ザ・グレート・展開予測ショー

わたしに足りない大切なもの


投稿者名:ししぃ
投稿日時:(05/ 6/11)

 んーと、努力はね、してますよ。
 お料理とか。
 服装とか。

 雑誌を買ってみたり。
 かおりさんからアドバイス受けてみたり。
 魔理ちゃんのアドバイスは過激すぎてちょっとアレですけど。

 なんでかなー。
 考えて。
 ……ちょっと怖い考えになって。
 落ち込みます。

「勇気かなー」

 彼の前で着てみようと思って買って、結局、流行遅れになったキャミタイプのワンピース。
 胸元が広めに開いてる薄紫のカットソー。
 美神さんのコンシャスな服装からするとおとなし過ぎる感じです。

 だからといって、真似できるものではないですし。
 一応、わたしもね、標準のスタイルだとは思います。
 かおりちゃんよりはウエスト細いし……(鍛えてるからよっ、と言ってましたけど)
 魔理ちゃんよりバストもあるんだけど(うっせ、ケツもだろ!!と怒られました)
 美神さんに比べると分が悪すぎる。
 あれほどの破壊力は……ありません。

 ……まず、足太いし。

 ふくらはぎのお肉を掴んで冷や汗。
 危険な手ごたえ。
 横島さんの独立に半ば無理やりくっついて来てから半月。
 事務仕事が増えていたこともあって、認めたくないけれど、体重計に掛かる負担は、
少しずつ、増えてたり……
 しかも増えて欲しいところじゃなくてこんなところに。
 短大時代にあった体育の時間もなくなったし、本格的に運動不足かもしれないです。
 シロちゃんのサンポ役を交代してもらおうかなー、でもあの子も横島さんがいいんだろうなー。

 最近急上昇中の恋敵を思い浮かべます。
 先月から高校に進んだシロちゃん。
 最近ずいぶん大人っぽく見える事があるのです。
 高校選びにしたって、エスカレーターで六女の高等部に進めば良かったのに、

「先生が通った学舎に行きたいのでござるっ!」
と、主張して美神さんの反対を押しきって受験して、決めてしまいました。

 ……セーラー服を着て見せてた時の横島さんの目付きはかなり危険でした。

「セーラー服かぁ」

 高校時代の制服は六女の物しか手元にありません。
 ちょっと胸がきついけどまだ入る筈。セーラー服ではないですが。
 合コンでは出身というだけで受けが良かった母校の魔力は、今も横島さんに通用する
かな。

 ……無理っぽいです。

 現役時代でさえ、あんまり見てくれなかったのを思い出して、少し落ち込む。
 たまに学校に来ても、他の女の子ばっかり追いかけてたのですから。

 ……ああ、つまり色気……
 さっき押し止めた結論に再び到達してしまう。

 美神さんのせくしーな谷間とか。
 シロちゃんの健康的ですらりとした足とか。
 小鳩さんの圧倒的な胸とか。
 魔鈴さんの色っぽい泣ぼくろとか。
 エミさんの妖艶な仕種とか。
 冥子さんの……あれ?


 冥子さんはすごく可愛い。
 でもでも、そんなに(失礼だけど)色気があるわけじゃない。
 なのに何で、わたしにはセクハラしてこない横島さんは冥子さんには飛びかかるのでしょう。

