ザ・グレート・展開予測ショー

猫の遊び方


投稿者名:犬雀
投稿日時:(05/ 6/ 7)

『猫の遊び方』



とある土曜日、学校も無くかといって行く当てもなく、とりあえずバイトは無いが昼飯でもたかろうと事務所に向かう横島。
財布は軽いが天気も良いせいか心も軽く、下手な口笛なんぞを吹きながらふと見れば、懐かしい顔が事務所の玄関前に立っていた。

「あ、兄ちゃんだ〜!」

横島に気がついたか野球帽の少年がこちらに駆け出してくる。
その後ろで笑うのは大人の落ち着きと色気、それに母の優しさが絶妙にブレンドされた美女。

「あれ?美衣さんとケイじゃないっすか?こんなところでどうしたの。何か用?」

縋りつくケイの頭を撫でながら意外な訪問者に首を傾げる横島に美衣は笑顔で近寄ってくるとペコリと頭を下げた。

「お久しぶりです横島さん。実はケイのことなんですが…。」

一通り美衣の話を聞いた横島もしばし考え込む。
その顔色をどことなく不安げに見守る猫の親子だったが、すぐに横島はニッコリと二人に笑って見せた。

「なるほど。話はわかりましたけど一応美神さんにも相談した方がいいっすね。まあ悪いようにはならないと思いますよ。」

その笑顔には妖怪に対する恐怖も嫌悪も無く、それどころか温もりさえ感じられ、猫の親子は彼を訪ねたのが間違いでなかったことに安堵の息を漏らした。




「はあ?…つまりその化け猫の子供が将来人里に出ても困らないように人間に慣らしておきたいってこと?」

「そうっす。まあいきなりは無理っすからとりあえず人間の子供と遊べるように人間の子供の遊び方を知りたいと。」

「んで遊びの達人のあんたを訪ねてきた……まあ、話はわかったけど無理じゃない?」

「なんでですか?」

「だって…」と美神が視線だけで指したのは事務室のドア。
そこから顔半分だけ出して中を覗き込む猫の親子だったが、美神の視線がこちらに向いたと知るとピャッ!と頭を引っ込める。
その様子はどうみても親子ともども相当に怯えているようにしか見えない。

怪訝に思って横島がドアに近づくとケイがその胸に飛び込んでくる。
かすかに逆立った毛並みといいやはり怯えている。
見れば美衣の毛もやはり逆立っており、横島に抱きつきたいのを必死でこらえているといった風情だ。
何が親子をここまで怯えさせるのか?と考えて横島ははたと気がついた。

「あ、美神さんは敵じゃないから安心していいよ。」

「でも…」とまだ怯えている美衣。そりゃあ昔、命を狙われた相手を信用しろと言われても困るだろう。
苦笑を浮かべて横島は美衣の肩に手を乗せ落ち着かせるようにそっと抱き寄せた。

「大丈夫だって。美神さんは何だかんだ言っても優しい人なんだから…ただちょっと目先の現金に弱くて暴走するけど、お金さえ絡まなきゃいい人なんだから。」

「は、はい…」

ケイごと抱き寄せられて頬を染め横島の胸に顔を埋める美衣。
今にもゴロニャンと喉を鳴らしそうだったが、横島は「昔飼っていた猫も怖がったときは抱っこすれば落ち着いたよなぁ…」なんて考えている。
同時に胸にあたる豊な膨らみの感触に煩悩がワキャワキャと騒ぎ出そうとするのを、腰のところに抱きついているケイの手前、大っぴらに開放するわけにもいかず密かに煩悶していたりするのだから器用なものである。
きっと上半身と下半身では制御機構が違うのだろう。

「あの…兄ちゃん…」

「ん?どうした?」

恐る恐るといったケイの声にしたがって後ろを見れば、床にしゃがみこんでカーペットに「の」の字を書いている美神の姿。

「なんかあの女の人…喜んだり落ち込んだり怒ったりをしていてとうとう落ち込んだままになっちゃったんだけど…」

「なんでだ?」
さっぱりわからんと言った横島の様子に人口幽霊はただ溜め息をつくしかなかった。





その後、どういう訳かコメカミに井桁を浮かべつつも笑顔を向けて「軍資金よ」と一万円を手渡してきた美神に感謝して、首を捻りながらやってきたのは近くの公園。
幼稚園児やそのお母さんたちの社交場であるそこに途中の玩具店で買った一式を持った横島と小学生くらいの少年、そしてとてもそんな子供が居るように見えない美衣という取り合わせはかなり目立つものだった。

