ザ・グレート・展開予測ショー

九尾物語 <6ページ目>


投稿者名:まぐまっぐ
投稿日時:(05/ 7/ 3)

洋館での事件が終わった次の日、二人ですむのには少々狭いアパートの一室で私達は奇妙なやり取りを繰り広げていた。

「ほら、そう嫌がっていたらちゃんとできないだろう?」

「ちょ、ちょっと、まだ心の準備ができていないからまってよ」

「そういわずに・・・ほら」

嫌がる私はなだめながらもヨコシマはソレを差し出してくる。

「大丈夫でござるよ。最初は苦いけどなれれば結構おいしいでござるよ?」

ハクも私をなだめるように言ってくるが、目の前のソレはまったくもってそのような感じには見えない。

「だからっていっても・・・いきなりそれを飲むのはいやよ!白くてなんかすごくねばねばしているじゃない・・・」

「見た目はそうかも知れないがハクのいうとおりだぞ?」

「嫌なものは嫌なの!」

「しょうがないな・・・ハク、ちょっとタマモを抑えといてくれるか?」

「はいでござる」

ヨコシマの言葉と同時にハクは私を押さえ込む。

私は何とかソレを飲まじとして抵抗を試みたが、馬鹿力でさらに男性であるハクの力の前には無意味だった。

「ちょっ・・・この馬鹿犬!はなさいよ!!」

「犬じゃないでござる!タマモが抵抗するから悪いんでござるよ」

「ほら、もう抵抗しても意味が無いんだから覚悟するんだ」

動けなくなった私を見て満足したかのようにソレを私の口元へと持ってくる。

最後の抵抗としてソレを口に進入させないようにと唇を硬く閉ざすが、それもむなしくあっという間にソレは隙間から私の口の中へ進入に成功する。

そして、ソレが私の口の中へと流し込まれていった。

「〜〜〜〜〜〜〜っっ!!」

刹那、私の口の中に得もいわぬ苦さが広がっていった。





「けほっけほっ・・・う゛〜・・・やっぱりすっごく苦いじゃない・・・」

「仕方がないだろう?58度も熱が出てるんだから普通の薬じゃ役に立たないからな」

「妖孤や人狼などの犬族は人間と違って熱には天狗殿の薬が一番効くでござるからな。苦さは我慢をしないといけないでござるよ」

二人が慰めるのを聞きながらも私は口の中に流し込まれた薬を流し込むかのように水を飲んだが、それでも強烈な苦さがまだ口の中に残っている。

私は昨日の除霊の疲れが一気に出たのか風邪を引いてしまった。

昔殺生石より生まれ変わったときにも似たようなことがあったが、今回は毛変わりとは関係なくただ周りの環境が急激に変わったことと疲れによることが原因であるようだ。

「こほっ・・・にしても、よくこんなすぐに天狗の薬を手に入れてこられたわね。学校が終わってからとりにいったんでしょ?」

「運よく学校が午前中しかなかったからでござるよ。それに、天狗殿のところまでそうは遠くないでござるからな」

「そうだな。しかも天狗のやつ、オレを見るなりいきなり薬を渡してきたからな。試練があると聞いていたのに少し気が抜けたぜ」

「ふ〜ん・・・そうだったんだ」

私はこのときふと以前に私のために薬をとってきたときの話を思い出した。

確かそのときはシロが天狗と戦っている際にヨコシマが自分の裸を見せて天狗に隙を作ったらしい。

もし、今日ヨコシマたちが会った天狗がその天狗だったのならばその行動をとったのも納得が行くような気がする。

それにしても、そうだとしたらその天狗はとことん運がついていないと思う。

「さて・・・とりあえずこの薬を飲めば大丈夫だからとりあえず寝て安静にしておけ。オレは今からちょっくら買い物にいってくるわ」

「あ、拙者もいくでござる〜」

「うん・・・それだったらお言葉に甘えてちょっと眠らせてもらうわ」

ヨコシマに続いてハクも立ち上がるのを見て私は軽く出かけたあくびをかみ殺す。

実は薬が効いてきたのか私はすごく眠くなってきてこうやって目を開けているのが精一杯な状況になっているのだ。

「ま、一眠りしたら治ると思うからゆっくりと休んでおけ」

「ん・・・いってらっしゃい」

それだけいうと、ヨコシマ達の返事を聞く前に私は眠りの世界に落ちていってしまった。








どれくらい時間がたっただろうか?

気がつけば私はヨコシマとシロと一緒に馬鹿なことを言って騒いでいた。

それはいつものことだし、私達にとっては当たり前のことなはずだけどなんだかものすごく懐かしいような気がする。

なんでだろう・・・?

