ザ・グレート・展開予測ショー

GS協会、会報誌を交えて。


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(05/ 8/ 7)

蝉の泣き声が耳障りな程元気だ人工幽霊一号も暑さで参ったのか。
どうにもクーラーの効きの悪い事務所である。
書類整理を溜めてしまった美神令子、扇子片手に文字と数字に格闘中である。
「・・・どうにも売り上げと合わないわねぇ・・変ねぇ」
徐霊に関しては超一流でも書類関係は苦手である様だ。
目が疲れたのか普段は来客用のソファーセットに目をやると。
暑いのはへっちゃらで御座るとばかりに散歩から帰ってきたシロ、夢の住人と決めこんでいる。
その隣では。
「ん〜ふーふーん〜v」
鼻歌交じりの横島忠夫が徐霊道具を乾いた布で磨いている。
別段美神令子が与えた仕事でもない。自発的にやっているのだ。
当たり前の事だが。
道具を長持ちさせたければ手入れをする事である。
ある意味、プロとしての自覚である。
目を細めて美神令子、手に握り締めていたボールペンを机に放り投げ、
机からなにやら数枚の紙を取り出す。
「ね、横島クン」
「・・・ん?何スカ?美神さん」
顔は向けても手は未だに動かしている横島である。
「ちょっと、これ見てご覧」
美神令子、机越しから横島に手にしている紙を渡そうとしている。
その体勢はかなり腰を屈め、シャツ越しから乳房が見えそうであった。
二十歳そこそこではそういった配慮はまだ足りないのかもしれない。
最も。
そんな美味しい光景を見逃してしまった、(気が付かなかった)横島も少年といえようか。
令子から渡された紙、新聞のような形態の物を両手で受け取る。
所謂一面の上覧に書いてある文字。
『季刊・ゴーストスイーパー会報誌』
とある。
何も珍しい物ではない。
日本という国は同業種連携の会報誌、又は新聞が発行されているのである。
GSとて立派な仕事、更にお役所関係もICPO日本支部発足の折に関係を持っている。
「へー、うちらの業界ってこんなん発行してたんすか。以外っすねぇ」
最初の所感を述べて横島。
「あら、そう?でもGSって特殊職業だからね。普通の新聞なんかだと対応出来ない情報も多いのよ」
「ん〜・・。ま、そうかもしれないっすね」
一応の納得を見せた横島である。
只、この男が新聞を読む習慣は無い。どうにもぎこちない新聞の持ち方といえるか。
控え美神令子はこれで活字中毒なところがある。
本人曰く。
「一日に数分でも新聞を読まないと落ち着かないわね」
だ、そうである。
さて。
この会報誌は大きな事件を見事解決したという例がでかでかと載っている。
その時、工夫した方法や裏技などが事細かに掲載されていた。
「へぇ、これって殆ど霊力使わないで解決したのか・・」
ぽつりと横島の独り言。
美神令子も前に読んだが頭の片隅にそんなのがあったかな?程度であった。
幾つかページを捲ると。
「あは、厄珍のオッサン、こんなところでも宣伝してらぁ」
苦笑と共に、あのインチキ臭い顔を思い出した横島である。
ぎこちない手で幾つか会報誌を眺めてて。
「そーいや美神さん。俺に何処を読めつーんすか?」
「ふふ。最後のページを開いてね」
そういわれて最後のページを見ると。
其処は正規登録されたGSの一覧があった。
GSは能力によって細かく区分けされたランク制の世界である。
そのランクによって掲載文字の大きさが変わっている。
当然、Sクラス、Aクラスは大きく、大きな成果を上げた仕事も簡素ではあるが説明があった。
Bまでは住所が載っている。Cクラスは連絡先のみ記されている。
しいて言えば。
相撲の番付表に似たつくりになっているといえようか。
「ほら、そこの新人の項目、何かあるでしょ?」
番付では序の口にあたる部分、なんとか虫眼鏡を使わなくても見れる程度の文字に。
『横島忠夫』の名前がある。
「うおっ!」
喜びの雄たけびが心から出た。
