ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫奮闘記 78〜最終試練突入〜


投稿者名:ぽんた
投稿日時:(05/ 4/14)

神は自らの似姿として人間を創り出したと言われている。
人の子はその身の内に光と闇の双方を宿している。
言ってみれば神と魔の双方の属性を本来その身に宿している。
しかし、たった今飲んだ液体“神殺し”により体内の光の因子が殺し尽くされた。
無論ただちにその身を闇に堕とす訳ではない、元々の本質を喪ってはいないからだ。
言わば陰中の陽、氷獄の中の火剣、暗闇に灯る燐光。

「横島よ、汝が名において誓うが良い」

リリスが威風堂々と胸を張り、横島に弟子としての誓約を求めている。
横島も自然と威儀を正し、ベッドから降りてリリスの眼前にて片手片膝をつき頭を垂れている。

「我横島忠夫の名において、夜魔の女王リリス様を師と仰ぎ、全身全霊を以ってその教えを修めます」
「良かろう! 誓約は為されたぞ、夜魔の女王リリスの名において!」

人界と較べて、魔界においては言霊の持つ強制力は遥かに強い。加えて先程横島の中の
光の因子は滅している。これに拠り横島の存在は“闇”として世界に定義された。
魔界と敵対する事は出来ても神界に属する事は出来ない。当然横島にその自覚は無い。
尤も知っていた処で決意は揺ぎ無いものであったろうが。

リリスの魔王としての最低限の義務はこれで果たされた事になる。ある意味青田買いになるが、
転生後の来世におけるまで、横島という特異な存在を魔界寄りとして取り込む。
元が人間である為、人間への転生は有り得るが神族への転生だけは絶対に無くなった。
何があろうとも絶対に神界には渡さない。魔界を統治する魔王に課せられた義務だった。
だからといって別に詐術に掛けた訳ではない。魔族にとっても誓約は何より神聖なものなのだ。
誓約が為された以上は何があろうとも誓約者が望んだモノを授けなければならない。

「これよりお主は成功か死かの試練に挑む。じゃが死など妾が認めぬ、死しても黄泉の底より引き摺り戻す」

これは激励と力添えの言葉なのだが発言者が発言者だけに生憎とそうは聞こえない。
死んでも本当に力づくで現世に連れ戻されそうな気がする。
無論横島とて易々と死ぬつもりなど無い、何がなんでも魂を強めなければならないのだ。

「ワルキューレよ、お主はアスモ達に妾の邪魔をせぬように伝えに行け」

ワルキューレもこの場は気になるがリリスに直言されては逆らう訳にもいかない。
小竜姫に対して請け負ったのは横島の身の安全であり、貞操まで守ると言った訳ではない。
実際には命懸けの試練に挑む事になったのだがそれを選んだのは横島自身。
ならば他者がとやかく言う事も無い、出来る事は彼を信じて待つだけだ。

「解りました、アスモデウス閣下には私から報告しておきます」

そう言うと急いで床に散らばった服を身に着けると部屋から出て行く。
横島の視界にはもはや彼女は入っておらず、ひたすらにリリスのみを見詰めている。
彼女が部屋から出た途端にドアの向こう側で力場が形成されるのが感じられた。

「この気配は…加速時空間? …リリス様も本気という事か」

そう一人呟くと報告の為に足を速める。どうせ彼女の上司が真面目に仕事をしているはずも無く、
娯楽室辺りで人界の俗な資料に目を通しているか、酒でも飲んでいる事だろう。

やがて彼女が娯楽室のドアを開けると、予想に違わず彼女の上司は朋輩の魔神と酒を酌み交していた。
だが意外にも表情そのものは真剣で、ワルキューレを見ると待ちかねたように問い掛けて来る。