何故か頭がうまく働かない。

すると突然再び目の前がぼやけてあたりが暗くなっていった。

再び気がつけば、今度は私とシロのお腹は大きく膨らんでいた。

それは待望のヨコシマの子供。

ほしくて努力しても恵まれずに種族の違いだからと半ばあきらめていたときの幸福な知らせ。

妲己や玉藻の時には決して経験することができなかった幸せが今私の中にある。

このまま永遠にこの幸せが続いてほしい。

そう思った瞬間、私とシロの膨らんでいるお腹から黒いものがいきなりあふれ出す。

そして、何がなんだかわからないうちにヨコシマとシロの姿をかき消してしまう。

あわててあたりを警戒するがいきなりのことにまったく体が対応しない。

私がもたもたしているうちに黒い霧が私のお腹に襲い掛かり、私のお腹から光る玉を取り出し持ち去ろうとする。

それがヨコシマと私の子供であることは火を見るよりも明らかであった。

(まって!それだけは・・・それだけは私から奪わないで!!)

必死に声を出そうとするがそれが私の口から発言されることはなく、しかも体が思うように動かないためにみるみる光る玉が私から離れて黒い霧のなかへと奪われていく。

(やだ!!やめて!お願いだから・・・私のことはどうなってもいいからその子だけは!!)

私の必死の願いもむなしく、ついにそれは深い霧につつまれ見えなくなってしまった。

(イヤーーーーーーーーーーー!!!!!)

そして、私は目を覚ました。








がばっ!!

「うわっ!ど、どうしたでござるか!?」

私はあまりの悪夢に耐え切れずに勢いよく起き上がる。

全身に汗が噴出してパジャマが体にへばりつきすごく嫌な感じがする。

部屋の中は夕日が入ってきていているのがわかる。

どうやらあの後大分寝てしまったようだ。

あたりを見回すと目の前で濡れたタオルを持っているハクが変な格好をして固まって私を見ている。

「あんた・・・そこで何をしているの?」

「な、何って帰ってきたらまた熱に浮かされているみたいだったからこうしてタオルを変えていたらいきなり起き上がったんでござるよ」

「ふ〜ん・・・」

「それにしても・・・大丈夫でござるか?大分うなされていたようでござるが・・・」

ハクはとりあえずタオルをそばにおいてあった洗面器に戻してから心配そうに私を見てくる。

「大丈夫に決まっているでしょ。それに、ハクが心配してくれるなんて似合わないわよ」

もちろん大丈夫なわけが無かった。

実際、私が石になって眠りにつく前にヨコシマとの間に子供を授かることは無かった。

それはシロも同じであり、どのようにがんばってさまざまなことを試しても結局すべては無駄に終わったのだ。

何故そのようなことが起こったのかはわからないが、そのせいもありさっきの悪夢は予想以上に私に精神的なダメージを与えていた。

おそらくハクは無意識にそれを察知してこうして珍しくも私を心配してきたのだろう。

そう思うと、少しはそのダメージも薄れていくような気がした。

「むっ、折角心配してやったのに・・・そういうのならもう絶対に心配なんかしてやらないでござる!」

拗ねてしまってぷいっとそっぽを向いてしまうハク。

その様子が少しおかしく私はくすっと笑いをこぼしてしまう。

「どこがおかしいでござるか!?まったく・・・無駄な心配をした拙者が馬鹿だったでござるよ」

その様子を見たハクは完璧に拗ねてしまったらしく腕を組んで頬を膨らませながらも完璧にそっぽを向いてしまう。

「ごめんごめん。でも、心配してくれてありがと。おかげで楽になった」

「ふ、ふん!いまさらそんなことを言っても拙者は許さないでござるからな!」

口ではそういっているがよくよく見ると尻尾が激しく振られているのが見える。

あまりにも単純なハクの様子を見てついつい笑みをこぼしそうになる。

気がつけば薬のおかげで熱も大分下がったみたいだ。

そのことを確認しながらもあたりを見渡しふとあることに気がついた。

「はいはい。そういえばヨコシマはどうしているの?ハクがいるということはヨコシマも帰ってきているんでしょ?」

「先生は今帰ってきてちょうどお粥を作っているでござるよ」

私の言葉を聞いて今まで拗ねていたハクはころっと表情を変えて話してくる。

「なるほどね。通りでさっきから結構いいにおいが漂って・・・って、ヨコシマが料理!?」

「そうでござるよ。先生がお粥を作ってくれているでござるけどどうしたでござるか?」

ハクはさも当然のように話してきて首をかしげる。

私はあまりの出来事に言葉が続かずに口をぱくぱくと動かすしかできなかった。

だって、あのヨコシマが料理を作っているなんて信じられないでしょ?

