ザ・グレート・展開予測ショー

梅雨の切れ間


投稿者名:おやぢ
投稿日時:(05/ 7/14)

バイト明けの日曜日、珍しく昼前に目が覚めた。
梅雨の切れ間の爽やかな朝だ。
それに似つかわしくない部屋だけどな・・・・
手こずるだろうと思っていた仕事は、案外簡単にケリがついた。
ゆえに今日は、なんも予定が無い。
この部屋の現状を見て、なんもする事が無いというのは尋常な人だと掃除したら?というのだろうが、
生憎俺は、尋常な人とは違う世界を生きる“クール・ガイ”なもんで、今日の予定は無い!!
無いといったら無い!!!!!

とりあえずメシでも食おう・・・と思ったら、買い置きのカップ麺が切れていた・・・・
タマモにキツネうどん、雪之丞にラーメンを根こそぎやられた・・・
最近エンゲル係数上がってないか?
俺はあんまし食ってないのに・・・・

Gジャンを着るには暑い季節だ。
俺はTシャツに着替えると、とりあえず外にでた。
買い物に不自由しないくらいの金はある。
今までとは、ほんの少しだけ違う生活・・・

なぜかというと、最近時給がいつの間にか上がっていた。
隊長に厳しく言われたのかな??
普通に上がるとは考えにくい・・・・
う〜〜〜む・・・なにか不穏な動きがあったのだろうか・・・




「令子!!アンタいいかげんにしなさい!!!」

「なによ!アイツの生殺与奪の権利はアタシにあるのよ!人ん家の経営にGメンだからって首つっこま
ないでよ!!!!」

「最低労働賃金も守ってないで、首つっこむつっこまないもないわよ!!!」

「えらく横島君、庇うじゃないの・・・」

「だって・・・私、あの子の事が・・・・・・」

真っ赤になって照れる美智恵。

「そうだったんですか!隊長!!!いや美智恵!!!!」

かもなまいはーーーーと!!!!!!!










目の前に星が舞った。
朝だというのに・・・・・・・
なんだ、電柱か。
いかんいかん・・・妄想にふけってしまった。

しかし、人妻って響きがいいよなぁ・・・・・







「夫は仕事でジャングルに篭ってばかり・・・来て、横島君・・・私寂しいの・・・」

「それは誘ってるんですね!!!!!!」

ベッドで待ち構える隊長目掛けて、ルパンダーーーーイブ!!!









「人の母親を妄想で汚すなーーーーーーーーっ!!!!」

叫び声とともにもの凄い衝撃が後頭部に走った。
今度は電柱ではなく、壁にぶち当たってしまった。
朝から虹が・・・・しかも噴水付き・・・・う〜〜〜ん綺麗な赤♪

「あ、おはようございます。」

目の前が真っ赤になったまま、声&暴行の主に挨拶をした。
おそらく蹴りを放ったのであろう、ミニスカートの裾が少し捲れている。

「朝っぱらから、バカな妄想して歩いてんじゃないわよ!」

「いや〜〜連鎖式でそうなってしまいました。」

「連鎖ってどんな・・・ってやっぱり言わなくていい・・・」

美神さんは、右手で頭をおさえ左手で俺を制した。

「ところで、こんなとこでなにやってたんっスか?」

昼前から起きている事など滅多にない女性に向かい、俺はそういった。

「ん?なんか眠れなくて起きたのはいいんだけど、誰もいなくってさ・・・」

女性のセリフとは思えん・・・

「横島君こそ、なにやってんのよ・・・」

思いが顔にでていたのだろうか、ジト目で睨まれてしまった。

「アパートになんも食うもんなくて、買い物でもいこうかな・・・と」

「そ・・・・・」

今日は梅雨の合間の晴れである。
汚れた空気が洗い流され、気持ちのいい空が広がっていた。

「あのさ・・・」

空を見上げていたら、消え入るような声が聞こえた。

「なんすか?」

視線を真っ直ぐにすると、今度は美神さんが空を見ていた。

「ヒマだったら、そこらでお弁当でも買って公園でもいかない?・・・・天気いいしさ・・・」

なぜ俺の顔を見て話さない・・・・まさか・・・人気の無いとこで、暗殺か??
ってそのネタは、去年(高2のとき)やったか・・・
というか・・・耳っつーか、首まで赤いのは、なんか血色不良なのか??
まぁ俺もヒマだし、やること無いし、デートモドキを楽しむのも悪くはない。
これを“デート”だなんて、思い込むと後でヒドい目に会うだろう。
それくらいは、俺も学習した。
バカじゃないんだから・・・・・・


“バカよ・・・・・”


ん?誰かなんか言ったか??

