ザ・グレート・展開予測ショー

THE MOVIE「踊るゴーストスイーパー」(6)


投稿者名:3馬鹿鳥男
投稿日時:(00/ 6/ 2)

第6章「ほたるの支配魔」

ホテルを出発する前に銀一のマネージャーと一悶着があったが、
銀一が仕事を休むのは明日1日だけならという条件で、
しぶしぶマネージャーは了解をした。
ついでにマネージャーにワゴン車を運転してもらい、
銀一たち4人は後ろのシートを向かい合わせにして座り、雑談をしていた。
「ほんとうに良かったのですか?明日仕事があったのでしょう?」
おキヌは心配そうに銀一に尋ねた。
銀一は大丈夫と手を振り、
「明日も試写会の会場に出席してファンサービスをする予定やったんやけど、
2日のうち1日出ればいい条件やったから、今日出たから明日休んでもいいんや。」
とファンが聞いたら怒りそうなことを言った。
ほたるが「ほんとうに迷惑かけてすみません」と銀一に謝ったが、
銀一は気にせんでいいとほたるの肩を「ぽん」と叩いた。

銀一たちが乗った車は、首都高に入り北に向かった。
すでに夜の9時を過ぎていた。後2時間ほどで着く予定だ。
横島は向こうに着くまでに知っておきたい情報を聞くため,ほたるに質問をした。
「向こうに着く前に確認したいのだけど・・・
ほたるちゃんは確か魔族を支配できているのだよね?」
「はい・・・」
ほたるは少しトーンを落として答えた。
横島は真剣な表情で「今ここで出せる?出せるなら出してみて」と言った。
おキヌと銀一は緊張した表情でほたるを見た。
ほたるは無言のまま、自分のハンドバックから少し大きな円形ブローチを出し、
みんなによく見えるように手のひらに乗せて説明をした。
「普段はこのブローチに魔族を封印しているのです。
そうすると魔族の気配を感じられることなく連れて歩けるので・・・。」
3人はほたるの手元を覗き込んだ。
よく見るとそのブローチは精霊石を加工しているようであった。
おキヌは「不思議な色のブローチですね」と言い、銀一は「まるで漫画の魔法少女の変身ブローチみたいやな。」と冗談を言うように呟いた。
ほたるは銀一をちらっと見てから横島に視線を向け、
「それでは召喚します。」と言った。
そして、真面目な顔をして、おもむろにブローチを天に向かってかざし、
ポーズをとって明るい声で呪文を唱えた。
「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン。あ〜る君出ておいで〜♪。」
・・・・・・・
銀一と横島はシートからずり落ちそうになった。
「かっこいい呪文ですね。どうゆう意味なんです?」
おキヌだけがなんだか楽しそうに手を叩いて喜んでいた。
銀一はあきれたようにおキヌを見てから、
なんだか疲れたように「ほんとうにそう言うんか」とほたるに聞いた。
「いいえ。もちろん冗談ですけど・・・つまらなかったですか?」
ほたるは無邪気な笑顔で答えた。
横島は(おいっコラ!ナメとんのか!)と思わず大阪弁で叫びそうになったが、
ほたるのにこっと笑った顔と、おキヌの「あれっみなさんどうしたんですか?」ときょときょとした顔を見てから、溜め息をついてほたるに
「お願いだからまじめにして・・・。」
と哀願した。