それでもとある親子のところに親戚のお兄ちゃんが遊びに来たのだろうと無理やり納得させたのか、公園内のお母さんたちの目は次第に我が子へと移る。
幼稚園児なんてものは一時でも目を離せないのだ。
ただ時折、美衣のプロポーションに対して羨望の視線がチラチラと飛ぶのは仕方ないだろう。

子持ちでもなくましてや女でもない横島にそんな若いお母さんたちの心の機微がわかるはずもなく、今は玩具店の包みの中をごそごそと漁っている。
そしてまず取り出したのは「サッカーボール」だった。

「俺らの時代はキャッチボールだったんだけどな。今の時代はサッカーだろ。ケイはサッカーって知っているか?」

「知らない…」

あっさり返されて驚くが、あの山の中の生活では仕方ないと思い直し横島は簡単にルールを教えてやった。

「んじゃ。軽く蹴り返してみろや。」

「わかったー!」

10メートルほど離れたところで元気に返事するケイ。
美衣もケイの横でその様子を笑顔で見守っている。
まずは軽くと横島がけり転がしたボールに素早く反応するケイ。
さすがに化け猫の反射速度は人間のそれをはるかに凌駕したものだった。

「うにゃっ!うにゃにゃうにゃにゃにゃ〜!」

「待て…ケイ」

どこか疲れたような横島の声に「うにゃ?」っと反応するケイ。

「サッカーってのは手を使っちゃいかんのだ…つーか…じゃれるな…」

四つんばいになってボールにじゃれ付きながら「えー。だって〜」と口を尖らせるケイに美衣が何となくウズウズした様子で話しかける。

「駄目よケイ…ちゃんと横島さんの言うことを聞きなさい。いかに丸いものにじゃれつくのが猫の習性とは言えここは我慢よ!」

優しくケイを諭し「ですよね!横島さん!!」と瞳を輝かせて振り向く美衣にどう答えたものか…と悩む横島だった。



とりあえずと何度か試してみてもケイはボールにじゃれつくのを止められない。
挙句に横で見ている美衣までがグッと自分の肩を抱きプルプルと何かを懸命に堪えている姿が何となく拷問に感じられてしまう。
やはり猫にサッカーは無理らしい。