「何があった? 何故リリスが力を解放してやがる?」

ワルキューレとしては先程のリリスと横島のやり取りをそのまま報告するしかない。
だがそれを聞いての反応は、呆れたような、苦々しそうなものだった。

「リリスの試練に挑むとはまた無茶な事を…、過去にやり遂げた者などいたかね?」
「いるわきゃ無ぇだろうが! 干乾びたミイラにならずに済んだのさえ俺達だけだぞ?」

遥かな昔にリリスの性魔術の奥義に面白半分に手を出して二柱とも失敗した事があるらしい。
無理に修めずとも既に充分以上の強さがある為、それ以上継続して挑む気にならなかっただけだ、
と聞かれもしない事まで詳しく語ったのはどのような意図によるものなのか。
だがそれを追求する前に別の話題を持ち出されてしまった。

「それより横島君は間違い無く“神殺し”を飲んだのだね?」

間違い無く一息に飲み干しました、と答えながらも何故そこまで拘るのかを疑問に思っていると
バアルが思惑の一端を明かしてくれた。一言で言うと横島の来世の青田買い。

「では騙し討ちにしたようなものではありませんか」
「じゃあ聞くが、総ての事情を聞けばアイツは違う選択をしたと思うか?」

思わず口をついて出た不服そうな言葉をアスモデウスが間髪をいれずに鮮やかに切り返す。
言われてみればその通りで、事情を知ろうが知るまいが横島の決断は変わらなかったろう。

「本来であれば100年程は様子見の為に静観する事になっていたのだがね」
「まさか現状がそんな事になってるとはな、流石リリス決断が早いぜ」
「ですが神族の方でも同じ処置が出来たはず、という苦情など来ませんでしょうか?」

ワルキューレが気になるのは神界からの反応だ。今回の処置はリリスの独断専行とも言える。
少なくとも神界側はそう見るだろう。本気でねじ込んでこられると面倒事になる可能性もある。

「まあヒンズーの連中辺りが出張って来れば同じような事は出来るだろうからね」
「だいたい忠夫の仲間にゃ神族の調査官がいんだろが? 気付かなかったソイツが悪い」

神界最高の調査官たるヒャクメで“さえ”気付かなかった事実を“偶然”見つけたリリスが
“善意”(失笑ものの言い方だが)から教えた処、横島が“自発的”に今回の選択をした。

表面的にはそれで押し通す事にするつもりらしい。正式には最高指導者の裁可を仰ぐ必要があるだろうが
まず問題無く通るだろうと思わせる屁理屈だ。建前としては文句のつけようが無い。リリス程の
力の持ち主が躯を重ねて初めて解るような深いレベルでの事、例えヒャクメであっても何の準備も無しには
そこまでは調べられない。互いの間に肉体関係でもあれば別だったろうがあの二人の間にそのような空気は無い。
だいたい誰かが改めてもう一度調べようと言い出さなければ判明する可能性など皆無。
だがそれは双方を良く知るワルキューレだからこそ解る事。上層部等の通り一遍の調査で解るはずも無い。

「大体いきなり横島が魔界に居を移すという訳でも無いのだ、そう大騒ぎにもなるまいよ」
「それに忠夫の態度がいきなり変わるって訳でも無ぇだろ? 神界と敵対する訳でも無し」

実際にはいきなり勢力比に影響が出る事など無い。横島個人の実力など全体から見れば知れたもの。
許容範囲内での天秤の揺らぎ程度のものだろう。
問題はむしろ気分的な方だ。もちろん油断は禁物だろうが急激に関係悪化する可能性はそう高くない。
そんなことをワルキューレが考えていると、退屈嫌いの上司がいきなり話題を変えてきた。

「そんでリリスと寝てみた感想はどうだ? 凄かったろ?」
「感想と言われましても、私は意識を抜かれて嬲られただけですので」

こめかみの辺りに疼痛を感じながら答えると、更に訳の解らない追い討ちが続く。

「そりゃ勿体無かったな、ところで人界の風習らしいんだがな、同じ女と寝た者同士を
“兄弟”って呼ぶらしいんだが知ってたか?」
「何を仰りたいのです?」

話が迷走しているような気がして質問を返したのだが、それに応えたのは生暖かい二対の視線。
その二柱の魔神達はゆっくりと彼女の方に歩いて来ると、ポンとそれぞれの手を肩に置きただ一言、