「いいっスね、行きましょう♪」

てなワケで、美神さんと二人でデート♪(もどき)
別に特別に着飾っているワケもない、豪華な食事があるワケでもない、
車でムードのある場所に行くワケでもない・・・・でも、なぜか楽しい。
まぁ赤貧(とりあえず脱したけど)高校生にとっては、当たり前のデートコースなのだが
大人の女性の美神さんにとっては、デートというにはあまりにもオザナリっつーか
面白味の無いコースなのだろうな・・・・
ヒマだから、ブラついている・・・そんなものなんだろう。

って、思ってたらテンション高いよ!この女(ひと)!!!!
なんか美神さんと一緒にいるというより、おキヌちゃんやシロといるみたいだ。
綺麗というより、可愛く見えてしまう。
俺の悪いクセなんだろうか????
可愛い系にはセクハラできん!!!!!
なんでだ????
う〜〜〜む・・・不思議だ。
というか、今日の美神さんの格好がそう思わせているのかも。
いつものお水系ではなく、美神さんには珍しくワンピース。
ワンピースが珍しいというのではなく、涼しげな薄い水色のワンピースでミニではあるけど
美神さんにとっては長めである。
なんつーか、ちょっと少女っぽい?
いつもの高ビーだったら不似合いな格好なのだが、今日の美神さんには妙に似合っている。
とても昨夜、悪霊をシバいていた女とは思えない・・・
とりあえず、買ってきた弁当を芝生の上で食った。

「コンビニ弁当でも、ここで食えば美味いっスね。」

「今度来ることあったら、アタシが作ってあげるわよ。」

「今度っていつ来るんでしょうね・・・・」

甘い考えは持たない・・・それが、この2年間で得た智恵である。

「いつでもいいわよ♪」

耳の錯覚だ。
錯覚と判っていても、とりあえず確認。
箸を止め、美神さんの方を向いた。
反対側見てるし・・・・・・
ちょっと暑くなってきたかな・・・なんか赤いし。
目の前に池があり、貸しボートが見えた。
涼をとるにはいいかもしれない。

「美神さん、ボート乗りません?涼しそうですよ。」

俺は立ち上がり、美神さんの手を引いた。

「ちょちょっと!!」

驚いていたようだが、抵抗はあまりなかった。
ボートに乗り、池の中央へ。
もちろんオールは俺が漕ぐ。
ちょうどいいくらいの風が吹く。
水で程よく冷やされた風が、かなり心地よい。
亜麻色の髪が、風に靡いている。

「気持ちいい風ね・・・」

この人こういう顔もするんだ・・・・
先程の可愛さとも違うし、いつもの綺麗さとも違う。
オールを漕ぐのも忘れ、俺は美神さんの顔に見惚れてしまった。

「な、なによ!どうかした?」

俺の視線に気付いたのか、美神さんはいつの間にかこっちを見ていた。

「い、いや・・・綺麗だなぁ〜って・・・」

何気なくというか、口から自然と言葉が出た。
俺か??
ホントに俺か????
誰か憑依してんのか????
そうか!!!こんな事言えるのは、西条だな!!!!!
西条の呪いか???
俯いて頭を振ってから、美神さんの方を見た。
真っ赤です・・・・・・・さっきまで涼しくなかったっけ??