次に横島が取り出したのは縄跳び。
女の子の遊びだがこれなら猫も大丈夫とまたまたルールを説明する。
とは言っても飛ぶだけなんだが…。

「んじゃ美衣さんがこっちの端っこ持ってください。んでケイ、俺が回すから紐にかからないように飛ぶんだぞ。」

「にゃ。わかった!」

んじゃ行きますと横島が紐を回した瞬間、今ひとつルールを理解してなかったのかちょっとボーッとしていた美衣の手から紐が離れ地面に落ちてノタノタと揺れる。

「「にゃっ!!」」

同時に紐の先っちょにじゃれつく母と子。
これも猫の習性らしい。どうやら美衣さんも不意打ちだったので反応しちゃったようである。

「美衣さん………」

乾きかけたカエルのように暗い横島の声に、地面の紐に「にゃっにゃっ♪」とじゃれていた美衣が我に返る。

「あ、あはは…」とごまかし笑いを浮かべながら美衣は盆踊りと日本舞踊が混じったような珍妙な動作で踊りながらさりげなく場を離れようとした。

「待って下さい!」

「は、はい!」

横島に呼び止められて踊りをやめる美衣。
その顔はすでに真っ赤。

「紐にじゃれ付くのも猫の習性っすか?」

「はい…」

モジモジと下を見ながら肯定する美衣の横ではケイもウンウンと頷いている。
だが問題はその後だ。

「踊りに何の意味が?」

「あ…えーと…猫は失敗したときに踊るという習性が…」

「どこの猫の話っすかぁぁぁぁ!!」

思わず絶叫気味に突っ込む横島に美衣はその豊かな胸の前で人差し指をツンツンしながらはにかんだ。

「あ、あの…めったに見れない習性ですので一般の人は知らないかも…」

「嘘だっ!ぜってー嘘だぁぁぁ!!」

「で、でもぉ…」

横島の絶叫に何となくしょんぼりした様子の美衣さん。
その横ではケイが再び紐とじゃれていた。
縄跳び作戦失敗である。

「んー。やっぱりその習性って奴を我慢しなきゃ駄目っすね〜。」

「でもぉどうすれば…」

「特訓です!」

そして横島はあたりを見回すと何かを発見したのかちょっした雑木林になっている場所に向かって歩き出し、そこから一本の草を採って戻ってきた。
彼の手にあるものを見た美衣とケイの目が驚愕に見開かれる。

「そ、それは…」

「そう…これこそがエノコログサ…またの名をネコジャラシ!!しかも…キンエノコロ!!」

「ああっ!そんなマニアックな!!」

ネコジャラシ…それは猫の至宝にして天敵。
しかも今目の前に突きつけられたそれは金色をした穂先ゆえにキンエノコロと言われる幻の品。でも分布は日本全土。
その先で揺れる金色のふわふわにどれほど多くの猫が理性を奪われ破滅して行ったか…。
美衣の背に戦慄が走る。
同時にそれは押さえきれない歓喜となって彼女の体を駆け巡り、その頭にネコミミとそのミニスカートの下からネコシッポを出現させた。

「あわわ!美衣さん隠して隠してっ!」

しかし美衣とケイの視線はネコジャラシに釘付けで、慌てて止める横島の言葉も耳に入らないようだ。

こんなところに化け猫が出たとなればパニックは必至とあたりを見回す横島の耳に聞こえてくるのは奥様達の囁き声。

(ネコミミ装備ですわよ…)
(しかもネコジャラシでマニアックにですって…)
(いいわねぇ〜若い人たちは…)
(あの男の子はあの若さで奥義に近づいているのね…)

とてつもない誤解をされている気がするが、本当のことを言うわけにもいかない横島はダラダラと嫌な汗を流すしかない。
彼の感が経験が告げるのだ…ここで反論することは火に油と。
悲しい経験もあったものだ…半分は自業自得だが。

「と、とにかく!これを使って耐える訓練です!!」

「そんなっ!それはあまりに酷な仕打ち…」
「兄ちゃ〜ん!無理だよ〜!!」

あたりから湧き上がる好奇の視線を無理矢理無視しつつ横島が突きつけた試練に慄く猫の親子。
その目は横島の手の先でプラプラと揺れる穂先に釘付けである。

「無理でも頑張るんです!」

「でも…でも…猫をじゃらすからネコジャラシなんですよ〜。猫がじゃれなかったらネコジャレズになっちゃいます。」

「それって変でしょ?ね?ね?」と訴えかけてくる美衣に多少心が揺らぐが、ここでこの試練を乗り越えねばケイの将来に暗雲が立ち込めるとあっては横島も引くわけには行かない。
そんな横島に懇願の目を向けていた美衣の顔がふと真顔になった。
なにやら思い巡らせていたようだが、突然その顔に驚きの色と理解の色が浮かぶ。

「よ、横島さん…まさかあなたが猫族伝説の英雄だったなんて…」

「は?」

「猫族の言い伝えにあるのです…。『そのもの青き衣を纏い金色のネコジャラシを振るう』…と…」

「いや…違いますから…」と否定してみても美衣さん感激のあまり身を震わせて聞いちゃいませんでした。

「わかりました!頑張ってみます!!さあ、ケイも一緒に!!」

「うん…オイラも頑張る!」

親子の決意を受けて周囲の観客たちから「おおーっ」と言う歓声が沸き起こる。
お母さんたちの無言の励ましを背に受けてスックと立つ美衣とケイ。
横島は親子を満足げに見た後で後ろに立つお母さんの一人に声をかけた。

「すみません。今から五分計ってください。美衣さんたちも五分だけ耐えてください。」

「はい!わかりました!」と目の前で魅惑的に揺れるイネ科植物に闘志を燃やす猫の親子の気迫が伝染したか、敬礼しつつ手元の時計を見ていたお母さんがその右手を差し上げ、秒針が0に来たと同時に振り下ろした。