 ……負けてる?
 ううん、人間的魅力は勝ててないかもしれないけど、色気は……そんな事ないと思う。
 露出度だって同じぐらいだし。

 ああ、でもでも、そうなのかな。
 わたし横島さんの回りにいる女性の中で一番色気がないのかな。
 みんなスタイルいい人ばかりだし。

 ううん、でもでも、スタイルだけじゃないはず。
 あのルシオラさんも、けしてスタイルがいいわけじゃなかったし。
 あー、でも服装はすごくセクシーでした。

 私が勇気を出して水着になっても横島さん反応鈍いし。

 プシュー

「おキヌどのー、晩御飯の用意出来たでござるよー」

 堂々巡りで、怖い考えに行き着きそうになったとき、ノックの音がしてシロちゃんが
わたしを呼びに来てくれた。……感謝。

 わたしはちょっと勇気を出してハーフカップのブラで、胸元の開いてるカットソーに
着替えて食卓に行ったけれど、やっぱりそれでも横島さんは微妙に目をそらすだけでした。



「キヌお姉さま、どうなさったんですか?」
 翌日、悩みを相談すべく訪れた母校。
 ある意味全然変わってなくて、少し笑ってしまいます。

「鬼道先生にちょっと相談で。……って、薫ちゃんやめてー」

 わたしが在学時代に中等部にいたこの後輩は、わたしとかおりちゃんと魔理ちゃんとに
とても懐いていて、過剰なスキンシップを求めてくるのです。

 女ヨコシマだよ、あいつ。とは、魔理ちゃんの弁。

「先輩はあたしより、マーくんの方が大切なのねっ」

 言い得て妙だと思う。
 いつのまにか鬼道先生をマーくん呼ばわりしてますし。
 ……まあ、本物の横島さんはこんな風にわたしに飛びかかってくれないんですけど。

「うふふ、いいのよ先輩。あたし……忘れさせてあげるから」

 前言撤回。ある意味横島さんよりたちが悪いです。

「やーめーれっ!薫っ!!」

 後ろから薫ちゃんに激しい突っ込みを入れる女の子。
 知らない子だったけど、逃げて、と目で合図する彼女の好意に甘えて職員室に向かいました。



「おう、氷室やないか、どないしたんか?」
 書類の整理をしていた鬼道先生は、入り口でわたしに気付いてくれた。

「あ、ちょっとご相談したいことがあるんですが、よろしいでしょうか」

 いつものジャージ。
 男前な先生は生徒に人気があるのだけれど、学校ではいつもジャージ。
 別の服装とかもなさればいいのに、とかおりちゃんが言った時、

「なんで生徒の前なんぞで、洒落た格好する必要があんねん、あほらしわ」
と、仰っていたけれど、冥子さんとの共同徐霊作業の時にはきっちりと3ピースで来ていました。

 ご結婚も近い、という噂も聞こえたし。

「先生っ、わたしって冥子さんより色気ないですかっ!!」

 昨日から頭をついて離れない悩みを相談する相手はやっぱり先生しか考えられませんでした。

「先生っ!先生しかいないんですっ!教えてください!!」

 何故か逃げ腰の先生。……逃げられたら、困る。

「まてっ氷室っ話せば判るっなんや、よせー!!」

「はい。お話をしたいんですっ!!逃げないで下さいっ!」

 先生の肩を捕まえて、見つめる。
 人と話すとき目を反らすのは良くないと思います。

 わたしと冥子さんの違いって何でしょうか。と、口にしようとした瞬間。

 ドドドッっと人の気配が回りを取り囲んでました。

「おどれは元生徒に手をだしとったんかっ!!」
「よりによって、氷室かっ!!ゆるさんっ!!」
「理事長の娘だけじゃあきたらずっ!!」

 ドスドスドス、と机とかカバンとかが鬼道先生の上に降り掛かって。
 職員室の他の先生がわたしの肩を押さえます。

 あれ?えっと。

「ボ、ボクはなんも、しとらへんで……」
と、呻いて、机の下の鬼道先生の意識は失われてしまいました。



「あんな、お前、色んなせんせのお気に入りやってんから、迂濶なこと言わんといてや」
 保健室で鬼道先生が意識を吹き返したのは日が傾きだした頃でした。

「ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったんですけど」

 さっきの言動は思い返すとちょっと。……恥ずかしい。

「で、なんやんな、相談って。きいつけて言ってんか」

 微笑みは優しく。
 二年間指導してくださった先生の変わらない優しさにほっとします。

「えと、実は」

 少し時間が掛かったけれど、ちゃんと相談出来たと思います。
 恋の悩み。成人式を過ぎて高校の恩師を頼るのも気恥かしかったけれど、先生は独特の
イントネーションで相づちをうちながら優しく聞いてくれました。

「まー、なんや。冥子はんと氷室とどっちが色気あるかゆうたら、まあ、ここだけの話やけど、
 氷室やと思うで。卒業して大人っぽくなっとるし。気にすることないんやないか?」

 言いながら、びくつくように辺りを見回す。
 監視カメラも盗聴器もたぶん、ないと思いますよ。

「でも、横島さんは全然行動してくれないんですよね」

「あんなぁ。男の子はそう単純でもないで?学生やったらまだしも大人は、本気やから
 手を出せへんちゅうこともあるんや」

「そうでしょうか」

「せやせや、氷室は冥子はんよりスタイルもええし家事全般も得意やろ、あんま大声では
 言えへんけど、普通やったら冥子はんより氷室を選ぶで。冥子はんが氷室に勝っとる
 ところゆうたら、あのプッツンぐらいやないかな?」

 普通でなく冥子さんを選んでいる先生は、幸せそうに笑いながらそう言ってくれた。
 ……のですけれど。
 ちょっとタイミングが悪かったみたいです。

 見る見る蒼くなる先生の表情。
 私も恐る恐る振り向いてみたら。

 ……いつからだろう、話を聞いていた冥子さんがそこに、いました。

「まーくん、まーくん、めーこをそんなふうにおもってたの?」
 涙目。
 危険です。

「ちがうんや、冥子はんこれは氷室を励ますためであって……あー、まて、泣くなやっ」
「冥子さんっ違いますっ誤解っ」

 声を揃えてしまったのも逆効果だったのかもしれません。

「うわぁぁああああぁん!!」

 ……力の奔流に巻き込まれながら。

 わたしは、冥子さんにあってわたしに無いものを思い知ったのです。

















「修行は厳しいぞ?小竜姫の見極めも受けずワシと修行したものは、今までいない。
 命を落すかもしれんのだぞ?」

「はい。覚悟は出来ています。……ライバルかもしれない小竜姫さまに知られるわけには
 いかないんです」

「よかろう。お前の事はヒャクメから聞いたこともある。お前の覚悟を試そう」

 猿神の元で修行した女性は、失われて久しい拳法の使い手としてその能力を覚醒させたとか。



 ……どっとはらい。





















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なにを間違えたのかな。わたし。
おキヌちゃんが勇気を出して横島君にアタックする予定でした。
こうさ。
「……横島さん、わたし、わたし本気なんですよっ!!」
とか。

「愛してます。愛して欲しいなんて……言えないけど、ちゃかさないでわたしの本気を
 知ってください!!」
とか。

 耳からチョコレート状の何かを流しながら書くつもりが。

 ……こんな展開になりました。

 頑張れ……おキヌちゃん。
 思い入れ強すぎて、わたしあなたをまっとうに書けないのかも………
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