ザ・グレート・展開予測ショー

九尾物語 <5ページ目>


投稿者名:まぐまっぐ
投稿日時:(05/ 6/17)


日が傾き影法師が長く伸びている中、私達はヨコシマの家に向かって歩いていた。

「まったく・・・今回はひどい目にあったでござる」

文珠のおかげで怪我の影響はすっかりなく、いつもどおりの元気にもどったハクは私達の先頭を歩きながらもぼやく。

あの後、すぐに駆けつけた派遣会社に所属しているプロのGS達によって現場検証が行われ、私達に謝罪をしてきた。

会社自身も地縛霊の成長については把握していなかったらしくしきりに謝った後、ある程度手当をしてから後日にお詫びをするということを言い残して、もともと洋館は少し人気の少ない山のふもとにあったために私達を途中まで送ってくれたのだった。

これは後で知ったことなのだが、今回みたいになんらかのトラブルがあるときに備えて所属するGSによる霊視により仕事をこなす様子を監視しているらしい。

正直プライバシーの問題があると思うのだが、この時代の法律はかなり厳しいらしくそこは安心できるらしい。

「まったくね。社会の管理体制が甘いのはどこの時代でも同じなのね。ねえ、ヨコシマ・・・ヨコシマ?」

「・・・・・・」

ため息をつきつつも横を歩いているヨコシマに話しかけたがなにやら物思いに耽っているのか返事はない。

「先生?どうしたでござるか?」

ハクもさすがに気づいたらしく、私達のほうを向いて心配そうにしている。

それでもヨコシマは気づいていないらしく私達の歩調に合わせて歩いているだけだ。

ちらりとハクのほうを見やるとちょうどハクも私のほうを見ていた。

どうやら同じことを考えていたらしい。

アイコンタクトによってタイミングを見計らい私達は同時にその場に立ち止まる。

すると・・・

「うわっ!い、いきなり止まるなよな。危ないじゃないか!」

案の定、ヨコシマは私達が止まったのにも気づかないでハクのたくましい胸元に顔をうずめた。

ヨコシマのほうがハクよりも少し背が低いのにくわえて少しうつむき加減だったためにちょうどいい位置に当たったらしい。

「いきなりでないでござるよ。先生がぼーっとしているからいけないでござるよ」

「そうよ。さっきから話しかけても何も答えなかったじゃない。何を考えていたのよ?」

じ〜っとハクと私はヨコシマを見る。

「別に何も考えてないぞ。強いて言えばさっきすれ違った仕事服の女性に電話番号聞いておけばよかったと悔やんでいただけだぞ?」

「本当に?」

「本当だぞ。それ以外に何を考えているって言うんだ?」

さらに疑うように見ていく私とハクだったが、先ほどのこともありこれ以上詮索しても無駄だと思ったために同時にため息をついてから再び歩き出した。

「まったく・・・それだったらちゃんと前をみなさいよ?車でもきたらどうするのよ?」

「車くらいなら拙者が何とかするでござるよ」

少し自身気にハクは胸を張りぽんとたたいてみせる。

「そうそう。ハクがなんとかしてくれるからオレは怪我をしないから安心しろ」

「ふ〜ん・・・だったらハクも処理しきれないくらいの大量の闘牛が突然突進してきたら?」

「その場合はハクを見捨てて俺は逃げる」

「そんな〜先生、ひどいでござるよぉ〜」

私の冗談にヨコシマが冗談で答え、それを聞き涙を浮かべながらもヨコシマに寄りすがるハク。

いつもなら和やかな雰囲気で笑みも自然にこぼれただろう。

しかし、今は違った。

何かが私の心にひっかかった。

魚の骨がのどに引っかかったようなじれったい不自然さ。

それがどうしてもぬぐいきれなかった。

私はこの不自然さを知っているような気がする。

前にどこかで感じたことがあるようなそんな気がする。

でも、私はそれを思い出すことはできなかった。

私にとって忘れてはいけないことのような気がするのにまったく思い出せない。

焦燥感が私の中につのっていく。

思い出さないといけないと私の中の第六感が警告を発する。

思いださないと・・・思い出さないと・・・思い・・・

とすん

「きゃっ!」

突然の衝撃に私は驚き正気にもどった。

気づけば顔に柔らかい感触を感じる。

驚いて顔を見上げるとそこにはヨコシマのあきれた顔があった。

「まったく・・・さっきはオレに注意していたのに今度は自分が注意されてどうするんだ」

こんと私の額を小突きながらもヨコシマは私に言ってくる。

どうやら先ほどのヨコシマと同じくいつのまにか物思いに耽っていたらしい。

「まったくでござるよ。さっきの先生と同じではないでござるか」

ハクもさきほどと同じくあきれた様子で私を見ている。

「ごめん。ちょっとなんでもない考え事をしていた」

私はあわてて思わずそういってしまった。

