらに因って横島にしてみれば今のままでもこれまで何とかなっており今でも
何とかなっている霊的知識の向上より学業を優先させたところで仕方がないとも
言えるだろう。

だが理由がどうであれ横島が霊的知識の研鑽を一切と言って良い程行なわないで
いる事は確かで、過去に数人の弟子を持っていた事から西条や美智恵の実践的な
それとは異なり知識的な教育を主に担当する事になった唐巣は……胃が痛かった。

美神家襲来にも何とか耐えた彼が何故今更横島の教育で胃が痛むのか。

それは横島が向上心の無い生徒である事も一因であり……覚える気の無い人物に
物事を教えて理解させるのは大変な苦労を伴う。何だかんだでピートは勿論の事、
美神親子は教えればそれを吸収しようとして来た……他にやるべき事つまり学業
があると分かっている事もまた一因であり、以前とは正反対と言っても良い学業
を理由にGS業の為の学習をサボろうとする事もまた頭が痛く、と言って学業を
優先させて霊的知識の習得を遅らせるには周囲が既に彼はオカルトでは大家だと
見なしている為にGSのイメージを失墜させない為にも彼には速やかに真の意味
でのオカルトの大家になってもらわねばならないという霊能者社会の要求もあり、
はたまた今の己が彼に対して出来る事の一つを取るなと言い出しかねない程には
恋に盲目になっている彼の婚約者の視線や雰囲気もまた頭痛胃痛の原因である。

勿論横島とて本来なら己の為を思って行動してくれる人に配慮するくらいの事は
出来なくも無いのだが、如何せん今の彼はこれまで蔑ろにして来た学業と名付く
大きな障害を克服する事と漸く出来た恋人いや婚約者の相手とで手一杯であった
のだ。人間やれる事には限界がありやれる事以上にやるべき事が出来た場合には
優先度を付けて優先順の高いものから取り組むのは極当然である。彼とて神父の
行動が己達の将来を考えての事と分かってはいる。いやむしろある意味美神家の
襲来に耐えて来た同士との思いさえあるかも知れない……横島は令子を憎からず
思ってはいるが女性から見れば明らかに彼に非がある己のスキンシップに対して
激しい折檻で返される事が嬉しいと思う程屈折してはいなかった。そして令子が
非常識な行動を取る際には己を棚に上げて呆れてもいた……しかし、しかし乍ら
同士と婚約者の何れを優先させるかとなれば、しかもその婚約者がある未来では
世界と天秤に掛け見捨てざるを得なかった存在となれば、選ぶべくもない選択だ。

そして婚約者たるルシオラは未来でも感じた人間社会における自分の居場所との
問題を抱えており、己の居場所が横島の隣にしか無い事を誰よりも痛感していた
為に、そして横島ならばその居場所を常に確保してくれる事を誰より知っていた
が為に、更には横島自身が彼女のそう言った思いを知っていたが為に……彼女の
想いは半ば暴走して、結果、彼等二人は殆どバカップルと化していたのである。

それで無くともバカップル振りを見せつけられるというものはあまり精神的には
良い事では無い。だが同時に彼等がそうなった確固とした理由もまたある以上は、
そしてそれを彼等自身を含め周囲の者達が皆理解していた以上は、元より野暮な
事ではあるがより恋人達の間に口出しをする事など出来ない。霊的知識を学ぶに
しろ唐巣からよりルシオラからこそ学びたがっても仕方がない事ではある。
が、ルシオラの知る霊的知識は人間にとっては不完全である。霊的に弱い存在で
ある人間が神魔妖から身を守る為の知識は必要が無い彼女には殆ど備わってなど
いない。彼女にそれをも己が覚えて横島に伝えられればとの思いも多少はあるの
ではあるが、学校では衆目が多く流石のバカップルも遠慮というものを持っては
いた為に……横島は己がもてなかった頃の事を覚えており英雄と持ち上げられて
いる手前己自身の虚栄心によって莫迦な事が出来る雰囲気を取り上げられている
のであり、ルシオラもまた衆目の前で堂々と愛を語る程に遠慮が無い訳ではなく
下手に突っ走ると横島の立場が悪くなる事はしっかりと把握出来ていた為に……
バカップル状態でありながら衆目の多いところでは多少は人目を気にして行動を
抑えるというらしからぬ状態になっていた。故に二人きりに限りなく近くなって
来る唐巣の教えを受ける際には二人とも感情が露出し易くなっているのである。