「それでは、改めて召喚します。実は「出ろ」と念じるだけなんです。」
ほたるはそう言うと力を込めてた視線でブローチを見つめた。
その時横島とおキヌは、ほたるからものすごく強い霊力を感じて、目を見開いて驚いていた。
(すごい!さっきまで微塵も感じていなかったのに・・・・。もしかしたら美神さんより強いのでは・・・)
横島は信じられない物をみたような気持ちになった。
その後ほたるは「出よ!」と一言いった。
するとぼんっと音とともにみんなの目の前に変な物体が現れた。
それは、ピンク色した風船に小さな羽と大きな2つの目を付けたような代物だった。
そいつは小さいしっぽをふりふり、羽根をぱたぱた、身体をぷかぷか浮かせて、
ほたるに感高い声で不平を言った。
「ピ〜。早くだせよな。ほたる〜。」
「ごめんね。ちょっとごたごたしていたもんだから・・・」
ほたるはそいつににこっと笑い返事をした。
「キュ〜。」
そいつはほたるの笑顔を見てから、何も言わずに周りを見渡した。
そして、おキヌを見て「おっ可愛いお姉さん発見」と言うと、おキヌの目の前までふわふわ飛んで行き、大きな目をきょろきょろさせ「コンニチワ」と首を傾げた。
おキヌは目に涙を浮かべて、手を口元に置いてぷるぷる震えていたが
突然それに抱きつき、
「きゃ〜。かわいい〜です。かわいすぎです〜。」と絶叫した。
「うぐ〜。ぴ〜。」
そいつはおキヌに強く抱きしめられ、頬擦りをされて苦しそうにもがいていた。
ほたるはそんなおキヌに、にこにこ笑って「あ〜る君と言う名前なんです。」と言った。
おキヌは「こんにちは。あ〜る君。」と言いながらぎゅっと抱きしめた。
銀一はあ〜る君を不思議そうに見て、ほたるに聞いた。
「映画の時と姿格好が違うのとちゃうか?」
ほたるは銀一を見てうなずいた。
「ええ。映画のときはこの姿だと迫力に欠けるということで、恐そうなぬいぐるみを着せていたのです。」
「そらそうか。こいつでは全然恐ないもんな。」
銀一もうんうんと納得したようにうなずいていた。
そんな中、横島は一人だけ真剣な表情で、ぎゅっとおキヌに抱かれているあ〜る君を観察していた。
(う〜ん。やわらかそうだな・・・おキヌちゃんの胸・・・。
 じゃなくて。話と随分違う感じだなこの魔族・・・。
 人を襲って殺戮をするようには思えない・・・
 もしかして、人間に支配されると姿が変化するのだろうか・・・。
 そうすると逃げ出した魔族の姿はちょっと想像できないな・・・。
 う〜ん・・・・・・・。
俺も魔族になりたい・・・。
 あかん、煩悩がじゃまして思考がまとまらん・・・。
おキヌちゃん相手にセクハラはできんし・・・。)
横島は煩悩を追い出すために、頭を振った。

その魔族・・・R君はやっとのことでおキヌから逃げ出し、
おキヌから離れるようにほたるの肩に乗っていた。
「それでは、改めて紹介します。R君です。」
ほたるはR君を指し、みんなに紹介をした。
R君は「きゅ〜」と言っただけで然したる興味がないのか、ほたるの長い髪をちょこちょこいじっていた。
ほたるはR君にぺちっと叩いて髪をいじるのをやめさせ、みんなを順番に紹介した。
「近畿さんはよく知っているわね。
 で、こちらがゴーストスイーパーの横島さん。
 その助手のおキヌさん・・・。」
R君は「きゅ〜」と鳴きながら目をきょろきょろさせ、横島を見た。
そして、まだかわいい、かわいいと手を口元に置き、目を潤ませているおキヌを横目で見てから、横島の目の前まで飛んで行き、確認するように
「お前がヨコシマか?」
と言った。
横島はちょっとびっくりしたように「そうだけど?」と答えたとたん、R君は横島の頭をぺちぺち叩いた。
「いてて、おいっこら何をする。」
横島はR君を捕まえ、R君のほっぺたを引っ張った。
「ぴ〜」
R君は情けない声を出した。
おキヌは「そんなことをしては駄目です」と言って横島からR君を引き離し、自分の膝の上に置いた。
「そいつが先に叩いたんだぞ。」
横島は抗議の声を上げたが、おキヌは横島を無視して「よしよし」とR君を撫でて、
「悪いお兄さんだよね」とまるで赤ちゃんを扱うようにあやしていた。
ほたるは不思議そうに、撫でられているR君に覗き込んで
「R君。横島さんを知っているの?」と聞いた。
R君は再びおキヌの手から離れ、ほたるの横までぷかぷか飛んで行った。
そして、おキヌに非難されてムスっとしている横島の方を向いて、けたけた笑った。
「ぴ〜。お前本当にあのヨコシマか?
 人間の分際で、魔族7神の1人アシュ様の滅びの要因となったヤツ?
 ケケケケケケケ。嘘だろ、お前。霊力がほとんど人並みだぞ?」
と言った。

第6章 終わり
第7章 「魔族」に続く。

すみません。進行が遅くて。
ほんとうはもっとシリアスにしたいのですが、
うまく文章ができないのです。
あ〜る君の名はご存知の通り、あの「あ〜る」から取りました。

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