ザ・グレート・展開予測ショー

「呪いと恋のペンダント!!」(4)終


投稿者名:ししぃ
投稿日時:(05/ 6/17)

──────────────────
「呪いと恋のペンダント!!」(4)終
──────────────────

「解呪には、想われ人が必要らしいんです。危険ですがこのままでは何も出来ずエミが
 泡になって消えるだけです、あたしはそれでもいいんですけど」

 ホテルに戻った先生にもっともらしく説明する。
 分かれて行動していた時間でカオスから話を聞いた、という芝居。

 演技の下手な従業員二人は、エミと一緒に別室待機してもらっている。

「だが、ピート君がエミ君の前に来て……真実の愛を持っていないことが伝わったら……」
 呪いの首飾りの力は発動されて、やっぱりエミは泡になる。
 まあ、それは既にないのですけど。

「ピートは本当に、エミの事好きじゃないの?」

 まあ。多少は好きかも知れないけど愛してはいないと思う。
 エミも感じてるし、それ自体は仕方がない。……今はね。

 基本的に恋心に疎い先生はたぶん、判ってない。
 そこにつけ込んでみる作戦だった。

「吸血鬼と人間とか、そんな事で悩んで心を偽っているのかも知れないわ。どうしたって
 エミが泡になるなら……何もしないで受け入れるのではなく、やるだけの事をやって、
 助けてあげるべきだわ」

 深刻な顔の先生。
 うん。いい感じ。

「エミ……、あれでも、いっいっ、一途なイイコダシ」

 ……言い慣れない言葉なんか使うもんじゃない。
 我ながら情けないほど棒読みな上、ちょっと咬んだ。
 ……まあ、先生気づいてないからいいよね。

「コホン、ピートも自分では気付かない内にエミに惹かれているかも知れない。ちょっと
 でも心が通じていれば……ペンダントは外せるらしいの」

 全部が全部嘘、というわけでもない。
 ピートの心に全くエミが居ないわけじゃないだろうし、こういう小細工がきっかけで
本当にピートの心がエミに傾くかも知れないのだから。
 まあ、つまりそういう作戦なのだ。

「ああ、本当に……エミ君はいい子なんだ。君と同じで少し強引過ぎる事はあるけれど、
 ピートにと言いながら私にも食事を運んできてくれたり。あの大戦で君の魂が壊された時
 最後まで君を信じて皆を励ましてくれたのが彼女だった」

 何度も言葉を詰まらせて、先生は俯く。

 あー、えーと。ごめんなさい。

 メガネの下で、先生はポロポロと涙をこぼしていた。
 心の底からエミを想い、喚くでもなく静かに、心から涙する姿は……ちょっとすごい
罪悪感で……尚更にどんどん引っ込みがつかなくなる。

「強引さに表向きは脅えながら、僕とピート君は彼女の来訪を待っていたぐらいなんだ
 ……今は横島君のいる、あの教会の扉を力強く開けるのを……僕は、待っていたんだ」

「せ、せんせい?」
 あたしが持ってる通信器でエミもこの話を聞いてる筈だ。

『どーすんのよ、いいの?このまま行くわよ?』
 マイクに向かって小さく呟くと、
『い、いまさら引っ込みつかないワケ』
 慌てた声が返ってくる。

 オッケ、覚悟決めましょう?

