ザ・グレート・展開予測ショー

愛子の青春


投稿者名:まぐまっぐ
投稿日時:(05/ 6/23)

7月2日(日) 天気:晴れ

今、クラスで日記を書くというのはひそかなブームになっている。
自分の秘めた思いを日記に連ねていくっていうのはやっぱり青春よね。
そういうわけで早速私も始めることにした。
でも、今日は日曜日だから誰も学校にこないから書くことが無いのよね。
はやく明日にならないかな・・・



7月3日(月) 天気:晴れ

今日の待ちに待った月曜日、授業がある日だった。
それにくわえて今日は珍しく横島くんが学校に登校して来たからさらに嬉しかった。
どうやら、とうとう出席日数がぎりぎりになったらしく強制登校を食らったらしい。
でも、横島くんは私がこのクラスの一員となったあの事件以降私の机を使ってくれるから私にとっては嬉しいことなのよね。
だって、ほら、横島くんってよく授業中居眠りするでしょ?
私の本体は机そのものだから私をずっと抱きしめてくれているのと同じことになるから・・・
まあ、それで少し授業に集中できなかったりしたけどそれはそれで幸せだからかまわないわよね。うん。



7月4日(火) 天気:曇り

昨日に引き続き今日も横島くんは学校に登校してきた。
どうやら昨日美神さんに昼間働けない分を夜にこき使われたらしい。
学校に来るなり私の机に体重を預けてすやすやと眠りだしてしまった。
結局その日はお昼ご飯の時間以外はずっと眠っている様子だったけど、私はすっごく幸せだった。
これからずっとこうしてくれたらいいのになぁ・・・



7月5日(水) 天気:雨

今日は朝からしとしと雨が降っていた。
この時期の雨はいやなのよね・・・気温が高くして湿度が高くなるからむしむしするからね。
それに、私は古い机だから気を引きゆるめとすぐにカビが生えちゃうからいやになっちゃうわ。
それはおいといて、今日も横島くんは学校に来た。
クラスのみんなは明日雨が雪や隕石になるんじゃないかと騒いでいたけど、強制登校だから仕方がないわよね。
昨日とは違って今日はあまり疲れてないらしく授業中でも起きていることが多かったけど横にいるタイガーくんとしゃべったりしていてあまり授業は聞いていなかったみたいだ。
そんなことをするから試験前にあわてるのにね。
でも、そのときに私に頼ってきてくれるから結果オーライかもしれないわね。



7月6日(木) 天気:雨のち曇り

午前中は雪とか隕石じゃなくて昨日の雨がふり続いていていやな天気だった。
そのために体育の授業が中止になって自習になった。
今日も登校して連続登校記録を更新した横島くんは嘆いていた。
なんでも体育のときは女子の体操着が見れるからすごく楽しみにしていたらしい。
そういえば、今まで学校に来ているときも体育だけは絶対にサボらなかったわね。
そんなに見たいのなら私が好きなだけ見せてあげるのに・・・って、私は何を書いているのよ。
結局横島くんは自習のときに男子達と共になぜか雨の日のすばらしさについて語りだしてはしゃいでいた。
やっぱり横島くんの煩悩がすごいことをあらためて思い知らされた。




7月7日(金) 天気:晴れ

昨日とはうってかわって今日は机干しには最適の一日だった。
さすがに横島くんも一週間学校に来ていると飽きてきたらしく授業中によく私にちょっかいを出してきた。
ほら、横島くんが寝ているときは関係ないけど私が授業を受けるときって机からひざの上を出しているって感じでしょ?
だから、どうしても横島くんの目の前に・・・その・・・私のお尻がきちゃうのよ。
だから本人は暇つぶしといって・・・はたからみればセクハラだけど・・・鉛筆とかで私のお尻とか背中を押してくるのよ。もちろんとがってない方でね。
そのせいで驚いて声を出しちゃってクラス中の注目を集めたのよね。
全くはずかしかったわ・・・ちょっかい出されること自体はイヤじゃなかったけど。
話は変るけど明日からまた学校は休み・・・来週の月曜日までまた一人ぼっち。
二日過ごせばまたみんなに会えるといってもはっきりいってさびしい。
どうせなら毎日が学校だったらいいな〜と思うけど、やっぱりそれはみんなに迷惑がかかっちゃうし叶わない願いだからあきらめるしかないかな・・