「「妹よ」」
「止めて下さい! 心の底から」

他に類を見ない程の強大な力を誇りながら徹底的におフザケに徹する連中の同類扱いなど御免被る。
ワルキューレは本気で嫌がっていた。だが暇人とはそうなると余計に面白がるものである。

「そう身も蓋も無ぇ言い方すんなよ」
「この迸る“兄”の愛情が伝わらないとは哀しいものだね」

にじり寄って来ながら大真面目な顔で訳の解らない事を言って来る上位者を見ながらも
ここは引けないとばかりにワルキューレが言い募る。

「兄弟でしたら弟だけで間に合っております」
「そう言やお前が昨日のメイド姿を承知したのってジークにリリスの接待をさせないってのが条件だったな」

当の本人の前では態度に出さないようにしているがワルキューレが弟想いなのは知る人ぞ知る話である。
それ程あからさまでは無く、又ジークに対しては厳しく接しているので解り難いのだが
軍上層部から見ればまる解りである。新たなからかいネタが出て来たとばかりに暇を持て余した
最高司令官殿がニヤリと笑ったのを見てワルキューレは失策を悟った。挽回の策は早く打つ程良い。

「新しい“弟”が出来たばかりでしょう? 彼を可愛がっては如何です? やはり男は男同士と言いますし」

友人を売り渡すかのような発言だが、横島は既にこのフザけた二柱の魔神達にすっかり馴染んでいる。
大した実害も無いと思う、否、思い込む事にしたようだった。

「いや生きてるアイツと再会出来るか解んねぇからな」
「次に会うのが乾涸びたミイラでなければ良いのだがね」

だが横島の事が話題になった途端、一転して真面目な表情になる二柱であった。
そして発言内容はお世辞にも穏やかとは言い難い。

「お二方共横島が生きて戻らないと思っているのですか?」
「あのな、言いたか無ぇが俺とバアルですらしくじってんだぜ?」
「いくら本気ではなかったとは言え…ね」

自分が誰かより劣るなどと絶対に認めたがらない存在がこの件に関してはスンナリとリリスの優位を
認めている。改めて横島が挑んだものの困難さがひしひしと感じられたが彼女の心は決まっている。
一度信じると決めた以上はただ待つのみだ。

「おんやぁ〜ワルキューレ? お前は不安じゃなさそうだな?」
「ええ私は魔族の中でも最も良くあの男を知る者ですから」

あの男を称してワイルドカードと呼んだのは誰が最初だったのか。
切り札・ジョーカー・鬼札と色々な呼ばれ方をしてはいるがどんな状況からでも生還する
Mr.ターニングマン。たかだか最強を誇る二柱の魔神が挫折した程度の試練で彼を殺す
など出来る訳も無い。根拠など何も無い、だが確信は揺るがない。

「そこまで自信があるなら賭けるか?」
「お受けしましょう」

ここまで来れば騎虎の勢いという物で、事前に何を賭けるか決めずに受けた彼女を
軽率と呼ぶのは酷だろう。尤も直ぐに己が軽率さを自ら盛大に呪う事になるのだが。

「そんじゃ俺が勝ったらお前一晩俺のモンな」
「はぁ!?」

実に愉しそうに提案してくるアスモデウスを見ながらワルキューレは自らの軽率を呪った。
だが権勢づくでモノにしようとしないだけマシなのかも知れない。
もし賭けに負けた場合は自分とリリスが“姉妹”になるのだろうか、とやや現実逃避風味だったが
考えてみれば自分は横島の生還を信じて疑っていないのである。逆にそれに見合うだけの条件を
突きつけてやれば良いだけである。例えば一切サボらずに真面目に軍務に励み続けるとか。
まあ殆どの軍上層部は軽くパニくるだろう、真面目に働くアスモデウスなどを見た日には。