どうしてもこのことを二人に知られてはいけないような気がしたからだ。

どうやら私の考えていたことは二人には伝わっていないみたいだ。

「そんなことだと車や大量の闘牛が来てもしらないでござるよ?」

子供が悪戯を思いついたような笑みを浮かべながらもハクが言う。

さしづめ、先ほどの仕返しというよりもちょっとした悪戯心で言ったのであろう。

「ふむ。それだったら今度はオレがタマモを守ってやるかな。なんたって、タマモとは同じ布団の中で寝た仲だからな」

「ええ!?先生はタマモに撃退されたんじゃなかったでござるか!?」

「それはタマモの照れ隠しだ。実はあの後少年誌では表現することができないようなあ〜んなことよこ〜んなことが・・・」

しかし、ヨコシマはさきほどのお返しといわんばかりハクをさらにからかっていく。

もちろんからかわられているということに気づいていないハクは本気になり怒りを私のほうに向けてくる。

「こんの女狐が!!さっきはうそをついていたということでござるか!?」

きっと私をにらみながらも息を粗くしながらも私のほうを見てくる。

さすがにこれ以上になると厄介なことになるからすかさずフォローをする。

「頭ひさしなさいよね、馬鹿犬。よ〜く考えなさいよ。女同士でそんなことができるはずないでしょ?」

毎度おなじみどこからともなく出してきたハリセンで思いっきりハクの頭をはたく。

「いたっ!何をするでござるか!!確かにそうでござるけど・・・」

ハリセンで頭をはたかれたハクははじめは私につっかかろうとするがすぐに考え出す。

「ハク、イイコトを教えてやろう。この世には女性同士がからみあう・・・へぶしっ!」

「女性同士がからみあう・・・?」

「ハク、そんなことは知らなくてもいいから忘れなさい・・・」

ヨコシマがまたいらないことをハクに吹き込もうとしていたためにとりあえずハリセンではたいておき、不思議がっているハクをとりあえず紛らわす。

ため息をつきながらもハリセンをしまうが、そのころには先ほど感じていた不自然さはなくなっていた。

どうやら私の思いすごしだったらしい。

心の中でほっと胸をなでおろす。

杞憂で終わることが何事も一番いいのだ。

「うわ〜・・・すごいでござる。夕日がきれいでござるよ!」

私の言葉で深くは考えなくなったハクが大声を上げて尻尾を振りながらも目の前にある沈みかけのきれいな夕日を指差す。

歩いているうちにいつのまにか盆納高校の前まで来ていたらしい。

そこは小高い丘の上に立っており、周りに邪魔するものは何もないので沈みかかっている綺麗な夕日を見ることができるのだ。

おまけに祝日であるために周りには人影もなく私たち三人だけしかいない。

「うわぁ・・・綺麗・・・」

私達三人は思わずその夕日に見入ってしまった。

綺麗でありながらもどこか哀愁を漂わせる風景に私たち三人は酔いしれた。

「オレは・・・夕日は悲しいけど好きだな」

夕日に見とれている私の横で同じく夕日を見ながらもヨコシマがつぶやく。

「夕日は昼と夜との一瞬のすきま・・・短い間にしか見れないから・・・綺麗・・・だよな・・・」

つづけてヨコシマがつぶやく。

そのつぶやきは普段のヨコシマとは違う響きを秘めていた。

その違和感が私の心に再びひっかかる。

再びあの不自然さが私の心に黄泉返(よみがえ)る。

しかし、今度はあまりに綺麗すぎる夕日の魔力のせいでそのことを考えることができなかった。

それ以降三人とも何もしゃべることがなく、ただその夕日が沈んでいくのを見守っていた。

まるで、わずかな命が消え去るのを静かに見守るかのように・・・

「・・・帰るか・・・」

夕日が完全に沈み、闇があたりを支配し始めたころにヨコシマがようやく口を開いた。

その言葉で私達は我に帰り再びヨコシマの部屋へと向かって歩き出した。


狐は単独で生活をするためにその第六感は非常に優れている。

どこかでそんなことを聞いたことがあるような気がする。

むしろ過去に私自身が体験し、よく知っていることのような気がする。

でも、そのときはそのことをまったく思い出せなかった。

それは神の悪戯か、夕日の魔力によるものか、それともそのほかのものによるものか・・・

いずれにせよ、この不思議な現象がこれから起こる出来事の前兆でしかなかったのであった。





あとがき

次々回くらいにようやく物語の本題に入っていけると思いますが、この流れだと少し展開が見えちゃっていますね(苦笑)
できれば期待を裏切らずにいきつつもちょこちょこっと予想とは違う物語を書けるようにがんばっていきたいと思います。

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