ザ・グレート・展開予測ショー

「呪いと恋のペンダント!!」(1)&(2)


投稿者名:ししぃ
投稿日時:(05/ 6/14)

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「呪いと恋のペンダント!!」(1)
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「令子くん!助けてくれ!」

 晴れた午後。

 真っ青な顔で事務所を訪れた唐巣先生は、何かに脅えながら辺りを見回してそう言った。

「イヤです!!」

 取敢えず断る。
 どうせ先生の仕事はお金にならない。

 ズベ、とコケているのは神通棍とお札の整理をしていた魔理ちゃん。

「美神さんっ仮にもGS協会の会長に何て態度ですかっ!!」

 横島クンと入れ替わりに事務所に来ることになったこのヤンキー娘は、なんか時々権威主義で困る。

 会長になっても先生は先生なのにね。

「いや、今回は個人的な依頼だから協会は関係ないのだが……」

「ほら、だからいーのよ。……あと先生個人の依頼なんて絶対!!お金にならないから、
 イヤです!!」

「おおっ神よ。この強欲なる無慈悲な子羊にも等しく幸いのあらん事を!」

 全力で涙を流して十字を切る姿はちょっと面白かったので、話ぐらい聞いて上げよう。
 そう思った瞬間だった。
『ほーほっほっ、そんな女に頼っても無駄なワケ!』
と、地獄の底から響くようなムカつく女の高笑いが聞こえてきたのは。

「この声は!!エミ!!」
「エミさん?」

 あたしと魔理ちゃんの言葉が重なる。……ちょっとタイム。

「こら、魔理ちゃん?なんであの馬鹿女にさん付けなのよ!!」

「いや、うちの寅が世話になってますし……」

「例え先祖代々の忠誠を誓った相手でもあの馬鹿女に敬称なんか要らないのよっ!」

「えー、あー、わかり、ました(ごめんなさい、エミさんあたしも立場が……)」

『(アンタも大変ねー判ってるワケ、そんなのでタイガーいじめたりはしないから)』

 はい、ok。

「どうしたの?エミ、男に振られ過ぎて怨念にでもなった?」

 軽口を叩きながら、突破点となった結界の綻びを探したけれど、侵入後のカモフラージュも
鮮やかで尻尾は簡単に掴めなかった。
 呪術に対する結界を多重に張ったこの家にこうも簡単に悪意ある思念を飛ばすとは、さすが
エミとしか言いようもない。

『じゃかしーわっ!!男日照りで人の物にまで手を出してる不倫女のアンタに言われる
 筋合いはないワケ!!』

 軽口の方は図星っポイ。
 エミの台詞を受けて、魔理ちゃんがわたしが言ったんじゃないっとばかりに首を振る。
 横島クンとの件は、別に隠してるワケじゃないから気にしないでいいのに。
 おキヌちゃんも半公認だし。
 ヤンキー娘は意外とモラリストだったりもするのだ。

「あら、わたしは合意だからいいのよ。どっかの怨念ストーカーババアと違って会う度に
 震えさせたりしてないもの」

「そーですかねー」「まあ、幸せそうではあるね」と外野がうるさいのは無視する。

「大体、脈がないのぐらい理解しなさいよね。今時ガングロなんて流行らないのに、
 個性がないから可愛そうヨネ、ピートもそんな時代遅れに迫られたって嬉しいわけ
 ないじゃない」

