ザ・グレート・展開予測ショー

傷ばかりの天使!!(その35)


投稿者名:TAITAN
投稿日時:(05/ 4/ 8)

「おいおい、久方ぶりの再会だってのにそれはねぇだろ?」
そう言って、横島に乗り移ったメタリア王国初代国王ハロルド・ギア・メタリアはニヤリと笑う。
「貴様は千年も昔にとうに死んだはずだ!!」
バルドルフが叫ぶ。
「あぁ、そうさ。確かに俺は千年ぐらい前に逝った。」
「ならば何故!!」
「なぁ〜に、ちょっとコイツの体を借りてるだけさ。」
「借りてる?・・・そうか、貴様憑依したな。」
「当たり〜。」
ハロルドは、ニヒヒと笑う。
「・・・・・・まぁいい。」
少し沈黙した後、バルドルフは呟いた。
「貴様にも怨みがある。長年の怨みがな・・・・。」
ヒュッ
バルドルフは剣の先をハロルドに向ける。
「貴様の魂もろとも、その小僧を斬り捨ててくれよう。」
「へ、そうはいかねぇ。・・・・おい。」
ハロルドは西条を呼ぶ。
「お前の持ってる剣、少しだけ貸してくんねぇか?」
「?」
「お前の持ってる妙に白い剣のことだよ。」
「このホワイトローズか?」
「あぁ、それだ。」
「・・・・・・。」
西条は少し考えた後、ホワイトローズをハロルドに投げ渡す。
「ありがとよ。」
ハロルドはホワイトローズを受け取り、すぐに構えをとる。
「さぁ〜て、やるとするかバルドルフ。」
「クククク。1分も経たぬうちに殺してやろう!!」





ダッ!!
二人は同時に駆け出し、同時に剣を振るう。
ガキンッ!!
刃が交わり、火花が飛ぶ。
キンッ!ガキンッ!!
数回剣を交わらせると、2人は、後ろに跳んで間合いをとる。
「フンッ、その程度か。」
「強がり言ってんじゃねぇよ。とっとと斬りかかって来いよ。」
鼻で笑うバルドルフに、ハロルドは言った。
「よかろうっ!」
バルドルフは、ハロルドとの間合いを詰め、疾風のような速さで剣を振るう。
「ちっ!」
紙一重でそれを避けるハロルド。
ピッ
剣の先が、ハロルドが乗り移った横島の頬をかすめる。
ツゥッ
頬に出来た傷口から血が垂れる。
ヒュッ!
再び、バルドルフの剣がくる。
「くっ!」
それもなんとか避けるハロルド。
シュッ
今度は、Gジャンの袖の部分を切る。
ヒュッ!ヒュッ!
次々と襲い掛かるバルドルフの攻撃。
それを必死に避け続けるハロルド。
「どうした、逃げることしか出来ないのか!」
あざ笑いながら、バルドルフは言う。
その時、ハロルドは動きを止める。
「ふんっ、どうやら諦めたようだな。」
ニヤリと笑い、バルドルフは剣を振るった。
「死ねっ!」
ブォンッ!
「なっ!」
さっきまで紙一重で避けていたバルドルフの剣を、ハロルドは軽々と避ける。
そして、
バキィッ!
「グボォッ!」
バルドルフの左脇腹に、ハロルドが乗り移った横島の右膝が命中する。
激痛に耐え切れず、バルドルフは体勢を崩す。
「ぐふっ、ぐっ、き、貴様ーーー!!」
怒ったバルドルフは、剣を振るおうとする。
しかし、
ズバッ!
「ぐあぁ!」
ハロルドが持った魔剣ホワイトローズが、バルドルフの右脇腹を切り裂く。
「く、くぅ・・・・・。」
右脇腹を押さえながら、数歩後ろに下がるバルドルフ。
右脇腹を押さえてる左手の指と指の間から、傷口から出た血が滴り落ちていく。
「わりぃな、テメェの攻撃に慣れるまで時間がかかっちまった。」
ニヒヒと笑いながら、ハロルドは言った。
「何せ、お前と戦うのも久しぶりだからな。」
「ぐ、ぐぐぐ・・・・・。」
痛みに耐えながら、ハロルドを睨むバルドルフ。
「さぁ、まだ戦えるだろ?」
「お、おのれぇーーーーー!!!」





