ザ・グレート・展開予測ショー

横島とメドーサ(6)


投稿者名:横叉
投稿日時:(05/ 7/17)

     
「あんた、生きていたの!」

私は勘九朗が霊波砲を撃った方向と反対側から出てきました。

すれ違いざまに神剣で勘九朗を斬り付ける事は簡単でしたが、
今は敵の黒幕が何者なのかということ、そして敵の真意を知ることが大事です。
また悪魔装術で覆われた体に生半可な攻撃は効かず、下手に傷を付けて相手にこちらを警戒させるのも損かと思い何もしませんでした。

「あの程度の攻撃で死ぬと思われるとは私もずいぶん嘗められたものですね・・」

「くっ、超加速ね」

勘九朗は悔しがっておりますが、メドーサがいればこれぐらい当然だと言われ、次に備えていたでしょう。

「私はご主人様からあんたの抹殺を直々に命令されているの。こんな所で失敗するわけには行かないの」

うれしい誤算が発生しました。私は勘九朗はせいぜい使い捨ての駒くらいに思ってましたが、私の思っているよりは大分黒幕に近い存在のようです。

「あんたを倒してご主人様に正式な家臣として認めてもらうわ!!!」

頭に血が昇っているようですね。上手くいけば黒幕の名前ぐらいは言うかもしれません。

「その者の名は?」

「おっと、ついうっかり口を滑らせるなんて真似、私はしないわよ」

まあ、それほど期待していませんでしたが・・・

「聞きたくば、力ずくでどうぞ。あなたがた神族の好きなね」

「・・・・そうですか、それでは私も急いでいるので手早く決めさせてもらいます」

私は神剣を左腰に持って行き、腰を少し落とし、左足を後方に下げ、居合い抜きの構えを取りました。

「へえっ、居合いの心得もあるのね。でもねえ、居合いは放った後に避けられたり
耐え切られたりすると逆に隙だらけになるのよ。
この悪魔装術で固められた身体を一撃で決められるかしら」

「・・・・・・」

「そうっ、駄目と分かっててもやるの。今後に備えて少しでも手傷を負わせようってわけね」

私は眼を閉じ、敵の気をこの身に感じ、距離に注意をしつつ、攻撃に備えました。

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

じりっ じりっ  

勘九朗がすり足でこちらに近付いて来ます。

一応向こうも警戒しているようです。

じりっ じりっ

勘九朗も馬鹿ではないようで一応体中の悪魔装甲を厚くしています。

もう少し・・・

多分、勘九朗もこの辺りが私の制空圏だと分かっているでしょう。

じっ・・・・

後、半寸も無いだろうという距離で勘九朗は立ち止まりました。

居合いを使う以上一撃で決めねばならない

そうなると狙いは・・・・・・

じっ・・

          !!!!入った!!!!


私は長年の修練で身に染み付いた”必要最小限の動きで必要最小限の距離を行き、相手の息の根を絶つ”という動きを変え、狙いを首に絞りました。

いつも通りの動きでは腹部に当たりますが、腹では相手に反撃するだけの力を残してしまいます。

まあ、首を狙う動きも全くの初めてではないので、それなりのものになりましたが、

                

バキッ

ズバッ  ブシュッッッーーーーーー

私の剣は勘九朗の腕で止まりました。

「・・・・・」

「ぐっ・・剣で受けたのにその剣を壊すなんてやるじゃない。しかも悪魔装甲で覆われたこの身体にここまで深く傷を・・・
でもね、あんたが私の首を狙ってくるということは分かったわよ。通常の居合いじゃあ腹に当たって一撃必殺は狙えないからねえ。」

勘九朗も私が神剣で首狙いだということは読んでいたようですね。

「でもどれだけすごくても相手に読まれちゃあねえ、これであんたも終わりよ。小竜姫」

「いいえ、終わるのはあなたです」

「!? 強がる気!?私は確かに重傷は負ったけど、あんたを倒す力ぐらいは残っているわよ。」

「お忘れですか?私の腕は二本あるということを」

そうして私は左手で竜の牙を具現化し、勘九朗の眉間に突きつけました。

「ぐっ・・・・」

「さあ、話してもらいましょうか。あなた方の目的と黒幕の名前を」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「そう、分かったわ。ありがとう。」