「美神さんのボディコンも……」「君も人のことを言えないと思うが……」
うっさい外野は取敢えず一瞥で沈黙させた。

『ふん、嫁き遅れ確定の先がない恋愛を誇られても意味無いワケ!あたしとピートの
 幸せのために!神父!!』

「はひっ」

『輝かしいオデコをこれ以上強調したくなかったら、さっさとピートの居場所を教えるワケ!』

「やめろー、最近管理職になってただでさえ進んできたんだっこれ以上はっ!!」

 叫ぶ神父の頭髪がハラハラと落ちるのはエミの呪いか心労か……
 ……本当に可愛そうになってきた。

「魔理ちゃん、ちょっとそれとって、そそ。前にタマモに作らせた守護石」

「これですか。……いいんですか?」

 アレ・コレ・ソレで通じる助手、本当にいい子雇ったわ。

「仕方ないわよ、あれでもあたしの先生だし」

 エミがかけている呪いは、先生が破っていない事から考えればキリスト圏外の力。
 アフリカ圏独特の打楽器の音が伴ってないから、恐らくはアジア系。

「金毛白面九尾の名において!縛たる力を封じ因果なる連鎖より彼の者の毛根を守する」

 全アジア圏にその名を響かせた九尾の妖力の結晶体なら、九分方防ぐ事ができる。
まあ、呪い返しとまではいかないけれど。

『くっさすが令子ね、これで終わると思わないで欲しいワ(プチッ”)』

 お揚げ17枚分の妖力は正しくその力を発揮して、電源の切れたラジオのようにエミ
の声が途切れていった。

「ふう、助かったよ」

 ほっとした顔の神父。額は……遅かったかしら。

「3億円です」

 取敢えず伝えるべき事を伝えたら、再びハラハラと髪が舞った。
 もう……手遅れなのかもしれない。

「政府筋にバレルとヤバイから、ホイホイと作らせるワケにもいかない貴重なお守りなの。
 市場に載せたら5億は下らない代物だけど特別に先生だから3億でいいわ♪」

「えっと……令子君?」

「この美神令子にアポなしでご依頼なんですから、当然ですよね。あ、今回の破呪の分
 ですから、今後も何かあるなら追加料金いただきますよ?協会会長の先生が払えない、
 なんてありませんよね」

 先生は真っ白な灰になってプスプスと煙を立てていた。
 ちょっとだけ、いぢめすぎたみたい。








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というわけで、
その後のGS美神(不倫大作戦じゃないのよー)日常編です。

しかし、原作キャラってよく動きますね。
魔理ちゃん、美神と結構相性よさそうです。


投稿項目二つ取るのもなんなので、続けて2話です。
一休みしてからご覧になっていただけると幸い。
(単行本派なあなたは、続けてどうぞっ)

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「呪いと恋のペンダント!!」(2)
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 真っ白な灰から先生が復活するのにちょっと時間がかかった。
 いぢめすぎのお詫びに、と魔理ちゃん製の晩御飯を振る舞って、取敢えず話を聞いてみる。

「はいはいれーほふんは、はめふふりるんらっ」
「ほんはほほいって、ひーほのひはほふらいおひえれはひーはへひゃないふぇふかっ」

 魔理ちゃんのご飯は濃い目の味つけだけど、結構美味しい。
 なんでも中華風気味なのがちょっと問題だけど。

「あの?通じてるんですか?」

 エプロンをつけたままの魔理ちゃんからの疑問。
 もちろん、首は横にふる。
 横島君じゃあるまいに、今の言葉で通じるわけもない。

(ごっくん)
「先生ももう偉くなったんですからそんなにがっつかなくてもいいでしょ?」

(んぐんぐ)
「会長なんて名誉職みたいな物だから、報酬なんか微々たるものだよ」

 取れる時に必死でカロリーを取るその姿は情けないほど、言葉を裏付けている。

「で、一体どうしたんですか?ピートの居場所ぐらい教えてあげればいいのに」

 昔、教会でピートが先生の住み込み弟子をしていた頃から、エミが迫ってくるなんて、
彼らにとっては日常だったはずだ。

「いや、今回はそうもいかないんだ。数日前エミ君が人魚の首飾りを入手していたんだ」
 真剣な顔の先生。
 ほっぺにご飯粒ついてるけどさ。

「なんですって?!」

 あたしと魔理ちゃんが同時に叫び、

「……で、人魚の首飾りってなんですか?」
と、魔理ちゃんが言葉を続けた。

 ズベ、とこけるのはあたしと先生。

「知らないのに、驚かないの!!」

「いや、まあほら、カラーページだったから……」

 文章でカラーぺージもなにもないと思うけど。

「魔理君は人魚姫の物語を知っているかな?」

 ずりおちたメガネを押し上げて、シリアスな表情を返す神父。
 メガネのキャラは、話題転換が上手いのがいいわよね。

「はあ、まあ。あんまり好きじゃないですけどね、あの人魚は気合いが足りないんすよ、
 何の行動にも出ないで海の泡になるなんて、女なら体当たり!!これあるのみっす。
 ね、美神さん」

 腕に力を込めて彼女は主張する。
 まあ、魔理ちゃんはそれを実践して、短大時代にタイガーと結ばれた強者だから、
言葉に妙な説得力があった。

 えー、わたしもなんか最近人のことは言えない事態になってるし。
 直接のコメントは置いといて、ちょっと待ってたら先生が話を続けてくれた。

「泡になった後の話は知ってるかい?」

「そんなのあるんですか?」

「ああ、人魚はね泡になった後、天に昇り魂を導く天使になったんだ」

「へぇ〜」

「と、言うのがキリスト教世界観から作られた人魚姫のエピローグだった」

「さらに違う話なんてあるんですか?」

「ああ、泡になった人魚姫はそれでも……王子の側にいたいと望んだ。その想いを知る
 とある錬金術師が空に散った想いを集めて宝石に固めペンダントにしたんだ」

「……すごい人がいるんですねー、人工の精霊石みたいな物ですよね?」

「魔理ちゃんも会ったことあるわよ、その錬金術師」

 想像の中でもトイレから出てベルトを締め直してるのはどうかと思う。

「えぇええー!!」

 魔理ちゃんも思い当たったようだった。

「そそ、アレアレ。今でこそボケてるけどカオスがオカルトのジャンルに与えた功績は
 限りないわ、エーテルと霊の調和によって、魔物の魂を打ち据える実体弾の基礎を作った
 のもあの男だし、西洋式の召喚・使役の現代に通じる基礎理論はカオスが体系化した物ね」