ぱたんと音を立てて先程まで書いていた日記を閉じる。

「ん〜・・・」

今まで同じ姿勢だったために体をほぐすために大きく伸びをしながらも愛子は時計を見てみる。

午後6時半。

愛子が日記を書き出してからすでに30分がたっており、窓からは赤いさびしげな夕日が伺えた。

「もうこんなにも時間がたっていたのね。日記って書き出すと時間を忘れるから怖いわね・・・」

苦笑しながらも寂しさを紛らわすかのように独り言をつぶやく。

誰もがこの時間帯は哀愁を覚え、いいしれない寂しさが襲ってくるのだ。

愛子とてそのことに関しては例外ではなかった。

さらに、日記に書いてあるように明日は休みなので愛子の気分はなおさら憂鬱になるのだ。

「ふぅ・・・二日間横島くんにもあえないのかぁ・・・あまり登校してなかったときはそんなに感じなかったけどやっぱりさびしいなぁ・・・」

窓の外の夕日をぼんやりと眺めつつもぼそっと無意識のうちにつぶやく。

普段は心の中で思ったことは声に出したりはしない愛子だが、すでに生徒が帰って静まりかえってしまった学校の静けさのためについ出してしまったのだ。

しかし、学校に残っていたのは愛子一人ではなかった。

「ん?呼んだか?」

「きゃぁっ!!よ、横島くん!?」

突然背後からした声に驚き、愛子はあわてて振り返る。

そこには少し息を乱していて心なしか汗を浮かべている横島が教室の入り口に建っていた。

「な、なんで横島くんがこんな時間に学校にいるの!?」

「いや〜・・・それがちょっと忘れ物をしてな。これがないと今週末はいきのびれねえからな」

あわてて日記を机の中(空間?)に隠しながらも愛子は驚きをなんとか隠そうと師ながらも横島のほうを見やる。

しかし横島の方はそんな様子にも気付かないで隣のタイガーの席をごそごそとあさりだす。

しばらくしてお目当てのものを見つけたらしくほっとした様子でそれを取り出す。

横島の手にあったのはぼろぼろの財布であった。

それを命のように大事なもののように頬ずりをしている。

「ふ〜・・・危ねぇ。これが無かったら本当にやばかったぜ」

「ねえ、なんで財布がタイガーくんの机に入っていたの?」

自分の独り言や日記のことがばれていないということにほっとしながらも気を取り直して愛子は聞いてみた。

「これは、山よりも高くて海よりも深いわけがあるんだ・・・」

今まで財布に頬ずりをしていた横島は急に顔を真剣にして声を落としながらもつぶやく。

愛子もそれに釣られて体を心なしか小さくしながらも真剣にそのことに聞き入る。

「それは・・・?」

「それはな・・・」

横島の次の言葉を聞こうと息を潜める。

その間は実際には数秒のことであろうが、愛子にとってはまるで数分間のことのように感じた。

そして、横島の口がゆっくりと開いた。

「それは・・・俺がタイガーに無断でちょっと財布を置かせてもらっていただけだ!」

突然胸を張って堂々と言い張る横島。

それはものすごくどうでもいい理由だった。

今まで緊張をしていた愛子もおもわず力が抜けてしまい机に突っ伏してしまう。

「そ、それだけの理由だったのね・・・」

「そういうことだ。本当に思い出してよかったぜ」

そういって再び財布に頬ずりしていったが、愛子を見るなりその行動をやめじっと見つめてきた。

「な、何よ?」

「なあ愛子・・・ずっと前から一つだけ言いたかったことがあるんだ。ちょっと人前ではいえないことなんだが・・・言ってもいいか?」

その言葉を聞いた瞬間、愛子の頭に一つのこと浮かんだ。

夕方の教室。男女が二人っきり。男が真剣な顔で告白。

このことから思い浮かべられることは一つしかなかった。

(ちょ、ちょっと!これってもしかして告白・・・?しかもこれは学生の一番の青春じゃない!それに横島くんからなんて・・・ど、どうしよう?まだ心の整理が・・・)

横島の言葉に愛子の頭の中は暴走し、さまざまな妄想が繰り広げられて顔がどんどん赤く染まっていく。

幸い夕日のおかげでそれはあまり目立たなかったが、あからさまに動揺している愛子を見ればさすがの横島でもその状況は分かるだろう。

「愛子・・・」

心なしか横島の顔も赤くなっているように見える。

それが夕日のせいか横島が赤くなっているせいかは分からなかったが、今の愛子にはそれはどちらでもかまわなかった。

横島の手が愛子の肩におかれて握られる。

愛子は体を硬くしながらも期待の目で横島を見つめる。

そして、横島の口が開いた。





「こんな暑いのに冬服のままで暑くないのか?」





「へ?」

想像とはかけ離れた言葉を聞いて思わず間抜けな声を上げてしまう愛子。

一瞬聞き間違えかと思ったが、思い返してみて聞き間違えではないと確認する。

確かに愛子は最高気温が35度を記録する中でもずっと冬服のままであった。

はたから見ればかなりの違和感を感じるのだが、もともと机が本体であり人間として現れている部分は付属に過ぎないために見た目とは関係ないのだ。

以前にそのことを聞かれたことがあるのだが、そのときには普通に答えたのでクラスのメンバーには知れ渡っていたのだが、休んでいた横島は全く知らなかったのだ。

「だから、見た感じ愛子は冬服のままだろう?こんなに暑い夏まっさかりな中でその格好は暑くないのかとおもって気になったんだ」

どうやら横島は聞き逃したと思ったらしくもう一度詳しく言う。

「それが人前ではいえないこと・・・?」

愛子はあまりのことに心がどこかいってしまったらしく、なんだか分からないような声で聞き返す」

「そうだ。さすがにそれを回りに人がいるところで聞いたらまずいかなとおもってな・・・って、どうしたんだ?」

先程の真剣さはどこにいったのか、気が抜けたような笑顔で理由をしゃべる。

それを見た愛子は下を向き少し肩を震わせている。

「よ・・・」

「よ?」

「横島くんのバカ〜〜〜〜〜〜!!!!」

「ぐはぁっ!?な、なんでやぁぁぁぁぁぁ・・・・」

本体である机でをもち、愛子は思いっきり横島にむかってふりかぶる。

いきなりのことでよけ切れなかった横島は見事クリーンヒットし教室の窓を突き破り外へと落ちていく。

何か落下音と嫌な音が聞こえてきたけど横島のことだから大丈夫だろう。

「もう・・・バカ・・・」

当の本人はふてくされて頬を膨らませながらも机にもたれかかる。

ちなみに、この日の愛子の日記には追記として横島への不満が書き連ねられたそうだ。

愛子の本当の青春はまだまだ訪れそうにはない。









あとがき

連日の猛暑に頭をやられてつい書いてしまいました。次はちゃんと九尾物語を書くので見逃してやってください。

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