「い、今頃気づいたの?まったく似合わないセリフ言っちゃって!」

アサっての方向いちゃってるよ・・・怒らせたかな?
って、怒ってるワケじゃないよな。
なんだろ???
なんか妙な気分だ。
やっぱり西条の生霊が・・・・って違うな。
なんだろ・・・これ・・・・・


とりあえず、オールを漕ぐのを止めちょっと漂流。
周りを見渡すと、カップルが乗っているボートが数隻。
とあるカップルなんて、彼女に膝枕なんかしてもらってる・・・・
憎しみで人が殺せるなら・・・・・・

「みっともない事すんな!!」

血涙を流しているところを、ハタかれた。

「だってアレ!!アレ!!!!!」

思わず指差してしまう。

「血の涙流すほどの事かーーーっ!!」

あ、いつもの美神さんだ。
ボートの上で叫んでいる俺らも、かなりみっともないと思う。

「まったく・・・・」

呆れたように苦笑すると、美神さんは自分の膝をポンと叩いた。

「ホレ。」

え????
幻覚ですか????

「膝枕して欲しいんでしょ・・・」

では遠慮なく。






シバかれた。
やっぱり幻覚&幻聴だったか。





「うつ伏せでくんなっ!!!!」

シバいた後に、頭を膝の上に乗せられた。

「み美神ひゃん??」

「ボ、ボーナスよ!!特別賞与!!!」

真っ赤になった顔を、またしてもアサっての方向へ向けた。







あ・・・そうか・・・・
この人・・・可愛いんだ。
見かけとかじゃなくて、性格が可愛いんだ。
って事は、今のはテレ隠し?




「なに笑ってんのよ?」

「え?笑ってました?」

「笑ってたというより、ニヤけてたわよ・・・」

「そうっスか?いや・・・つい嬉しくって。」

「そお?私の膝枕は高くつくからね、覚悟しときなさいよ。」

「へいへい・・・覚悟しときます。」

俺は、またしても笑ってしまった。
心地よい風が吹く。
端から見たら、俺らもカップルに見えるのかな・・・なんて事考えていたら不覚にも睡魔が襲ってきた。







「・・・・・・・・島くん・・・」

誰か呼んでる?
でも、まぁいっか〜気持ちいいし。
体になにか触れる。
なんだ??ふわっとしてる。
あ・・・なんかいい匂い。
え????唇になんか触れた????
目を開けると、亜麻色の髪。



え?
え??
えーーーーーーーーーーーーーー!!!!
ウソでーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

美神さんがキスしてる!!!
俺に???

夢か現か幻か???

っちゅーか、ここで起きてしまうと、タダじゃ済まない気がするぞ。
寝たフリしとこ・・・・


美神さんの体が俺から離れると、しばらくして目を開けた。

「あ、起きた?」

「ん・・・俺、寝てました?」

「30分程ね。」

30分もこの体勢のまんまかよ。
もう少し太股を堪能したかったが、俺は頭を起こした。

「足・・・疲れませんでした?」

「少しね、この借りは仕事でコキ使う事で払ってもらうわよ。」

いつもの美神さんが、そこにいた。



デートもどき・・・いやデートは夕方まで続いた。
なんとなくぎこちないが、会話が途切れる事は無かった。
毎日のように顔を会わせているのに、なんで話が尽きなかったんだろう?
ネタなんてあんまり持ってないのに。

「横島君・・・」

陽が沈みかけた帰り道で、美神さんが背中を向けたまま言った。

「なんスか?」

「今日は、楽しかった・・・・」

「いや・・・俺の方こそ・・・」

「そ・・・よかった・・・・」

そういって俺の方を振り返る。

「また明日ね。遅刻しないでよ・・・」

「判ってます。」

「それじゃあね。」

手を挙げて家路へ向かう。

「み、美神さん・・・」

「なに?」

「・・・い・・・いや・・・・あの・・・明日っスね。」

「また明日ね。」

嬉しそうな寂しそうな顔をして彼女は笑った。
そして今度はふり向かずに事務所へと向かった。

青かった空が、もう夕焼けに染まっている。

夕焼けは、ちょっとだけ切なくなる。
でも、今日の切なさはいつもと違う。
祭りの後の切なさに似ている。

少し罪悪感が残る。
俺だけ幸せでいいのかな・・・・・









“いいのよ・・・ヨコシマ”







ん?またなんか聞こえた。
夕陽の中に、誰かの姿を見たような気がする。



おそらく彼女だろう・・・

お前の事は、一生忘れない・・・
けど、一歩ずつ歩いていってもいいだろ?
忘れるんじゃなく、前に進んでも・・・・







なぁ・・・ルシオラ

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