さすがに女性に転生したとはいえ・・・それは絶対に考えられないでしょ?

そんな私をハクが不思議そうに見ているなか、私はさらに混乱してしまった。

なぜなら・・・

「ハク、タマモの様子はどう・・・って、目が覚めたみたいだな」

そこに出来立てのお粥がのったお盆を持っているセーラー服の上にピンクでキャラクターのワンポイントが入ったエプロンを装着したヨコシマが立っていたからだ。

「よ、よ、よ、ヨコシマ!?いったい何のコスプレをしているの!?」

「失敬な。これはコスプレなんかじゃないぞ。普通の料理するときの姿だろうが!まったく・・・なんでオレのこの姿を見たらみんなそういうんだ・・・」

あまりの出来事につい私が口走ってしまったことを聞いてぶつぶつと愚痴をこぼしながらも、ヨコシマは私のそばまで来てお盆を床においてからそのふたをとった。

どうやらできたてらしく湯気があがり、美味しそうなにおいがすぐにしてきた。

もちろん、お粥には油揚げもちゃんと入っていた。

ぐぅぅ〜・・・

そのにおいに誘われてか私のお腹がなってしまった。

顔がどんどん赤くなるのを自覚しながらも、朝から何も食べていないために恥ずかしさよりも空腹が勝ってしまって思わずよだれがたれそうなのをあわてて手でぬぐう。

「そんなににらまなくてもお粥を逃げねえよ。ほら、あ〜んと口をあけろ」

その様子を見て苦笑しながらもヨコシマはスプーンでお粥をすくい、息である程度さませてから私の口へとそれを運んでくる。

「ちょ、ちょっと!お粥くらい一人で食べれるわよ!」

「何を言っているんだよ。タマモは病人だからちゃんとじっとしてないといけないだろう?ほら、あーん」

恥ずかしがる私を無視してさらにスプーンを私の口へと近づけてくる。

ハクはすごく羨望を含んだ目で私のほうを見てくるが、はっきり言ってかなり恥ずかしい。

しかし、ヨコシマのスプーンを持つ手から発される言い知れぬ威圧感によって私はヨコシマに従わざるを得ない状況となってしまった。

どこにも退路が無いこと感じた私は恥ずかしさを押さえ込んで意を決してスプーンを口に含む。

すると、異様な甘さが口のなかに広がった。

「ん゛ぐっ・・・な、何これ・・・な、何を・・・入れたの・・・」

「何って・・・別に普通の材料だけだけど・・・いったいどうしたんだ?」

予想外の反応にヨコシマは戸惑いつつも、あわてて水を入れてきて私に差し出す。

「んっ・・・んっ・・・ふぅ・・・どうしたって、このお粥・・・ものすごく甘いわよ?」

その水をあわてて飲んでから私はお粥を指差す。

「甘いって・・・俺が味見したときはなんとも無かったぞ?それに、病気の時にいいようにしたんだけどな?」

私の様子を見て驚いたままのヨコシマは何がなんだかわからない様子である。

どれどれ・・・とハクが試しにお粥を一口食べてみるが、食べた瞬間顔をしかめて洗面台のほうへ猛ダッシュで走っていってしまった。

その様子を見てさらにいぶかしげに首をかしげるヨコシマ。

私は恐る恐るとあることを聞いてみた。

「ねえ、ヨコシマ・・・もしかして、塩と砂糖とを間違っていないかしら・・・?」

「え?お粥って普通砂糖を入れるんじゃないのか?」

その言葉を聞いた瞬間、私は目の前が真っ暗になるのを感じた。

結局この後、私とハクはヨコシマが間違っていることを徹底的に教えてから正しいお粥を作り直させた。

ヨコシマは私達の話を聞いた後にも解せない様子でいながらも、すでに作ってしまっていた大量の砂糖入りのお粥を平気で平らげていった。

その味を知っている私とハクはこの世のものとは思えない情景を見るようにその姿を見守っていたが、ヨコシマはそれがやっぱりわからないらしく終始首をかしげていた。

やっぱりヨコシマはどこか変わっていると感じた一日であった。










あとがき

夏の暑さと湿気の多さにやられてここ数日風邪を引いていたまぐまっぐです。
今年は去年と同じく気候が異常で体調を崩しまくりで嫌になっちゃいそうです(涙)
ということで九尾物語の第六話になります。
こんな駄文を楽しみにしてくださる方はいないかも知れませんが、それでも楽しみにしてくださる方、遅れて申し訳ございませんでした。
次回からようやく山場に差しかかると思うので、今回はヨコシマの変態ぶりを楽しんでいただければ幸いと思います。
それでは失礼します。

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