ビュンッ!ビュンッ!
ガキンッ!キンッ!
ヒュッ!ズバァッ!
「・・・・・。」
横島に乗り移ったハロルドがバルドルフと戦いを始めて十分が経過した。
その戦いは、ハロルドが圧倒的な差で、バルドルフを押していた。
その戦いを西条が無言で見ていた。
(次元が違いすぎる・・・・。)
西条は心の中で思った。
超一流の剣術の腕前を持つ西条。
しかし、西条の目に映る戦いは、自分の腕前をはるかに超えた戦いだった。
そんな自分の腕をはるかに超えた剣術の腕前を持つバルドルフ。
自分たちに圧倒的な力の差を見せ付けたバルドルフ。
そのバルドルフを、ハロルドは圧倒していた。
西条は、戦いを見ながら、とある事を思い出した。






それは、エードリッヒ城からアリスとリナを救出した日の夜。
ホテルの一室で始まった横島対西条のババ抜き。
2時間以上続くことになるこのババ抜きの最中、横島は昔あった出来事を話した。
それは、すぐに暴走してしまう式神使い六道冥子が、式神を賭けた果し合いをした時の話だった。
横島は、その果し合いの様子を西条に話し始めた。
現在、六道女学院の教師をしている鬼道政樹が、その果し合いで冥子の式神を、自分の式神である夜叉丸に取り込んでいったこと。
鬼道が子供だった頃、冥子の十二神将のせいで重傷を負ったこと。
そして、冥子の式神を取り込みすぎた夜叉丸が暴走したこと。
「暴走?」
「あぁ、美神さんによると式神を操るには結構な霊力が必要なんだよ。
自分の式神プラス冥子ちゃんの式神6匹を操れる霊力を、鬼道は持っていなかったワケだ。」
「ほぅ・・・。」
「でな、その時、美神さんはこう言ったんだ。」

『しょせん秀才は、いくら努力しても天才にはかなわないのよ!!』

(いくら努力しても、か・・・・。)
圧倒的な力を自分たちの前に見せ付けたバルドルフが、ハロルドにやられている。
決して、バルドルフが弱いからではない。ハロルドが強すぎるのだ。
横島に乗り移ったハロルドの動きは、バルドルフの数倍も速かった。
そんなハロルドの攻撃を受けるたび、バルドルフの表情が怒りに変わっていく。
西条には、そのバルドルフの表情に、どこか悔しさが混じってるような気がした。
そして、西条はもう1つのことを思い出した。
バルドルフは、エリートの名門貴族の出身で、ハロルドは、農民と同じような暮らしをする下級貴族の出身だったことを。