この様な精神状況では教えを受ける以前の問題であるが前述の諸般の事情詰まり
霊能の大家である筈の英雄が張りぼての間に合わせであったという事実を出来る
限り隠蔽したいが為の各人の思いによって霊的知識を増やす為の教えを受けない
という選択肢は無いのであった。

唐巣はそれら全てが分かるだけにそして己が何とかしなければならないと思うが
故に頭痛胃痛が絶えなかったのである。横島に後ほんの少しの余裕があったなら、
ルシオラが後ほんの少しだけ横島べったりでなかったなら、唐巣の煩悶も少しは
違ったであろう。


誰も悪い訳ではないのだが唐巣が精神的疲労を蓄積していったのは事実である。


そして色々と切羽詰まって来た唐巣にとりむしろ安らぎの時間となっていたかも
知れない一人だけでの除霊の際に、それは生じた。

下調べした時には少し強くて知能が残っているといった印象しか無かった悪霊が
特に何らかの前触れがあった訳でも無いのに周囲の悪霊雑霊を呼び寄せ、以前に
おキヌが初めてネクロマンサーの笛を使って除霊した時程ではなくとも一人だけ
で除霊するには手に負えかねる程の大群となっていたのである。
幸いにしてその時の様に無尽蔵と思える程ではなく、むしろ令子と魔鈴が初めて
遭った時のそれに比べるなら多い程度ではあったのだが、それでも一人では難事
であった事は事実である。

徐々に追い詰められていった唐巣はその経験と知識から余力を残す事に成功して
いたものの、それでも援護も何も無い一人だけでの除霊ではどちらが先に力尽く
かの勝負となりそうであった。

ここのところ何かと普段にも増して悩み煩悶の多かった唐巣は………



遂に、キレたのである。


「ハハハハハ。この私をこのイニシャル毛(け〜)こと唐巣和宏をここまで追い
詰めるとは君達は大したものだよ。だが生憎と私の方が一枚上手だった様だね。」


普段ならば温厚そのものであり笑い声もはははははと平仮名であった彼にしては
随分な変わり様である。いやむしろ今回の笑いはHAHAHAHAHAであった
かも知れない。
神に祈りを捧げ精霊達の力を借りて戦う彼の天を衝いたその怒髪が生き物の様に
揺らめく。心なしか普段と比べ髪の本数が増えている様であった。


「乳床と精励の御名において……我が髪の怒りを思い知れッ!!」


実際のところ、横島達のバカップル振りは唐巣の様な知り合いだけがいる前では
抑える事を知らずに展開されており、セクハラではなくスキンシップと彼ら自身
が強調するそのいちゃつき振りと甘過ぎるトーキングは、唐巣の精神を多少侵食
していた様である。いや教授の為に逢う日毎に毎日ストレートでなくとも桃色な
雰囲気を醸し出している二人を前に男鰥のイニシャル毛がダメージや影響を免れ
得る訳が無かったのである。
霊能とは訳の分からない力であり霊能者のテンションやら何やらが上がっていた
ならば新しい能力に目覚めるなど取り立てて珍しい事では無い。他ならぬ横島が
その良い実例である。

斯くしてここに、イニシャル毛こと唐巣和宏の新技が炸裂したのだ。

それは、凄まじい光景であった。
それは、揺らめく黒い炎から放たれる光が織り成す聖なる場。
それは、何か混じった怒りによって若かりし頃並に増えたその頭髪から放たれる
浄化の光。

そう、今、唐巣和宏いや敢えてイニシャル毛と呼ぶ…の髪は光っていたのである。
間違えないで欲しい。頭皮が光っていたのではなく、頭髪が光っていたのだ。
凄まじい光景と評した理由も想像出来るであろう。