「はじめ!!」

声と同時に美衣たちの前で金色のネコジャラシがパタパタと揺れる。

「か、母ちゃ〜ん…」
「た、耐えなさいケイ!母さんも頑張るわ!!」

震える体を押さえつつ必死に穂先を見つめる親子の様子を周囲の観客たちも息を飲んで見つめている。
その中の一人が素早く携帯でダウンロードしたのか着メロをBGMとして流し始めた。

〇ッキーのテーマを背に受けて戦う親子。
その額には玉の汗が滲み、見開いた目からはダクダクと涙を流し、瘧にかかったかのようにブルブルと震える体を必死に自分で抱きとめてネコジャラシを見つめる様はまさに死闘!

そしてついに時計係のお母さんの声が静かな、それでいて熱い空気に包まれた公園に響き渡った。

「五分です!」

途端に歓声に包まれる児童公園。
誰もが隣の人と抱き合い、肩を組み、この親子の成し遂げた偉業を称えている。
そして精根尽き果てて膝をつく美衣とケイが顔をゆっくりとあげたその視線の先には満面の笑みと熱い漢の涙を湛えた少年が居た。

「横島さ〜〜ん!」
「兄ちゃぁぁぁん!!」
「エイ〇リア〜〜ン!!」

沸き起こる歓声の中、走りよりがっしりと抱き合う親子と少年。
その姿に誰もが涙した。そう…通りすがりの犬までも。

やがて感動の時は終わりを告げ、人々はそれぞれの日常に戻っていった。
美衣たち親子も横島が買ってきた木陰のベンチに座ってスポーツドリンクを飲んでいる。
その瞳は困難な試練をやり遂げた満足感があった。もっとも美衣の目元はほんのりと別な色を浮かべている。
美神が居ればそれは憧憬や崇拝に近いものだと見破っただろう。

そんなのどかな公園に突然幼女の泣き声が響いた。
何かと思ってみれば公園内の一際大きな木の上を指差して泣く幼女と困った顔で上を見上げているお母さんがいた。
それが先ほどの時計係のお母さんと気がついて三人は近寄ってみる。

「どうしたんですか?」と美衣のかけた声にお母さんは困った顔で上を指差した。

「この子の風船が木に引っかかってしまって…」

見れば確かに木の天辺で赤い風船がユラユラと揺れている。
美衣は手から離れた赤い風船を見て泣きじゃくる子供の頭を優しく撫でた。

「横島さん。私ちょっと取って来ますね。」

「え?危ないっすよ。」

「うふふ…大丈夫です。」

自分が化け猫であると知った上で心配されたのが嬉しかったのか美衣は横島に華のような笑顔を向けるとシタタと軽快に木に登り始めた。

呆然と見守る親子。ケイは取り立てて心配してないのかただ微笑んでいる。
横島はといえば…ミニスカ美女がお尻を振り振り木に登って行くのを下から見上げるというある意味かなりディープな場面を目撃して霊圧をほとんど人間の限界まで高めている。

そしてついに美衣が木の天辺につき、得意げにしたを見下ろしてピタリと固まった。
そのまま動こうとしない美衣を横島たちが不審に感じ始めた時、木の上から情けない声が降ってくる。

「ひぇ〜ん。横島さん〜」

「どうしたんすかぁ?」

「登ったのはいいけど降りられなくなっちゃいました〜」

ズドドと豪快にひっくり返る一同。
なんとか起き上がった横島が喉も裂けよと大声で突っ込む。

「あんたは猫かぁぁぁぁぁぁ!!」

「猫です〜」

確かに…。

「そういえば猫ってよく登って降りられなくなったりするわね〜。」

「そうだね〜ママ。」

横の親子もなんだか納得した様子でのどかに会話している。
美衣が自分を猫だと言っていることにはさほど違和感が無いようだ。

「兄ちゃん!母ちゃんを助けて!!」

ケイの懇願に「ああ」と頷いたものの木の高さはかなりある。
正直言って彼女を助けて降りてくる自信は無いが、彼にはこういう時のための奥の手があった。

木の下まで行くと目を閉じ、煩悩を集中させる。
元ネタは勿論先ほど見た美衣のプリプリと質感のあるお尻とミニスカの影から覗いたベージュ色っぽい神秘の布切れの映像。
ネタが新鮮だけに瞬く間に高まる煩悩。
それを感じたか幼女が不思議そうな目で母を見た。

