ザ・グレート・展開予測ショー

小竜姫のもってきたもの(後)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 6/12)

「人質・・・ですか・・・?」
小竜姫は斉天大聖准将の言葉が聞こえなかったので、聞きかえしていた。
「そうだ、間違いなく人質といっている!」
准将は、額にあおすじをたてて言った。
「・・・・・」
冗談であろう、と思う。
小竜姫には、意味がわからなかった。
「厄珍めはっ!人質を取っているから、MK-Uを返せと言ってきたのだ」
「人質・・・?」
唐巣も信じられないというふうに准将の手元を見た。
「人質と申しますと?」
小竜姫は、また言った。
「見るがいい!手書きの勧告文でこれだ!」
准将は、その手紙を突き出して、空を泳がせた。
小竜姫はその文書をつかんだ。
「!!」
今度は、小竜姫が絶句する番だった。
横島の母親を人質に取っているから、その命を助けたければMK-Uを返せというのである。
小竜姫は、黙ってその文書を唐巣に渡した。
自分の持ってきた文書がよりによってそんな卑劣な内容のものであろうとは、信じてもいなかった。
「これが・・・軍のやることなのでしょうか・・・」
「軍ではない。私兵だよ!カオス教の厄珍と黒幕の人物の私設軍隊なのだ。地球連邦軍には、こんな発想を持つものなどは誰もおらん!」
「私兵・・・・・」
小竜姫は、今まで想像もしなかった言葉をあびせかけられて絶句した。
厄珍によれば、目の前にいる人々こそ地球連邦政府を転覆させるためのスペースノイドの扇動分子であるはずであった。が、この人々の口からは、全く逆の言葉を聞いたのである。
「我々は、地球連邦軍です。現に軍の予算は、地球連邦政府の承認を得なければ一銭だって手に入れることはできないのです。
「子供のような言い方は止めたまえ。中尉。」
唐巣が怒鳴りつけた。
「・・・・・」
小竜姫は黙ったまま唇を噛んだ。
わけのわからない怒りが、全身を震わせた。
しかし、反論はできなかった。小竜姫の手には厄珍の手書きの手紙があるのだから・・。
「どうします?」
ヒャクメが准将に尋ねた。
「小竜姫のMK-Uも捕獲した、と通信してくれ」
准将は明瞭に言った。
「レーザー通信を使うと狙撃されますねー」
「・・・強行脱出はできるか?」
准将は、シートから立ち上がってテーブルを人差し指でたたいた。
小竜姫は、その二人の挙動を見て、やにわに言った。
「もし、おっしゃるとおりならば、あなた方もカオス教と同じことです。交渉の使節として来ている私を監禁するなど、ジャオンでさえもやらなかったことしょう。まるでヤクザではないですか」
「ヤクザか・・・」
准将は表情を変えぬまま言った。
日本語であったものが、現在ではそのままの発音で使われているのだ。
「敵状は!」
唐巣が、ブリッジにコールした。
モニターが小竜姫の目を逃れるように向けられて、唐巣がそれに見入った。
准将はヤクザという言われ方がこたえたようだった。
「・・・中尉は、厄珍大佐を知らんのだよ。彼は、政治家だ。地球連邦軍の中でも特異な経歴を持って出世をして来た男なんだ・・・。一年戦争さえ経験したことのない男が,スペースノイドの痛みなどわかるものか・・・。」
そのキリッとした言い方に小竜姫は、自分の中の何かがかすかに動揺したのを感じた。
「・・・・・・」
応答のしようがなければ,黙るしかなかった。
「コロニーからは、二隻出ているようです。MSの数はつかめませんが・・・」
「時間を稼がれるのは面白くないな・・・小竜姫中尉、しばらく時間をもらう。さきほどの言葉だけは撤回しよう」
「ありがとうございます」
答えながらも、厄珍の手紙を准将の手に返した。
准将と唐巣は、小竜姫をガン・ルームに残して出ていった。
小竜姫は一人になった。
「地球で教えられていたこととはまるで違う・・・」
小竜姫の胸が、フウッと浮き上がり、そして落ち着いていった。
その鼓動が、戦闘空域にいるときよりも激しくなったようだ。

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