「ピート君をここに呼ぼう。……呪いが発動してしまうまで、あとどれぐらいの期間が
 残されているんだ?」

 頬を伝う涙も拭かずに、先生があたしを見つめる。
 あまりの純粋さに心の中で十字を切った。

「えーと、一応明日中って事に、あ、でもでも二三日は平気かも?」

 目を反らす。だってだって。
 なんかあたしコレだけで地獄行き決定してる気分。

「そうか、期間は不明瞭なんだね。一刻も早くした方がいい。すぐに連絡をとるよ」

 ……熱血モードのスイッチをオンにした先生は、ホテルの電話でピートに連絡を取った。

「なんだって?嵐?そんな問題じゃない!!ピート君。今すぐに来るんだっ!!えっ?
 当然だっ男にはやらねばならない時があるんだ!!」

 電話口で必死に叫ぶ唐巣先生。
 英語で交換を呼んでいたから……たぶん外国。

「なにをおいても来るんだっ!!必要ならGS協会の全権力を行使する。ああ、ここに
 連絡を入れるようにいいたまえ。そうだ。一刻も早くだ!」

 大げさになりつつある事態にいくらなんでも罪悪感。

『エミ……あんたの責任なんだからね?』
 マイクに向かって呟いてみると、向うからも、
『神父……』
と、いつもと違う調子のエミの声。

「……ダメだ、アメリカの私の知り合いを頼らせて匿っていたんだが裏目に出てしまった
 向うは嵐で航空機が出せないらしい。ペンタゴンの特務ヘリで迎えに行ってもらう事に
 なったが、最低でも3日かかってしまう……間に合えばいいのだが……」

 受話器を置いてこっちを見る先生は、闘う男の視線だった。

「あーあ、ええ、大丈夫ですよ、二三日っていうか一週間ぐらいは無事なんじゃない
 でしょうかね?エミの事だし。そんな焦らなくてもいいっていうか」

「令子君!人の命は、人の想いは何物にも変えられない大切な物なんだ!!我々に出来る
 ことがあるなら、ごく僅かな事でも最善を尽くさなくてはいけない!」

「はいっ!」

 三つ子の魂百まで。
 あたしにそんなのが残ってたのが意外だったけど、かつて弟子入りしていた時にひどい
失敗をして怒られた事を思い出してしまった。

 いつもの情けなくも優しい先生ではなくて。
 厳しく、強い男性。

「そうだ、エミ君を呼ぼう。そうと決まればわたしたちで少しでも呪いの進行を遅らせ
 なければいけない。専門の彼女に及ばないまでも、神の御力は必ずその愛に縋る者を
 等しく救い賜うのだから」

「あーうん、そですね」
 逆らうことは出来なかった。

 なるほど。これが運命という物なのね。と、あたしは別室で盗聴しているエミを
『探す』ために部屋を飛び出した。



「天に召します我らが父よ、その御力をここに有る無力たる善良なる使徒の上に輝かせ、
 哀れなる魂に囚われた狂いたる想いを正し賜え」

 魔方陣の上に座るエミ。
 そこに向かって祈りの言葉を捧げる神父。
 霊力を伴った詔ではない。

『あー、呪い発動の延長をなんとかするための術は既に行なっているから、別の力を
 加えると却ってあぶないワケ』
という、いかにもいい加減なエミの説明だったが先生はなんとか納得してくれたのだ。

 魔方陣はなんとかして助けようと様々な手を試みる先生の目を誤魔化すため。
 わずかでも力になれば、とはじめてしまった先生の純粋な……本当に純粋な祈りは、
霊力などこめていなくても、呪いを解いてしまいそうだった。

 数時間の間、先生は祈り続け。
 あたしたちは神妙な顔をし続ける。

「エミ君……すまない。私達は純粋な君の心を誤魔化すことで踏み躙りこんなにも追い
 詰めてしまった。無上たる愛をもって接していた君に私達は何と言うことを!」

「べ、べつにかまわないワケ」

 無限とも思えた祈りの言葉の後、エミが苦しそうに先生の言葉に応える。
 ……あたしと同じでむず痒くなっているのかと思ったけれど、少し違うようだった。

「大丈夫か?エミ君?まさか呪いの進行が!」

「だ、大丈夫、まだ……もうちょっと」

 そう告げるエミだったが、言葉は少しも大丈夫とは思えなかった。
 ……あのバカ、なにか隠してる?

 熱があるように紅潮をみせている表情。
 不自然に流れている汗。
 堪えるように強く歯噛みする。

 エミの全身は苦痛に震えていた。

 異常な事態に思考を巡らせる。……まさか、解呪していなかった?
 あの場であたしを誤魔化して、本当は……まだ呪いの力を?