「そんでお前が勝ったらリリスが一生ジークに近付かねぇようにしてやるぜ」
「乗ったぁっ!」

色々と考えていた条件は上司の一言で総て吹き飛んだ。別段ジークとてもう子供ではない、誰とどういう
関係になろうが彼の自由なのだがリリスだけは別だ。真面目過ぎる男と奔放過ぎる女など最悪の組み合わせだ。
俗に言う、そのヒトだけはお姉さん許しませんよ、というやつである。

「契約は成立した、このバアルが立会人となろう」

横合いからバアルが口を挿む、賭けのリスクを負わずに退屈凌ぎに参加するつもりなのだろう。
もしどちらかが悪足掻きすれば執行人として参加出来るので更に楽しめるという訳だ。

「バアル様は閣下が履行するよう気をつけていただくだけで結構です。直ぐに横島の真価を知るでしょう」

覚悟を決めた以上はワルキューレの態度は堂々としたものである。
そして彼女の不動の信頼を受けた男はと言うと………



















ヘタレていた。


ワルキューレが去った直後に試練への下準備とその他の詳しい説明を横島は受けていた。

「先程お主に飲ませた丸薬は魂への強壮剤のような物じゃ。ただし“雄”の魂にしか効かぬ」

つまりは魂の外殻部分のルシオラの魂ではなく横島本来の魂を強化し顕在化させる為の物。
“横島”の部分を強化するのが目的な以上は当然の事前準備。

「そして今から妾とお主の魂を直結して負荷を掛ける、限界ギリギリまでな」
「あ〜老師ん処で受けた修行と似たようなモンか〜」

以前似たような経験をしているので少しだけ安心した横島だったが続いたリリスの言葉に
冷水を浴びせ掛けられたような気持ちになった。

「お主が猿神より受けた修行の事は聞き知っておるが慢心するでないぞ。以前のものは
 正方向への力の発露、今回は言わば真逆の方向への試みじゃ。努々油断するまいぞ?」
「了解ッス師匠!」

力強く答える横島の言葉に今迄に知らぬ心地良さを味わうリリス。

(師匠か…思えば人間の弟子を取ったのなど初めてじゃの。じゃがこれはこれで心地良いな)

今迄にリリスと関係を人間で今も生きている者など皆無である。一人を除いてほぼ
即死のようなものだった。かつての夫であるアダム以外は。

「お主の魂の過負荷状態が限界になる迄はただ時の過ぎるのを待てば良い。じゃが
 無為に過ごすのも芸が無い故、今のお主の最高の技巧を凝らして妾を悦ばせてみよ」

そう言われて断れるものでも無い。自信など欠片も無いがビデオや本などで得た心許無い
知識を基に精一杯に励んだみたものの、

「ハァ〜……………」

それによって横島が得た物は呆れかえったような、退屈しきったような溜息ひとつであった。

「話にならぬ、これよりの一挙手一投足に到るまで総て妾の言う通りに振舞え」
「はいっ!」

会話だけを聞けば熱血スポ根ものであるが音声をカットして遠目に見たら単なる男女の
爛れきった営みと大差無い。違うのは双方共にこの上無く真剣であり、片方は命懸けという点のみ。
不眠不休、飲まず食わずでひたすら行為に没頭し続ける。本来であれば疾うの昔に力尽きている
はずなのだが随所でリリスが自らの唾液を横島の口から注ぎ込み、それが下手に食事等を摂るより
彼に活力を与えている。打ち止めになるはずの精は無限に体内で生成され続け何時果てるとも無く
二人の時間は流れて行く。未熟な自覚が強い分、一言たりとも指示を聞き逃すまいと心を砕き
愚直なまでに教えを実践していく。ここまで真摯にリリスの教えに従う存在などかつて無かった。