ふぅーっ

おキヌちゃんもシロも無事が確認出来てほっとした。
もとよりこの二人はメドーサとあまり関わりが無い。
世界トップレベルのネクロマンサーを殺せば世間は騒ぐかもしれないが、いかんせん所詮ネクロマンサー、
大勢の雑魚妖怪を相手にすれば強いが、一体の強力な妖怪が相手ではその力も十分に発揮しきれない。
肉弾戦でネクロマンサーに勝てる妖怪など大勢いるのだ。

「小竜姫は大丈夫だろうけど横島君は無事なのかしら?」

もっとも横島君の実力はかなり強く、単純な戦闘力なら私を凌駕するだろう。

妖怪や除霊道具の知識、様々な経験を加えれば総合的には私のほうが”GS”としては上かもしれないが
1対1の肉弾戦では勝てる気がしない。
最近は知識も付けてきているようだからGSとしても抜かれるのはそう遠くないかもしれない。

ついでに言うと、あいつが知識をつけたのなら史上最強のGSにだってなれると思う。
もっともあいつが史上最強に興味を持つとは思えないが・・・・・

「タマモが行ってるならメドーサ本人に襲われても何とか逃げ切れると思ったけど、
タマモが横島と合流するにはもう少し時間がかかりそうだし、万一に備えて私も行ったほうがいいわね。」

こうして私は事件の奥深さも考えず、自分の手にはとうてい負えない事件に首を突っ込んでしまった。



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ポチとメドーサの戦いを水晶玉で見ている私とご主人様とその右腕的存在。

戦況は一進一退らしく実力は伯仲している。

ポチもメドーサも必死の形相でやっているが、この二人は今の戦いがご主人様の掌の上で行われているとは思わないだろう。

たとえ結果はどうであれ・・・

特にメドーサはこの後自分に待ち受ける運命については知る由も無いだろう。

そして嫌でも思い知らされるだろう、あいつも所詮使い捨ての駒だということを。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『ところでベスパよ、貴様にやってもらいたいことがある。』

「はっ。何なりとお申し付けください。」

重大な仕事らしく、どことなくいつもより口調に重みがある。

ちなみに水晶玉の方は右腕的存在が見ているが戦況にあまり変化はないようだ。

『これはお前にしか出来ないことだ。いいか、パピリオを妙神山から連れて来い。」

「はっ!? パピリオをですか? 何故また?」

”例の計画”は私一人では足りないのか?

『どうしてもパピリオが例の計画に必要なのだ。お前ならパピリオに疑問に思われることなく妙神山から連れ出すことが出来るだろう。』

最初に”例の計画”を持ち出されたときは私一人で十分だといったのに・・・・

「ですが、今パピリオは神族の管轄下にあり、すぐには連れ出すことが出来ないと思いますが・・・・」

『阿呆が!!!神族が許可せんのなら、奪い去って来い!!』

「・・・・・・・」

いったいパピリオをどうしようというのか

『なあに、もともとお前らは血のつながった姉妹だ。いくら神族とはいえ姉が妹を引き取りたいと言ったら断れまい。』

「ですが、妙神山には小竜姫や猿神がいます。私一人の力では少々難しいかと・・」

『小竜姫は今、勘九郎とやりあっている。お前が妙神山に行ってパピリオをつれて帰って来る時間ぐらいは稼ぐだろう。
あんなやつでも時間稼ぎの役には立つだろう。
猿神は今、天界の方に用事があってしばらく帰ってこないはずだ。』

小竜姫はともかく、猿神の動きを何故知っている?

この水晶の力をもってしても天界の様子を見ることは出来ないはずだ。

『どうした?まだ何か不安要素があるのか?』

「いえ・・すぐに実行に移します。」

私の中でまた一つ御主人様に対する謎が増えた。

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