ザ・グレート・展開予測ショー

『If〜』3“ユレル”


投稿者名:ptrex
投稿日時:(00/ 6/13)

夕暮れの河川敷<br>
川の斜面にポツリと膝を立ててすわる横島
横島  「結局見つからなかったなぁ。これ、どうしよう」
と言っておキヌの落とした箱を見る
「!、これ俺宛てになってる。開けてもいいよな…」
中には真っ白なセ−タ−が一枚入っていた。メ−カ−のタグがないことや、ほんの少しのほつれがあることから既製品でないことは容易にわかった。セ−タ−の端の方には小さく『FROM KINU TO T.Y』とだけ描かれていた。セ−タ−の雪のような白は、まるでおキヌの心を表しているようにも思えた。それを見た横島は、何故だかそのセ−タ−が無性に愛うしくなり、セ−タ−を抱き締める。
しばらくして箱の底にある白『ラブレタ−』に気づく。
そこには文語的な表現や、わからない言葉もあったが、おキヌの横島に対する思いだけは十二分に伝わった。
横島  「俺ってバカだよな。おキヌちゃんが俺のこと好きだったなんて…。」

「チョコレ−トは毎年もらってたけど、もてない俺のことを気づかってくれているだけだと思ってたし。メシ作ってくれるのも、誰にでもやさしい娘だからと。あれだけいい娘だから彼氏いないわけないよなと…」
そして、横島の脳裏には、出合いから今日までのおキヌとの思い出が走馬灯のように駆けめぐる。
横島  (考えてみたら、俺、おキヌちゃんに数えるほどしか優しい言葉をかけてやれなかった。それどころかおキヌちゃんの眼の前で、美神さんとか、ルシオラとか他の女の尻ばっか追っかけてるんだもんな)
「(その時おキヌちゃんはどんな気持ちでいたんだろう?)ひどい男だよなぁ。俺って」
そう考えると横島はどうしようもないくらいの切ない気持ちになる…。
どうして気づいてやれなかったのだろう。そんな自分に苛立ちすら覚えた。
できることなら、やり直したい。二度とあんな娘を悲しませたくない…そう考えていた。
この時、横島は自分の気持ちが、決して同情からだけでないことに気づき始めていた。
数分後、うなだれる横島に突如地震がおそいかかる。
激しい揺れに足を踏みはずし、あおむけに倒れ後頭部を強打する。
追い討ちをかけるかのように、落石が襲う。
辺りに広がる多量の血が、ただ事でない事を物語っている。
横島  「俺は死ぬのか?。…嫌だ、せめて裸の女に囲まれて死にたい。くっ意識が……」
横島が気がついた時は病院のベッドの上だった。
ルシオラ「気がついたのね。良かった。おまえに死なれたら、私何のために生きているのか…」
そう言ってルシオラは泣きながら横島の左手を両手で抱えた。
横島  「ごめん、ルシオラ またおまえに助けられたな」
ルシオラ「私だけじゃないわ」
横島  (ルシオラの話によると、美神さん、ルシオラ、おキヌちゃんの三人が交代で寝ずの看病をしてくれたらしい。そして、俺が意識を取り戻す少し前、おキヌちゃんが倒れたそうだ。連日の疲れがたまっていたのだろう。大事にはいたらないそうで。2、3日で退院できるそうだ)
    (そう言えば、オキヌちゃんに貰ったあのセーター…結局、一度も袖を通すことはなかったな…)
    (俺を病院までつれてきてくれたひとは、ルシオラのお礼をしたいという申しでも、当然のことをしたまでと断り、名前も連絡先も告げず帰って行ったそうだ)
(どうしても、気にかかることが一つある。あれは夢だったのだろうか?もうろうとした意識の中、こんな子守歌を聞いた気がする。
 『この子の可愛いさ 限りなし 山では木の数 花の数

 この子の可愛いさ 限りなし 海では波の数 貝の数

 この子の可愛いさ 夜ぞらの 星の数より まだ可愛い まだ可愛い』

それも一度じゃない、何度も何度も。記憶の錯綜なのか?おふくろに聞かされた子守歌とは違う。看病していた誰かが歌っていたのか?。だけど、その頃俺は危篤状態だったらしく、とても歌なんか聞ける状態ではなかった…。雰囲気から若い女性とだけはわかるのだが、これもはっきりしない)

数週間後

横島  (何故だか俺は『みのむし』になって高層ビルの風に揺れている。後遺症害もなく退院できたのは奇跡だと、医者に言われた迄は良かったのだが…。
どうしてこうなったのだろう…。廃ビルの屋上に出るという自殺者の霊を退治したその時、思わず美神さんの胸にてが伸びて…。俺は半殺しにされた。これを見たルシオラが美神に「何もここまですることないでしょ!」と食ってかかる。それから二人の言い争いが始まって、エスカレ−トする二人を止めに入ったら、今度は二人して「おまえが悪い」と言われ俺は『みのむし』にされてしまった。あれから丸一日立つのだが…)
    「い−加減に助けてくれよ!!」横島の声が虚しく響きわたる。
(それにしても、以前はここまでひどい目にあってなかった気がする…。!!。おキヌちゃん、もういないんだな…。俺がおキヌちゃんが事務所をやめたことを聞かされたのは、退院して始めて美神事務所に出勤した時だった。その時感じた寂しさと言ったら…。
ルシオラはがんばってくれている。戦力としては申し分ない。その上、事務所もかたづけてくれているし、メシも作ってくれる。だけど、だけど俺の心に開いた大きな穴は埋まりそうにない)


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