(どれ程悪し様に罵ろうと顔色一つ変えずにおるの、プライドが無いのか優先順位が明確なのか)

下手に力有る者はプライドも高い為簡単にキレて途中でリタイアする。アスモデウスやバアルもそうだった。
そもそも彼等は充分以上の力を持っている為、別に切迫していなかったという事情もある。
だが横島は違う、どれ程の罵詈雑言を浴びせても全く動じない。聞き流しているという訳ではない。
その証拠に注意された内容を良く聞いて、即座に改善して実行に移している。
次第に一回の時間が延びていき、いよいよ試練の本番に挑むまでになった。

「今のお主は限界以上に魂の出力を増しておる。これ以上は魂が砕け散る程にな。
 その状態で潜在能力の総てを引き出して見せよ、出来ぬ時は死あるのみじゃ」

死ぬ事など絶対に許さぬと、先に言い放ったリリスの言葉を聞いても別に動揺する事も無い。
死線を越えた経験など数知れず、既に恐怖心など飽和している。だからといって集中が
鈍る事も無く、最高の状態で集中力を保っていた。

「条件は極めて単純、妾を先にイカせる事じゃ、心せよ」

単純だからといって簡単とは限らないという好例である。

「ちなみに妾はこれまでの生において相手より先に果てた事など一度も無いぞえ?」

それは死刑の宣告にも等しい言葉、恐らくは数多の魔族や僅かな人間の誰にも出来なかった事を
やり遂げなければ生き残れないという事なのだ。だが今更逃げる訳にはいかない、引かず惑わず躊躇わず。

「横島、逝きま〜っす!」

往年の名作アニメの根暗主人公のような掛け声と共に最後の一戦に突入する。
性魔術の奥義とは一言で言えばイカずにイカせる事。男女が一つになった状態で互いの
体内で“気”を巡らせそれぞれの陽根・女陰を通じてやり取りする。回数を重ねる毎に力が蓄積
されて行き、先に果てた方は相手に総てを吸収される。それを吸収した側は絶大なパワーを手にする事が
出来るが、逆に吸収された側にとっては命に関わる。人間であれば容易く落命する程に。

横島はひたすら目の前の女体の攻略に没頭する。自分の総ての霊力を完全に制御下に置き
肉体を強化し制御する。五感は基より交感神経・副交感神経に到るまで。
自分の快楽中枢を鈍化させ、より大きな快感を相手に送り込もうと一心に集中する。
だがそれでもまだ及ばない、相手の表情には余裕が窺える。何も感じていない事も無さそうなのだが。

「ふぅむ、まぐわい始めてからかれこれ240時間が経過したぐらいかの。
 よくぞここまでもった、最後の試練じゃ、妾から攻勢に出ようぞ」

そう言い終わるや否やリリスが攻勢に転じ、横島に送り込まれる快感が倍加する。
それまでは何とか相手の防御を突破しようと戦線を拡大していたのだが、相手が攻勢に
転じた時点で守勢一辺倒に追い込まれている。鶴翼の陣で攻め込む敵に対して、拠点専守防衛に
専念して辛うじて陥落を免れている状態だ。全身の感覚を制御下に置いている為何とかなっているが
理性が半ば麻痺し脳髄が蕩けそうになっているので制御下から逸脱しかけている。

完全にゼロの状態から指導を受け、愚直なまでにそれを守りひたすら技巧を磨いて来た。
今の横島は人界屈指の色事師ともテクニシャンとも言えるのだが、当の師匠が相手では意味が無い。
要するに斉天大聖を相手に格闘で勝とうとするようなもので、無謀という言葉で表現出来る
範囲を軽〜く超越している。だが後に引く事など考えられないので無理矢理にでも前に進むしかない。