「学校でやりましたよ、それ。なんでそんな凄い人があんなにみずぼらしい姿なんですか」

「発明・発見したって特許とってパテント化しなくちゃお金にならないのよ。作って放置
したままなんだから儲るわけないわ、ま、お金にする才能がなかったって事よねー」

 技術畑の人間にありがちな話だった。
 あれでその方面の才能を少しでも有していたら、世界の支配者となり得る狂気の天才。
 ……話が些か筋道をそれてしまったため、唐巣先生が咳払いをする。

「続けていいかね?」

 はいはい。どぞどぞ。
 魔理ちゃんとあたしは揃って頷く。

「隣国の姫と結婚し幸せに暮している彼を見守り続けるつもりだった人魚姫だが、ある時、
 彼女は気が付いてしまったんだ。身を捨ててまで譲ったはずの隣国の姫が、王子を愛して
 なんかいない事に」

「まあ、政略結婚だものね。そういう事もあるわよね」

 人魚の首飾りの効果、出自は簡単にはわたしも知っていたけれど、細かいエピソードなんか
知らなかった。この辺の唐巣先生の知識は生半可ではない。

「彼女はかつて姉たちに唆されたように、王子に隣国の姫を殺すように告げ王子を本当に
 愛している自分が彼女の替りに妻となるように仕向けたんだ」

 げに恐ろしきは女の執念。
 ……一瞬、おキヌちゃんの笑顔が浮かび、心の底で土下座する。
 ゴメンネゴメンネ、でも……平気よね?わたしたち三人、社会モラルに反してるけど、
多分、きちんと王子(って柄の相手じゃないけど)に愛されてるし、愛してる。

「けれど、王子はそれに従わず……人魚姫と同じように自らの死を選んだんだ」

 童話の中では人魚姫を振って悲劇を産み出したバカ男。
 けれど、彼は彼なりに葛藤があったのだな、と納得する。

 あたしのバカ男も色々な傷を抱え込んでいるように。

「以来、そのペンダントは手にした者が『真実の愛』を手にいれるか『相手の殺害』を
 果たさなければ所持者を泡にしてしまう呪われたアイテムとなったんだ」

 ずずっと音を立てて食後のお茶を飲む先生。
 ずっと喋っていた筈なのにきちんと食事が無くなっているのは物凄い技術だった。

「ピート君は、呪いの力が及ばないように、とある場所に避難させた。あとはペンダントを
 何とかしなくちゃいけないんだが」

「健在な頃のカオスが作ったものだものね、早々簡単にはいかないわ。エミ自身の力も
 やっかいだし。……でも先生、それならカオスの所に直接行けばいいじゃない?」

 かつてマリアの設計図が残されていたかのごとく、あの1DKの中には失われた魔法
技術の叡知が隠されている。……まあ、物理的に整理して探しだすなんて労力を考える
とまったくやる気が起きないけど、今回のような事態なら話は別の筈だ。

「それが……、暴力団からの借金のカタにマリアと一緒に何処かの工事現場に監禁されて
 いるらしく、不在なんだ」

「ああ、それで美神さんの所に来たんですね?」

 納得している魔理ちゃん、ちょっと待て。

「知り合いの中で暴力団関係者は君しかいなかったんだ。」

「誰が暴力団関係者よっ!!」

 何も言わずあたしを見つめる二対の瞳。
 沈黙が静かに流れる。

「自覚……ないみたいですね」「まさか、いくらなんでも」『オーナーの事ですから……』

 人工幽霊1号まで一緒になって、ボソボソと内緒話をはじめる。

「あーもう!!連絡するわよ、連絡すればいいんでしょ?えーと、カオスに貸したお金の
 取り立てを頼んだのは、極悪会の東郷だっけ?……魔理ちゃん後ろの棚の名簿とって」

 親切に心当たりに連絡してあげているというのに、先生はなんか諦めたような視線で
あたしを見ていた。
 失礼な話だ。








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第2話です。
 マンガだと二つ併せて1話分かなー、

 でも1話目の冒頭に簡単な除霊シーンと帰宅シーンがついて
 (展開の予想とは違うかな、と割愛しました)
 2話目の『人魚の首飾り』の解説が回想マンガ状態になれば
 各一話かなーと。
 話としては分割したままの投稿に致します。

 次回っ温泉増ページ!!とアオリを入れておこう。
 (ボリューム増えるかは実際は不明です)
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