ザ・グレート・展開予測ショー

横島とメドーサ(7)


投稿者名:横叉
投稿日時:(05/ 7/25)

「さあ あなたが知っている事を話してもらいましょうか」

小竜姫が首元に突きつけた竜の牙が鋭く光る。

「くっ・・・」

「まず悪魔装術を解きなさい」

勘九朗は大した抵抗も見せず素直に従った。
いかに悪魔装術で覆われているとはいえ、竜の牙で首を斬られれば死ぬ
という結論に至るのは難しくない。
それよりもここは素直に敵の言うことに従い、機を見て脱出するのが良いという打算もあったのかもしれないが。

「・・私を殺せば敵の正体も規模も分からないまま戦う事になるわよ」

表情から何を考えているのか分からないが、その声には明らかな動揺の色が込められていた。

「そんなことで、この剣の切れ味が鈍るとでも」

竜の牙は勘九朗の首に一層近付き、その剣の不気味な光は男の顔を照らす。

「私を殺す気・・・・?」

「悪しき者を斬る事にためらいなどありません。しかし今は別です」

「私をどうしようというの」

「別にどうもしません。あなたにちょっと聞きたいことがあるだけです」

「・・・・・・・・」

悔しさと諦めが入り混じった顔で小竜姫を見る勘九朗だが、今はまだ抵抗の意志があるらしく、隙あらば・・・・といったところだ。

「まずあなたに指示を出した者が何者なのか、話してもらいましょうか」

首元に突きつけた竜の牙を緩めることなく小竜姫は問いただす。

「・・・・知らないわ・・・」

「そんなはずありません。あなたなら知っているはずです」

「本当に知らないのよ。悪魔装術を教えてくれたのはあの方の右腕で、御方とは一面識も無いのよ。
唐巣神父を襲えと言われた時だってカーテン越しだったし・・・」

嘘偽り無しというのは言い過ぎるかもしれないが、本当のことを言ってる可能性も捨て切れない。

「その右腕とは何者ですか」

「この方もよく分からないわ。教えてくれたと言っても実際の所、能力をくれたようなものだから・・」

悪魔装術は簡単にあげられる物じゃない事ぐらいは明らかである。
その一段階下である魔装術でさえメドーサが才能のある霊能力者に、やっと教えられるような代物だというのに・・・・

右腕の存在もどうやら油断出来ないようだ。

「・・では、あなた方の目的は」

「詳しくは聞いてないわ。ただ、この計画が成功すれば三界支配も夢じゃないって言ってたのは聞いたことあるわ」

「三界支配!?そのような恐ろしいことを出来る程の者ですか」

”そんな言葉あったの”といわんばかりに、小竜姫は自分の耳が信じられないようだ。

まあ、無理もないかもしれない、宇宙意思を含めた全てに対する支配など考える事自体に無理がある。
それこそ神人魔、場合によっては三界の全てを相手にするようなものなのだから・・・・

「それで、その計画の具体的な内容は」

「私はただGS唐巣和弘を襲えとしか言われてないわ。それ以外のことは何も聞かされてないもの。
邪魔するやつは殺して構わないとは言われているけど」

「その計画に関わってる者は他に誰がいます」

「言い出したらきりが無いわ。海千山千の腕自慢のならず者達とでも言っておこうかしら」

「あなたはその中でどのくらいの位置に来ますか」

「真ん中よりは上って所かしら。力比べしたわけじゃないから分からないわ」

これで真ん中よりは上という程度・・・小竜姫の背中に冷たいものが走った。
何より三界中で勘九朗のようなことをしているものが大勢おり、
その指揮を一匹の魔物が執っているという事態、そしてその魔物がどれほどの力を持っているのか、小竜姫には見当もつかなかった。

「最後に一つ、計画はどこまで進んでますか」

「全容が分からない以上何とも言えないわ」

「あなたが感じた限りで構いません」

「そうねえ。だいたい・・・」

いつの間にやら勘九朗に当てた竜の牙が緩められている。
三界支配や勘九朗より強いものが大勢いるという事態に意識が向かい勘九朗に対する注意を小竜姫は忘れてしまったようだ。
もっとも勘九朗が狙ってやったものなのかどうかは分からないが・・・

そしてその隙を見逃すほど勘九朗は甘くなかった。

小竜姫も気付いたらしく慌てて勘九朗に竜の牙を突きつけるが、時既に遅し、
勘九朗は後方宙返りで後ろに大きく跳び竜の牙の射程の外に出た。

”・・・・・・・”

眼を大きく見開いた小竜姫の声にならない叫びが辺りに響いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

一方こちら山奥では一人のバンダナをした人間の男と髪の長い魔族の女が幾許もの間争っていた。


「思ったよりやるじゃないか、横島」

「お前を倒すことは俺の一つの目標なんでな、メドーサ」

剣と槍がぶつかり合い、音の無いこの辺りでは金属音が山彦のように響き渡った。

見る人によっては長年の友人がやっている決まり事のようにも見える。

互いに力を付けており、ある程度の自信はあったのだろう。

だが、お互い目の前にいる相手が予想以上の実力を持っている事は認めざるを得なかった。

特にメドーサと呼ばれている女の方は横島という男の力の付けように驚きと共に、興奮も隠し切れずにいた。

「いいねえ、この私を二度も倒したんだ。このくらい殺り応えがないと困る」

そして男の方は女とは対照的に努めて冷静にしていた。
先ほど感情を暴走させ、女にやられそうになった事で男は自分を殺すことにしたようだ。
先ほどまでの背後関係を気にする思考は、どこかに追いやられた。

その結果、男はこの戦闘に対して今までに無いくらいの集中力を発揮した。

皮肉にもそれは男が強くなるために必要と考えていた”死闘から得られるもの”だった。

ある瞬間には、女の槍が男の頭の上をかすめ、その時に避け切れなかった髪が風に舞い、どこかに消えた。

間一髪という所だが、男にも女にも表情に変化は見られない。
男は冷静を女は嬉しそうな顔を崩さない。
今までにも何度か似たようなことが立場を逆転させてあったのだろう。
辺りには汗で湿った地面がいくつかの場所で見られた。



(これだけの実力があれば、あの方の言った条件には十分だね)

メドーサは笑った。今までの興奮からやって来るものとは違う理由で。

「何をごちゃごちゃ言ってる、メドーサ」

「何でもないさ。お前をこの手で八つ裂きに出来ると思うと嬉しくてね」

再び槍を構え戦闘態勢をとる魔族の女。
このメドーサという女は戦いにおいて時間と共に感情が昂ぶるタイプのようだ。
そしてその昂ぶった感情も戦闘に悪い影響は出ないように無意識の内に気遣える生粋の戦闘のプロだ。

「そう簡単に出来ると思うなよ」

この横島という男も戦いに関しては神から才能をもらっているようだ。
人間でありながら魔族と互角に渡り合うなど努力だけでどうにかなる代物ではない。
尤もその才能を与えたのは死神かもしれないが・・

「横島、このままやりあってもお互い体力を無駄に消耗するだけだ。そろそろ決着を付けられる形にしないか」

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