ザ・グレート・展開予測ショー

天使の御業か悪魔の所業か(絶チル)


投稿者名:斑駒
投稿日時:(05/ 7/15)


絶対可憐チルドレン1st senseより。
未読の方はネタバレに注意です。
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『ヤバいな……』

 いざディスプレイに面と向かっても、頭に何も浮かんで来ない。

 今までずっとこの世界でやってきた、自分の唯一とも言える才能。

 何度かスランプも経験して来たが、今回はその中でも最悪だ。なにせ、そろそろ後がない。

 ディスプレイを前に、焦りだけが募る。





 自分は昔からこのテの事が得意だった。

 だから将来の進路を決める際にも、迷ったが自分を信じてこの道に足を踏み入れた。

 成功して夢をつかむ人間はほんの一握りという、この競争社会……

 そう、プレコグ(予知能力者)の世界に。





 予知装置内では、能力者の主観的判断が予知に影響を与えないように、質問項目以外の一切の情報がカットアウトされている。

 だから他の能力者の予想を見て、多数派につくわけにもいかない。

 いま自分の目の前のディスプレイに提示されている質問はこうだ。

「ポイントXXXXでXX時XX分に火災は発生するか否か」

 こう聞いて来ているからには、誰かが予知して、その確率的裏づけがとりたいのであろう事は推測に難くない。

 しかし、だからと言って安易にYESと答えるわけにもいかない。

 このような質問は、ポイント・時間・事件の内容を変えて絶えず問われているもので、そのすべてが起こるはずがないのだ。

 誰かが起こるかもしれないと予知した事件の中で、多くの能力者の賛同を得て高確率で起こると確認されたものだけが、『事件予知』として当局の処置を受ける。

 したがって、この質問もガセである可能性はけっこう高い。

 YESか、NOか……。

 どちらともイメージが湧かない以上、ここはカンに頼るしかない。

 ふと、難関と言われるプレコグ採用試験を受けた時の事を思い出す……





「――なッ、なんだこりゃ?」

 これが、当日までトップシークレットだった問題用紙を目の当たりにした時の、自分の第一声だった。

『第一問:答えは右か・左か?』
『第二問:数はいくつか?』
『第三問:いつか?』
『第四問:なにか?』

 トンデモない。
 まず、主語がない。これは文章じゃない。
 しかし、疑問形であるからには、問いではあるのだろう。

 諦める早期退出者が続出し、エンピツサイコロを転がす音が随所で聞こえる中、自分も半ば愕然としながらも、ともかく解答用紙はカンで適当に埋めるだけ埋めた。
 いまこうして採用されているからには、ある程度は正解があったのだろう。





 そうだ。自分はあの難関を突破してこの職に就いたのだ。

 そんな自分のカンを信じよう。

 答えは……………NOだ!



















「52番、交代!! 君の的中率は2割を切った! 2軍からやり直せ!!」
「カ…カントク!! もう一度チャンスを……!!」





 あとで2軍の同僚に聞いた話だが、あのときの予知は特務エスパーなるガキどものせいで成就したようなものらしい。
 さらにその次の事件なんかは、予知が原因となって、エスパーのガキが事件を起こしてしまったようなものだったと言う。

 事件の発生をYESと予想した1軍のプレコグたちも事件が起こって欲しいとは思っていなかったろうが、事件が起こっていなければ今の自分と同じように2軍落ちの危機だった。思えば、因果な商売だ。





 1軍残留のヤツらにとっては事件を起こしたガキどもは天使みたいなモンだろう。

 もちろん、自分にとっては悪魔以外のなにものでもないわけだが……。

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