ザ・グレート・展開予測ショー

妖怪の願い


投稿者名:犬雀
投稿日時:(05/ 8/ 5)

久々に訪ねてみた教会の中、見知らぬ三人の男女の前で投げやりに御茶を啜っているピート。
礼儀正しいコイツが来客にこんな態度をとるのは珍しい。
そんな違和感を感じた俺にドアの音に気がついたか、ピートがこちらを振り返ると救いを求めるかのような目を向けてきた。

「あ、横島さんいらっしゃい。」

「ああ、でも接客中なら遠慮するぞ。」

「いえいえ。我らにはお気遣い無く。我らはここの住人ゆえ。」

ピートの代わりに答えたのは、黒い服を着た見るからに怪しい男。
その横には彼の妻だろうか?ちょっと派手な雰囲気の女性が座っている。
手にしたのは緑色をした鞭。いや植物のツルかもしれない。
その二人に挟まれるように小豆色の服を着た少女がちんまりと座ってこちらに笑顔を向けてきた。

「住人?」

俺の疑問にピートが溜め息交じりで答えた。

「彼らはあの畑の作物なんですよ…」

そういえば美神さんが余計なことをしたせいで畑の作物が妖怪化したっけ。
ミサイル化したトウモロコシとか、ハロウインで暴れそうなカボチャとか。
だけど目の前の三人はちょっと見には野菜っぽく見えない。
どちらかと言えばほとんど人間といってもいいだろう。

「んじゃお前さんたちも妖怪なのか?」

俺の問いに三人(匹?)はやや不本意そうに頷くとそれぞれが自己紹介を始めた。

「私は黒豆の化身「クロ」」と黒ずくめの男が胸を張れば

「私は空豆の化身「ソラ」」と女性が鞭をならす。

「そしてアタイは小豆の化身「アズ」」

一番小さいのはやはり小豆の化身だからなのか?と考え込む俺にクロが期待の篭った目を向けてくる。

「実は我らにはある願いがある。その願いをかなえるために善行を積もうとピート殿に除霊のお手伝いを願い出たのだが良い顔をされぬのだ。あなたからもピート殿に頼んではもらえぬだろうか?」

そういや前のトウモロコシたちも除霊の手伝いをしてたな。
そのぐらい認めてやればいいじゃん。という俺の考えを読んだのかピートが悲しげに首を振った。
何でか解らないけど不味いらしい。

微妙な沈黙がオンポロ教会の中を漂う。

「そういえばお前たちの願いって何なんだ?」

沈黙に耐え切れずにとりあえず聞いた俺に三人は声を揃えて答えたくれた。


「「「早くインゲンになりたいっ!!!」」」


俺はピートの横に座ると、投げやりな気持ちを抱いたまま彼の煎れてくれた出がらしの番茶を啜るしかなかった。

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