その時点でハタと気付く、自分は何故正攻法のみで相対しているのか、と。
修行の時点では正統邪道各種取り揃えて習得していたのに、何故一番肝心の最終試練では
真正面からいくのみだったのか。全く未経験の分野だった為、調子が狂っていたらしい。
だが気付いた以上は何時の時点だろうが遅過ぎるという事は無い、手遅れになど断じてしない。
幸いと言うべきか霊力は嘗て無い程充実している、負ければ総て吸い尽くされて死ぬだけだが。
殆ど垂れ流し状態になっている霊力を一気に収束させ文珠を生成する、一度に十個、新記録である。

一個目の文珠に《停》と刻み、自分の腰に押し当てて放出を《停》める。
続けて刻むは《快》《楽》《中》《枢》《究》《極》《鋭》《敏》《化》9個同時の並列起動。
実年齢27歳の横島は14個までなら文珠の並列起動を行える、9個なら何の問題も無い。
文珠の発動に気付いたリリスが口を開きかけるがすかさず自らの口で塞ぎ喋らせない。
最初に課せられた勝利条件はただ一つ、新たに制限を加えようとした処で言わせなければ良いだけの事。

すぐに舌による口腔内への反撃が加えられるが、それは一つの諸刃の剣。同時並列起動に
よる発動で幾何級数的に増大した効果がリリスの躯に染み込んでいく。
相手の高みに届かなければ、自分の位置まで引き摺り降ろせば良い。
底面積の広いバットのような器に水を満たした状況を想定してみる。
片側の高さを上げれば中の水は反対側に向けて溢れかえる。
それが出来なければ相手の位置を下げれば同じ効果が得られる。


辛うじて限界寸前であったが拮抗状態を保っていた。そして一時的ではあるが
耐性を無理矢理下げられて、神経が剥き出しのような状態で過敏になっている。
油断もあった、その状態で両者の間に貯まりに貯まったエネルギーが“快感”という形になって
怒涛の勢いでリリスに押し寄せて来る。その結果、彼女の永い生涯において初めてと言える
絶頂感に囚われて逝く。それは夜魔の女王が初めて味わう感覚。

「ああ? ああぁあぁ亜亞阿? AAhh!」

そう絶叫するとビクンビクンと痙攣しながら泡を吹き、失神してしまった。
その瞬間、膨大なエネルギーが陽根を通じて横島の中に流れ込んで来る。
体の内側から爆ぜそうな感覚を無理矢理抑え込むと、自分の魂の内圧が凄まじく膨れ上がっていた。

「うわ〜マジで失神してるよ。このヒト相手に失神させるなんて俺って時々凄ぇな〜」

我ながら呆れたというような風情で呟くと、更に文珠を生成し自分を《鎮》める。
振り返って見るとあられも無い姿でリリスが意識を失っている。思えばとんでもない師匠
ではあるが、彼女のお陰で単純なスペックとしてではあるがルシオラに匹敵するだけの“魂”の
強さを手に入れる事が出来た。この先も色々とやるべき事はあるだろうが新しい世界への
一歩を踏み出せた。自分がそんな世界へ足を踏み入れる事になるなど想像も出来なかったが
きっかけをくれたのは目の前で眠る美しき悪魔である。それを思うと感謝の念が沸き起こる。

鉛のように重い疲労の貯まった体に鞭打って、リリスの体を清めていく。魂の部分だけは
暴走しかねないほどに充実しているのだが流石に体力の限界だった。いったい何日眠って
いないのやら見当もつかない。予備のシーツに取り替え彼女の体に毛布を掛けた段階で
限界が訪れる。そのまま床に倒れ込み、横島は心地良い疲労感と共に眠りの園に引き込まれた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(あとがき)
ヤっちゃいました。これって規定に触れるんやろうか?その時は管理者様に削除を願い出ますので。
具体的な単語や表現を使わずにえっちぃシーンを描写するのに四苦八苦、その結果書き上がったのが
この話なんですがいかがでしたでしょうか? アウト? セーフ? (野球拳か?っての)

試練だ何だっつってもやってる事はようするにアレだもんなぁ〜

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