(なぜだ!なぜ勝てない!!)
バルドルフは心の中で叫んだ。
何度も剣を振るっても、空を切るだけだった。
息をつかせぬ剣撃を、ハロルドはことごとくかわしていく。
そして剣をかわすたびに、ハロルドは剣を振るう。
ズバッ!ズバッ!
「ぐぅっ!!」
新たな傷が、バルドルフの体に出来る。
「ぜぇ、ぜぇ・・・・。」
息を切らせながら、バルドルフは剣を構える。
「やめとけ、バルドルフ!もうテメェに勝ち目はねぇ!!」
「ぬかせ!!」
怒りの形相で、バルドルフは剣を振るう。
ブゥンッ
しかし、その剣の速さは、横島と西条と戦った時より格段に遅くなっていた。
その剣を、ハロルドは軽く避ける。
そしてハロルドは、剣の刀身でバルドルフの腹を叩く。
「ぐぅ!」
腹から全身に激痛が広がり、バルドルフは数歩後ろに下がる。
その時バランスを崩し、バルドルフは倒れそうになるが、剣を杖がわりにして、バランスが崩れるのを防ぐ。
「ぐ、ぐぐぐ・・・。」
血を流しすぎたバルドルフは、意識がもうろうとなる。
(このまま、死ぬのか・・・?)
自分の視界が蜃気楼のようになっていく。
(ぐっ!!死んでたまるかぁ!!)
意識を元に戻すバルドルフ。
その時バルドルフは、忌まわしき記憶を思い出していた。
ハロルドに負け続けた過去の記憶が・・・。
「たかが下級貴族にこの私が、再び負けはせんのだっ!!」
バルドルフは叫ぶ。
そして再び、ハロルドに襲い掛かる。
「私が出来なかったことを、お前は軽々とやってみせた!
私が半年かけても落とせなかった城を、貴様は一夜で落とした!!
たかが百人足らずの部隊で、貴様は国を制圧した!!
下級貴族のお前が!名門貴族の私よりも戦績を上げた!!
それが、私にどれだけの屈辱心を植え付けたか!!」
ガン!ギン!
「貴様が、貴様がいなければ、我がバルチザン王国が、最強の帝国を築きあげていたというのに!!」
「力だけで世界を手に入れられるわけがねぇだろうが!!」
ハロルドが叫んだ。
「何を言うか!!力ある者が世界を手に入れることが出来る!!」
「その力で何人の民を殺した!!だから俺は、テメェの国に攻め込んだんだ!!」
ガキャン!!
「そんな考えをずっと持ってるなら、俺には永遠に勝てねぇ!!」
ズバァッ!!
「グウゥゥゥゥ!!!」
胸を斬られ、バルドルフは数歩後ろに下がる。
ボタッ、ボタッ、ボタッ
胸に出来た傷口から大量の血が垂れ落ちていく。
「貴様を、貴様を殺すために、私は魔神を斬ったのだ!!」
激痛に耐えながら、バルドルフはハロルドを睨む。
「貴様を、貴様を殺すためなら、この魂、いつでも悪魔に売り渡してくれる!!」





ドクッ!
一瞬、バルドルフの体が震えた。
ドックン!
心臓の鼓動に合わせて、また彼の体が震える。
「?」
バルドルフの異変に気付き、ハロルドは動きを止める。
「なんだ?」
ハロルドがそう言った瞬間、
ヴォン!!
「!!」
突然、バルドルフの体から巨大な衝撃波が出てくる。
まともに喰らったハロルドは、西条の方へ吹き飛ばされる。
「!!」
こっちの方に吹き飛んでくるハロルド(が乗り移った横島)に気付いた西条は、すぐに受け止める姿勢をとる。
がしっ!
「ぐぅ!!」
なんとか受け止めた西条だが、受け止めた衝撃でバランスを崩し、転んでしまう。
「ぐぅ・・・・。」
痛みに耐えながら体を起こす西条。
「う、うぅぅぅ・・・。」
その時、ハロルドが目を覚ます。
そして、西条の顔を見て言った。
「あれ?なんで西条が・・・・。」
「!! よ、横島クン!?」
ハロルドが憑依していた横島は、いつの間にか元の横島に戻っていた。
「確か、お前はバルドルフと戦っていたはず・・・・。」
その時横島は、自分が西条に抱えられていることに気付く。
そして、西条を見て言った。
「てめぇ、まさかとは思っていたがホ「違うわぁーーー!!!」」
そう叫んで、西条は横島を抱えていた両腕を引っ込める。
それにより、横島は地面へと落ちる。
ドスンッ!
「いってぇ〜〜〜!!!西条、何しやがる!!」
「うるさい!!世界の婦女子に誤解を招くような発言をしたからだ!!」
「何が世界の婦女子だ!!美女の血しか吸わねぇ変態ノミがっ!!」
「何ぃ!!横島クン、どうやらこの僕に殺されたいようだな!!」
西条は、地面に落ちてたホワイトローズを拾い、構えをとる。
「やる気かっ!?上等だっ!!」
瞬時に霊波刀を右手から出す横島。
2人からは、凄まじいほどの殺気が出ていた。
まさに一触即発のその時、
ブォォォォォォォ!!!!
「「!!」」
強風のような霊気が2人の間を通り、2人はその霊気が来た方向を見る。
そこには、体中から禍々しい霊気を発するバルドルフの姿があった。
ブォンッ!!
強烈な霊圧が2人を襲う。
「「!?」」
吹き飛ばされそうになった2人だが、なんとかその場に止まることができた。
「なんだ・・・・、この霊気は?」
西条は小さく呟いた。


「グォォォォォォォォォッ!!!!」
バルドルフの叫び声が、ドーム中に響き渡った。


続く

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