「ねえママ?」

「なあに?ゆかちゃん。」

「あのお兄ちゃんから凄く邪悪な気配を感じるんだけど…」

「うーん…でもゆかちゃんは大丈夫よ。どっちかって言うとママのほうが危ないかな?」

「黙っといてください!!」

集中失敗…。

「「しーん」」

口を押さえながら「しーん」と声出してなんか意味あるんかい?とは思いつつ横島は再度煩悩に集中する。

そして気がついた時にはいつの間に登ったのか木のてっぺんだった。
「俺って時々スゲーな…」と思ったのもつかの間、木のてっぺんで動けなかった美衣が感極まって抱きついてきた。

「横島さぁぁぁん、怖かったぁぁ」

「ぬほっ!」

抱きつかれて耳にかかる甘い息と、顔を塞ぐふくよかな双乳の感触に鼻の下を伸ばしたのが運のつき、集中とバランスを失って二人は抱き合ったまままっ逆さまに落下する。

「母ちゃん!!兄ちゃん!!」

ケイの悲鳴に我に返った横島が咄嗟に美衣を庇おうと体を捻るが、横島は忘れていた。
猫は高いところから落ちる時、本能的に体を捻るのだということを…。

お互いが捻りあった結果、かなり複雑な格好となった二人はまっ逆さまに地面に落ちドゴンと重い地響きと土煙を上げる。

「母ちゃん!兄ちゃん!」

土煙がはれた時、ケイの目の前に現れたのは背後から横島の腰に手を回し、綺麗なブリッジを描いている美衣と落下の衝撃を全て首で受け止めたか人としてあってはいけない方向に首を曲げている横島の姿。
さながら雪崩れ式ジャーマンと言ったところだろうか。
駆け寄ろうとしたケイの後ろからゆかちゃんママの驚愕の叫びがあがる。

「あ、あれは飯綱落とし!まさかこんなところまで追っ手が!!」

「ママっ!」

「逃げるわよ!ゆかちゃん!!」

そしてゆかちゃんママたちは「おーっほっほっほっ」と言う高笑いとともに舞い上がった木の葉に包まれて消えていった。

なんだか謎な展開に呆然としていたケイに美衣の声が聞こえる。
はっと振り向けば体を起こしプルプルと頭を振る美衣。
どうやら怪我は無いらしい。

「母ちゃん!良かった〜!!」

「ごめんね。心配かけて…それで横島さんは?」

「う…」

冷や汗ダラダラ流しながら後ろを指差すケイの様子に凄まじく嫌な予感を感じつつ後ろを振り向けば…。

「きゃぁぁぁぁ!横島さぁぁぁぁん!!」
「兄ちゃぁぁぁぁん!!」

まあ、横島だから死ななかったとだけは明記しておこう。




とりあえずケイの遊び修行も終わり、美神令子除霊事務所でのおキヌの心づくし食事もも振舞われ、いつの間にかケイはシロタマと仲良くなったりして楽しい時間が過ぎ、ついに化け猫親子が山に帰る時間が来た。

玄関で見送る一同の中には何事も無かったかのように笑顔の横島もいる。

「また来なさいよ」という令子に美衣たちは頭を下げ、そして一瞬だけ躊躇して美衣はかすかにはにかみながら横島に近寄ってきた。

「ん?どうしたんすか?」と聞く横島の耳に唇を寄せ、何事か?と見守る一同の一瞬の心の隙をつき美衣は横島の唇を奪うとにっこりと笑う。

「な、な、な…」と顔を真っ赤に染めてうろたえる少年に美衣は無邪気な子猫のような笑顔で言った。

「好きな人を舐めるのも猫の習性ですよ♪」

そして呆然としたままの事務所の女性陣が我に返る隙を与えず、親子はしなやかに身を翻して外へと消えていった。


それ以来、美神令子除霊事務所の周りに水の入ったペットボトルが所狭しと置かれることになり、非常に邪魔臭くて迷惑だと近所のボス猫に抗議された人口幽霊が平謝りに猫に謝っている声を通りすがりの雀が聞いたそうな。





                                 おしまい


後書き
ども。犬雀です。


皆様に感謝を込めて。

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