年齢も一際若い。10代は彼一人であった。
その隣には齢500を超えるピート君も名を連ねていた。
「な、アンタの名前もお情けだろうけどね。ちゃんと載ってるわよ」
完全に休憩だといわんばかりに美神令子。左手でたらたらと扇子を仰いでいる。
横島の評価も一行だけだがあった。
『霊力そのものは最低ランクながら『防御・攻撃』を必要最低限で行える。業師向きか?』
とあった。
誰が書いたかは電話にて確認するしかないだろうが、ものの見事に当てはまっている。
文殊は『業師』の最高峰である。
「んー。買いかぶりすぎっすよ」
と、口では言ったものの、目は笑っていた。
そこを突っ込んだ美神令子である。
「何いってるの?こぼれそうな笑顔してるわよ、あんた」
「へへへ」
これも笑って、誤魔化すが精一杯であった。
横島、ふと気が付いて。
「えっと、美神さんも名前載ってるよな。どこだろ」
探す必要が何処にあろうか。
上段の左端っこの方に名前があった。
「お、美神さんも名前あるっすね」
「あたりまえじゃないのよぅ」
当然Aクラスの欄、二段目に名前がある。
他にも知っている人がいるかと、目を動かす。
最上段はどうやらランクに関わらず協会の関係者とICPOのGS登録者が載っている。
西条や美智恵隊長の名前もあった。
「やっぱ、お上関係は優遇されるんすねー」
素直な感想を述べて。
今度は二段目に目をやる。
二段目左端に名前を置いているのは。
「あっ。エミさん!」
美神令子最大のライバル、小笠原エミの名前があった。
一瞬むっとした表情を見せて美神令子。
「しょうがないのよっ、私のほうがエミよりも格上なんだけどさっ。生意気にも・・ううん、協会のお情けでAランクにいるから」
「・・・あぁ、アイウエオ順でエミさんが頭なんすね」
「そっ!不満だわ」
考えれば。
美神令子、苗字の最初は「マ行」後ろの方になるのも当たり前である。
「まったく、完全実力にしてほしいわよ」
自分の言葉で怒りが生まれた。女性には多い兆候である。
ふと黙って横島。
「そっか、俺もAランクにいったら美神さんよりも後になるんだよな」
横島は三つしか仲間のいない「ヤ行」である。
「ま、そーなるでしょうね。つまり!アンタは私にはかなわないのよっ、ふふん」
何を誇っているのか。先ほどのエミが先にいる怒りは忘れている。
「・・・でも、美神さん」
「なぁに?」
今まで目線が会報誌だったのを美神令子の方を向いて。
「美神さんが俺とけ、結婚したら俺の方が先に載りますよ」
アイウエオ順を確認しよう。
同姓になれば当然名前で後先が決まる。
美神の名前は令子
横島の名前は忠夫
『タ行』と『ラ行』、どちがら先かは日本人なら当たり前の世界である。
「あ、因みに『いろは』でもギリギリ俺の勝ちっすね」

『いろはにほえと ちりぬるよ わかよ『た』『れ』そつねならむ ういのおくやまけふこえて あさきゆめみし ちりもせす(ん)』

である。
ぶっと噴出して美神令子。すっと椅子から立ち上がって。
「横島クン。生を言うんじゃなないわよっ。10年早い!」
手に持っていた扇子でぽんと横島の頭を叩いた美神令子。
何時ものゲンコツから比べれば天国と地獄である。
「10年後っすか?・・でもそしたら美神さん」
「・・なによ」
腕を組んで扇子は腕と身体にはさむ形にした美神令子。
「10年後だと美神さん・・・三十路じゃあ」
再度むかっとした顔を見せて。
今度は絵の方で横島をはたいた。
「っるさいわねっ。じゃあ直ぐにでもあたしに似合う男になれるっていうの?」
「・・・せめて8年は待って欲しいっす」
正直に答える横島に思わず赤面した美神令子であった。
こんなこっぱずかしい会話をしてる中でも。
(ほっ、シロのやつ熟睡してら)
妙な余裕を見せる横島であった。
不意に。
クーラーの動きが活発になった。寒いぐらいまでに。

FIN

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