そしてその威力もまた凄まじいものであった。
今や周囲を覆い尽くさんばかりであった悪霊達は、彼の、髪の怒りに触れた事で
半ば強制的に極楽へと旅立ってしまったのである。除霊はその始まりに比しては
思いもしなかった程に呆気なく終了した。

尚、ヒーロー願望など疾うに無くしたイニシャル毛が、新しい技に自分で名前を
付ける事は無かったという。
彼と親しい者達の間では幾つかの意味を込めて「髪の名の下に光あれ」と技名が
何時の間にやら付けられる事となったのだが。




……余談ではあるが、ちょうどその時に唐巣が危ないと霊感を感じて二人の時間
を嫌々ながらも……人界に自分達を繋ぎ止めていてくれる恩人を見捨てる程には
彼等は人でなしではない。いや従来の横島なら平気でそうしたかも知れないとは
いえるが今の彼は満たされており、今の私達、時間はちゃんとある、という状態
すなわち余裕があったのだ……中断して駆け付けた横島達が見たものは、

フサフサと往年のそれを取り戻した豊かな頭髪に神と髪への深い感謝を表わして
いつつも、その栄養の全てを髪に取られて倒れているイニシャル毛の姿であった。

二人は毛が抜けるのではなく逆に毛が生えるという非常識なその状況を確認して、
改めて日頃彼に掛けて来た苦労を思い、事後処理を済ませた後何も言わずに教会
に彼を連れ帰り、かの事件での報奨は彼にも与えられたのであったがそれを使う
事無く自身に与えられた報奨から横島が代金を出し、百合子から浮気性対策など
と同時に料理も習っていたルシオラが横島に作るそれと同じ程に丹誠込めて調理
した……料理の腕は横島が実験台になる事で急激に上がっていた……心尽くしの
料理を振る舞い、唐巣和宏は今回もまた他人の手作り料理に舌鼓を打ったのだ。
ここで一つ追記しておこう。今回の料理には彼の家庭菜園の友達は当然ながらも
使われはしなかったという事を。

一つの事件は終わった。だが、決して全ての事件が終わった訳ではない。
新たなる脅威が迫ろうとしている……かも知れない。
髪が甦ったイニシャル毛の、弟子に染まり易い彼の桃色の妄想による被害が何時
出るかも知れない状態を可及的速やかに何とかしなくてはならない。
幸いイニシャル毛は道義心に満ちている。若さ故の過ちも起こす程には若くない。
だがこのままバカップルを強制的に観察させられ続けたなら、何時暴走するかも
知れたものではないと弟子であり原因となっている張本人でもある二人は思う。

こうして彼の弟子となっている横島達は、人知れず縁結びの髪……もとい神へと
祈りを捧げ、善良で温厚ではあるが時に羽目を外してしまうイニシャル毛に良い
お相手が出来る事を切に願うのであった。

何処かが暴走し続けているルシオラがふとベスパはどうかと思ったりもしたので
あり、ある意味で父性を感じさせる男性こそベスパには合っていると思えなくも
ないのだが、流石に主であって未来の想いをしっかり受け入れてしまった事から
一方的に想っていた魔神が亡くなって間もない今は、まだその様な事は考えられ
ないだろうと思い至ったりもした。

イニシャル毛にお相手をとの願いが何時叶うかは、今はまだ知られてはいない。
そもそも誰の間にも恋の花が咲くとは限らないのである。
バカップルが落ち着くかイニシャル毛の我慢が限界を迎えるかどちらが先なのか
という話なのかも知れない。

尚、横島のやる気であるが、多少はマシになったものの大して変わってはいない
事を付記しておく。やる気になろうと無理なものは無理で横島はその辺見極めが
早いのである。師に苦労させているという自覚は出来たのだが、だからと言って
無理な事は無理であり、優先順を多少変化させる事が彼に出来る精一杯の事では
あったのであり、師もまたせめて多少優先順位が変わったらしい事に弟子の考え
を慮りむしろ遅々としたペースで教えるとの方針に変えたのである。
その判断に、横島が張りぼての英雄であっても考えてみればトップクラスのGS
達自身が皆人格的に問題があると思い至った事がどれだけ影響したのかは定かな
所は不明である。

(モンジュは反則K神父の新たな技 完)

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