ザ・グレート・展開予測ショー

例えばこんな、しあわせな未来?(絶対可憐チルドレン)


投稿者名:偽バルタン
投稿日時:(05/ 7/13)

*このお話は、短期集中連載版がベースになってます。






「皆本ぉ…」



まるで熱に魘された様な、何とも言えない艶の篭ったその声に、僕は一気に冷静に…
次いで、ざざっと血の気が引いた。

し、しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
…と、思わず吼えそうにもなったが、何とか自制するコトが出来た。

しかし、何て…何て事だろうか。とんでも無い大失敗だ!
もしかしたら、今僕はこれまでの人生でも最大級の大ポカをやらかしてしまったのではないだろうか!?

声の主は、ごそごそと…僕の“腕の中”で身をよじる赤毛の女性…いや、年齢的にはまだ未成年、少女と呼べる年頃なのだが。

な、何とかしなくて…しかし、何と言って説明すれば?
いっぱいいっぱいになってた僕は…



「薫…」



腕の中に居る彼女の…明石 薫の名を呼ぶのが精一杯の状態だった







例えばこんな、しあわせな未来?(絶対可憐チルドレン)







あの南の島での出来事から幾年もの歳月が流れた・・・
薫が…“あの予知”で見せられた未来の彼女と同じ背格好にまで成長している今。

世界にあまり変化は無くて。

いまだ、超能力者と普通人の間の溝は埋まらず、小競合いやトラブルは絶えず、差別主義者達も一向に居なくなりはしないけれど…
でも、核兵器まで持出しての最終戦争だなんて事は無く、世界は概ね平和なままで。
僕…皆本光一もチルドレン(…とはもう呼べないかも?)の3人娘も、いまだバベルに在籍し、第一線で働いていて…

そんな時…



「知ってる?
皆本…あたしさ―――」



『お前の…皆本の事…昔から…子供のときからね?』
そう前置きをして…



「大好きだったよ。愛してる」



薫が口にしたその台詞は…
あの時、南海の孤島で、伊-九号中尉に見せられた…最悪の未来予知での、彼女の最期のそれと同じ。

だが、今の状況は…彼女がその台詞を口にした今の状況は、予知のそれとはまるで異なる。

最終戦争の只中で、ふたり殺し合う敵同士としての対峙なんかじゃない。
自宅でふたりきり、頬を染めた薫から僕へ・・・そう、それはそれはただ純粋な告白。

そんな状況で、他ならぬ薫から、その台詞を聞いたその時の…僕の受けた衝撃…
どれほど凄い物だったのか解ってもらえるだろうか?

心の中で何かが弾けた。

『未来は変えられた』
『予知は回避できた』
『薫は死なずに済むんだ』
『護る事が出来たんだ』

あの予知を見せられてから…僕は彼女等と共に死に物狂いで頑張ってきたのだ。
…予知回避の為、薫たち自身と彼女等の未来を護る為…
そして今…薫の告白を聞いて…その努力が結実したのだと、僕はそう確信した。

嬉しかった。ただひたすらに嬉しかった。
…心の奥底から湧き上がる抑えきれない歓喜の衝動…



「か…薫…ッッ」
「み……みな…もと…?」



思わずがばっと…感極まった僕は、薫の事力一杯抱きしめてしまった。

…そうして…



「…皆本ぉ…」
「…薫…」



話は冒頭へ戻るのだ…







一応言っておけば…それは、単なる純粋な喜びの表現…唯それだけの筈だったのだ。
だがそれは、実に浅はかな行為だったといえよう…無理も無い事だとはいえ。

…言い訳が許されるのならば、雰囲気に流されてしまった…と言えるかもしれない。
ふたりきり…共にテンションは最高潮、こんな時に限って邪魔が入ることも無く、僕の腕の中にいるのは予知以来いつも気にかけてきた少女…
状況が状況だったし、お互い…特に僕は真っ当な心理状況ではなかったのだ。

しかし、だからといってコレはどう言い訳した物か…
いや…僕に弁解の余地は無いのかもしれない。

相手の愛の告白に、熱い抱擁で持って返すなんて…それがどんな意味を持つのか解らないワケじゃない…ましてや、相手は“あの”薫なのに、だ。

いや、勿論薫の事は好きだ。でも僕のそれは、彼女が望んでいる様な異性同士のそれではなく…強いて言えば、友達や兄妹間での様な“好き”なのだ。
…無論今のこの状況で、そんなコトを言った所で説得力など皆無だろーが…

い、いかん!のままではいけない!!
何とかして説明を…だが…



「い、いや…あのな?薫…これは…」
「ぅ…嬉しいよぉ…皆本…」



違う…違うんだ・・・そう続けようとした僕の弁解の言葉は、薫の涙ながらの歓喜の言葉に封じ込められてしまった。
…最悪、怒り狂った彼女に念動力でのプレス攻撃くらって全身の骨を砕かれる…くらいの事は覚悟していたのだが…



「嬉しい…コレでアタシたち…“恋人同士”なんだね?」
「…ぁー…いや…その…」



事態はより深刻な…いや最悪な状況に陥った様だ。
…あぁそうだ…そうだった。
昔から薫は人の話を聞かない娘だった…その上、割と思い込みの激しい性質でもあったのだ。



「皆本ぉ〜〜」
「…うわたたッ!?」



むぎゅ〜っと、僕の首筋に齧りつく様に抱きつく薫…
ぴったりと密着したカラダ…同年代の平均値を大きく逸脱した、薫自慢の大きな胸が、僕に押付けられむに〜っと形を変えている…ふかふかとした、弾力のある感触が…
って、そんな場合じゃない!!

僕は急いで…でもなるべく優しく…薫を引き離そうとした…
でも…



「良かっ…ぅ良かったぁぁ…ぅ…も…もし断られ…ぅぅ…どうしようって…ぅぁ…ずっ…ずっと…怖くて…ぅ…不安で…ぅ…ぐす…」
「…そ、そうか…」
「…ぁ・・・さ、最悪…皆本の事…ち…“チカラ”づくで…ぅ…モノにしてやるって…ぅぅ…あ…あたし…それぐらい…覚悟してたんだぜ…?」
「………」(汗)



な…泣いてる…
泣声交じりのその台詞は、しかし歓喜に満たされていて…



「でも…まさか告白していきなり…う…しかも皆本のほうから抱きしめてくれるなんて…う…うぅぅ…あ、あたし…本当に嬉し…ぅ…嬉しいよぉ…」
「……ぁー…ぅん…そ、そーか…」



本当に…本当に嬉しそうに…薫は僕に擦り寄ってくる。



「愛してる…大好きだよ皆も…
ううん…これからは“光一”って呼ばなきゃ駄目だね…」
「………ぁー…か、薫?」
「だってあたしたちもー“恋人同士”だもんね?」
「…………」(汗)



こ、これはもー…とてもじゃないが真実を告げられる様な雰囲気じゃない。
とゆーか、もーこーなってしまった薫には何を言っても無駄な気がする…

そう…今更僕が何を言おうが…最早全ては手遅れなのだと…僕はその時気が付いた。
既に逃げ道は何処にも無く、僕に出来ることといえば諸手を上げての無条件降伏…

…が…



「光一ぃ…」
「………」(涙)



それでも…まー取敢えず今薫は幸せそうなので…コレはきっとハッピーエンドなのだろう…
うん、そーだそーに違いない。
僕の眼から流れてる熱くてしょっぱいモノは、きっと嬉し涙なんだ…

…僕は、そう思い込むことにした。










おしまい

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