 そんなのどこか不自然な話だった。
 だが、エミは本当に苦しそうで……

「エミ君!!くっ最後の手段だ!!令子君、精霊石を!!」

「やめてっ、ちがうっ!」

 立ち上がって、エミが叫ぶ。
 なにが違う?
 あたしは先生に請われるままに精霊石を投げ渡す。

「エミ君……君の望みと違うことは判っている。だが、苦しみの果て自らを捨て去ろうと
 する君を僕は見捨てる事は出来ない。身勝手と感じるかも知れない。だが、これもまた
 真実の愛なんだ……」

 先生は結界と化している魔方陣を破り、エミを抱き締めた。
 神の愛を具現化したような優しい包容。
 ……決意が伝わる。

 先生は呪いをその身に受けるつもりなのだ。
 かつて、勘九郎の土角結界をその身に受けたように。

「先生!!」

「や、めっ!!」
 お腹を押さえ声を荒らげるエミ。

 ……ああっ!
 その動作に、あたしは思い当たってしまった。エミの謎の苦しみの原因に。

「先生っ!!違う、エミはっ!!」
「エミ君。幸せになるんだ」

 あたしの叫びもむなしく、先生はその手に精霊石の力を解放しながら、エミの首から
ペンダントを外していく。

 ええ。
 見えましたとも。その瞬間、天使がね。ラッパ吹いてるのが。二人を包んだのを。

 ……光の奔流、
 泡となる呪いを受ける覚悟でエミからペンダントを外した先生は、本当に優しく微笑み、
呆然とするエミに頷いて見せた。

 エミはその微笑みに心を奪われ、一瞬だけ動きを止める。
 それはまさに真実の愛が呪いを解いた瞬間にも見えた。


 ……が、エミは直後、叫び声と共に先生の顔面にストレートを叩き込み、さっきまでの
苦痛を解放すべくトイレに駆け込んで……


 ……残されたのは呪いを受けたつもりで前後不覚になっている先生と2億の精霊石を
『もう解かれてる呪い』の為に消耗されてしまい、愕然としてるあたし。

 ジャーと水が流れる音と共に込み上げた怒りは、とりあえず、すっきりした顔で出てきた
バカ女で半殺しにする事で晴すことにする。


「あんなに真剣にワタシを助けようとして……あんなに優しく抱きしめられたのは初めて
 だったワケ……」

 あたしの鉄拳制裁を甘んじて受けた後、そんな事ぬかして、エミは先生を膝枕してた。

「自分で気絶させたくせに」

「あっあれは緊急回避なワケ!!ト、トイレなんていえなかったし……」

 トイレと言い出せない恋する乙女が相手を殴って気絶させるのはアリか。

「ピートこっちに必死で向かってるわよ」

 嵐がどーこーとか言ってた筈。 
 来てみてこの状態じゃいくらなんでもいい面の皮だ。

「しっ仕方ないワケ、恋は突然なんだからっ!!」

 ピートを追い掛けて、必然的にエミは何度も先生の教会を訪ねてた。
 ……もしかしたら、前から多少は先生に惹かれていたのかもしれない。

 愛おしそうに先生の髪に手を当てるエミを見てるとそんな風にも思えてくる。
 まあ神父と呼ばれててもとっくに破門の身。
 いい年とはいえ、長寿の日本じゃ男盛りなのだし。

「令子ぉ〜神父って和宏さんだっけ?」

 真っ赤に頬を染めて、不安そうな瞳でこっちを見る。
 あたしは、そういうエミを少し可愛いと思う。

 先生にもそう思ってもらえるといいわね。









***************************************
第4話
 ピートぉ〜!!(出そうと思ってたのに出なくてなんか悔しい)
 まあ何と言うか、……唐巣神父って格好いいよね?というそんなお話。
 書き上げた後、神父の年齢考えてこれありかなーと
 50代の俳優さん達を調べてみて……
 結論・いけますねっ!(つーか男性は得だっと思いました)
 一話で唐巣神父の髪をハラハラと落下させた業の深き女が幸せに
 なれるのか……

 まったく予想がつきません。
***************************************

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa