ザ・グレート・展開予測ショー

極秘事項(絶チル2nd.senseより)


投稿者名:斑駒
投稿日時:(05/ 7/21)

このお話は絶チルの2nd.senseから派生したものです。まだ読んでいない人はネタバレというほどではないですが、ご注意ください。
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「失礼、この第八研で開発しているスーツをお借りしたいのだが」
「………なんのことです?」

 陸軍開発部第八研究室。
 そこに突然押しかけてきて威圧的な態度でモノを貸せという筋肉ダルマのような男。
 警戒して当たり前だし、機密性の高い研究をしていればなおさらだ。

「こちらで開発し、既に二機を試作している光学迷彩スーツのことです。こちらの所長に徴用の許可はいただいています」

 男の巨大な体躯の影から続いて入室してきた女性が、手にした紙面を示す。
 そこにはしっかりと『光学迷彩スーツ借用』の旨が記してあり、陸軍当局の判が押されていた。

「あんたたち…何者だ? なぜ極秘開発のこのスーツのことを知っている?」
「つべこべ言わずに貸すのかね? 貸さないのかね? この選択には世界の未来がかかっているのだヨ!」
「ちょっと局長、少し落ちついてください」

 いまにも丸太のような腕でつかみかからんばかりの勢いの男を、女性が諌めて押しとどめる。

「失礼しました。申し遅れましたが、私どもは特務機関BABELの者です。今回の作戦にこちらで開発されたスーツがぜひ必要になるので、お借りしに伺いました」
「BABEL……あの、超能力開発研究しているとかいう? そんなトコが、なんだって軍の研究内容を知ってるんだ?」
「あら……」

 女性は意外そうな表情をして、小さくクスクスと笑った。

「ウチの組織に隠し事はできないんですのよ。なにせ情報を得ることならテレスコーパー(遠視能力者)からテレパス(精神感応能力者)、サイコメトラーにプレコグ(予知能力者)まで各種取り揃えておりますから」
「あー。これだから超能力者ってヤツは……」

 思わず頭をかきむしる。
 企業秘密もプライバシーもあったもんじゃない。
 実際、超能力を用いた産業スパイは世界中で話題になっており、情報流出をガードするセキュリティ商品の開発競争も激化している。しかしまさか自分の研究がそんな目に遭うとは思いもしなかった。
 いや、それでも漏れた相手がまだマシな方だったのかもしれない。モノが軍事技術なだけに、他国に漏れていたらエライことで……

「貴様っ! 超能力者が何だ? どうしたって言うんだ? 言ってみろ! 超能力者を差別することは許さんぞ! それ以上言ったらタダじゃ済まんと思いたまえッ!?」

 続きを言って欲しいのか言って欲しくないのか……いや、むしろ続きを言われてタダじゃ済まなくさせたいのか。大男に気迫満点でスゴまれる。
 前言撤回、やはりこの組織に知られたのはだいぶマズかったらしい。

「いや、しかし。遠視能力者が居るなら諜報活動にわざわざ潜入する必要はないでしょうし、テレポーターも居るのでしょうから潜入するにしてもわざわざ姿を隠さなくても大丈夫でしょう。失礼ですがおたくにうちのスーツは必要ないのでは…?」
「いえ、それが……」
「今回の作戦は高度な隠密性を要する警護・監視なのだよ。周囲に気取られぬようにガード対象の傍に居る必要があるわけだ」
「なるほど……」

 理由はそれなりにしっかりしている。
 見た目の不審さを除けば、政府の機関であるBABELは信頼してよさそうだ。
 しかし、大切な試作品を過激な任務で破壊されてしまっても困る。

「ところで具体的にはどのような作戦を……?」
「それはちょっと機密事項ですので、お答えしかねるのですが……」
「いいからキミは言われた通り出したまえ。出さぬと言っても実力行使で持っていくから、素直に協力した方が身のためだヨ」
「ちょっ、あんた、それは……」
「書面上では認められているので、そちらに拒否権はありません」

 理不尽なセリフと共に、大男が不穏な笑みを浮かべながら迫る。
 言い返そうとしたら、こんどは傍らの女性が満面の笑顔で突き放す。

「聞いただろう? 正義はコチラにあるのだヨ! 悪いがキミにはうちのコたちの安全のための犠牲になってもらおうか……」
「協力して、いただけますよね? それとも、もしかしてご自分の開発なさった技術に自信がない……とか?」

 大男が目に怪しい光を宿し、どこか嬉しそうに迫る。
 女性が一点の曇りもない微笑で、凍てついた視線を送る。

 どうやら自分に、選択の余地はなかった。










「あれ? 主任。例の試作スーツは……? 今日は長時間連続稼動実験をしようと思ってたんスけど……」

「ああ、なんかBABELとかいうヤツに、作戦に使うから貸せと言われてな」

「それで貸しちゃったんスか?」

「ああ。壊されでもしなきゃいいが……」



「……でも、ヘンっすね」

「何がだ? 用途なんかも聞いたが、特に不審な点は無かったぞ。借りに来た人間以外は……」

「いえ、そうじゃなくて。試作スーツって、標準的成人男性型で作りましたよね」

「ああ……? でも、多少の大小は融通がきくように作ったろ?」

「ええ。でも、聞いた話によると、BABELの特務エスパーって10歳くらいの女の子達らしいんスよ。なのに、いったい誰が着るんでしょうね?」

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